民主政治とは?
国や地方に行政を担当する「国家公務員」や「地方公務員」は、日本の政治システムを実行する重要な役割です。今回は、「行政」の根幹となる、日本の政治システムを理解する上で大事な日本の「民主政治」について解説します。
「民主政治」とは、民主と冠されていることから分かるように、国民が主権となって政治を行うことです。また、国民の意思をもとにして政治を行うことを「民主主義」といいます。
「民主主義」の肝となるのが、国民の民意がいかに反映されるかにあります。そのため、国民は選挙によって国民の代表者=国会議員を選出します。そして、国会議員が提出した憲法や権利は、最終的には国民の投票によって決定します。
この民主政治の考え方を現す代表的な言葉に、アメリカ第16代大統領エイブラハム・リンカーンの「人民の、人民により、人民のための政治を地上から絶滅させない」があります。この言葉はアメリカの民主主義の基礎となり、自由の国と呼ばれるアメリカという国そのものの基盤となっています。
国民主権って何?
政治は、国会で国会議員が中心となり全て執り行われているように見えますが、最終的には国民の民意によって決定します。これを「国民主権」または「人民主権」といいます。
日本の憲法第41条に「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と記されているように、国会及び政府は「国民のための政治」の実現のため、選挙やその他さまざまな意思表明によって選ばれた議員が運営を行う、国民の意思によって設立された機関となります。
戦前の日本の「君主主権」について
主権とは、国家を支配する権限のことを指します。国民主権の場合は、その権利が国民にあると考えますが、国民主権の対立概念となる「君主主義」においては、その土地を収める君主=国王や天皇が国家を支配する権限を持つと考えます。
「君主主義」は戦前の日本国憲法において定められており、天皇を君主として政治を行い、国民は天皇(君主)に支配される関係となっていました。しかし、戦後制定された日本国憲法では、天皇の基本的地位を「主権の存ずる日本国民の総意に基づく、日本国日本国民統合の象徴(第1条)」として、内閣総理大臣や最高裁判長の任命、栄典授与、外国大使の接受などの「告示に関する行為」のみを行い、国政に対して影響することはないと規定しています。
今ではこの憲法に基づき、皇室に所属する天皇を始めとする皇族は、日本国民の象徴としての存在となっています。
日本の政治体制「三権分立」について
日本の政治は、国会(立法府)、内閣(行政府)、最高裁(司法府)の三権がお互いにチェックしあう「三権分立」という体制をとっています。三権分立は、「国の権力が1つの機関に集中することで、国民の自由を脅かすこと」を防ぐための政治システムです。
この体制を提唱したのは、フランスの啓蒙思想家であるシャルル・ド・モンテスキューです。彼は20年もの歳月を費やして現代の三権分立の基盤となる思想を『法の精神』で説いており、イギリスやアメリカ合衆国連邦の政治制度に強い影響を与えました。日本の政治制度はイギリスやアメリカの政治制度に強い影響を受けていることから、この三権分立も取り入れられています。
この三権分立によって、国会、内閣、裁判所はそれぞれ異なる三権を所持していますが、それぞれがまったくに独立しているわけではありません。お互いに関係・抑制し、均衡を保つことでバランスのとれた政治が行われます。また、国民も三権すべてにさまざまな形で関係しています。
モンテスキューと法の精神について
『法の精神』とは、1748年にフランスの哲学者であるシャルル・ド・モンテスキューによって出版された政治理論書です。モンテスキューは本書にて、権力分立の必要性を説いており、この考えは現在の三権分立の基盤となっています。
モンテスキューはほかにも、立憲主義や奴隷制度の廃止、市民的自由の保持など現代の政治の基礎となる考えを本書にて主張していました。モンテスキューは『法の精神』を執筆するために、およそ20年以上もの時間を要したといいます。モンテスキューが『法の精神』で説いた考えは、その後の政治的自由を生みだし、法社会学の先駆者として評価されています。
日本の三権分立の行政システム
三権分立によってそれぞれ異なる権利を持つ国会、内閣、裁判所。それぞれにどのような行政システムを持っているのか、簡単にまとめてみました。
国会(立法権)について
国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法(法律を作ることができる)機関です。永田町にある国会議事堂にて、国会議員が国民のための法律を定めています。
<国会が内閣に対して行使できる権限>
国会は内閣に対して「内閣総理大臣の不信任」を行う権利を持っています。この権利は、行政の方針に納得がいかない場合に、内閣総理大臣に対して不信任を申請する権利です。また、国会は「内閣総理大臣を指名」する権利を持っています。
<国会が裁判所に対して行使できる権限>
国会は裁判所に対して「弾劾裁判所の設置」を行う権利を持っています。この権利によって、裁判官が罪や不正を行った際に、その罪を暴き処罰を下すための裁判が実行されます。
内閣(行政権)について
内閣が持つ行政権は、法律を行使することで日本国を運営していきます。内閣総理大臣をトップとして、各省庁の大臣、公務員が国の運営に必要な法律を行使します。
<内閣が国会に対して行使できる権限>
内閣は国会に対して「衆議院議員の解散」の権利を持っています。この権利は、内閣総理大臣の不信任に対して、選挙を行い国民に審議を問う権利です。
<内閣が裁判所に対して行使できる権限>
内閣は裁判所に対して「裁判官の指名と任命」の権利を持っています。この権利によって、内閣は最高裁判所長官を指名します。その後に天皇が任命することで、最高裁判長官が決定します。
裁判所(司法権)について
民事裁判や刑事裁判など、法律にもとづいた司法を行うことができる。すべての司法権は最高裁判所や法律に定められた下級裁判所に属しています。
<裁判所が国会に対して行使できる権限>
裁判所が国会に対して行使できる権限として、国会が作成した法律がきちんと守られているか審査する「違憲審査」の権限があります。
<裁判所が内閣に対して行使できる権限>
裁判所が国会に対して、国会が作成した法律がきちんと守られているかどうか審査する「違憲審査」の権限がありますが、これは内閣に対しても同じ権限があります。
日本の政治制度はイギリスの政治制度に習ったもの
日本の政治制度は、一部にアメリカ型の政治制度が含まれていますが、基本的にはイギリスの「議院内閣制」をとっています。ここで日本とイギリスの議院内閣制を簡単に比較してみましょう。
<首相の指名について>
● 日本
国会議院のなかから指名される
● イギリス
下院第一党の党首が務める
<国務大臣について>
● 日本
過半数を国会議員のなかから選ぶ
● イギリス
議席のあるもののみ大臣に任命可能。議席のないものは大臣になることができない
<抑制と均衡について>
● 日本
三権分立によって国会、内閣、裁判所が抑制と均衡している
● イギリス
イギリスの政治制度では、憲法として文章化された法律がないため、違憲審査の定めがありませんが、それ以外は日本の三権分立と同じです。なお、文章化されていない法律を不文憲法といいます。
イギリスの政治制度については【イギリス・アメリカ・中国の政治制度とは?】で詳しく紹介していきますので、是非ともチェックしてみてくださいね!
真の民主政治とは
真の民主政治のためには、基本的な人権の保障と権力を制限する「立憲主義」、三権分立での「権力の分散」、国民の民意を政治に反映させるための「参政権」が必要不可欠です。
この3つの権利が持つ意味は以下の通りです。
立憲主義について
立憲主義とは、政治は定められた憲法のなかで行われるべきという考えのことを言います。簡単に言うと「憲法のなかで政治が行われているのならOK」「憲法から外れた政治を行うのはNG」ということです。立憲主義において、政治は憲法によって制限されることで、正当な国家が作られると考えています。
日本の現在の憲法についての解説は下記をご覧ください。
公務員試験最頻出科目「憲法」に関する記事です。
権力の分散について
権力の分散とは、三権分立のように権力を分散させることで、抑制と均衡を保つことを言います。1つの場所に権力を集中させないことで、偏った権力の行使を防ぎます。
・立法、行政、司法の「三権分立」による権力の分散について
「日本の三権分立の行政システム」の項目でご紹介したように、わが国は「三権分立」により権力を分散しています。国会、内閣、裁判所に権力を分散させることにより、「相互間の抑制と均衡」が行われ、国民の自由が守られています。
参政権について
参政権とは、国民が政治に参加する権利です。「民主化」のためには、国民の声を反映させることが1番大切です。選挙によって国民が声を挙げることで、国民にとってより住みやすい国づくりが行われます。
民主化が求められるのは何も政治の話だけではありません。市民生活のあらゆる側面、例えば一票の格差の是正や社会保障の改善を行うことも民主化に必要なことです。
政治・経済がグローバル化している今だからこそ、社会的にも「民主化」へ取り組むことは今後の大きなテーマであり目標です。
それを実現させるためには、国民として政治への興味関心を抱くことが必須です。とくに、選挙は国民の民意を反映させる大きな機会なので、意欲的に取り組むことが重要となります。
まとめ
今回は、日本の政治の基本である民主政治についてまとめました。
これらは公務員を目指す人だけでなく、日本国民である以上、正しく理解しておきたい政治の基本です。少なくとも他人に説明できる程度には、理解を深めることができると良いでしょう。
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