「入国管理局」の職員とは?
「入国管理局」とは、法務省の内部部局で、その職員には、「入国審査官」という外国人の入国・在留審査事務を行う「国家公務員の一般職員」と、「入国警備官」という違反を行った外国人を調査・収容・国外送還する「専門職員」や「通訳」といった職などがあります。
この「入国審査官」になるには、国家公務員一般職(国家一般)の採用試験に合格し、入国管理局を官庁訪問して、採用されることが必要です。採用時は法務事務官として採用され、権限も制限されますが、一定の勤務期間を経ると入国審査官になることができます。
ただし、法務事務官の間も、空港審査を行う場合は入国審査官を兼任することが可能であり、入国審査官になってからも総務課や会計課などの審査以外の業務担当になった場合は法務事務官を兼任することもあります。
入国警備官は、独自の採用試験に合格しなければなりません。今回は主に法務事務官と入国審査官のような国家公務員一般職の入国管理局職員についてお話します。
入国管理局とは
入国管理局とは、法務省の内部部局の一つであり、外国人の出入国や在留を管理し、難民認定を行う組織です。日本を訪れたい、または住みたいと希望する外国人に対して許可するかどうかを審査する仕事になります。
海外に行ったことのある方は、空港でパスポートをチェックし判子を押す人を見たことがあると思いますが、それが入国管理局職員である入国審査官です。日本人の出入国状況を記録し管理するのも入国管理局の仕事です。
出入国管理を行う組織・機構
出入国管理を行う組織として、全国に多くの機構があります。法務省内と各地方に入国管理局、大きな空港や港がある場所に空港支局、規模の大きい収容所のある場所に入国管理センター、各入国管理局の管轄内にさらに細かく出張所が置かれています。
国家公務員一般職として採用される場合は、各入国管理局に採用され入局することになりますが、異動については各入国管理局の管轄に関係なく行われます。例えば福岡入国管理局に採用された後に、管轄の違う東京入国管理局に異動になることもあります。
入局管理局の支部局一覧
入局管理局は、略称は入管(にゅうかん)と呼ばれ、英語で「Immigration office」と表現します。管理センターが2つ、地方支部局は15局設置されています。
【管理センター】
・東日本入国管理センター
・大村入国管理センター
【管理局】
・札幌入国管理局
・仙台入国管理局
・東京入国管理局
・成田空港支局
・横浜支局
・名古屋入国管理局
・中部空港支局
・大阪入国管理局
・関西空港支局
・神戸支局
・広島入国管理局
・高松入国管理局
・福岡入国管理局
・那覇支局
国家総合職との役割の比較
国家総合職の入国管理局の職員は、主に上記一覧の中の、法務省入国管理局にて勤務することになります。在留審査の中でも判断の難しい案件や、難民認定の最終的な判断、各地方の入国管理局の管理・統制を行っています。国家総合職でも地方の管理局局長等の職員として移動することもあれば、国家一般職の職員が法務省に出向になることもあります。
出入国審査業務と在留審査業務
入国管理局の業務は多岐に渡りますが、大きく分けると出入国審査業務と在留審査業務に分けられます。もちろんこの他にも総務・会計等の一般的な事務を行う部署もあります。
出入国審査業務は、国際線のある空港や、クルーズ船の寄港するターミナルにて、外国人の出入国に関する審査を行います。外国人が提出するパスポート及び出入国カードの確認や聞き取り等により、その外国人が日本に出入国できる要件を満たしているかを審査する仕事です。外国人の出入国者数は毎日かなりの数になるので、それを処理するためにはスピードと判断力が必要になります。
国際線のある空港の一覧
国際線のある空港について説明します。
下記の通り、
・新千歳空港(札幌)
・函館空港
・旭川空港
・仙台空港
・秋田空港
・新潟空港
・青森空港
・福島空港
・茨城空港
・成田国際空港
・東京国際空港(羽田)
・静岡空港
・富山空港
・小松空港
・中部国際空港(セントレア)
・関西国際空港(関西空港)
・広島空港
・岡山空港
・米子空港
・高松空港
・松山空港
・福岡空港
・熊本空港
・長崎空港
・宮崎空港
・鹿児島空港
・那覇空港
現在、国際線のある空港は増加傾向にあり、この中でも、空港法上の国際航空輸送網又は国内航空輸送網の拠点となる空港(いわゆるハブ空港)として、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港の5つが認められています。
在留審査業務は日本に住んでいる外国人やこれから住もうと思っている外国人に対し、在留するための要件を満たしているかを審査する業務です。現在日本では、27種類の在留資格があります。例えば、日本人と結婚し、日本で暮らしたい外国人に対しては「日本人の配偶者等」という資格の要件を満たすかを審査します。また、日本の定められた学校で先生として働く場合は「教育」という在留資格の要件を満たすか審査します。このように、それぞれの27種類の在留資格のどれかの要件を満たさなければ日本に在留することはできません。
27種類の在留資格の説明(※平成28年4月時点 )
・外交
外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員等及びその家族が該当し、在留期間は外交活動中で期限はありません。
・公用
外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者等及びその家族が該当します。在留期間は5年、3年、1年、3カ月、30日または15日になります。
・教授
大学教授等、本邦の大学等の機関において研究や研究の指導、教育を行うものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・芸術
作曲家、画家、著述家等音楽や芸術、文学で収入を得る活動を行うものが該当します(下記の興行に記すものは含まれない。)在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・宗教
外国の宗教団体から派遣される宣教師等、布教や宗教的活動を行うものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・報道
外国の報道機関の記者、カメラマンが、契約に基づいて日本国内で行う取材や報道上の活動を行うものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・高度専門職
高度の専門的な知識や能力を有し、我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるものが該当し、在留期間は5年のものと無期限のものがあります。
・経営・管理
企業等の経営者・管理者等が該当し、日本国内において事業の経営または管理に従事するものから、法律上資格を有さなければ行えない事業の経営、管理等の活動を除くものを言います。在留期間は5年、3年、1年、4カ月または3カ月です。
・法律・会計業務
弁護士、公認会計士等、資格を有する必要のある、法律または会計に関する業務に従事するものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・医療
医師、歯科医師、看護師等、資格を有する必要のある医療業務に従事するものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・研究
政府関係機関や私企業等の研究者等、本邦の公的機関または民間企業との契約に基づき研究を行う業務に従事するものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・教育
日本国内にある小学校、中学校等の教育機関において、語学等の教育を行うものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・技術・人文知識・国際業務
機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等、日本の公的機関または民間企業において自然科学、人文化学に関する知識若しくは技術、または外国の文化により培われた思考や感受性を必要とする業務に従事するものが該当し、在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・企業内転勤
外国の事業所からの転勤者が該当します。公的機関、民間企業に関わらず、日本国内に本店、支店、営業所のある組織内での転勤により、期間を定めて当該業務に従事するもので、在留期間は5年、3年1年または3カ月になります。
・興行
俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手等、自己のパフォーマンスを披露する興行活動または芸能活動を行うものが該当し、在留期間は3年、1年、6カ月、3カ月または15日になります。
・技能
外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人等が該当し、公的機関、民間企業に関わらず、特殊な分野に属する卓越した技量を有する必要のある業務に従事するものをいいます。在留期間は5年、3年、1年または3カ月になります。
・技能実習
技能実習生が該当します。日本の公的機関、民間企業の職員がその雇用契約に基づき、日本国内に所在する拠点、若しくは法務省の定める要件に適合する営利を目的としない団体において当該業務に必要な技能等の習得、あるいは習熟を目的として従事するもの。または当該団体の責任及び管理の下、業務に従事するものを言い、在留期間は1年、6カ月または法務大臣が個々に指定する1年以内の期間です。
・文化活動
日本文化の研究者等、収入を伴わない学術、芸術上の活動若しくは我が国特有の文化、技芸において、専門的な研究あるいは技能の習得を目的とするものが該当し、就労は認められていません。在留期間は3年、1年、6カ月または3カ月になります。
・短期滞在
観光客、会議参加者等、本邦に観光、スポーツ、親族の訪問等を目的として短期間滞在するもので、就労は認められていません。在留期間は90日若しくは30日または15日以内の期間になります。
・留学
大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校及び小学校等の組織において、教育を受ける活動をするものが該当し、就労は認められていません。在留期間は4年3カ月、4年、3年3カ月、3年、2年3カ月、2年、1年3カ月、1年、6カ月または3カ月になります。
・研修
日本国内の公的機関あるいは民間組織により受け入れられて行う技能等の習得をする活動を行うものが該当します。日本国内に所在する拠点において技能等の習得を目的とし業務に従事するものは含まれません。在留期間は1年、6カ月または3カ月になり、就労は認められていません。
・家族滞在
この一覧の「教授」から「文化活動」までの、あるいは「留学」の在留資格を持って在留する者の扶養する配偶者・子が該当し、就労が認められていません。在留期間は5年、4年3カ月、4年、3年3カ月、3年、2年3カ月、2年、1年3カ月、1年、6カ月または3カ月になります。
・特定活動
外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく・外国人看護師・介護福祉士候補者等、法務大臣が特に指定する活動を行うものが該当し、在留期間は5年、3年、1年、6カ月、3カ月、若しくは法務大臣が個々に指定する5年以内の期間になります。
・永住者
法務大臣から永住の許可を受けた者が該当します(入管特例法の「特別永住者」を除く。)在留期間は無期限になっています。
・日本人の配偶者等
日本人の配偶者・子・特別養子、あるいは日本人の子供として出生したものが該当します。在留期間は5年、3年、1年または6カ月になります。
・永住者の配偶者等
永住者・特別永住者の配偶者及び、日本で出生し、その後引き続き在留しているものが該当します。在留期間は5年、3年、1年または6カ月になります。
・定住者 第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人等、法務大臣が特別な理由を考慮して、期間を定めて居住を認めるものが該当します。在留期間は5年、3年、1年、6カ月または法務大臣が個々に定める5年以内の期間になります。
入国管理局職員に必要なスキル
入国管理局職員に必要なスキルとしては、語学能力があれば業務に役に立つことは多いです。入局時に語学能力がなかったとしても、職場の語学研修を利用して高めていくことも可能です。
また、一番必要なスキルはコミュニケーション能力になります。外国人の審査をする上で書類だけでなく聞き取りにより審査する部分が大きいので、相手について聞き出したいことを引き出せる能力が重要となります。
語学能力について説明
空港や在留審査の窓口では、様々な国の人と接する機会があるので、英語だけでなく中国語、韓国語、スペイン語、タガログ語など各国の語学に長けていると業務に役立ちます。特にアジア圏の外国人と接する機会は多いので、アジア圏の語学能力が高いと重宝するでしょう。
語学研修の内容について
語学研修については、勤務中に希望し、選考に通れば、3カ月程度の長期語学研修に参加することが出来たり、近くにある委託された民間の語学スクールに空いた時間で通ったりすることもできます。
入国管理局職員のやりがい
入国管理局職員は厳密に審査することが仕事なので、正直に言いますと、わかりやすくお礼を言われたり、喜ばれたりすることは少ないです。
ただ、審査の結果、不正に入国しようとしていた外国人を見つけることができたり、現地の調査によって虚偽の申告を暴き、不正に在留する外国人を退去させたりできることにより、日本の治安を守ることに貢献しているというやりがいは感じられます。
入国管理局職員になって大変な事
まず、入国管理局職員というより国家公務員として大変なことは、異動が多いことです。全国転勤はもちろん、希望や状況により海外に出向になることもあるので、家庭を持つと大変な面もあります。
入国管理局職員として大変なことは、やはり外国人とやり取りすることが多い仕事なので、言葉がうまく通じなかったり、文化が違うためこちらの常識が通用しなかったり、ちょっとした言動が誤解を招いたりすることに気を付けることが必要です。
また、主要な空港では深夜や早朝に飛行機が発着するので、出入国審査に携わる場合は夜勤等の泊まり込みのシフトにて働くことになります。
入国管理局職員一日の流れ(出入国審査業務で早朝シフトの場合)
6:40 出勤、ブース内機器等の準備
出入国に関する機器は取扱いに注意の必要なものも多いです、全て起動させ、使用に問題がないか確認していきます。
7:20 入国審査開始
朝の飛行機が到着し、審査開始です。指紋や顔写真を撮りながら出入国カードとパスポートをもとに質問し、審査を行います。
12:00 交代制で昼食休憩
昼からのシフトの職員と交代し、昼食休憩に入ります。空港内の職員食堂を利用することもあります。
13:00 入国審査
休憩が終わるとまた審査ブースに入り、審査を再開します。
14:00 交代制で出国審査
出国審査は、指紋や顔写真が必要ないので、よりスピーディーな審査になります。
16:00 出入国カード等書類の整理
提出された出入国カードを集めて集計したり、審査にて問題があるとされた外国人について報告書をまとめたりします。
17:00 帰宅
入国管理局職員の一日の流れ(在留審査業務の場合)
8:30 出勤、窓口の準備
日本に在住する外国人が在留更新等の申請に来るので、そのための準備をします。申請用紙をセッティングし、必要な機器を起動します。
9:00 窓口にて対応(書類チェックをして受付)
窓口を開けて対応を開始します。番号札を取ってもらい、順番に申請用紙を提出してもらいます。不備があれば後日郵送してもらうよう伝えます。
12:00 昼食休憩
13:00 窓口業務を交代し、申請内容の書類を審査
受付した書類は上司によって振り分けされるので、自分が担当する案件に取り掛かります。法令や定められた要領を見ながら、在留許可できるかを判断し、決裁を仰ぎます。
15:00 外出し、現地調査
書類審査をする上で、実際に現地に行って聞き取りや写真を撮ることが必要と判断した場合には、外出することもあります。
17:00 調査の報告書をまとめる
現地調査を行った場合は基本的に調査報告書を作成し、上司に報告します。
18:00 帰宅
まとめ
いかがでしたか?
今回は、国家公務員の一般職の法務省の内部部局に就職する場合です。総合職・一般職は、所属する省庁によって業務の特徴が違うのがお分かりいただけたかと思います。
今回の「入国管理局」の仕事は、外国人に対する審査を行うという性質上、他の公務員の業務と異なる珍しい部分も多くあります。最初は戸惑うこともありますが、自分で法律を勉強し、考えて判断することが多いのでやりがいを感じられる職業でもあります。
これから世界はさらにお互いの国を人々が行き来し、やり取りも濃密になっていくと予想されますので、入国管理局の業務もより必要性が高くなっていくのではないでしょうか。
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