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【アメリカ州制度】農業から自動車産業へ 近代化した州「アラバマ州」解説

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。今回のテーマは「アラバマ州」です。アメリカの社会を知るうえで鍵となる州のひとつです。過去のアメリカ社会の様子や、現代ではどのような人たちが住んでいるのか知る手がかりにしてください。

2018年09月11日更新

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目次
アラバマ州の特徴
アラバマ州の歴史
アラバマ州の政治情勢
アラバマ州の経済
アラバマ州の税金
アラバマ州の銃や薬物問題
アラバマ州の教育または宗教事情
まとめ
【アメリカ州制度】自動車産業が盛んな州「アラバマ州」解説

アラバマ州の特徴

アラバマ州は総人口が約500万人でアメリカのなかで23位の人口です。1819年12月にアメリカ第22番目の州になりました。現在では、2,300人ほどの日本人が生活しているとされています。

州として認められた時代は農業を中心とした産業が主流でしたが、いまでは航空宇宙産業、自動車産業、重工業などが発展し近代化され、農業から大きく転換したことが特徴と言えるでしょう。

とくに1960年には農業用として使われてきた広大な土地が近代産業用に売られ、いまでは大きな工場に変わっています。古くから続いてきた、トウモロコシ、木綿、牛、鶏などの産業は衰退しました。広いアメリカのなかでも「アラバマ州は綿花」というイメージがあったものの、後に勢力を伸ばすテキサス州やジョージア州などに抜かれてしまいます。

このような特徴から、アラバマ州はむかしは農業の中心だったものの、現在では近代化された州と考えるといいでしょう。

アメリカ合衆国 アラバマ州の位置
アメリカ合衆国 アラバマ州の位置

アラバマ州の歴史

農業を中心に栄えてきたアラバマ州ですが、南部地方を中心に行われてきたプランテーション栽培などにおいて、奴隷制度の中心地だったというイメージを持つ人が多いとされています。

これには人種差別にひとりで戦った弁護士が主役の「アラバマ物語」のイメージが強いことも影響しているでしょう。さらに、かの有名なマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が、アラバマ州のバーミングハム市を「アメリカの中で最悪の人種差別都市」と言ったことでも知られています。

1963年、公民権運動が進むアメリカ国内において、アラバマ州知事を務めたジョージ・ウォレスは「I say segregation now, segregation tomorrow, segregation forever.(今も、明日も、これからも人種隔離)」と発言し、人種差別を推進する姿勢を明確に示しました。

同年には、黒人2名がアラバマ大学に入学しようとすることに反対するため、州兵を使って大学の入り口を閉鎖し、自身も入り口で学生の前に立ちはだかりました。この一件を受けた、当時の大統領だったジョン・F・ケネディが特使を派遣し、大統領令で黒人2名の入学が許可される異例の事態に発展しました。

1965年には、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が率いるデモ行進(セルマ大行進)を阻止するために、白人警察官や白人の民兵に催涙ガスや強制連行を指示し、結果的に多くの負傷者を出しました。この暴挙は全米にテレビ放映され、後に「血の日曜日事件」として知られるようになります。

ジョージ・ウォレスは徹底して人種隔離政策を訴え、南部の白人層を中心に支持されてきましたが、1972年に出馬した大統領選の遊説中に銃撃され、下半身不随の怪我を負います。

大統領選に破れた後の1974年にアラバマ州知事に再選し、1982年の州知事選では、黒人を差別し続けた自身の政策や、黒人を軽蔑したことは誤りだったと認め、黒人からも票を獲得し再選しました。

再選後は黒人を州政府に採用し、長く続いたアラバマ州の黒人差別や人種隔離政策は終わりを告げました。アラバマ州の人種差別の代表とされてきたジョージ・ウォレスは、家族からも距離を置かれるようになっていましたが、最後には黒人たちに支えられ晩年を過ごしたと言います。

1995年には自身が引き起こした「血の日曜日事件」の記念式典に参加し、その場で誤りを謝罪しました。ジョージ・ウォレスはアラバマ州の歴史や、アメリカの人種差別を語るうえで必ず知っておくべき人物です。

アラバマ州の政治情勢

アラバマ州は直近の2012年と2016年の大統領選において共和党を支持しています。2012年にはオバマではなくロムニーを支持し、2016年ではトランプ大統領を支持しています。

そもそも、アラバマ州は伝統的に共和党を支持する傾向があります。しかし、2017年12月の上院補欠選挙において、民主党のダグ・ジョーンズ候補が共和党のロイ・ムーア候補を破る現象が起こりました。

1992年以降、共和党が勝ち続けてきたアラバマ州で、民主党が勝利したことは現在のトランプ政権への不満や、保守的だった伝統が破られつつあることを意味していると見られています。

アラバマ州は南部地方の典型的な「保守的な州」と見られがちですが、少しずつその歴史が変化してきているとされています。産業と同様に、政治でも変化しつつある州のひとつです。

アラバマ州の経済

アラバマ州の失業率は3.6パーセント、平均世帯年収は約4万ドルで全米39位です。アラバマ州は農業を中心に栄えてきましたが、1960年以降は航空宇宙産業や自動車産業が中心です。そのため、大規模工場などの雇用主が多いものの、経済不安や市場の影響を受けやすく、職を失う可能性が高いことが特徴です。

2018年2月時点のアメリカの平均失業率が4.1パーセントに対し、アラバマ州は3.6パーセントと平均より低く、雇用状況は良好とされています。アラバマ州は2010年の11.6パーセントだった失業率から10年足らずで大幅に状況が改善しています。

アメリカのなかでも失業率の改善はトップクラスで、その背景には農業にとって代わった自動車産業が大きく起因しています。世界各国の自動車メーカーが進出しており、トヨタ、ホンダ、ヒュンダイ、メルセデスなどが北米市場用の車の組み立てをアラバマ州でおこなっています。それに関連する企業も進出しており、アメリカのなかでも第4位の自動車生産高があります。

アラバマ州はアメリカのなかでも指折りの自動車生産高があり、その伸び率や失業率の改善に貢献している州と言えます。

アラバマ州の税金

2018年時点のアラバマ州の消費税は9.1パーセントで、全米で5番目に高い水準です。州税が4パーセント、地域によって異なる地方税の平均が5.1パーセントとされています。お隣のミシシッピ州が7.07パーセント、ジョージア州が7.15パーセントのため割高な印象があります。

アラバマ州の所得税は、2、4、5パーセントの累進課税方式を採用しています。アラバマ州では消費税や使用税などの税収が全体の51パーセントを占めており、アメリカの平均値36パーセントを遥かに上回っています。

アラバマ州は、企業などの法人においては所得税がアメリカで2番目に安い州ですが、個人にとっては税金の負担が大きい州であると言えるでしょう。自動車メーカーや重工業などの企業がアラバマ州を選ぶ理由のひとつが、安い税金という背景が見て取れます。

アラバマ州の銃や薬物問題

アラバマ州ではマリファナは医療用も娯楽用も禁止されています。医療用に限っては解禁する州が多い中、徹底して禁止する姿勢は保守的と評される南部らしい姿勢と言えるかもしれません。

アラバマ州では2009年に犯人も含めて10人が犠牲になる銃乱射事件が発生し、2012年には2名が亡くなる銃乱射事件が起こりました。この他にも銃関連の犯罪は頻発しており、銃犯罪が多い州のひとつでもあります。

アメリカの調査機関によると、アラバマ州は10万人に対する銃犠牲者数の割合は全米で3番目に高く、銃規制への取り組みや、被害者数、購入時のバッググランド調査などの厳しさを参考にして付与されるグレードでは最低ランクのFになっています。

アラバマ州は、マリファナなどの薬物は厳しく規制されていますが、銃犯罪件数や銃規制には課題が残ると言えるでしょう。

アラバマ州の教育または宗教事情

アラバマ州には州立のアラバマ大学や、オーバーン大学などがあり、US Newsが実施した全米の公立学校100傑の中にも選ばれています。一方で、他州と比較して教育水準は低く、高校卒業以上の学歴保有者は人口の75パーセント程度とされており、全米で4番目に低い水準です。

アラバマ州はキリスト教が9割を超えており、おおよそ60パーセントの州民が毎週教会に通っているとされ、信仰心が強いという特徴があります。この強い信仰心はアメリカのなかでもトップクラスとされており、リベラル派から保守的と言われる理由のひとつにもなっています。

この他にもユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥー教なども信仰されており、宗派に限らず信仰心が強い人が多く住んでいるのが特徴と言えるでしょう。

まとめ

アラバマ州は農業を中心に栄えてきた州ですが、現代では全米でも屈指の自動車産業や重工業エリアとして発展しています。近代化されたアラバマ州ですが、過去には人種差別や黒人差別を繰り返してきた歴史があります。

ジョージ・ウォレス、血の日曜日事件などはアメリカの歴史のなかでも重要なキーワードですので、ぜひ知っておくといいでしょう。

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