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アメリカが抱える隠れた問題「白人至上主義問題」について

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日本でも報道されているように、現在のアメリカでは白人至上主義者と呼ばれる人たちの活動が活発化してきています。これらの個人や団体は、アメリカ全土に点在しており、なかには過激な行動をとるグループもあります。

実はこの白人至上主義の問題は、アメリカ国民の次の世代が直面するであろう、潜在的な大きな問題として息を潜めています。

そもそも、白人至上主義者とはいったいどのような人たちなのかを理解する必要があります。語弊を恐れずに言うと、白人至上主義者は黒人など非白人種を嫌悪し、白人のアメリカ人こそが凄いのだ、と考えている人たちのことです。

このような考えを持つようになった背景は個人や団体によって様々ですが、アメリカ建国後の1800年頃に遡ります。イギリスからやってきた白人たちによってアメリカが建国した頃、広大な土地を使って農場やタバコ栽培などが主流に行われていました。

その時の労働力として、アフリカからイギリスを経由してたくさんの黒人がアメリカに連れてこられたのです。アメリカにやってきた黒人は奴隷として扱われ、白人が経営する農場など雇われることになります。

このような時代は長く続き、いつの間にかアメリカの日常には「白人経営者と黒人労働者」という構図が出来上がったのです。白人からすればアメリカは白人のものであって、黒人たちはあくまでも労働力の一端であるとされていました。

後のアメリカ大統領になるエイブラハム・リンカーンは、このような白人と黒人の区分けをなくそうと奔走しますが、実際には多くのアメリカ人にとってこの構図は根強く残り続けました。

時代は流れ、現代のアメリカでは白人と黒人が共存し、差別をなくした世の中になっていますが、アメリカ人のDNAのなかにはどこか「白人と黒人」という構図が残っているのが事実です。

このようなDNAを持った人たちのなかでも、アメリカ建国の歴史を強く支持し、白人こそが母国を作ったと信じ込んだ人たちが、現代の白人至上主義者になっているのです。

白人至上主義者たちは近年注目されるまでにも存在していました。代表的なグループで知られているのは「KKK」「ネオナチ」「オルト・ライト」などでしょう。

このような集団の存在や主張は、自由の国アメリカであるからこそ許されており、共感した人たちは次々とグループに所属するようになっています。


こうしたグループがアメリカ全土で拡大しつつあり、なかには過激な言動をとる人もいるため問題になっているのです。そして2017年8月、白人至上主義者と反対派が衝突し、死人が出る騒動が起きて問題は一気に表面化します。

目次

白人至上主義者が表面化した背景

2017年8月、アメリカ南部のバージニア州のシャーロッツビルで騒動が起こりました。騒動の内容は、白人至上主義者のデモとそれに反対する人たちの衝突でした。この衝突は、乱闘騒ぎになり20人近くが怪我をし、抗議する人たちに車が突っ込んでひとりが亡くなりました。

これまでに白人至上主義と反対派が衝突することはありましたが、死者が出る始末に発展したことはアメリカ国内でも話題になりました。そして、この問題がより一層大きな問題になったきっかけを作った張本人がトランプ大統領です。

トランプ大統領は、この騒動を受けて記者会見で暴力的な行動をとった白人至上主義団体を批判せず、最終的には「双方に責任がある」と発言しました。アメリカ国内ではトランプ大統領のこの発言を受けて、白人至上主義と反対派が一気に対立する結果になったのです。

様々なメディアの報道では、トランプ大統領は暴力こそ否定しているが、白人至上主義そのものを否定しなかったとされ、差別に対する規範の崩壊と扱われました。白人至上主義者からすればトランプ大統領は仲間だとされ、反対派は幻滅する結果になったのです。

そうして現在のアメリカでは、白人至上主義問題が「アメリカの二分化」を引き起こす潜在的な火種として隠れている状態になっているのです。

白人至上主義が活発な背景

現在、白人至上主義団体はアメリカ全土に917団体あるとされています。さらに、インターネットだけで活動している表面化していない団体や個人もいるため、実数はもっと多いと考えられています。

これまでにも白人至上主義は存在していましたが、ここにきてなぜ活動が活発化してきているかにも背景があります。その理由は大きくわけてふたつあると考えられており、ひとつはアメリカの人口構成比率の変化、ふたつめがネットを使った活動の増加です。

白人至上主義の人たちが恐れているのが、アメリカ国民の過半数を白人以外が占めてしまうことです。人口統計の計算では、2050年にはアメリカ国民の半数以上が黒人またはヒスパニック系になるとされ、白人は過半数を切るとされています。

具体的には、2043年には白人は50パーセント以下になりはじめ、黒人やヒスパニック系など非白人種が57パーセントになるとされています。このことは、アメリカを築いた誇り高い白人がアメリカでの地位を失う可能性があると白人至上主義の人たちは捉えているのです。

ふたつめの理由が、ネットで白人至上主義活動をする人たちの増加です。現在、アメリカではインターネット上で、黒人やヒスパニック系の人たちが増えていることに反対し、差別的な行動を起こす人が増えています。

実はこの「隠れた白人至上主義者たち」がアメリカの二分を加速させているとされています。表立った差別活動こそしないものの、影で黒人差別の思想や中傷を繰り返すため、手軽さも手伝って増えているのです。

白人至上主義者は、特に若い世代で増えているため、次の社会人世代ではより一層表面化し、差別が加速すると懸念されています。

白人至上主義が与える影響

アメリカを二分することに繋がる白人至上主義の問題ですが、アメリカ国内と海外にも大きな影響を与えると考えられています。

実際にアメリカ国内での影響は始まっており、実社会で非白人種の人たちや、白人至上主義に反対する人への危害なども増えています。2015年には、サウスカロライナ州チャールストンで白人至上主義の男が黒人教会で銃を乱射し9人が亡くなりました。


アメリカ建国以降、1862年の黒人奴隷解放宣言や、1950年頃から続いた公民権運動など、アメリカが長く積み重ねてきた差別撤廃の流れが途絶えてしまうことなど、アメリカの理念を揺るがすという影響もあります。

白人至上主義が加速することは差別問題だけでなく、アメリカが培ってきた理念そのものを台無しにする側面があるのです。

そして、白人至上主義問題は世界各国への影響も懸念されています。アメリカ国内では、白人至上主義をベースとした「黒人分離主義」なる過激な発想の団体もあり、世界中の黒人種からの憎しみを買い、結果的にテロや攻撃の対象が増える危険性があります。

アメリカ国内で白人至上主義が進めば進むほど、世界各国で黒人やヒスパニック系の人からアメリカが恨まれる存在になるのです。白人至上主義はアメリカ国内の問題だけでなく、世界中の様々な人種を含んだ問題なのです。

アメリカが取り組むべき課題

白人至上主義は白人こそ第一と考えることが根底にあります。しかし、アメリカは建国以降、黒人であれ、ヒスパニック系であれ、すべてを受け入れ互いに尊重する文化を目指してきました。

国民すべてを平等にという理念は法律にも適応され「アファーマティブ・アクション」という黒人などの少数派が就職や就学の際に優遇される仕組みも作られました。

これにより長く冷遇されてきた黒人などの少数派は、社会進出が出来るようになり今日のアメリカ社会の基礎になっています。しかし、白人至上主義者たちからすれば、アファーマティブ・アクションこそ白人差別の根源であり、アメリカを築いた白人なのに差別される社会になっていると主張しています。

今後、アメリカはアファーマティブ・アクションに代表されるような法律の見直しや、それに関連する社会制度の再整備など、やがて訪れる人口構成の逆転に備える必要に迫られることになります。

しかし、今日のアメリカ社会では法律や社会制度を変えることは容易ではないため、アメリカ政府がこの問題にどのように取り組むか注目されています。

まとめ

アメリカを分断する白人至上主義問題は、まだ潜在的な部分が多いためアメリカ社会全体で取り組む状態ではありません。しかし、近い将来に必ず大きな課題として表面化するため、アメリカの次世代の課題と言えるでしょう。

日本には直接的な影響はないと思いますが、アメリカ社会に歪みが生じた場合、経済や治安などの面で影響を受ける可能性があります。潜在的な問題として白人至上主義問題はぜひとも理解しておきましょう。

本記事は、2018年7月6日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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