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【アメリカ州制度】建国時の政治の中心だった州「メリーランド州」解説

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メリーランド州


アメリカの歴史的な事柄や、現在のアメリカ政治とも非常に結びつきが強く、アメリカで最も世帯収入が高い州のメリーランド州は、日本でもよく知られた「キャンプ・デービッド」などアメリカ大統領の別荘地があることでも有名です。

メリーランド州は面積や人口は決して大きくありませんが、政治の中枢であったことやアメリカ国歌が生まれ場所です。今回はそんなメリーランド州についてご紹介します。

目次

メリーランド州の特徴

2018年時点でのメリーランド州の総人口は約605万人です。アメリカの首都であるワシントンD.C.に隣接していることから、アメリカ政府職員や軍関係者などが多く生活しています。

ワシントンD.C.に近いため都市部の印象が強いものの、ベルギーと同じほどの大きさの州内にはたくさんの自然が残されており、山や砂丘、湿地帯や丘陵部などがあります。アメリカ全土の地形がメリーランド州に集約されていることから「アメリカのミニチュア」と呼ばれています。

また、人種においても多様な人種が集まっており、白人が50パーセントに対し、黒人が30パーセント、ヒスパニック系が10パーセントの割合です。白人の内訳で最も多いのがドイツ系でおおよそ15パーセント、アイルランド系が10パーセントとヨーロッパ系白人が多いのが特徴です。

南北戦争後と第二次世界大戦後、それぞれで爆発的な人口増加がありました。南北戦争後は奴隷制度や差別が酷かったアメリカ南部から人が集まり、第二次世界大戦後は自動車や軍需産業などの工業に職を求めた人が集まりました。特に第二次世界大戦後の20年間で人口は180万人から310万人まで増加しました。

この人口増加と州の発展を支えたのが政府関連の仕事や工業製品の輸送業です。ワシントンD.C.に近いため、防衛、航空、バイオテクノロジーなど最先端技術開発を手がける研究所や企業が多く、関連した教育機関も充実しています。また、輸送業においては同州のボルチモア港は鉄道の連携により鉄鉱石や砂糖などを国内流通の要になっています。

メリーランド州の職の特徴としては、アメリカで最も「ホワイトカラー」と呼ばれる人が多く、労働者全体の20パーセント以上を占めているとされています。ホワイトカラーの人たちが州の平均世帯収入を押し上げています。アメリカの平均56,516ドル(2015年)に対し、直近の平均値は約70,000ドルとされています。

アメリカの歴史におけるメリーランド州は「13植民地」のひとつであり、古くからアメリカの政治の中心でした。1784年までは同州の最大都市であるアナポリスがアメリカ合衆国の首都とされ、重要な連合会議などはメリーランド講義堂で開催されていたほどです。

このようにメリーランド州は古くからアメリカの政治の中枢であり、現在においてもワシントンD.C.を支える役割をしています。

メリーランド州の歴史

メリーランド州は、1788年に7番目の州として認められました。1498年にイタリア生まれ、イギリス育ちの航海家であるジョン・カボットがこの地を訪れたことが白人による開拓の始まりとされています。この時代には先住民のインディアンが生活をしていましたが、1645年頃からイギリス人が大量に押し寄せてきます。


イギリス人が一斉に押し寄せた理由のひとつが「ヘッドライト・システム」と呼ばれる開拓者を呼び込む政策でした。当時のメリーランドはイギリスを始めとするヨーロッパ諸国から開拓者を募るために、渡航費を支払える人には優先的にメリーランドの土地を譲ることを始めたのです。これによりメリーランドは急速に開拓が始まりました。

メリーランドの地に限らず開拓が進むなか、メリーランドには多くのカトリック教徒が集まりました。この背景には、イギリスから追放されたカトリック教徒がメリーランドに流罪になったことがあります。この行為は100年以上続き、合計で数百万人がメリーランドへ追い出されたとされています。

このようなことを受け、メリーランドでは宗教の自由に対する思い入れが強まり、1649年に制定されたメリーランドの寛容法で「信教の自由」が採用されました。この法律はアメリカ合衆国憲法修正第1条の基礎になっています。

当時のメリーランド(植民地)の首都だったセントメアリーズでは政治と信教の分離を体現するため、市長の住居を中心にして西側には市の庁舎と刑務所で3角形を作り、北側にカトリック教会と学校で3角形を作りました。この都市計画によってメリーランドは政治と宗教を分けて考えることを強く主張したのでした。

1774年、イギリスから独立を果たすため13植民地では独立に向けた活動が活発化し始めます。しかし、メリーランドはイギリスからの独立には反対する立場でした。メリーランドでは数年に渡って会議が行われ、イギリス本国や王室とは分離された国を新たに築くことこそが望ましいと決断をくだし、憲法を起草します。これを1776年の憲法制定会議と呼びます。

独立戦争の最中、各植民地の代表者56名が集まりイギリスからの独立や、その後を話し合う「大陸会議」が開催されていました。1776年7月4日、13植民地はイギリスからの独立を宣言してアメリカ合衆国になり大陸会議は「連合会議」となります。

その連合会議で議長(President)を務めた人物こそ、メリーランド出身のジョン・ハンソンです。アメリカ国内には、13植民地からアメリカ合衆国に生まれ変わった際に議長だったジョン・ハンソンこそがアメリカ合衆国初代大統領だとする声も多くあります。

1812年から1815年にかけてアメリカがイギリスに対して抱いていた経済制裁などの不満が原因となり米英戦争が起こります。1814年9月14日、メリーランド州にあるマクヘンリー砦をイギリス軍が襲いますが、アメリカ軍はこれを返り討ちにして砦にアメリカ国旗を掲げました。その光景を見た弁護士だったフランシス・スコット・キーが詠んだ詩が後のアメリカ国歌である「星条旗」です。

このようにメリーランド州はアメリカ建国の中心地であったことや、有名なアメリカ国歌が誕生した場所でもあるのです。メリーランド州はアメリカ建国前から政治の中心だったことを知っておくといいでしょう。

メリーランド州の政治情勢

メリーランド州では2012年、2016年いずれの大統領選でも民主党を支持しています。南北戦争よりも前から民主党が強く、大統領選では過去15回連続で民主党が勝利しているため強力な民主党の支持基盤と言えます。

メリーランド州は、ワシントンD.C.に隣接することから政府職員や高学歴層が州内の特定の場所で生活しています。該当するモンゴメリー郡とプリンスジョージズ郡では圧倒的に民主党が強い傾向があります。

メリーランド州の経済

2018年時点、メリーランド州の失業率は4.0パーセントです。アメリカの平均値とほぼ同じですが、2009年のリーマンショック後でも他州よりも低い傾向がありました。その背景にはメリーランド州の主な職が政府関係、教育機関など経済に左右されないことが挙げられます。

古くから政府関連の職が多かったメリーランド州ですが、近年では情報技術、通信、バイオテクノロジー、航空宇宙工学など最先端技術の中枢に変化しつつあります。これらを総称で「デジタル・ハーバー」と呼んでいます。

メリーランド州の税金

2018年時点で、メリーランド州の消費税は6パーセントです。連邦税のみがかかり、ほとんどの場合において地方税は加算されません。所得税は2パーセントから6.25パーセントの累進課税制で、地方によっては地方税も加算されるため最大で9.45パーセントと国内でも高い所得税率とされています。ちなみに、メリーランド州は1937年にアメリカで初めて所得税制度を導入した州です。

メリーランド州の財政を支えているのが、バイオテクノロジーの最先端技術企業です。400社以上のバイオテクノロジー関連企業が集結しており、その収益は財政に結びついています。


メリーランド州の銃や薬物問題

メリーランド州は医療目的に限りマリファナの使用が認められています。アメリカの北東部全域が医療用マリファナの使用を解禁しており、メリーランド州もそのひとつです。メリーランド州は銃に対する取り組み格付けは「A-」と高い評価を受けています。購入時のバックグラウンドチェックを始め、銃保有に関する州法は国内でトップ5に入るほど厳しいものになっています。

メリーランド州の教育または宗教事情

メリーランド州の教育水準は国内トップクラスで、1876年創設のジョンズ・ホプキンス大学はアメリカ最難関校のひとつとして知られています。ワシントンD.C.で働く政府職員が通うことも多く、アジア系の留学生も20パーセント程度在籍しています。日本人では新渡戸稲造が留学していた学校としても有名です。

メリーランド州には最先端技術の研究施設も多く、大学と企業の結びつきが強いことも特徴と言えます。とくにバイオテクノロジー、生物学、原子力工学ではアメリカで最も優れている州とされています。

メリーランド州の宗教は伝統的にカトリックが多いことが特徴です。この背景には、植民地時代にイギリスで少数派だったカトリックの人たちがメリーランドに追い出されたことがあります。もともとはカトリックの安息地だったメリーランドでしたが、イギリス政府はそれを覆し、カトリックを排除しようとした歴史があります。

まとめ

メリーランド州はアメリカ建国時の政治の中心で、現在は政治や最先端テクノロジーの中心です。土地柄、アメリカで最も平均年収が高い人が生活している州であることを知っておくといいでしょう。

本記事は、2018年9月7日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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