【子どもが主役】保育園 保育実習の「内容」と「心構え」について

保育士資格が取得できる大学や短期大学、専門学校等に通っている学生は、保育士資格取得課程で保育実習が課せられています。ここでは実際に保育園で働く保育士の立場から「保育実習」の流れや考え方などを伝えていきたいと思います。


保育園の実習とは

保育実習の意義とは「保育士の職務は、児童の心身の発達に直接関わるという重要な仕事で、重い責任を負っています。したがってその責任を果たすためには、児童の心身の発達に関する諸理論と、それらを具現化していける実践的な知識や技術を習得しておかなければなりません。

保育実習はこのような保育士としての職務を、児童福祉施設において果たしていくことができるように、自らが修得した専門的理論や知識の実践的な応用と、児童を直接援助できる具体的な方法や技術を経験的に学習するもの(2002大嶋『保育実習』)」と捉えられます。

厚生労働省の「保育士養成所における保育実習実施基準について」には「保育実習は、その修得した教科全体を知識・技能を基礎とし、これらを総合的に実践的なする応用力を養うため、児童に対する理解を通じて保育の理論と実践の関係について習熟させることを目的とする」と記述されています。

保育士を目指している人は実際の体験を通して自分自身の保育に対する考え方の形成の一助にし、大学や短期大学、専門学校等で学んできた内容を実際の保育の中で確認し、その中で知識の不足を感じることで今後の学習がより具体的に実務に沿ったものになっていきます。学習してきた知識や技術を現場でいかに活かせるか、その落とし込みができていると実際に保育士として働く上で重要なポイントになります。

実習の内容

実習の概要

実習は2週間あります。平日が5日×2週間で10日間、それに加えて土曜保育が2日間で合計12日間実習をします。1日目2日目が0歳児クラス、3日目4日目が2歳児クラス、5日目6日目が3歳児クラス、7日目8日目が4歳児クラス、9日目10日目が5歳児クラスとなっていて、ちょうど2日間ずつ各クラスの実習をします。

まずは短期大学や専門学校の先生から実習についての説明を受け、実習生自身が受け入れ先の保育園に「この度実習いたします、○○○○です。よろしくお願いいたします。」と電話で連絡をします。その時に保育園側と実習生側で実習前のオリエンテーションの実施日を相談して決めます。

オリエンテーションでは園長または副園長から園の様子や実習生が特に何歳児クラスをよく経験したいか、部分実習では何の活動をしたいかなどを話し合い、園内を見学し、各クラスの保育士に挨拶をしていきます。

実習の流れ

実際に実習が始まると各クラスの主担任の先生から「この時間はお遊戯室で遊びながら朝の受け入れをします」などと説明を受けます。実習生は時間と活動内容をメモします。これは後ほど実習記録に時間と活動内容、保育士が配慮する事項などを書くのでメモは必須です。実習生は保育士と一緒に行動をします。例えば2歳児クラスでは保育士から「トイレに行く子どもの着替えを手伝ってもらえますか?」と言われるので、子どもたちのズボンやパンツ、オムツの着脱を手伝います。2歳児クラスではまだ自分で衣類の着脱をするのが難しい子どももいます。

戸外遊びでは公園や川沿いなどに遊びに行きます。実習生には子どもたちの手を繋いでもらいます。公園では鬼ごっこをしたりブランコをしたりして一緒に遊びます。保育士は子どもが怪我をしないように遊びを見守ります。もちろん一緒に遊ぶこともあります。実習生もその活動の中で危険がないかを考えて、子どもたちが危ない遊びをしていたら事前に止めるなどの配慮が求められます。実習生は「見学」というよりも「仕事」として子どもと関わる中で学んでいきます。

お昼寝前に絵本や紙芝居を読んでいるのですが、そのクラスの実習2日目には実習生が絵本を読みます。保育士が前日にあらかじめ実習生に「お昼寝前に絵本や紙芝居を読んでください」と伝え、実習生は自分のお気に入りの絵本や保育園にある絵本を読みます。

絵本や紙芝居を読む前に手遊び歌も実習生にお願いしています。手遊び歌は新しいものがどんどん出てくるので、逆に保育士たちはその最新の手遊び歌を知ることができ、勉強になります。


その時のアドバイスで多いのが「絵本を読むときはもう少し大きい声で読むと子どもたちにも伝わりやすい。そして抑揚をつけて感情を込めて読むとより伝わりやすい。」というアドバイスです。実習生は慣れない環境で緊張もしていると思います。

多少は仕方ないと思いますが大きい声のほうがよいと言われています。実習生も1歳児クラスの時にそれを指摘されると直そうとしてくれて3歳児クラスや4歳児クラスになると自信をもって大きな声で絵本や紙芝居も読めるようになってきます。

1日の実習が終わると主担任の保育士と実習生とでその日の振り返りをします。その時に実習生はその日1日実習をしてみて気づいた点や気になった点、疑問に思った点などを質問します。それに対して保育士が答えていきます。また保育士が実習生の子どもへの関わり方などを見て気になった点やアドバイスなどをします。

記録

実習生はその日の1日の流れと行動と保育士の配慮事項と自分はその活動にどのように関わったかを学校(短期大学、専門学校等)指定の用紙に記入します。

そしてそれを保育士が添削し、修正箇所を赤ペンで直します。あまりにも修正箇所が多いとそのまま返却し、改めて書いてもらいます。学校によっては修正テープを使うことを禁止しているところもあるため、直しがあると、すべて手書きで1から書き直しという事態になることもあります。保育士は実習生が書いた記録を読み、添削し、翌日実習生にその添削内容を話しながら用紙を返却します。

保育士はお手本

実習生は保育士の言動を見て子どもたちへの関わり方や職員同士の連携を学んでいきます。

子どもの遊びに対して保育士はどのように関わっているか、遊んでいるか。登園や降園の時に保育士は保護者とどのようなやりとりをしているか。子どもへの言葉かけや接し方、集団活動の進め方はどのようにしているか。

以上の、保育士の普段の振る舞いや自然に身につけてきたことなどを参考にして実習生は学んでいきます。

実習のその後

実習が終わると実習生はほっとすると思います。子どもたちとたくさん遊べた、先生と呼ばれ子どもたちが駆け寄ってくれたなどの嬉しい気持ちもあるでしょうし、実習を通して保育士から自らの課題を指摘され、耳の痛い思いをし、自ら思うようにいかず課題に直面しつらいと感じる思いもしたでしょう。

保育士になりたいと思い短期大学や専門学校に入学したが、実際に実習をしてみて保育士を目指さないという学生もいるようです。いいことも嫌なことも含めて、「実習は大変だったけどやってよかった」と思えることが大切ではないかと思います。

様々な実習生を受け入れてきた中で感じること

実習生と言っても実習に来ている目的はそれぞれ違っていて、保育士になりたくて一生懸命実習に取り組んでいる方、障害者施設に就職が決まっているけどカリキュラムの過程で実習に来ている方、保育士になろうと思っているけどどうしようかと悩んでいる方など様々です。

そうするとそこに実習に対するモチベーションの差が出てくるように思います。実習生が実習に意欲を感じない場合どうしても受け身になりがちです。もしかしたら面倒と思っていたり給料が発生するわけでもないのに働いていると感じたりするのかもしれません。

私もその気持ちは十分に理解できます。ただ、そこで考え方を変えて実習を受け入れる側も仕事として指導し、実習記録の添削や評価をしていることを踏まえて、「実習させていただいている」という気持ちで真摯に取り組むことが、実習先の保育園で「お!今度の実習生はやる気があって素晴らしい。ぜひうちの保育園で働いてほしい。」という評価や評判につながり、短期間での関係性ではありますが人間関係も良好になっていくのではないでしょうか。そして、そういう姿勢は実習先の保育園に限らず、働きたいと希望する保育園の採用試験の時にも良くも悪くも影響してくるように思います。

つまり、採用試験を受ける保育園は実習の様子はもちろん見ていないのですが、採用する側としては実習も熱心に取り組んで来た人を採用したいと思うので、実習に対して積極的か受け身だったかというのが面接等で表れてくるかと思います。

「実習もきちんとやってきた」と自信をもって採用試験に挑めるかが合否を分けることになってしまうかもしれません。もちろん一概には言えませんし、実習の目的や理論を理解した上で要領よく取り組み、自分が実習にそこまでの価値を感じなければ最低限でもいいかなとも思います。そのあたりは価値観の話になってきます。受け入れる保育園側としては積極的に頼まれた仕事が終わったら「何かやることはありますか?」と保育士に聞いてくれて率先して実習に取り組んでくれるととても嬉しい気持ちになります。


きっとこの実習生はどの採用試験を受けても受かるだろうなという思いになります。子どもへの接し方や絵本の読み聞かせの方法などはその日の振り返りで指導にあたった保育士からアドバイスをもらえるのでそれを参考にすれば大丈夫です。

大事なのはやはり実習に対する姿勢かなという気がします。

保育士になるということ 「子どもが主役」を支える仕事

諏訪きぬ(2001 現代保育学入門 フレーベル館)さんは、「保育士に求められる資質は、第一に子どもへの深い愛情、第二に、専門職としての自覚と使命感、第三に、想像力と豊かな感性、第四に、科学的に物事を捉えようとする知性や探究心、第五に他者と協同して取り組もうとする態度や問題解決能力、そして第六に、親を受け止める度量の広さと親への愛情だと思います。保育の中で必要な想像力とは、単に目の前のないものをイメージすることだけではありません。子どもの立場に立って子どもの気持ちを察する、長い見通しをもって保育を構成するといったことも想像力の守備範囲です。その上で、さまざまな保育上の問題を解決していく能力が求められます。」と述べています。

私の保育園でも子どもが主役だと常々園長や主任保育士が言っています。例えば会議で納涼会やお遊戯会など重要な事柄を決める時には特に子どもたちの立場に立って、子どもたちが喜ぶことを念頭に置いて物事を決定します。

保育園によって様々な考え方や価値観があると思いますし、正解不正解はないと思います。ただ、実習生にはこの「子どもが主役」という考え方を大切にして子どもたちから大好きと言われる保育士になってほしいと思います。

本記事は、2017年9月6日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG