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【アメリカ州制度】観光産業やスポーツなどの文化が盛んな州「ユタ州」解説

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ユタ州


アメリカ西部にあるユタ州はモルモン教徒によって築かれ、いまもモルモン教徒が多く生活しています。2002年のソルトレイク冬季オリンピックが開催された場所としても知られています。また、ユタ州、コロラド州、アリゾナ州、ニューメキシコ州の4つの州の境界線がある「Four Corners(フォー・コーナーズ)」があることでも有名です。

ユタ州を知る上で欠かせないことはモルモン教の活躍です。今回はユタ州の歴史にモルモン教がどのように関わってきたのかも含めてご紹介します。

目次

ユタ州の特徴

2018年現在、ユタ州の総人口は約310万人です。人口は全米で34番目ですが、州の面積は13番目に大きいため人口密度は1平方キロメートルに13人と低いことが特徴です。また、ユタ州の大半は連邦政府が保有している公有地のため、同州のおおよそ70パーセントが国有林、国立公園、国立モニュメントです。

ユタ州は大半が公有地ということもあり、都市部以外には人が住んでいないという特徴があります。ひとたび郊外に出ると人の気配がなくなるというような雰囲気が味わえるのがユタ州です。別の言い方をすれば自然が多く残っている場所でもあるため、大自然を満喫したいという観光客が世界中から訪れています。

ユタ州の最大の特徴が「モルモン教」の中心地であることでしょう。モルモン教とは1830年にアメリカで誕生した宗派で、宗教学上の扱いはキリスト教の新宗教に該当します。日本語では「末日聖徒(まつじつせいと)イエス・キリスト教会」と表記されます。そんなモルモン教の創始者はジョセフ・スミス・ジュニアですが、1844年にイリノイ州で宗教的迫害を受けて兄と一緒に殺害されてしまいます。

イリノイ州に残っていたモルモン教の信者たちを引き連れて現在のユタ州ソルトレイク・バレーにやってきたのがモルモン教の後継者であるブリガム・ヤングです。ブリガムを始め信者たちは西部の地で宗教の弾圧や迫害を受けることがない自由な生活を始めました。こうして築かれた都市がユタ州の州都でもあるソルトレイクシティです。

ソルトレイクシティはモルモン教の本部があることでも知られ、中心街のテンプルスクエアにはソルトレイク神殿と呼ばれるモルモン教の巨大な教会があります。この神殿と州議事堂を中心にして作られたソルトレイクシティはアメリカで最も美しい都市と言われるほど見事に区画整備がされています。

ユタ州ではおおよそ60パーセントがモルモン教徒とされています。現在では様々な宗教が入り混ざりモルモン教徒は減少傾向にあるものの大多数を占めており、ユタ州ではモルモン教の「戒律」に合わせた文化が根強いことが特徴です。代表的な戒律に、アルコール、タバコ、カフェインは摂取しないことや、同性婚やタトゥー、女性が肩を見せることもいけないとされています。

このような戒律があるためユタ州の多くではアルコールは販売が厳しく規制され、日曜日は多くの店が休むなど独特の文化が定着しています。一方で、観光が主産業でもあるため観光客には柔軟に対応する場所もあります。一見は厳しく感じるモルモン教の戒律ですが、ユタ州は敬虔な信者が多いためアメリカのなかでも特に治安が良いという側面もあります。

このようにユタ州はモルモン教徒によって築かれた州であるため、モルモン教を知ることでユタ州の文化や特徴が理解できるでしょう。

ユタ州の歴史

ユタ州は、1896年にアメリカ合衆国45番目の州になりました。山や森に囲まれたこの土地ではおおよそ12,000年前に人が生活していた形跡が残っており、インディアンのアナサジ族などがバイソンやマンモスなどを狩猟しながら生活していました。これらの民族が姿を消した後、1500年代頃にナヴァホ族やゴシュート族などがこの地を拠点にしました。


1540年、スペイン人探検家のフランシスコ・バスケス・デ・コロナドがこの地を訪れたことがインディアンと白人の初めての接触とされています。この頃はアメリカ大陸西部に誰も知らない黄金の七都市があると信じられていたのです。後に、ユタの地にやってくることになるブリガム・ヤングが西を目指した理由のひとつとして考えられています。

アメリカがイギリスからの独立宣言をした1776年には、ドミンゲス・エスカランテ遠征隊が現在のニューメキシコ州から太平洋へのルートを切り開こうとユタを訪れていますが、あまりにも広大で不毛な砂漠地帯だったため入植するには不向きな土地として記録しました。このこともありユタ州はほとんど開拓されることなく多くの自然を残していたのです。

1821年、メキシコがスペインから独立し、ユタやカリフォルニアを含めた一帯はメキシコの領土になります。この頃にはアメリカ政府は太平洋へのアクセスを悲願とし、ルイス・クラーク探検隊を始め多くの探検家が太平洋へとつながるルート開拓を進めていました。

そんななか、ユタ州北部にある巨大な湖を発見した罠猟師のジム・ブリッジャーは、そこの水が強烈な塩分を含んでいたため海水と誤解し、そこが太平洋だと信じ切っていたという逸話があります。しかし、実際には死海と同じ程度の塩分濃度をしているグレートソルト湖だったのでした。

ユタ州のソルトレイクという地名はこの湖に由来しています。ちなみに、ユタ州のプロボ市やオグデン市などはこの時代にその土地を訪れた罠猟師の名前がそのまま付けられています。

1847年、後にソルトレイクシティを築くことになるモルモン教のブリガム・ヤングと数千の信者がこの地にやってきます。ソルトレイクバレーに到着したブリガム・ヤングは「This is the place.」と言い、この発言がユタがモルモン教の拠点になった原点とされています。時を同じくしてアメリカ政府は米墨戦争で優位に立ち、メキシコ領だったカリフォルニア州を制圧、翌年の1848年には正式にユタも含む西南部一帯をメキシコから割譲されました。

1850年にはユタ準州になりますが、1896年まで州への昇格は拒否され続けました。その理由はモルモン教が一夫多妻制を容認していたことや、州民の大半がモルモン教徒であることだとされており、間接的な宗教の弾圧は続いていました。

多くのアメリカ人は一夫多妻制のモルモン教を反逆者とみなし、信者が合衆国に対し反乱を起こそうとしているというデマを流します。これによりモルモン教徒とアメリカ軍の内乱が起こりました。(ユタ戦争)

1880年に一夫多妻制は違法とする法律が制定され、1890年にモルモン教の戒律でも一夫多妻制は禁止されました。これを受けた後の1896年、ユタ準州は州に昇格しました。州昇格後は、なかなか開拓されなかったことなどもあり、大自然を生かしたウインタースポーツや景観美の名所として発展していきました。

このようにユタ州の歴史はモルモン教の弾圧が深く関係しています。モルモン教が築いたユタ州は現在でもモルモン教の文化が根強い州であることを知っておくといいでしょう。

ユタ州の政治情勢

ユタ州では2012年、2016年の大統領選の際には共和党を支持しています。同州は圧倒的に共和党が強く、大統領選においては1968年から共和党が大差で勝ち続けています。モルモン教は政治的には中立を貫いていますが、無宗教者よりも共和党を支持する傾向があるとされており、国内ではユタ州、テキサス州、アイダホ州は共和党の牙城と言われています。

ユタ州の経済

2018年時点、ユタ州の失業率は3.1パーセントです。アメリカの平均値よりも1パーセント程度低く、リーマンショック直後の2010年の調査では最も事業に適した州で全米1位でした。とくにソルトレイクシティのIT産業やハイテク産業が成長しており、すべてが高いカリフォルニア州から企業が拠点を移していることも影響しています。

ユタ州の税金

2018年時点、ユタ州の消費税は6.77パーセントです。連邦税が5.95パーセントで、地方消費税の平均が0.82パーセントです。西海岸の州と比較すると税率は低いものの、個人にも一律5パーセントの所得税が課せられます。カリフォルニア州などの大都市圏から移住する人からすると税も物価も安く、治安も良いため非常に住みやすい州と言われています。

ユタ州の銃や薬物問題

ユタ州ではマリファナは全面的に禁止されています。敬虔なモルモン教徒が多いことや保守的な人が多いことが関係していると言えるでしょう。ユタ州は治安が良いとされていますが、銃に対する取り組み格付けは最低ランクの「F」グレードです。これには州外からの移住者が増加し、モルモン教徒が減少していることが影響していると考えられています。

ユタ州の教育または宗教事情

ユタ州の教育に対する取り組みは全米でもトップクラスです。事実、教育水準はアメリカで3番目に高く、州の予算の7割は教育に充てられています。とくに優れている分野は低所得者層への教育支援で、様々な奨学金制度が州の支援によって行われています。


ユタ州の宗教はモルモン教が約60パーセント、キリスト教が25パーセントを占めています。一方で、無宗教とする人も16パーセント近くを占めており、決してモルモン教が独占している訳ではなく様々な宗教が混在しているのが実情です。

まとめ

ユタ州はモルモン教とのつながりが深い州ですが、観光産業やスポーツなどの文化が盛んな州です。現代では宗教の自由が確立されているため生活しやすい場所として支持されています。

本記事は、2018年9月6日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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