厚生年金保険料率は、平成16年から段階的に引上げられ、本年9月を最後に引上げが終了すると、厚生労働省より発表されました。
なお、国民年金保険料については、すでに平成29年4月に引上げが終了しています。
厚生年金保険料率とは
厚生年金保険料率とは、一般的な民間企業から給与を得ている会社員が、納める厚生年金保険料の金額を算定するために利用する「値」です。
平成16年より段階的に厚生年金保険料率は引上げられ、平成29年9月を最後に引上げが終了します。
平成16年の開始当初の厚生年金保険料率は13,934%で、以後0,354%ずつ引上げを行い、平成29年9月に最終の引上げを行うと、以降についての保険料率は18.3%で固定されます。
急速に少子化へ向かう日本の状況を踏まえ、厚生労働省は、平成16年に年金制度の改正を行い、保険料率改定の基準について発表しました。
政府は、財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組みである「マクロ経済スライド」を導入しました。
これは、平成24年年金額の特例水準の解消により、マクロ経済スライドが機能する前提条件の整備ができたことが追い風となりました。
「マクロ経済による影響」とは
このマクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢にあわせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。
これは、現役世代の保険料負担が重くなりすぎないようにするため、社会全体の公的年金制度を支える力の変化と、平均余命の伸びに伴う給付費の増加、というマクロの視点に立った、給付と負担の変動の調整の仕組みです。
この仕組みを導入することにより、国が負担する割合を引上げ、積立金をどの程度まで運用することができるか、という基準を作ることができました。
どこまで積立金を積み上げるか、という基準を明確にすることにより、公的年金財政の収入を決定することができます。
年金の給付水準について
今、現役世代で支払っている若者が、将来自分たちが受け取る側になった時、年金は受け取ることができない、つまり、年金制度は破たんするといわれています。
しかし、「平成26年財政検証結果」において、日本経済の再生と、女性や高齢者の社会進出が進めば、給付水準の指標である所得代替率は50%を上回ることを公表しています。
ただしこれは、2019年の財政検証の際に新しい計算方式を検討することを発表しているため、新しい計算方法では、所得代替率の役割を果たせない可能性もある、という見解が発表されています。
所得代替率とは
年金受け取りを始める年齢を現行の65歳時点と仮定し、その時に受け取る年金額が、現役世代の手取り額と比較し、どのくらいの割合なのかを示しているものです。
今回の給付水準の発表のように、所得代替率が50%を上回るといった場合、具体的には、現役世代の手取りの収入の50%を上回る額を年金額として受け取ることができることがわかります。
国民年金の保険料について
国民年金の保険料は、厚生年金保険料と同様に、平成16年より価格水準を基準として引上げられてきましたが、今年の4月をもって、すでに引上げが終了しています。
ただし、次世代育成支援のため、平成31年4月より自営業者などの国民年金第1号被保険者に対して、平成16年度の価格水準で保険料が月額100円引上がります。
まとめ
年に1度の改定を繰り返し、保険料率のアップが行われてきていた社会保険料が、今年の改定を最後に料率は固定化されます。
昇給がなかなか難しい昨今の状況の中で、現役世代にとっては保険料率の固定化は朗報と受け取れるかもしれません。
しかし、今回の保険料率の改定終了とともに、今後の課題として挙がっているのが、長期的視点に立った場合、決められた収入の範囲内でいかに給付水準を維持、確保していくかという点が浮かび上がります。
また、厚生年金保険料率は固定化となるものの、本年1月27日に厚生労働省が発表した内容に、「年金額を0.1%引き下げる」というものがあります。
これは消費者物価指数が下落したことにより、年金額に反映された結果です。
実際には、公的年金を受け取る約4千万人に、年金受領額が減少したという影響が出たとされています。
今後、保険料率が一定のまま上がることはないと仮定した場合、年金受取額が減額となるとことが今回のことで予測されます。
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