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【アメリカ州制度】南北戦争の激戦地だった州「ケンタッキー州」解説

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ケンタッキー州


日本人にとって様々な身近な文化が生まれた場所であるケンタッキー州は、アメリカ史のなかでも華やかな一面もありますが、南北戦争の激戦地だったことなど暗い側面も持ち合わせている州です。

開拓が始まったアメリカが次第に大きくなっていくに連れて大きな意味を持つことになるケンタッキー州についてご紹介します。

目次

ケンタッキー州の特徴

2018年時点でのケンタッキー州の総人口は約445万人です。1970年頃から人口が増加し始め、直近では10年間で20万人程度のペースで人口が増加しています。

ケンタッキー州を知るうえで欠かせない特徴としては、エイブラハム・リンカーンの出生地、南北戦争の激戦地、バーボンウィスキー発祥の地、ケンタッキーフライドチキン創業の地、さらには競馬の世界3大ダービーのひとつケンタッキーダービーの開催地などがあり、様々な分野で広く知られています。

また、日本人にとって身近なところでは、ケンタッキー州にトヨタ自動車の生産工場があり、アメリカで最も売れた日本車であるトヨタのカムリが生産されています。これに付随する形で部品供給会社など日系関連企業も多く進出しています。

アメリカの自動車産業も日本に負ける訳にはいかず、アメリカ人に最も人気があるとされるフォードのピックアップトラックFシリーズがケンタッキー州で生産されており、日米で熱い自動車生産競争が続いている地でもあります。

ケンタッキー州は、アメリカ史上最も偉大な大統領と讃えられるエイブラハム・リンカーンが生まれた場所としても知られています。現在では、生家の跡地には神殿のような建物があり同州の誇りとして親しまれています。ちなみに、エイブラハム・リンカーンはケンタッキー州生まれですが、7歳でインディアナ州、21歳でイリノイ州へ引っ越しをしたため、それぞれの州が「ゆかりの地」を名乗っています。

ケンタッキー州は1861年から1865年にかけて起きた南北戦争の激戦地としても知られています。南北戦争の定義は複雑なため一言では言い切れませんが、奴隷制度を廃止しようとした北軍(アメリカ合衆国)と、奴隷制度を維持しようとした南軍(アメリカ連合国)に分かれて、アメリカ人同士が争いました。

まさに北と南に分かれて戦ったわけですが、その南北の境界線が「メイソン-ディクソン線(Mason-Dixon Line」と呼ばれており、ケンタッキー州の一部はこのメイソン-ディクソン線のすぐ南に位置しています。境界線に近いことが所以で、ケンタッキー州には北軍と南軍の両方の気質があり、常に州内では争いがあったとされています。

当時のケンタッキー州は奴隷制度を認めている州でしたが、南北戦争の際には奴隷制度を廃止する北軍の一員として参加しました。この「ねじれ」も州内での争いを加速させてしまいます。さらに、北軍の代表だったエイブラハム・リンカーンと、南軍の代表だったジェファーソン・デイヴィスは同じケンタッキー州の出身ということもあり、両者の家族も含めて対立姿勢が強まりました。

南北戦争の際には両軍合わせておおよそ70万人から90万人が犠牲になりました。なかでもケンタッキー州は、前述したように州内での争いが起こりやすい環境だったため、一般市民の犠牲者が多かったとされています。


このようにケンタッキー州はエイブラハム・リンカーンや南北戦争と強い繋がりがある州です。現代では、自動車産業やスポーツなどの文化も充実しており、陰陽両面において特徴があります。

ケンタッキー州の歴史

ケンタッキー州は、1792年に15番目の州として認められました。ケンタッキーとは、インディアンの言葉で「平原」を意味しており、実際に牧草が生えた平原が広がっており「ブルーグラスの州(Blueglass State)」という愛称もあります。

もともとはバージニア州の一部でしたが、ケンタッキー郡から州都のリッチモンドへのアクセスが悪く危険だったことや、州がケンタッキー郡での交易を重要視していないことを理由に、バージニア州から独立するような形で州に昇格しました。

開拓以前からオハイオ川やミシシッピ川周辺でインディアンの文明が発展していましたが、ケンタッキーの地は主に狩猟場としてだけ使われており、開拓が始まった1700年代には定住していたインディアンはいませんでした。

1750年、白人としてトマス・ウォーカー偵察隊が初めてこの地を訪れます。1768年にはインディアンのイロコイ族とイギリス政府の間で土地の買収が成立します。(スタンウィックス砦条約)さらに、1775年にはチェロキー族との契約が成立し、現在のケンタッキー州の土地は白人のものになりました。(シカモア・ショールズ条約またはワトーガ条約)

その後、バージニア州やノースカロライナ州から開拓者が集まり、ケンタッキー州でも開拓が始まります。後にケンタッキー州の創設者と呼ばれるようになるダニエル・ブーンもその中のひとりでした。ダニエル・ブーンはアメリカでは、インディアンからの攻撃を受けながらも開拓を突き進めた英雄として知られています。

ダニエル・ブーンを始め開拓者たちはケンタッキーの地で農業を始めました。主にタバコ、トウモロコシ、麻を栽培しますが、いずれも広大な土地を使っていたため、膨大な人力が必要となり奴隷制度へ繋がっていきます。

各地でプランテーション経営が盛んになり始めた1800年頃には、ケンタッキー州は奴隷制度の中心地と呼ばれるほどになり、州内の奴隷保有者は奴隷制度を認めていた州に奴隷を売り始めました。オハイオ川などの天然の流通経路に恵まれていたケンタッキー州を起点にして奴隷たちは各地へ広まったのです。

1861年、南北戦争が開戦した後もケンタッキー州は奴隷制度を維持したまま、奴隷制度を廃止しようとする北軍に同調します。南北の境界線に位置していたケンタッキー州は、あくまでも公式には中立を主張したものの、州内での争いが絶えず北軍の配下になりました。北軍がケンタッキーの地を配下に収めた際に隊を率いていた人物こそ、第18代大統領になるユリシーズ・グラントです。

南北戦争終了後は、タバコ栽培を中心に生活をする人が増えましたが、1900年代には農業から石炭産業に切り替える人が続出し、ケンタッキー州を飛び出してイリノイ州やアイオワ州などの工業都市へ引っ越す人が増加しました。

1950年頃からは、現代へと繋がる広大な土地や川などの流通経路を活かした自動車産業や軍需産業などの工業が発展します。

ケンタッキー州の政治情勢

ケンタッキー州では2012年、2016年いずれの大統領選でも共和党を支持しています。1996年以降、大統領選では共和党が勝利し続けていますが、地域によっては民主党を支持する母体が強く、選挙の度に「揺れる州」または「激戦区」と呼ばれています。

1964年以降、ケンタッキー州が選んだ候補が大統領になるというジンクスのようなものが生まれ、ケンタッキー州の結果は大統領選の結果を反映すると言われています。

ケンタッキー州の経済

2018年時点、ケンタッキー州の失業率は4.4パーセントで、アメリカの平均値よりも僅かに高い数値です。リーマンショック直後は10パーセント以上の失業率でしたが、徐々に回復傾向にあります。

ケンタッキー州東部は炭坑や農業で栄えていましたが、現在では失業者増加と人口減少が大きな問題になっています。2017年、これを受けた州政府は州東部に太陽光利用型植物工場を建設し、通年で新鮮な野菜を全米に届ける計画を始めました。


ケンタッキー州の税金

2018年時点で、ケンタッキー州の消費税は6パーセントです。州内の多くのエリアでは地方税が課せられないため他州よりも税率は低いと言えます。所得税は2パーセントから6パーセントの6段階に区別されています。

ケンタッキー州はアルコール類の提供や販売を禁止している「ドライ群(dry county)」としても知られています。州内に120ある郡のなか38郡で禁止され、49郡では何かしらの規制があります。このような背景があるため、アルコールを買えるエリアでは高い税金がかかります。

ケンタッキー州の銃や薬物問題

ケンタッキー州ではマリファナは違法です。しかし、古くからアメリカ国内でトップクラスのマリファナ生産量があり、生産者価格だけで日本円で1,500億円の規模があるとされています。マリファナを禁じているケンタッキー州で最も高い換金作物はマリファナという皮肉な事実があります。

ケンタッキー州の銃に対する取り組み格付けは最低ランクの「F」とされています。マリファナやアルコールも規制されているがゆえに銃犯罪に繋がったり、バックグラウンドチェックなしで銃が購入可能なことが影響しています。

ケンタッキー州の教育または宗教事情

ケンタッキー州にはアメリカでもトップクラスのケンタッキー大学やルイビル大学などがありますが、地域重視大学と呼ばれる州民向けのカリキュラムが充実した大学が6校あり、学びやすい環境は国内でも高い州とされています。

ケンタッキー州の宗教は90パーセント近くがキリスト教とされており、無宗教の人は14パーセントです。州内には1900年頃に創設された神学校が多くあり、むかしから信仰心が強い州と言えます。

まとめ

ケンタッキー州は、南北戦争の激戦地であり奴隷制度の中心でした。とくに南北戦争の中心的存在だったエイブラハム・リンカーンとユリシーズ・グラントはアメリカ史でも名を残す大統領経験者としても知っておくといいでしょう。

本記事は、2018年8月4日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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