今回は、保育のプロとして、地方公務員として地域に貢献する地方公務員保育士になる方法について解説します。国家資格である保育士の免許取得から、公立の保育園で働くための「地方公務員採用試験」について、また幼稚園の違いについてもあわせて解説します。
はじめに
子どもが好き、その笑顔を支えるやりがいのある職業に就きたい!
そう考え、保育士を目指す人の中でも、安定性の高い公務員としての保育士を考える方も多く居ます。
保育士自体が国家資格のため合格率10~20%の狭き門を突破する必要がありますが、公立の保育園で働くには更に公務員試験に合格する必要があります。
また、公立保育園での保育士の募集は各自治体によるものであり、毎年定例的に行われるものではありません。
公立の保育園と私立の保育園の大きな違いとして、公務員の保育士になれば長く勤めた時の給料がしっかりと上がっていくことが挙げられます。
今回は、公務員の保育士になる方法などを解説します。
公立保育園の保育士になるには?
保育士とは、子どもを導くことのできる立派な職業です。高い志を持って志望している人、子どもが好きだから志望している人、保育士になった動機は様々だと思いますが目指すところは同じです。
そんな保育士でも、公立の保育園 に勤務する場合は、該当の地方自治体の地方公務員として扱われます。
いわゆる、地方公務員の保育士とは、地方自治体が運営する保育園、いわゆる「公立保育園」で働く保育士のことを指します。
それでは、公立保育園で働くには、どうしたらいいでしょうか。
それは、各地方自治体が募集する保育士の採用試験に合格し、採用されることでなることができます。
この募集は、各地方自治体が独自で行っており、地方自治体である市区町村の役所やウェブサイトでその募集情報を確認することができます。保育士採用に関する募集条件や内容・人数は、自治体により異なりますが、基本的には欠員が出た場合に募集が行われるケースが多いので、毎年定例的に採用募集があるとは限りません。
自分の地元で働きたい!など、希望の地域がある場合は、まず募集がされているか、次に募集されるのはいつかなどの情報を知ることが大事です。
また、保育士の公務員採用受験の条件で、一番は資格です。その資格とは、国家資格である「保育士資格」です。この保育士資格を取得するには、厚生労働大臣の指定する養成学校を卒業するか、厚生労働省が実施する保育士試験に合格する必要があります。
保育士は国家資格ですから、合格率10~20%(※1)と決して楽な道のりではありません。(※1出典:厚生労働省「保育士試験の概要 」)、その難関の国家資格を取得し、且つ安定性の高く、採用枠が限られる地方公務員として保育士になるには、それ相応の努力と覚悟が必要です。
保育士の免許試験と地方公務員採用試験について
保育士の国家試験について
上述しましたが、まずは保育士の免許は厚生労働省が管轄の国家資格で、その国家試験に合格し、保育士の資格を得る必要があります。この保育士の国家試験は年2回実施され、受験応募のスケジュールなども併せて確認しておくと安心です。
試験内容は、一次試験の筆記試験と二次試験の実技試験に分かれています。
一次試験では一般教養や保育・福祉についての専門知識を問われる筆記試験を受け、基本的には高成績の人から二次試験に進みます。ただし、一次試験の明確な合格基準は発表されていません。
保育士試験の一次試験(筆記試験)
- 保育原理
- 教育原理及び社会的養護
- 児童家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健子どもの食と栄養
- 保育実習理論
二次試験では面接とピアノ演奏などの実技試験を受けることになります。
保育士試験の二次試験(実技試験)
- 保育実習実技
- 音楽表現に関する技術
- 造形表現に関する技術
- 言語表現に関する技術
※3科目のうち、2科目を選択
受験資格は最終学歴によって設定が異なり、例えば大卒なら保育士とは関係のない学部・学科の卒業生でも受験資格があります。大学在学中・中途退学の人は在学年数や62単位以上を修得しているかどうかで受験資格が異なります。他にも短大、専門学校、高等学校、中学校の卒業・在学中などの立場によって細かい設定があるので、自分がどこに該当するか一度確認するとよいでしょう。
厚生労働省によると保育士国家試験の平成27年度の受験者数は、全国で67,504人と発表されています。合格者数は、約23,000人で、合格率は34.3%となっており、平成26年以前に比べて合格率が高い数値にあがっています。
保育士試験の受験の応募方法は、受験申請書及び、卒業証明書などの受験資格を証明するものと証明写真を添付し、受験手数料(約13,000円※平成29年前記時点)を払い込みすることで応募できます。詳しくは、管轄の一般社団法人全国保育士養成協議会で確認するとよいでしょう。
保育士の公務員試験について
さて、保育士免許をとったあとは、いよいよ保育士になるための地方公務員採用試験です。
受験者は受験資格を満たしている必要があり、前述のとおり採用時までに保育士資格を保有していることが大前提です。採用時というのは、実際に勤務を開始する次年度の4月のことです。
試験は、通常、一次試験・二次試験があり、一次試験は一般教養・専門知識について問われる筆記試験で、二次試験は面接に加えピアノ演奏・絵本の読み聞かせといった実技試験です。
試験内容の詳細は以下の通りです。
一次試験の教養試験では、国語・数学・社会・理科・英語・美術などの幅広い科目から出題されます。高校卒業程度の難易度です。専門試験では、福祉関係の制度が制定された年号、関わった人物、エピソードなど、保育や福祉の専門的な知識が出題されます。
二次試験の面接では、グループ面接が多いようです。なぜ公立保育園を志望しているか、他の自治体の試験も受けているか、その自治体の試験を受ける理由などがよく質問されます。実技試験では、ピアノの演奏や絵本の読み聞かせのスキルだけでなく、人柄や雰囲気などを見られます。子どもとどのように関わっていくかなど、実際の保育で大切な要素を確認するという訳です。実技に関しては、面接官が見ていることはあまり意識しすぎず、子どものことを第一に考えた姿勢が評価されるはずです。日頃から慣れ親しんでおくことが一番の試験対策と言えるでしょう。
試験以外の保育士免許取得方法 その1 学校
保育士になる方法のひとつに、厚生労働省認定の養成施設(養成校)を卒業するという方法があります。この養成施設を卒業すると、上述した保育士試験を受験することなく、取得することが可能です。
この厚生労働省認定の養成施設(養成校)には、大学・専門学校・短大などがあります。また、学校に通うのは厳しい社会人の学習方法として通信講座や通信制の学校も存在します。
通信講座での学習方法として有名なものに四谷学院の通信教育があります。大卒から保育士を目指す人はもちろん、社会人で仕事をしながら保育士を目指す人や、自分の子どもを育てながら保育士を目指す人にぴったりの講座です。
実際に保育士になった時、学校や講座での学習は必ず役に立ちます。将来子ども達を保育する立場としてしっかりと知識を身につけ、確固たる土台を築きましょう。
中卒・高卒による保育士を目指す方法について
最終学歴が中卒や高卒で保育士になるには、一般的に厚生労働省認定の養成学校(大学・短大・専門学校・通信教育など)を卒業し資格を得ることになります。学校などはお金や時間がかかるため、国家試験での合格を狙いたいと考える人も居るかもしれませんが、残念ながら保育士は国家資格なので基本的には「大学・短期大学・高等専門学校・2年制以上の専門学校を卒業した者」という条件を満たさなければ受験資格を得られません。そのため、一番の近道は学校で学ぶことになるという訳です。
中卒、高卒では資格取得は異なっており、中卒の場合はまず保育士の養育機関である学校への入学資格を得ることが必要です。つまり、高卒の資格を得ることが第一歩となります。高卒の学歴は普通に高校を卒業する他に、高等学校卒業程度認定試験を受け合格するという方法があります。認定試験に合格後、厚生労働省認定の養成学校に入学し卒業することで保育士の資格が得られます。中学生で保育士を目指している場合も同様に、まずは高校卒業することが近道と言えるでしょう。高卒の場合は、もちろん高校卒業はしているので、養成学校へ入学し、卒業することで保育士の資格が得られます。
時間や金銭的な問題でどうしても学校の卒業は難しい場合は、所定の条件を満たすことで中卒・高卒ともに保育士試験の受験資格を得ることができます。所定の条件とは、中卒の場合は、保育所などの児童福祉施設で5年以上かつ7200時間以上の実務経験を積むことです。高卒の場合は、児童福祉施設で2年以上かつ2880時間以上の実務経験を積むことです。
主婦・社会人が保育士を目指す方法について
保育士を志す方の中には、主婦になり自分の子どもを育ててみて、やりがいを感じて目指している方もいるでしょう。また、社会人になって仕事の中で保育士に関連することを見聞きしたり関わったりして、その職業に強く魅力を感じて目指す方もいるでしょう。
主婦の方や社会人が保育士になるには、厚生労働省認定の養成学校を卒業することが近道になります。学校に通うのが難しい事情があるなら、通信制や資格取得のための通信教育もあります。
また、学校に通う以外では保育士の国家試験を受験し、合格する方法もあります。大卒、短大卒であれば卒業した学部・学科に関係なく受験資格があるので、自主学習で目指すことができます。最終学歴が大学の中途退学や、高卒・中卒の場合は受験資格を満たさない場合があるため、まずは自分が保育士試験を受けられるかどうかを確かめる必要があります。大学の中途退学の場合は在学年数や修得した単位が62以上あるかどうかで資格の有無が分かれます。高卒・中卒の場合は国家試験の受験資格を満たさないため、児童福祉施設で規定の時間数実務経験を得ることが条件になります。
公立保育園以外の保育士の就職先とは
保育士には、地方公務員による公立保育園勤務以外の選択肢ももちろん存在します。
例えば乳児院や児童養護施設で働く、施設保育士という道があります。施設保育士は保育園以外の児童福祉施設で働く保育士を指し、0歳~18歳までの子どもたちのお世話をするお仕事です。子ども達の自立を支援する役割を担っている非常にやりがいのあるお仕事で、担当児童から必要とされていることがダイレクトに伝わってくる責任ある立場です。児童虐待や育児放棄、経済的な理由で入所している子ども達を本当の親のように愛し、お世話を行います。子どもの成長を通して自分の成長も感じられ、大きなやりがいを感じられる職業と言えます。
また、知的障がい児通所施設や認定こども園といった施設で働く道もあります。知的障がい児通所施設の目的は「中度の知的障害児や発育障害を持つ児童が自宅から通園し、自活に必要な技能や知識を習得するための支援を行う」ことです。認定こども園は地域の実情や保護者のニーズに応じて様々なタイプがありますが、幼稚園と保育園の両方の良さを取った施設のことを言います。
更にグローバルな視点で言えば、外国でも日本人の保育士の募集があります。海外での保育に興味があるなら、人生を豊かにするという意味でも良い選択肢かもしれません。国によっては保育士の制度が異なる場合もありますが、日本の保育士資格で働けるところも多く存在します。
これらの求人情報は検索をすると求人サイトなどで見つけることができます。自分の目標やニーズに合わせて、視野を広げて探してみるのも良いでしょう。
ここでチェック「保育士」と「幼稚園教諭」の違い
保育士と幼稚園教諭は、どちらも子どもを預かるという仕事ということから似たような印象を持っている方も多いです。大きくカテゴライズすると確かに同じ分野ではありますが、その特徴はやはり異なります。
まず、幼稚園と保育園では管轄が異なります。幼稚園は文部科学省の管轄であり、分類上は学校です。そのため幼稚園で働くには「幼稚園教諭免許」が必要であり、その資格名からもわかる通り、教諭として存在することになります。保育園は厚生労働省の管轄であり、日中子どもの保育が難しい保護者に代わって日常生活の援助などを行うのが保育士ということになります。
幼稚園教諭も保育士も養育環境のある学校や通信教育で学び、資格を得ることができます。
まとめ – 目指せ 地方公務員「保育士」!
改めて地方公務員の「保育士」について、まとめます。
公立の保育園で働く公務員の保育士になるには、国家試験の保育士資格を所有していることが大前提であり、私立の保育園への就職と異なり「公務員試験」を受け合格することが必要です。
公務員の保育士として働くメリットの大きなものにはやはり「安定性」が挙げられます。
私立の保育園に就職した時の初任給は然程違いがありませんが、長く勤めると公務員の保育士は右肩上がりに給与が増えていきます。近年では男性の保育士さんも増えているため、家庭を持っているなどの理由があると更に魅力的な待遇と言えるでしょう。また、産休・育休も保証されており、人生を通してやりがいを感じながら勤めあげられる待遇が整っていることが人気の理由と言えます。デメリットとしては、やはり一般の保育士にプラスして公務員試験に合格する必要があることでしょう。長い安定性を手に入れるには、それなりの努力や苦労が伴います。また、保育の質を保つなどの理由から転勤があるため、家の近くで働きたいといった希望は長期間叶うことは難しいかもしれません。
デメリットも全くないとは言えませんが、それを差し引いても公務員の保育士として安定性の高い就業ができることは非常に魅力的です。最終学歴や現在の自分の環境によって厚生労働省認定の養育学校の卒業か保育士試験の受験合格か、過程は様々ですが、目指すところは皆やりがいのある保育の仕事を安定して続けられる公務員の保育士になることです。
勉強や試験対策、学校へ通う大変さなど辛く苦しいこともあるかもしれませんが、子ども達の笑顔を支える未来を思い描いて、少しでも楽しく取り組んでいきましょう。
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