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【投票しないと罰金?】オーストラリアの政治制度について(2024年6月22日追記更新)

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目次

オーストラリアってどんな国?

オーストラリアは日本のはるか南に位置する国で、五大陸の一つであるオーストラリア大陸の全てを領土としています。国土面積は日本の約20倍で世界第6位の大きさですが、人口は2400万人程度であり、人口密度が非常に低い国としても有名です。

日本との関係は良好で、姉妹都市交流なども盛んに行われています。1980年以降、日本とオーストラリアはワーキング・ホリデー協定を結んでおり、年間約1万人の日本人がワーキング・ホリデービザを利用してオーストラリアに渡航しています。また、政治・安全保障面においても、アジア太平洋地域における重要なパートナーとして特別な関係を構築しています。

オーストラリアの都市部では住宅価格が高騰しており、また物価も高めですが、その分給与も高水準です。平均年収は日本よりも高いという結果が出ており、オーストラリアの最低時給は18.29ドル(2017年現在)で、日本円に換算するとレートにもよりますが約1500円程度となります。

2016年のGDP(国内総生産)は約1兆2500億米ドルで世界13位です。日本の4兆9000億ドル(世界3位)と比べると規模が小さいですが、一人あたりのGDPは日本が世界22位なのに対してオーストラリアは11位であり、このことからもオーストラリア国民の生産性の高さがうかがえます。

宗教に関しては日本と同様に「信仰の自由」が認められていますが、もともとイギリスから移住してきた人たちの多くはキリスト教であったため、キリスト教的な習慣は今でもオーストラリアの文化として残っています。2016年国勢調査(Census)の結果によると、現在は国民の5割がキリスト教徒であり、その次にポピュラーな宗教はイスラム教(2.6%)、仏教(2.4%)となります。最近では無宗教の人が急増しており、約3割の人が無宗教者であると回答しています。

オーストラリアの政治的歴史

オーストラリアは1901年1月1日にオーストラリア連邦としてイギリスからの独立を果たしました。

それ以前はオーストラリア大陸に成立した6つのイギリスの植民地(ニューサウスウェールズ、クイーンズランド、ビクトリア、南オーストラリア、西オーストラリア、タスマニア)がそれぞれ独自に統治を行っていました。しかし、植民地間で貿易をする際の関税などが問題となり、19世紀後半には連邦政府の樹立が望まれるようになりました。

本国イギリスとしても、オーストラリアは直接統治するにはあまりにも遠いため、イギリス政府はオーストラリア政府に法律を制定する権利を委譲しました。

現在ではオーストラリアとイギリスは国家として対等の立場でありながら、イギリス女王であるエリザベス2世がオーストラリアの正式な女王でもあるなど、政治制度の中にイギリスとのつながりが今も残されています。

オーストラリアの憲法

オーストラリアのルーツはイギリスですが、憲法(The Constitution)に関してはイギリスには似ていません。

イギリスが憲法の存在しない「不文憲法(unwritten constitution)」の国であるのに対し、オーストラリアは日本と同じく「成文憲法(written constitution)」の国です。オーストラリアの憲法には、連邦政府の構成や権力の範囲、そして連邦政府と州政府の間における権利と義務などが定められています。


また、オーストラリアの憲法を改正するためには選挙権のある国民全員が参加する国民投票(national referendum)で承認される必要があるため、やはり日本と同じ「硬性憲法(rigid constitution)」です。

オーストラリアの政治体制

オーストラリアの政治体制は、日本と同じく「立憲君主制(Constitutional monarchy)」と呼ばれるものです。つまり「世襲の元首が存在し、かつ元首の権力が憲法によって制限される政治形態」をいいます。

元首(The Head of State)とは外国に対して国を代表する人物のことで、オーストラリアの元首はイギリス女王のエリザベス2世が兼任しています。ですが実際にはオーストラリア連邦総督(Governor General)が女王の代理となり、政府や閣僚の助言に基づいて王権を代行します。また、各州にも総督がいて、女王の代理を果たしています。

オーストラリアの政治も、日本の政治システムと同じ「三権分立(The separation of Powers)」を基本としています。すなわち、「立法(Legislature)」「行政(Executive)」「司法(Judiciary)」をそれぞれ独立した機関が担い、お互いに監視しあう仕組みを採っています。

オーストラリアの「立法」システム

三権の一つである「立法権」を持つ国会は、下院の「代議院(House of Representative)」と上院の「元老院(Senate)」からなる連邦型二院制であり、両院とも国民による選挙で選ばれた議員によって構成されます。上院は各州から人口比率に関係なく同数の人数が選出されるため、いわば州の代表者の集まりといえるでしょう。また、日本の「衆議院の優越」と同様に、下院の優越性が認められています。

オーストラリアの「行政」システムと「司法」システム

また、「行政権」は内閣に属し、「司法権」は連邦最高裁判所を最高機関とする点も、日本の政治の仕組みと同様です。内閣に関しては、イギリスで生まれた仕組みである「責任内閣制」をそのまま採用しています。これは日本でも採用されている制度ですが、議会が選出した首相が内閣を組織し、議会の信用に基づいて行政を担当します。そして、閣議決定には全閣僚が連帯責任をもちます。

日本とは異なる投票制度「義務投票制」

ちなみに、オーストラリアでは義務投票制(Compulsory voting)を採用しており、18歳以上のすべての国民は選挙の際に投票をする義務があります。選挙に行かず、摘発された場合には罰金20オーストラリア・ドル(約1700円)が科せられます。さらに罰金の支払いに応じないために裁判を起こされた場合、有罪となると50オーストラリア・ドル以下の罰金に加え、裁判費用を負担しなければなりません。こうした罰金制度があることもあり、選挙の投票率は毎回90パーセント以上です。

オーストラリアの「連邦政府」と「州政府」

オーストラリアに存在した6つの植民地は、連邦国家の成立によって今では「州(State)」となり、現在もそのまま運用されています。

かつてはそれぞれの植民地が独自の統治を行っていたことからもわかるように、各州は独立当初から強い自治権を持っています。日本でも政策として地方分権を推し進めていますが、今もなお中央政府が地方に対して強い影響力を持つ「中央集権型」です。オーストラリアは日本と比べて、地方分権が進んでいる国家といえるでしょう。

連邦政府は主に国全体にかかわる公務を担っており、一方の州政府は住民に直接関わりのある公共サービスを主に担っています。

連邦政府(Federal Government)が担当する「機能」

・税制(Taxation)
・国防(Defence)
・外交(Foreign Affairs)
・郵便(Postal Service)
・通信サービス(Telecommunication Service)

州政府(State Government)が担当する「機能」

・警察(Police)
・医療(Hospitals)
・教育(Education)
・交通(Public Transport)

まとめ

いかがでしたか?

日本と経済的に深い関わりを持ち、人的交流盛んなオーストラリアの政治制度は、憲法が「成文憲法・硬性憲法」である点や、「立憲君主制」という政治体制、「三権分立」を基本とした政治、そして「二院制議会」など、日本の政治制度と共通している部分が多いと感じるのではないでしょうか。

また、日本よりも地方分権が進んでいることや、かつての宗主国であるイギリスとの政治的な関係性についても、オーストラリアの歴史的背景を知ることでよく理解できますね。


 

 

 

追記:主な投票義務制採用国 ※出典:総務省

総務省に 国立国会図書館調査及び立法考査局政治議会調査室・課作成資料を基に作成した「主な投票義務制採用国」がありましたので、こちらも紹介します。

アルゼンチン

憲法及び国政選挙法典
・18~70歳までの有権者に対して罰金及び選挙後3年間の公職就任・公務員への任用禁止
・義務免除の規定あり


イタリア

憲法及び選挙法 ・罰則なし


ウルグアイ

憲法 ・罰金等

エクアドル
憲法及び選挙法(18歳以上の者の義務投票。16歳以上18歳未満の者、65歳以上の
者、国外在住者、軍人、警察官及び障害者等は投票は任意)
・罰金
・健康の理由等で投票できない者等には罰金を科されない

エルサルバドル
憲法及び選挙法 ・罰則なし

オーストラリア
連邦選挙法 ・罰金
・義務免除の規定あり

ギリシャ
憲法
・1ヶ月以上1年以下の禁錮等
・70歳を超える者、国外在住者等には適用されない

グアテマラ
憲法及び選挙法
・罰則なし

コスタリカ

・罰則なし

シンガポール
国会選挙法
・氏名を選挙人名簿から抹消
・正当かつ十分な理由があると認められた場合及び罰金を支払った場合は再登録

ドミニカ共和国
憲法
・罰則なし

ナウル
選挙法
・罰金

パナマ
憲法及び選挙法典
・罰則なし


パラグアイ
憲法及び選挙法
・罰則不明
・75歳を超える者は義務免除

ブラジル
憲法及び選挙法典(18歳以上70歳以下の国民に義務)
・罰金
・罰金を支払わなかった者は、公職に就くこと等ができない

ペルー
憲法及び選挙法(70歳以下の国民の義務)
・罰金

ベルギー
憲法及び選挙法典
・罰金
・15年間に4回以上棄権した場合は、10年間選挙人名簿から抹消され、かつ、官公庁からの任命、昇任、表彰を受けることができない
・正当な理由がある場合は制裁免除

ボリビア
憲法及び選挙法
・罰金
・罰金を支払わなかった者は投票日から90日間、公務員として働くこと、銀行取引及びパスポートの発行を受けることができない

ポルトガル
憲法
・罰則不明

ホンジュラス
憲法及び選挙法
・罰則なし

メキシコ
憲法及び連邦選挙法
・罰則なし

リヒテンシュタイン
国民権利法
・罰則なし

ルクセンブルク
選挙法(投票日に選挙人登録された自治体に居住していない者及び75歳以上の者を除く)・正当な理由無く棄権した者には罰金

本記事は、2017年12月2日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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