MENU

【アメリカ州制度】大統領を8人も輩出してきた州「オハイオ州」解説

当ページのリンクには広告が含まれています。
オハイオ州


アメリカ中西部のやや東に位置するオハイオ州では、農場のなかに干し草の山が積まれている典型的な田園風景が広がる場所もあれば、自動車産業などの工業で発展した都市もある州です。また、これまでに大統領を8人も輩出してきた州としても知られています。今回はアメリカのカントリーサイドとシティサイドの両面を持ち合わせたオハイオ州についてご紹介します。

目次

オハイオ州の特徴

2018年現在、オハイオ州の総人口は約1,166万人で、国内で7番目に人口が多いとされています。第二次世界大戦が終わった1945年頃から急激に人口が増えましたが、1990年頃からはほぼ横ばいの状態が続いています。この人口増加は自動車産業やタイヤ産業などが栄えたアメリカ中西部の工業化が関係しています。

州民の80パーセントは白人ですが、12パーセントが黒人、その他にヒスパニックなどが占めています。州名のオハイオとは先住民族のイロコイ族の言葉で「偉大な川」や「大きな川」を意味しており、その名の通り同州にはオハイオ川やエリー湖などがあります。とくにオハイオ川は文明や物流の発展の中心となり、この地が栄えた原動力とされていました。

古くからオハイオ州周辺では数多くのインディアンが生活をしていました。大平原と大きな川があったことから生活をするのには最適な場所だったのです。多くのインディアンはビーバーなどの動物の毛皮を日常生活に取り入れていましたが、この地を訪れたフランスの商人の目にそれらが止まりヨーロッパとの交易が始まりました。

インディアンはビーバーなどの毛皮をフランス製の宝飾品や、部族同士の衝突に備えるために銃などの武器と交換していきました。皮肉なことに、これらの武器は後にフランスを相手に使われることになり、16世紀から17世紀にかけて行われた史上最も残虐な戦闘と言われる「ビーバー戦争」が巻き起こりました。

インディアンは白人が大量の毛皮を要求し、オハイオの土地も奪おうとしていると考えていました。このようなことからインディアンと白人の間で些細な衝突が続くようになり、戦争へ突入していきます。フランス系の白人とインディアンの争いは現在のオハイオ州が舞台になり、アメリカ史のなかでも悲惨なものになりました。

オハイオ州の特徴のひとつに「大統領の母」というニックネームがあります。同州はこれまでに8人の大統領を輩出しており、このことは州民にとって誇りで「どんな州もここまで政治的な足跡は残せていない」と胸を張っています。ちなみに同州出身の大統領は8人全員が共和党所属で、7人が同州で生まれています。

オハイオ州は日本との結びつきも強く、1979年には自動車メーカーのホンダが同州のメアリーズビルに工場を建設し、イースト・リバティ、アンナと州内に3ヶ所も工場を保有しています。そのため関連する日系企業も多く、おおよそ9,000人の日本人がこれらの都市で生活しています。

アメリカ国内ではオハイオ州を例える際に「田舎もあれば都会もある。貧困があれば富裕もある。自由もあれば束縛もある。」という表現が用いられ、同州ではあらゆることが二極化している特徴を言い表しています。

事実、コロンバスやシンシナティ、クリーブランド、トリドなどの主要都市が田園地帯に点在しており、その様相は「都市の正座」と言われています。都市部とそれ以外の地域の差が明確で、人口だけでなく所得や政治的な思想などが区分されています。

このようにオハイオ州は大統領を多く輩出してきた歴史がある一方で、州内の二極化が明確な場所であることが特徴と言えます。


オハイオ州の歴史

オハイオ州は、1803年にアメリカ合衆国17番目の州になりました。オハイオの地では紀元前13,000年頃にはすでに人が生活をしていたと考えられており、先住民族のインディアンも多くの部族がこの一帯で生活していました。トウモロコシ栽培などの農業や狩猟で食料を手に入れていましたが、大半は白人が持ち込んだ疫病が原因で命を落としたとされています。

1500年代後半にはオランダやフランスから交易を目的にした白人がこの地を訪れ、毛皮などがヨーロッパに広まりました。オハイオ川があったことから頻繁に流通が行われ、この地での交易は活発化していきました。交易が盛んになるのと同時にヨーロッパ系の白人による開拓も始まり、しばしばインディアンとの間でいざこざが起こるようになります。

交易の加速化や土地の開拓に危機感を感じたインディアンは、この一帯で生活し衝突相手でもあった6部族と連合を組んで「イロコイ連邦」と呼ばれる連邦国家を作ります。イロコイ連邦は白人が望むビーバーを広い地域で乱獲し交易を独占しようと考えます。その際に別のインディアン部族を襲撃したり、フランス人が築いた交易拠点も制圧しました。当然、この行為はフランスの怒りを買いビーバー戦争に繋がったのでした。

イロコイ連邦の暴走とフランスの武力制圧は泥仕合となり、双方の死闘は1701年の「偉大な平和条約(Grande Paix)」が締結されるまでおおよそ200年近く続きました。さらに、フランスは1754年から1763年まではイギリスと「七年戦争」をし、敗れた後にオハイオを含めた土地をイギリスに割譲しました。こうしてオハイオの地で長年に渡って繰り広げられたイロコイ連邦、フランス、イギリスの争いは決着しました。

1775年にはアメリカ独立戦争が始まり、イギリスに勝利したアメリカは1783年のパリ条約においてオハイオの土地を正式に手に入れました。1787年にはオハイオを含む北西部領土条約が創設され、この地での奴隷制度は禁じられた状態で本格的な開拓が始まりました。1803年、人口が規定の6万人以上に達したことからアメリカ合衆国で17番目の州に昇格しました。

オハイオ州は南北戦争の際には北軍として参加し、北軍のなかで最も多くの兵が加勢した州になりました。オハイオ川を使った物資輸送や軍隊の輸送で北軍の勝利に貢献したとされています。しかし、南北戦争ではオハイオ州の兵35,000人が犠牲になっています。

現在でもオハイオ州は、オハイオ川やエリー湖を使った物流が盛んで、高速道路や鉄道などアメリカ中西部の交通の要衝です。そのためオハイオ州は「地理的資産価値」が高く、アメリカの経済を支えている重要な州のひとつです。

オハイオ州の政治情勢

オハイオ州では2012年の大統領選では民主党のオバマを支持し、2016年には共和党のトランプを支持しています。もともと共和党の支持基盤として知られているオハイオ州ですが、近年では民主党に偏りつつあり、大統領選の際には票が動くため「スイングステート」と呼ばれています。一方で、1964年以降はオハイオ州で勝利した方が大統領になることが続いています。

オハイオ州の経済

2018年時点、オハイオ州の失業率は4.5パーセントで、アメリカの平均値よりもごく僅かに高い程度です。オハイオ州は事業に適した州のひとつとされており、税の優遇など企業に対する優遇措置が多いことが特徴です。

この背景には1900年代に最盛期を迎えた工業化があり、ひとたび不景気になると大勢の労働者が職を失う業界が多い同州では、雇用機会を失わないようにセーフガードの意味を込めて企業を誘致しています。隣接するミシガン州のように自動車産業だけに頼ることがないように対策されています。

オハイオ州の税金

2018年時点、オハイオ州の消費税は7.15パーセントです。連邦税が5.75パーセントで地方消費税の平均が1.4パーセントです。アメリカ中西部のなかではやや高い消費税です。オハイオ州では州内で原油やシェールガスが産出されることから、将来はエネルギー関連事業からの歳入が増加することが予想されています。

また、オハイオ州では法人に対する州法人税がかかりません。代わりに売上税が徴収される仕組みになっており、テキサス州と同じ仕組みです。売上税は法人税よりも負担が軽いため企業はオハイオ州を好む傾向があります。

オハイオ州の銃や薬物問題

オハイオ州では医療用に限ってマリファナは合法です。中西部と北東部の多くは医療用のマリファナは合法化されています。また、同州の銃に対する取り組み格付けは「D」グレードです。州民10万人に対する銃事件の犠牲者は12名と多いことが特徴です。

オハイオ州の教育または宗教事情

オハイオ州の教育水準は国内で41番目とされており高いとは言えません。2年制大学の卒業率は20パーセント以下、4年制大学では50パーセント台です。しかし、オハイオ州はアメリカでもトップ5に入るほど学生の数が多い州とされています。

オハイオ州の宗教はキリスト教とカトリックが大半を占めています。同州にはアーミッシュと呼ばれる自給自足の生活を送るドイツ系移民の宗教団体があり、ひとつの街を形成しています。車や携帯電話などの近代的な物は使わずに、移民としてアメリカにやってきた当時の生活を維持しています。


まとめ

オハイオ州はインディアン、フランス、イギリスが長年かけて戦いを繰り返した歴史がある場所です。また、これまでに多くの大統領を輩出したことや地理的な優位性を生かして経済発展を成し遂げてきたことが特徴です。将来はシェールガスなどのエネルギー産業が発展すると期待されています。

本記事は、2018年10月1日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

コメント

コメントする

目次