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【公取委で働く】公正取引委員会 事務総局の新人研修

内閣府の外局である「公正取引委員会」、公正且つ自由な競争を促進し、その役目王、独禁法等の違反事件の調査や審決を行う準司法的な機能、および規則制定権の準立法的な機能を有する特殊な行政機関です。今回は、その公取委の事務を担う事務総局の新人研修について解説します。

2017年12月03日更新

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目次
新人研修について
OJTについて
オススメの勉強方法について
オススメの参考書等
まとめ
【公取委で働く】公正取引委員会 事務総局の新人研修

委員長および四人の委員で構成される公正取引委員会。この委員会を支える公正取引委員会事務総局では、平成28年度末の時点で840名の公務員が勤務しています。

これらの職員も、当然のことながら始めは新人であり、公正取引委員会が所管する独占禁止法のことを良く知らない状態から勤務を開始します。

そこで、今回は、公正取引委員会事務総局での勤務を考えている方向けに、新人に対してどんなトレーニングがあるかをご紹介した上で、オススメの勉強方法や参考書等についてもご紹介します。

新人研修について

公正取引委員会は、独占禁止法の規制を行う当局ですが、公正取引委員会事務総局に就職するために独占禁止法の知識は必要でしょうか?

そう、答えはNOです。公正取引委員会事務総局に就職するためには、公務員試験を合格する必要がありますが、その試験科目に独占禁止法はありません。また、法学部出身者であれば大学で講義を受講している可能性もありますが、独占禁止法は憲法や民法や刑法と異なり、そこまでメジャーな法律でもありません。

そのため、実は、就職をした新人職員の中には、独占禁止法の勉強をしたことがない者も相当程度いるのです。

また、当然のことながら、新人は社会人経験がないため、色々なことをまだ知らない状態です。そこで、公正取引委員会では、最初の1か月ほどの間、新人研修として、様々な内容の研修を受けることができます。

この新人研修は、民間の研修にも負けず劣らずの充実っぷりです。以下で少し詳しく説明します。

独占禁止法についての研修

まず、独占禁止法について、外部から独占禁止法の大学教授を招き、一通りの内容をカバーする研修講義があります。外部から独占禁止法を教える教授を招くなんて、この時点で、かなり豪華な感じがしますね。独占禁止法の講義の中では指名されて回答する機会もあり、集中して独占禁止法のことを学ぶことができます。

また、独占禁止法と一口に言っても、いくつかの分野が存在しています。公正取引委員会事務総局の中でも、この分野に合わせて部署がそれぞれ設けられています。そこで、各部署に所属する年次が上の職員(いわゆる先輩ですね)が、自分のいる部署の取り扱い業務を教えてくれる研修もあります。例えば企業結合課の担当者が企業結合について説明してくれたり、課徴金減免担当官からリニエンシーについて説明を受けたりすることができるのです。

これらの研修では、学問的な勉強とはまた異なり、実際に実務をこなしている者から実態に即した話を聞くことができますし、質問をすることもできますので、非常に刺激的な内容と言えるでしょう。

経済学研修

独占禁止法は、市場の競争を確保する目的の法律です。しかし、その前提として、なぜ競争を確保することが必要なのでしょうか。この点を理解するには、経済学の知識が必要不可欠となってきます。

そこで、新人研修では、エコノミスト枠で採用されている職員による、経済学の講義もあります。経済学部出身の人はともかく、多くの人はほとんど経済学を勉強したことがありません。研修後には確認のための試験もありますので、みんな必死に初めての経済学の勉強に励みます。

基本法律科目

公正取引委員会事務総局は、独占禁止法を担当する行政組織ですが、前提として公務員でもあり、必要最低限の法律の知識も必要になる場面があります。その点を見越して、任期付公務員として採用されている弁護士出身の職員から、法律学基礎、民法、刑法、行政法についての講義もあります。エコノミストや弁護士からの講義も無料で受けれるなんて、やはり豪華ですね。

その他

その他、公務員ならではの人事関係の知識や有休休暇(年休と呼んでいます)についてのレクチャーなど、公正取引委員会事務総局の一員として必要な知識について一通り教えてもらえます。

そこで配られるレジュメを後に読み返せば、必要なことは載っていますので、その後の生活にも非常に有益です。

OJTについて

OJTは、On the Job Trainingの略称ですが、要は、実際に仕事をしながら学んでいく、というだけの話です。その意味では、OJTしかない職場に比べ、1で述べたとおり、しっかりとした研修カリキュラムを備えた公正取引委員会は、新人に対してより良い環境と言えるでしょう。

とはいえ、OJTも当然必要になってきます。多くの場合、新人には“教育担当”の先輩がついてくれます。こんなことを言ってはなんですが、最初からまともに仕事をするなんて無理です。仕事の内容は非常に多岐にわたるので、全て独学で詰め込んでいくのは非効率的であり、先輩方にとっても業務を阻害されて良い迷惑です。

そこで、先輩の指導のもと、必要な作業は何か、どうしたら効率的か、を学んでいきます。OJTは、時として「勝手に見て学べ」という、いわば新人教育の放棄に近い場合もありますが、公正取引委員会事務総局では先輩がしっかり面倒を見てくれますので、中身のあるOJTと言って良いでしょう。

オススメの勉強方法について

では、次は、上記のような研修だけには飽き足らず、自分で勉強したいという方向けに、オススメの勉強方法についてもご紹介しましょう。研修で取り残されるのは嫌だ、事前に準備しておきたい!という人にも重要です。

条文を素読しておく

なんといっても、日本における法律の出発点は条文です。幸いなことに、独占禁止法は、あまり条文数が多い法律ではありません。主として使う条文も決まっております。例えば、2条各項の定義規定や、3条・19条がメインどころです。

そこで、これらの条文や、手続き的な点を定めた条文について、一度はそのまま読むという勉強をしておくことをオススメします。

先例の勉強の重要さを知ること

条文が大事、とは言いながらも、独占禁止法は、一度条文を読んで見れば分かりますが、非常に抽象的な文言が用いられています。そうなると、ただ条文を読むだけでは、どんな規制なのかはっきりしない場合もあります。

そうなると、何が重要となるでしょうか?そう、先例(審決・判決)でその抽象的な文言がどのように解釈されたのかが重要となってくるのです。

したがって、審決や判決を勉強することが非常に重要になります。幸いなことに、他の法律に比べて、独占禁止法関連の審決・判決はそこまで多くはありませんので、勉強を続ければ主要なところは押さえることができるでしょう。

ガイドラインを理解する

独占禁止法の条文の抽象性を補完する方法は、先例だけではありません。公正取引委員会は、各分野に分けて、それぞれガイドラインというものを作成し、抽象的な法律の規定に具体性を持たせています。

ガイドラインは、以下の公正取引委員会のウェブページで列挙されています。
http://www.jftc.go.jp/dk/guideline/

ガイドラインは、公正取引委員会が、あくまで法律の条文の解釈の一つとして、独自に作成したものです。ですので、従わなければならないという法的拘束力のある「法律」とは異なります。国会や裁判所がガイドライン上の解釈に対してNOといえば、公正取引委員会がいくら「ガイドラインにはこう書いている!ガイドラインのとおりであるべきだ!」と主張しても、通りません。

とはいえ、外部の人から見れば、抽象的な法律の解釈をする上で、規制当局である公正取引委員会の見解は無視できないものです。ガイドラインに規定されているのが、極めて不合理な内容であればともかく、一定程度の合理性がある解釈であった場合、それを否定することは困難です。そもそも、公正取引委員会自らが作ったものですので、ほとんど「公正取引委員会はこのガイドラインに従って規制していく」と宣言されているようなものですから、ガイドラインに反したら排除措置命令や課徴金納付命令を課せられるリスクが否定できません。

以上のとおり、ガイドラインは実務上非常に重要なものですので、これについて事前に目を通しておくのは良いことかと思います。加えて、ガイドラインは学問的にも体系立って作成されていることが多いですし、参考書にもたびたび参照されています。参考書や先例の勉強とともに並行して行うことで、記憶の定着を図れるというメリットもあるのです。

オススメの参考書等

参考書

a. 簡単な参考書
まずは、スタンダードに、初学者はどの教科書を読んだら良いかからご紹介します。確かに、現在は多くの独占禁止法の教科書がありますので迷うと思いますが、

「ベーシック経済法――独占禁止法入門 第4版」(川濱昇、瀬領真悟、泉水文雄、和久井理子。有斐閣アルマ)

をオススメします。

「入門」とありますとおり、この本は独占禁止法を学んだことのない人を対象に書かれたものですので、知識ゼロの状態から読むのに適しています。

特に、経済学的な見地からの導入もありますので、その点もカバーしつつ進んでいくことができます。

少し、独占禁止法の体系と異なる順序で書かれているのですが、それも諸学者への分かりやすさを優先した結果ですので、とりあえず「独占禁止法ってどんなものなのだろうか?」という点を知るべく、挫折のしにくい平易・コンパクトな本書から入っていくのは良い手ではないかと思います。

b. 伝統的・基本的な参考書
次に、分量もぐっと増え、本格的な独占禁止法の専門書について、一番ベーシックなものではないかなと筆者が感じる書籍をご紹介します。それは、

「独占禁止法 第5版」(金井貴嗣、川濱昇。弘文堂)

です。

こちらは、現在の日本経済法学会の理事長でもある中央大学法科大学院の金井貴嗣教授と、同常務理事である京都大学法科大学院の川濱昇教授が書かれてた参考書です。

こちらは、非常に体系立って書かれていますし、異端説ではなく王道の独占禁止法の教科書、といった感じです。多くの判例・審決や、ガイドラインへの言及もあり、辞書的に一冊持っておくのも良いと思います。

c. 有力であり、人気のある書籍
最後に、近年独占禁止法の世界で独自の立場でありながら有力な地位を築いてきた東京大学法科大学院の白石忠志教授の教科書をご紹介します。

「独占禁止法 第3版」(白石忠志。有斐閣)

こちらは、いわゆる王道の説ではなく、ところどころで「白石説」と称される独自の説が多く含まれた文献です。ただし、その指摘は非常にするどいものであり、無視できるような異端説ではないため、現在非常に有力になってきています。

その白石教授によりがっつりと書かれたのがこちらの「独占禁止法 第3版」です。白石教授がもう少しライトに書いた「独禁法講義 第7版」もありますので、初学者はこちらから入るのもありかと思います。

ただ、公正取引委員会内で定説の位置にはまだなっていない白石教授の教科書から勉強しだしてしまうと、白石説と公取内部の解釈の齟齬に戸惑うこともあるかもしれません。

先例集

これは、やはりスタンダードに「経済法判例・審決百選 第2版」(有斐閣)から入るのが良いと思います。

伝統的・スタンダードな判例集ですので、判例・審決の選定には信頼をおけます。解説の欄は、筆者がまちまちですので、良し悪しがあるところですが、単純に判例・審決を勉強するうえでは気にしなくて良いです。

ガイドライン

ガイドラインは、先ほどのリンクでお見せしたとおり、実はたくさんの種類があります。

ここでスタンダードなものを挙げておきます。

a. 「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」
リンク:http://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/ryutsutorihiki.html

このガイドラインには、多くの独占禁止法違反となりうる行為が記載されており、学問的な勉強をする上でも非常に役に立つツールと言えるでしょう。まず何を読むか、と言われたらこちらを読むことをオススメします。

b. 「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」
リンク:http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/shishin01.html

こちらは、違反行為ではなく、合併や株式取得をする際に必要となってくる企業結合審査についてのガイドラインです。

内容的にも非常に面白く、勉強になりますので、こちらもご参照してみると良いと思います。

c.「独占禁止法審査手続に関する指針」
リンク:http://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/shinsashishin.html

こちらは、審査官としてバリバリ企業に立入検査をして事件を挙げていきたい!と考えている人にオススメの、審査手続きに関するガイドラインです。

もちろん、やる気は大切ですが、違法なことをしてしまっては大変ですので、こちらで勉強しておくと一層良い審査官になれると思います。

まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。研修の機会の充実っぷりは、一般企業に負けず劣らずだと思います。

また、いろいろな勉強ツールもありますので、やる気のある皆さんを退屈させることはありません。

真剣に公正取引委員会への入局を考えている人は、この記事を参考に頑張ってみていただければと思います。

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