今まで消費者にはほとんど影響が出ていなかったトランプ関税ですが、近頃関税の請求書がきたというアメリカ人が続出しています。
個人輸入商品に対し運送業者経由でかけられる関税
今までは関税コストの大半を米企業が背負っていたので、消費者にはほとんどしわ寄せが及んでいませんでした。しかし2025年8月以降、多くの企業が軒並み関税コストを商品に転嫁するという声明を出し、消費者にかなりの負担が転嫁されるであろうと予想されています。日本人ならこんなニュースを聞いたら、警戒して一旦購入を控えるかもしれません。しかしアメリカ国内には、未だに関税は企業が負担するもので個人には請求されないと思い込み、個人輸入で高い買い物をしてしまう人が沢山います。
以前は個人宛の少額商品に対しては、デ・ミニミス制度が適用されていたので、$800までの商品なら関税や消費税が免除されていました。しかし現在は海外から輸入した全ての商品が課税対象になっているようで、輸出先の企業から請求される商品価格と配送料とは別に、配送業者からも商品の受取人に請求書が届くケースが続出しています。
自分の周りでも、関税は輸入した側に支払い義務が発生することを知っている人はいても、一体いつ、どのような方法で、いくらの関税を支払うことになるのか、きちんとわかっている人はほとんどいませんでした。みんないずれ商品価格や送料などに転嫁されていくのかなと、ぼんやり予想していたくらいで、まさか配送業者から請求が来ることになるとは驚きでした。
なぜ関税が商品をオーダーした輸出業者からではなく、運送業者からの請求になるのかというと、海外から発送される商品の通関業務をスムーズに行うために、運送業者が税の建て替えサービスをおこない、税関で運送業者が建て替えた関税は「インパクトフィー」という名目で受取人に請求されるからです。
運送会社からの請求とは言え、「インパクトフィー」は国からの税金です。商品が税関を通過してしまえば、輸入者に関税の支払い義務が発生します。運送業者に「インパクトフィー」の支払いを拒否し続ければ、商品が手元に届かないだけでなく税金を滞納したのと同じ扱いをされて、最悪の場合、銀行口座の凍結や不動産の差押などに発展する可能性があるのではないかと思います。
オンラインで購入する商品に一体どれだけの関税がかかるのかは、送られてくる国や品目によりかなりのばらつきがありますが、複雑すぎて大体の請求金額を予想することもできませんし、この動画の女性の場合のように、大変高額になるケースもあるようです。https://www.tiktok.com/@mahoganyishere/video/7524357698754809119?_r=1&_t=ZT-905qXVTCbWJ
この女性は、数ヶ月前にオーダーした$15(約2200円)のビタミン剤に対し、FedExから$50(約7600円)の関税が請求されています。商品価格に対し333%の関税は、もしかすると計算ミスか何かかもしれませんが、原産地が不明の商品には200%以上の関税がかけられる場合もあるらしく、オンラインショッピングの際は、発送元をよく確認してからポチらなければ、関税で大損害を受けることにもなりかねません。
店頭商品価格にも関税の影響が
それではオンラインショッピングを諦めて店頭に並んでいる商品だけを買えば、関税を免れられるのではと思うかもしれません。しかしそれは関税を個人で払わなくなっただけで、企業が支払った関税は商品に上乗せされ、最終的に消費者が負担することになります。
アメリカで1位、2位を争う安い店と言われているウォールマートも、8月以降は関税分を商品価格に転嫁するという声明を出した企業のひとつです。値上げした価格で商品を売るのに邪魔な旧価格が表示されているタグを切り取ってから、値上げした価格で商品を売っていますが、商品の中には、まだ元の値段のわかるタグがついた物も混ざっているので、消費者は古い値段と提示されている新しい値段を見比べることができると動画の中の女性が説明しています。
https://www.tiktok.com/@campcallout/video/7533672374554725645?_r=1&_t=ZT-908SFGqOlHT
彼女が言うにはウォールマートの店内を見て回ると、様々な商品が$1〜8(150〜1200円)値上げされているのが見て取れ、価格上昇が一番大きいのは子供服売り場だそうです。
ニュースで関税の話が上がる度、トランプサポーターの人達は、値上がりなんてしていない、ニュースは嘘を報道していると反論しています。しかしもしその人達が昨日$6.98(1061円)だった洋服を今日買いに行ったら$10.98(1668円)に値上がりしているのを実際に見たら、とてもショックだと思います。そして今まで自分達が関税の影響をそれほど感じなかったのは、関税前に輸入された在庫商品が店頭に並んでいたからで、トランプ政権内のアメリカファーストを謳っている高官は、関税収入の増加具合は気にしても、最終的に誰が負担するかはそれほど気にしていない、という事に気づくのかもしれません。
海外から輸入される商品全てに関税がかかるという事は、国内で売られるほとんどの物の値段が上がるという事で、皺寄せは全て消費者にかかってきます。トランプ大統領は自国の産業保護のために関税をかけ始めたのかもしれません。しかし海外製品に依存しきった今のアメリカの状態で、急に国内生産だけで全ての需要が賄えるわけがありません。また今のアメリカの人件費では、国内生産品のコストは関税がかかった商品より高いものにもなりかねません。
アメリカではこれからクリスマス商戦が始まろうとしています。関税を理由に便乗値上げを試みる企業も増えそうですが、値上げが加速し過ぎて売上不振の大惨事となり、事業縮小や閉店する企業も増えるかもしれません。もしそうなれば、今度は失業者が大量に増えて、その結果ホームレスや薬物中毒者の急増などが起こる可能性があります。今まで企業が吸収してきた関税コストを消費者に転嫁すればするほど、アメリカ社会に大きな影響を与えそうです。
まとめ
トランプ大統領が関税をかけ始めた当初の目的は「アメリカ国内産業の保護」と述べられていました。もし関税政策で産業が守られたとしても、その時には国民がもう保たないかもしれません。今はこれから到来するであろう厳しい時代が、なるべく早く過ぎ去ることを願うぐらいしかできないようです。


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