現在イスラエルとパレスチナの間で起こっている武力衝突の裏側には、信じられないほどの長い歴史が関わっています。そしてその歴史が現代まで続くパレスチナ問題の元となっているわけです。そこで今回は、パレスチナの歴史と問題の複雑さについて考えたいと思います。
あの土地は誰のもの?
パレスチナとは国ではなく地域の名称
パレスチナとは、地中海に面したトルコとエジプトに挟まれたあたりの地域の名称で、国名ではありません。そして現在パレスチナ人と呼ばれている人達は、東ローマ帝国治下のヘブライ人やサマリア人(ユダヤ人)などの子孫が、約1000年前のアラブ人征服によって次第にイスラム教に改宗し、言語的にアラブ化した人達の子孫が起源であると言われています。
ユダヤ人の国イスラエルは国ですが、パレスチナ人が住んでいるヨルダン川西岸地区とガザ地区はパレスチナ自治区と呼ばれ、独立国家ではありません。そのためパレスチナとしての領土が定まらず、パレスチナ人の領地のほとんどはイスラエルの占領に甘んじています。
問題のきっかけはイスラエルの建国?
元々この地域は、聖書の中で“乳と蜜の流れる土地”と言われるほど肥沃な土地であったため、何千年も前から色々な国に支配され続けてきました。現在に至るパレスチナ問題へのきっかけは、第一次対戦後パレスチナを統治していたイギリスが、ユダヤ人の国家建設支持を表明したことにより、ヨーロッパ各地で差別や迫害にあったユダヤ人が次々とこの地域に移住して来たことで起こります。
ユダヤ人移住者とパレスチナ人(アラブ人)は宗教も文化も全く違うため、常に対立が起こり続けました。そしてとうとう両者の関係が手に負えなくなったイギリスは、第2時世界大戦終戦後にパレスチナの領地を手放し、国連がそのあとを継ぐことになります。国連はパレスチナ地方をアラブ国家、ユダヤ国家、国際管理地区(エルサレム)の3つのエリアに分ける案(パレスチナ分割決議案)を1947年に採択します。この国連決議の中で、これまでヨーロッパで大変な差別や迫害を受けてきたユダヤ人達は、国際社会から同情的な目で見られ、当時全人口の3分の1だったにもかかわらず、パレスチナの57%の土地がユダヤ人に与えられることになりました。
イスラエル建国後のパレスチナ人の悲劇
土地が分割され住むところが決まれば、ユダヤ人とパレスチナ人の対立に決着がつくと思われていましたが、1948年にユダヤ人の国イスラエルが建国したことによって、今度はイスラエルの国土となった土地に住んでいたパレスチナ人が追い出されることになります。そして勝手に国を作られるのはおかしいと反発するパレスチナ側と、国連の分割決議で認められた土地を死守したいイスラエル側、両者の間で対立が発生し、イスラエル建国翌日、1948年5月15日にアラブ諸国がイスラエルに攻め込み第一次中東戦争が始まります。
中東戦争は合計4回起こりましたが、全てイスラエル側が勝利します。そして紛争が起こるたび、ユダヤ人がどんどん土地を領有していき、パレスチナ人の住んでいる地域(ヨルダン川西岸とガザ地区)は国になれないまま、イスラエルの占領下に置かれていったのです。同じ占領下でもヨルダン川西岸の住人は、イスラエル側から物資やお金が入り、許可があればイスラエル側に働きに出ることもできます。しかしガザ地区は、高い塀に囲まれて封鎖されているので、人や物資の流れが厳しく、イスラエルからの空爆で地域一帯が瓦礫の山と化し、道路や住宅、電気や水道などのインフラも破壊され、住民は最低限の生活をするのさえ困難な状態に陥っています。
長い歴史の中で迫害を受けてきたユダヤ人の悲劇
ここまでの話の流れでは、イスラエル建国後、以前からその地域に住んでいたパレスチナ人達を追い出したユダヤ人に問題があるように思えますし、個人的には何も元々住んでいた人達を無理やり追い出さなくても一緒に住めば何も問題はないのでは?とも思います。しかしこの問題がそう簡単に解決しない理由は、ユダヤ人の元々の故郷もパレスチナである事に起因します。
今からおよそ3000年前、ペルシャ湾周辺に住んでいたユダヤ人の祖先は、神のお告げによってカナン(今のイスラエル周辺)に向かい、ユダヤ教を信じるユダヤ人の国、イスラエル王国を建国しました。しかしこの国はローマ帝国に滅ぼされ、イスラエル王国に住んでいたユダヤ人達は世界中に散り散りなります。その後2000年間、ユダヤ人達は国を持たないまま、ヨーロッパや中東、アフリカで暮らすことになり、迫害を受け続けることになります。19世紀にユダヤ人の間でもう一度自分たちの国を作ろうという運動(シオニズム運動)が起こり、かつて自分たちが神様から授かった約束の地に、やっとイスラエルが建国できた訳ですから、その場所を絶対死守したい気持ちもわかります。しかしイスラエルは、自分たちが割り当てられた土地以外にも、入植地として国際法上認められないところまでパレスチナの土地を占領していっています。こうしたことからそれまで加害者と見られていたイスラエルのユダヤ人は、ある意味加害者となっていったのです。
まとめ
長い歴史の中で考えると、イスラエル人パレスチナ人両方とも、被害者であると同時に加害者でもあると思います。そこには憎しみと悲しみの連鎖があり、今も両者の間で争いが続いています。しかし国同士がどんなに争っていても、住んでいる住民は皆平和で安全な生活を望んでいるはず。この問題を解決するには、争いを止めることを考えるより、どうしたらみんなが平和に暮らしていけるかを考えた方が良いのではと思います。
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