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【公務員試験重要科目「憲法」】「日本国憲法」の全文解説 第一章

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目次

第1条は、「天皇の地位」と国家の「主権」が誰にあるか?

第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

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日本国憲法の第一条では、「天皇」の位置づけと、国の政治の方向性を最終的に決定する権利、すなわち「主権」が誰にあるのかが明言されています。

大日本帝国憲法(明治憲法)では主権は「天皇」にありましたが、日本国憲法では主権は「国民」にあり、天皇は日本国の「象徴」である、ということになりました。つまり天皇という存在は、日本のシンボルである富士山などと同様に、日本国民のシンボルとしてのみ存在しており、政治にかかわることはできない、ということです。そして、天皇を日本国民の「象徴」であると決めるのは主権者である私たち「国民」であると定義されています。

そもそも「天皇」とは?

日本国の正式な歴史書とされている「日本書紀」の記述によると、初代天皇である神武天皇は、日本を創ったイザナギとイザナミの子孫であるとされていて、天照大神の子孫でもあります。

古代日本では、「天皇」という呼び方ではなく「大王(おおきみ)」という呼称が使われていましたが、7世紀ごろから「天皇」が使われるようになったようです。このときから戦前までの天皇は、中央集権国家の頂点に君臨する存在でした。国土や国民は全て、国家元首である天皇のものでした。

ちなみに、現在の天皇は第125代目であり、現存する国家でこれほど長い歴史を持つ国は珍しいです。

「主権」とは

「主権」という言葉にはいくつかの意味があり、具体的には以下の3つが挙げられます。憲法第一条で話題としている意味は(3)の「国民主権」ですね。

(1)国家が国民や領土を統治する権力(統治権)
(2)国家が意思決定を自由に行う権利(国家主権)
(3)国民が国の政治を最終的に判断する権利(国民主権)

「国民」とは

「国民」の定義は法律で定められており、基本的には日本国籍を持った人が日本国民であるとされます。日本では血統主義が採用されているので、日本人との血の繋がりがあるかが重要視されます。

新生児の場合、(1)生まれるときに両親のどちらかが日本国民であるか、(2)生まれる前に死亡した父親が日本国民であった場合に日本国籍が与えられます。しかしながら、(3)日本で生まれたものの両親が不明または国籍がない場合にも日本国民となり、他にも帰化(国籍の変更)による日本国籍取得も条件付きで認められています。

第2条は天皇家のルールについて

第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。


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現在のルールでは次の天皇になれるのは現在の天皇と血縁関係のある男子のみとなっていますが、国会の議決によってこのルールを変更することも可能です。

「世襲制」とは?

世襲制とは、血の繋がりのある次の世代に、地位や財産を受け継ぐことをいいます。実社会で事実上の世襲制となっている例としては、歌舞伎などの古典芸能や、花道や茶道の家元などがあります。これらは法律で定められているわけではなく、慣習的なものです。それに対して天皇の地位は法的に世襲制が定められています。

「血縁関係」とは

血縁関係とは、親子や兄弟姉妹のように血のつながりのある関係をいいます。次の天皇になることができるのは、天皇の子や孫(男子のみ)などで、実際に誰が継承するのかは「継承順位」として皇室典範で定められています。

第3条は「天皇の国事行為の責任」がどこにあるか?

第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

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天皇の仕事は、国のために儀式を行ったりする「国事行為」と呼ばれるものです。しかし、この国事行為は天皇が自由に行えるわけではなく、内閣のアドバイスに基づいて事前に決められた内容を実施することになります。そのため、国事行為の責任は内閣にあるとされ、天皇は日本の「象徴」としてその役割を演じています。

ちなみに、内閣は選挙によって選ばれた国会議員(内閣総理大臣)によって組織されるので、国民の意思を反映しているということになりますね。ですから「国事行為」も国民の意思によって決定されることになり、天皇の日本国との関わりかたという点についても「国民主権」が徹底されているといえます。

「国事行為」とは

国事行為とは日本国憲法上で天皇が行うこととして定められている仕事のことです。詳しくは憲法第7条で定められています。国の平和を願うための「お祈りの儀式」も国民の象徴である天皇の大事な仕事の一つとして、憲法に明記されているのです。

「内閣」とは

「立法」「司法」「行政」に分けられた「三権分立」という仕組みのうち、内閣は「行政」を担当する機関です。国会で定められた法律や予算にしたがって国の政治を担う、いわば司令塔ともいえる立場にあります。

第4条は「天皇は政治的な権力をもたない」ということ

第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。

2項 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

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第四条では、天皇は政治的な権力を一切持たないということが明記されています。戦前の大日本帝国憲法では天皇が「統帥権」という、軍隊を指揮する最高権力を持っていたことで当時の軍部がその権力を利用し、暴走してしまいました。このことを教訓として、現行の日本国憲法においては天皇が国政に関わることができないようにすることで、天皇の権威が政治利用されないようにしたのです。天皇は「国事行為」のみを行うこととされ、国政に関わることは出来ません。ですから天皇には選挙権もありませんし、たとえ私的な活動であっても政治的な意味を含むような発言・発表をしてはいけないことになっています。

第二項には、天皇は国事行為を他の人に代わってもらうことができることが定められています。天皇が病気のときや、外国に訪問している際には「国事行為の臨時代行に関する法律」に基づいて執務代行者を立てることができます。

「政治的権力」とは

政治的権力とは、つまり国の政治に対する支配力や影響力のことです。天皇が物理的・心理的などの手段によって国の政治に関わることは憲法に違反します。

「大日本帝国憲法」とは

大日本帝国憲法は1890年(明治23年)11月29日に施行された日本の憲法であり、東アジア初の近代憲法です。大日本帝国憲法を表す呼び名として「明治憲法」「帝国憲法」「旧憲法」があります。江戸幕府が大政奉還したことにより、統治権(立法権・行政権・司法権)は天皇に返還され、新政府による近代的な立憲君主国家がスタートしました。

「統帥権」(そうすいけん)とは

「統帥権」とは、「軍隊(陸軍・海軍)の指揮権」のことで、大日本帝国憲法において天皇が持つとされた大権の一つです。この権限を誰がサポートするかについては憲法上に規定されていなかったことから、軍に対する命令や軍事作戦の立案など(軍令権)に関しては慣習的に軍部が補佐するかたちとなっていました。


この統帥権の規定の”欠陥”が軍部の暴走を助長し、戦争へ突き進むこととなったとも考えられています。

「執務代行者」とは

執務代行者とは、天皇の代理として国事行為を行う人のことをいいます。似たような役割として「摂政」がありますが、こちらは天皇が未成年である場合や、重篤な病気のために天皇本人の意思決定能力がない場合に皇室会議によって設置が決定されるものです。一方、執務代行者は天皇自身がその判断を下して設置されます。もちろん、内閣の助言と承認は必要ですが、天皇以外の人々によって執務代行者の設置を決定されたりすることはありません。

また、執務代行者として委任される対象者、およびその順位は法律で定められており、誰でもなれる訳ではありません。

第5条は、天皇が病気になったらどうするか?

第5条 皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

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第五条は「摂政」についての取り決めです。摂政とは、天皇の代わりに国事行為を行う代理人のことです。皇室典範には摂政が置かれる場合が定められており、一つ目は、天皇が18歳未満の場合、そして二つ目は天皇が重い病気などで長期療養が必要になった場合です。

摂政になれるのは成年の皇族のみで、その順序は(1)皇太子、皇太孫(皇位継承の第一順位にある皇子)(2)親王・王(男子たる皇子及び皇孫)(3)皇后(天皇の御配偶)(4)皇太后(先代の皇后)と決められています。

第四条第一項で定められた内容が適用されることから、摂政も天皇と同様に国事行為だけを行い、国政に関わることはできません。

また、天皇に代わって国事行為を行う摂政ですが、日本の「象徴」として扱われることはありません。あくまでも日本の象徴は「天皇」自身なのです。

「皇室典範(こうしつてんぱん)」とは

皇室典範とは、皇室の制度を定めた法律で、皇位継承などの取り決めについて具体的に定めています。大日本帝国憲法の時代の旧皇室典範は憲法と対等な扱いをされていましたが、現行の皇室典範は日本国憲法に基づく法律となっており、他の法律と同じように国会での審議を通して改正することができます。

第6条は天皇の大事な仕事「任命」について

第6条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

2項 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

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第六条では、天皇が行う国事行為のなかでも重要な、内閣総理大臣と最高裁判所長官の任命について言及されています。

天皇は、国政において重要な役割を果たす内閣総理大臣と、裁判所の長である最高裁判所長官を任命します。ですが天皇が行うのはあくまでも「任命の儀式」であり、天皇自身が自分の意思でこれらの人選を行うことはできません。

国の象徴である天皇が、国会あるいは内閣が指名した人物に任命するというセレモニーを「任命式」または「親任式」と呼びます。

「任命」とは

任命とは、内閣総理大臣や最高裁判所長官に指名された人に対して、その役目に就くことを命ずることです。つまり、指名されただけではその役職についたことにはならず、任命されることで初めてその権力を実行することができるようになります。ただし、天皇は内閣の助言と承認によって任命を行なうわけですから、ここでの任命はあくまでも形式的・儀礼的なものです。

内閣総理大臣とは

内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決によって指名されます。指名選挙は衆参両院で行われますが、選挙制度の仕組み上、衆議院の多数派政党のトップが内閣総理大臣になります。内閣の首長である国務大臣で、他の国務大臣の任命権、また罷免権(大臣を辞めさせる権利)を持っています。行政権は内閣に属するとされていることから、日本の行政府の長ということです。

最高裁判所長官とは

最高裁判所は15人の裁判官から成り、最高裁判所長官はそのトップである裁判官です。最高裁判所長官は司法権の長であり、内閣総理大臣、衆参院議長と並んで「三権の長」と呼ばれます。

第7条は天皇が実際に行なう仕事内容とは?

第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

1 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
2 国会を召集すること。
3 衆議院を解散すること。
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
6 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。


7 栄典を授与すること。
8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9 外国の大使及び公使を接受すること。
10 儀式を行ふこと。

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第七条では天皇が行う国事行為を具体的に規定しています。第三条で定めてられているように、ここに記載されている行為についても内閣の助言と承認が必要です。

天皇が行う国事行為の中には「国会の召集」や「衆議院の解散」など、一見すると国政と関係があるようなものも含まれています。しかし、これらもいわばセレモニー的なものであり、天皇が決定権を持っているわけではありません。

また、ここで定められている国事行為以外にも、日本各地を巡ったり、外国訪問したりなど、公的な行為を行うことがあります。これらは「天皇は国の象徴である」ということを根拠として説明されることが多く、問題ないとされています。ただし、天皇の行為に政治的なメッセージを含ませてはいけないことは第4条で定められています。

国会議員の総選挙とは

国会議員を一度に改選する選挙を総選挙といいます。衆議院の任期満了時、もしくは総理大臣が議会の解散することで総選挙が行われます。参議院では解散がなく、任期満了で議員の半数が入れ替わる方式であるため、総選挙が行われることはありません。

「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証」とは

「大赦(たいしゃ)」「特赦(とくしゃ)」「減刑(げんけい)」「刑の執行の免除」「復権」という五つの行為は「恩赦(おんしゃ)」と呼ばれるものです。皇室や国家の慶弔(けいちょう)の際に、内閣の決定によって受刑者の刑罰を軽くしたり、あるいは消滅させたりすることがあります。

天皇の仕事は内閣が決定した恩赦の内容を認証、つまり承認することです。

栄典(えいてん)とは

栄典とは、国家や社会に対して長い間貢献した個人や、各分野で優れた実績を残した個人に対し、国家がそれを讃(たた)え、世間に広く知らせるために与えられるものです。栄典を授与されたとしても、それによって特権を得ることはありません。また、これによっていかなる利益を得ることも禁じられています。

批准書(ひじゅんしょ)とは

批准書とは、条約に対する同意を示し、内閣がその条約を承認することを示した外交文書のことをいいます。天皇の仕事は批准書を認証することです。

第8条は、皇居は誰のもの?皇室の財産管理について

第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

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第8条では、「皇室」の財産の授受に関して定めています。皇室とは、天皇と皇族(皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃および女王)の総称です。

皇室の人々は政治的中立を保つことに努め、特定の組織や人物との財政的な深い結び付きを避けなければなりません。それは、戦前には皇室の財産管理が国会のコントロール下に無かったために皇族の財産授受が政治的、そして軍事的に悪用されてしまったという過去があります。

そのため現行の憲法では、外部から皇室へ、または皇室から外部へ財産を移動するには有償・無償を問わず国会の承認を得る必要があります。

また、皇居などの皇室の施設は天皇の所有物ではなく、国の財産として扱われています。

本記事は、2017年9月5日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

【公務員試験重要科目「憲法」】「日本国憲法」の全文解説

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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