トランプ大統領は1月20日の就任直後から精力的に不法移民対策に着手し、まさに公約通りの米国史上最大の強制送還をスタートさせました。
史上最大の強制送還 - トランプ政権下での不法移民の強制退去
アメリカの歴史において、移民対策は自国の発展と深く結びつくと同時に、大きな課題として常に付き纏って来ました。通常アメリカは、毎年100万人程度の移民を受け入れます。しかしバイデン政権下の2021年から2023年の3年間だけで、715万人という異常とも言える数の不法入国者を受け入れました。
非合法に国境を超えて入国してきた人達の中には、自国の経済状態や政治の不安定さなど、やむを得ない理由があったのかもしれません。しかしこの人数は誰が見ても流石に受け入れすぎだと思うはずです。そしてこれが原因で国境問題や国内の不法移民問題を悪化させたのは事実だと思います。
アメリカにいる3種類の移民
大体どこの国でも、移民は合法と非合法、2種類に分けられると思います。しかしアメリカには合法と非合法以外の第3の移民、不法に入国して来てはいるものの、正規の在留資格だけが得られないまま国内で暮らしているUndocumented immigrantと呼ばれる人達がます。なぜそのような事が起こるのかと言うと、アメリカには紛争や政治不安、災害などが原因で、国から逃れてきた亡命申請者が受けられる、TPS(Temporary Protected Status一時保護資格)と呼ばれる制度があるからです。
この制度によって一時保護資格が認められれば、たとえ不法入国者であっても強制送還の対象から外れ、一定期間アメリカに滞在する権利が与えられます。
不法移民が不法滞在者ではなくなるプロセス
現在アメリカのTPS対象国は17カ国です。
原則としてそれ以外の国からやって来る人達には、TPS制度は適用されません。しかしメキシコとの国境を超えてやってくる不法移民の多くは、越境時に自分の国籍や身分が明らかになりそうな物は全て破棄して出自を曖昧にしてから、国境を超えた所で国境取締官に拘束されるのを待ちます。身
柄の拘束後に(たとえそれが嘘でも)自分はTPS対象国からやって来たと申告し、難民申請を行いたいと国境取締官に申し出ます。身分を証明するものを持っていないので、嘘をついている根拠がないためか、大部分の難民申請は拒否されることなく完了します。
その後難民支援団体などの助けを借りて各地のシェルターに保護された難民(仮)の人々には、社会保障カード(ソーシャルセキュリティカード)が発行されます。ソーシャルセキュリティカードには日本のマイナンバーのような個人番号がふられていて、その番号があれば銀行口座や運転免許証も取得可能です。難民申請後には就業許可もすぐおりるので、在留資格はなくとも強制送還を恐れる事なく正規の仕事に就き、自活しながら難民認定の審査を待てるわけです。
移民問題は不公平が問題
1990年に創設されたTPS制度を利用して、在留資格を持たないままアメリカ国内で生活している人達は1100万人以上いると言われています。彼らの平均在米年数は13年にもなるそうです。彼らは在留資格がない「だけ」で、他のアメリカ人と同じように税金も社会保障費もきちんと支払って生活していますし、犯罪での逮捕率は他のアメリカ国民の半分以下だと主張します。
不法入国してから犯罪も犯さず、アメリカ国民と同じように税金も払っているのだからこのままアメリカで暮らしても良いのではないか、という彼らの考えもわからなくはありません。しかし昨今のインフレで、多くのアメリカ人が生活に困窮しているなか、国民が受けられない支援や恩恵を受けて生活している不法移民に対し、多くのアメリカ人が反感を抱くのは当然のことだと思います。
学生時代から永住権取得獲まで、長い時間と労力をかけてやっとアメリカで生活をできるようになった合法移民の側から見ても、自分達がしてきた苦労を全てスキップして、正式な滞在許可が与えられないと嘆く不法移民の人達に対して同情できない部分が多く、やはり不公平さをおぼえます。
人道上の理由で亡命してくる難民を受け入れるのは賛成です。
しかし切迫した状況でもない不法移民の入国を許し、不法移民のために国民の福祉負担を増大させるような政策は、間違っているように思えます。残酷ではありますが、今は不法滞在者にではなく自国民にもっと支援の手を差し伸べるべき時で、そのためには強制送還も致し方ないと言うトランプ氏の主張に皆共感を強めるようになったのだと思います。
まとめ
不法滞在者をめぐっては、様々な意見や捉え方があります。2期目のトランプ政権下でアメリカはどうなるのか。今後も注目していきたいと思います。
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