【国家一般】入国管理局で働く公務員の「あるある」苦労話

入国管理局は、日本へ出入国や在留を希望する外国人を審査するという、公務員の中でも少し特殊な職場といえます。申請者である外国人にきっぱりNOと言わなければならない場面も多いので、怒りを買うことも少なからずあります。そんな業務のあるある話をご紹介します。


言葉が全く通じない

まず、入国管理局に勤め始めて最初に立ちはだかるのが、語学の壁です。入局する前に英語など語学を勉強している人もいるとは思いますが、世界196ヶ国全ての国の言語を話せる人などいませんし、共通語と言われている英語を話せない人も多くやってきます。

本格的に聞き取りを行うときや、申請者と面接する場合にはプロの通訳の方を呼んだり、電話通訳をお願いしたりして対応しますが、単純な受付や、空港内でのブース審査は自分ひとりで対応することが基本となります。それが聞いたことのない国の聞いたことのない言葉を話す申請者であっても同じです。私が対応したことのある珍しい外国語としては、パラオ語、トルコ語、シンハラ語などです。また、タイ語やネパール語、タガログ語などは接する機会は多かったですが馴染みがなく難しいので結局全然覚えられませんでした。

ではどうするかというと、基本は簡単な英語のやりとり、または指さしやボディランゲージで意思疎通を図っていくことになります。中国・韓国など出入国者数の多い国の言語については、最初のうちにある程度の決まり文句を覚えこみます。「どこに滞在しますか」「ここを記入してください」「指紋をとります」などの言葉になります。

また、日本語や英語の表記が分からない外国人の場合は、日本の空港に到着したあと、どこへ並んでよいか分からず、外国人審査用ブースに並ばなければならないのに日本人ブースに並んでいたり、並び方が分からず横入りしようとしていたりすることもあるので、ジェスチャーで指示するのも業務内の苦労あるあるではないかと思います。

ブースから出られない

国際空港で、出入国審査を行う場合は、パソコンなど審査に必要なセットが整っている半径1mほどのブースに座って業務を行います。パスポートに証印を押す仕事なので、外国に行ったことのある方は見たことがあるかと思います。

基本的にはブースに入るのは交代制で、食事の時間などは他の職員と交代して休憩をとるシステムなのですが、出入国者数が多く人手が足りない場合などは中々交代がうまく回らない場合があります。そのような場合は飲まず食わずの状態でトイレ休憩もなしにひたすら何時間もブース内で業務を続ける場合があります。

窓口、電話で凄まれる

外国人が日本に在留するためには、在留資格に当てはまっている必要があります。入国管理局ではその在留資格の要件に申請人が当てはまっているかを審査します。その在留資格のひとつである「日本人の配偶者等」という在留資格は、主に日本人と結婚をした外国人が取得できる資格となります。

日本人の配偶者等という在留資格は、その性質上審査の仕方が少し複雑な面があります。書類だけでいえば、戸籍謄本や結婚証明書、住民票、納税証明書を元に審査することになるのですが、就労に関する資格と違い、実際に夫婦として生活を営んでいるかは、書類だけでは中々分からない部分が多いのです。

そのため、このような審査の場合、結婚している日本人側に収入に関する書類を求めたり、電話や面接にて結婚生活や結婚に至った経緯などを調査として根ほり葉ほり聞いたりしなくてはならない場合があります。やはりとてもプライベートな内容なので、「人の結婚に口を出すな!」と怒鳴られることも多々あります。

入国不許可となった外国人が暴れることも

先ほどもお話ししましたが、外国人が日本に入国するためには、観光など、遊びに訪れる場合も含めて在留資格に該当する必要があります。観光や出張で短期間日本に滞在する場合は、短期滞在という在留資格を入国管理局から付与してもらう必要があります。

しかし、様々な理由で日本への入国を拒否する場合もあります。例えば、犯罪歴がある場合や、退去強制といって違反行為を行って日本から退去させられた過去がある場合には、入国することはできません。また、そのような過去がなくても、今回入国して行おうとする活動が、在留資格の活動に当てはまっていない場合や、そもそも申告した活動内容が虚偽の場合は入国できません。


入国できない場合は、基本的にそのまま空港からブースを通過できず、折り返し便の飛行機にて帰国することになりますが、納得できずに暴れだす場合や、一晩かけてどうしても入国したい気持ちを語りだす申請人もいます。暴れようが粘ろうが、結局は帰国していくものなのですが、中には暴れすぎて空港警察のお世話になり、公務執行妨害の現行犯逮捕で警察に連れて行かれた申請人もいました。

新人研修が厳しい

入国管理局では、入局後すぐに初等科研修という1カ月ほどの研修を受けなくてはなりません。初等科研修は茨城県牛久市にある研修センターで行われるのですが、その年に採用された全国の局や出張所から新入職員が集められます。そして、社会人としてのマナーや業務にまつわる基本的な法律について、寮生活を送りながら学びます。ただ、この研修がとても厳しいといわれています。

国家公務員一般職員として入国管理局に入局した場合、ある程度の勤務を経て入国審査官となりますが、入国管理局には、審査官以外にも入国警備官がいます。入国警備官は、いわゆる公安職なので、入局試験や俸給表についても審査官とは異なるのですが、この初等科研修については警備官も一緒に受けることになります。そうなると、研修の指導教官も審査官だけでなく警備官の上官も担当することになるので厳しくなってきます。

朝は全員で点呼の後ランニングとラジオ体操を行い、授業が終わった後清掃があり、就寝前にまた点呼を行います。点呼の声出しが小さかったり、ラジオ体操をきちんとしないと教官に起こられてやり直しさせられたり、清掃後に少しでも汚れが残っていると呼び出しがあったり、制服のアイロンがけが甘くしわが残っていると呼び出されてアイロンがけの指導があったりしました。

また、研修センターの周りには何もなく、公共交通機関もほとんど通っていないので、一番近い駅へ行くために何人かでタクシーを乗り合わせたり、近くのコンビニへ行くために自転車を数十分走らせたりしました。

ただ、教官が厳しく、周りの楽しみもない分、研修同期でとても仲良くなりました。研修後は全国各地のそれぞれの勤務地に戻っていくのですが、業務上で何か他局に問い合わせたいときなど、研修同期を頼ることが出来てとてもためになったとは感じます。

異動が多いので、2月は全員ざわざわする

国家公務員の宿命ともいえますが、全国どこに異動になるか分からないので、異動発表がある2月は毎年なんとなくざわざわしだします。異動のスパンとしては、大体3年ほどとなりますが、その時の局や出張所の増員減員、退職者の階級など様々な事情により、中には1年ほどで異動になる人もいます。

異動したくない人は、年明け頃から祈りだしたり、今年は自分の勤務地が増員になりそうだから異動はないのではないかと希望的観測を話し出したりしますが、そういう人に限って遠くに異動になる場面も見てきました。中には、前回の異動から2年経たずにまた異動になり、賃貸マンションの違約金を払った人もいました。

また、若手職員は離島の勤務地に異動になることも多いので、離島異動にならないように祈っていました。離島も業務としてはそこまで忙しくないことも多く、勉強しながら勤務できる点ではいいのですが、やはり帰省や遊びに帰ってくるのにお金がかかるので、できれば避けたいと思う人が多かったようです。もちろん異動が決まったらほとんど断ることは出来ません。

出会いがない

結婚しておらず、出会いを希望している職員としては、職場で会うのは申請者である外国人か、外国人と結婚している日本人くらいなので、出会いがほとんどないというのも入国管理局内のあるある話だと思います。

そのため職場結婚が多く、女性職員で結婚して続けている場合は、ほとんど相手は同じ入国管理局の職員でした。女性が職場外で結婚する場合、異動が多く、土日休みも確実ではないので、続けることが中々難しい面があるといえます。

職場内で勤務を続ける場合は単身赴任がほぼ決定的となります。ほとんどの家庭では、女性側が同じ管轄内(関東、関西、九州など)にて転居をせずに通える範囲で異動しながら子育てと勤務を両立し、男性側が単身赴任で全国を飛び回る生活になることが多いです。また、子どもをもたずに夫婦ふたりで同じ地域へ異動していく夫婦もよく見られました。地域にこだわらなければ、夫婦が同じ場所へ異動できるようある程度考慮されるようです。

役得もある

入国管理局の仕事は、特殊な仕事な仕事が多く、外国人と接することが多いので文化の違いなどもあり苦労も多いですが、空港審査という性質上、人によっては得を感じる部分があります。

それは、空港で国内外の有名人を間近で見られるチャンスがあるということです。例えば日本人の有名人は年末年始に海外で過ごす人も多いので、プライベートで出入国する際に、パスポートに証印を押すときに間近で接することが出来ます。

また、海外の有名人は、仕事として日本に入国するときは就労の査証(ビザ)を持って入国してくる場合が多いので、間近で話を聞いたり、指紋をとったりするチャンスがあります。私自身も何名か近くで有名人を見たことがあり、その部分については、入国管理局職員で働く役得だなと思いました。


本記事は、2017年12月22日時点調査または公開された情報です。
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