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【憲法について】意外と知らない?「日本国憲法改正」のルール

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日本国憲法改正


目次

はじめに

日本の最高法規である「憲法」の改正についての議論は1946年の憲法制定後、常に続いてきました。現在の国会では「憲法改正」を目指す改憲派の勢力が優位と言われています。

しかし、実際に「憲法改正」をする場合の「国民投票」の仕組みがどうなっているのか、ピンとくる方は少ないと思います。それもそのはず、憲法は制定後1度も改正されたことがなく、国民が皆、未経験者なのです。

今回は、意外と知らない「日本国憲法改正」のルールについて解説します。

日本で「憲法」を改正するルールとは?

日本には「日本国憲法」という法律があるということは、ご存知だと思いますが、この「憲法」を改正しようとするときにどのようなルールが適用されるのかは意外とよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。

このページでは、「日本国憲法」を改正する場合の手続きなどについてご紹介します。

「憲法」の中にも、改正について触れられている条文がある

「日本国憲法第96条」には、憲法を改正しようとする場合、「国会で衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成を経た後、国民投票によって過半数の賛成を必要とする」と書かれています。

憲法改正案が、まず国会の衆議院と参議院でそれぞれ約67%以上の賛成を得て、その後行われる「国民投票」で50%以上の賛成があれば憲法改正できる、という内容ですが、この「国民投票」について具体的な記載は無く、「国民投票」をどのように行えばよいのかということが長年議論されてきました。

H19「憲法改正国民投票法」の成立-国民投票の方法が具体的に

そこで、「憲法改正」に意欲的な第1次安倍晋三内閣時代の平成19年(2007年)に成立したのが「憲法改正国民投票法」です。

これまで具体的ではなかった「憲法改正の発議」と、「国民投票」について、次のような具体的なルールを定めました。

「憲法改正原案」の発議について

「国民投票法」では、「憲法改正原案」を国会で発議する前に、憲法審査会を国会に設置して原案について審査することを定めました。その憲法審査会の中で、「憲法改正」の原案について衆議院が100人以上、参議院が50人以上の賛成があれば、国会に提出できるとしています。

また、「憲法改正原案」の発議は、内容が関連する事項ごとに区分して行う、というルールも作られました。


ただし、「国民投票法公布」から3年間は「憲法改正原案」の発議は禁じられていました。

「国民投票」について

「国民投票法」で定められた「国民投票」のルールを解説します。まず、投票できる者は「満18歳以上の日本国民」とされました。ただし当時はまだほかの選挙について、投票権が20歳以上のみ認められていたので、公職選挙法の改正でほかの選挙についても「18歳以上」と改正されるまでは、「満20歳以上」のみ選挙に参加できることになっていました。

平成28年に公職選挙法が改正されて以降は、正式に「18歳以上」に「国民投票」の投票権が認められました。

そのほかのルールには、「国会発議後60日から180日の間に国民投票を行う」というように、具体的に「国民投票」の時期も決められました。

そして「有効投票数の過半数の賛成で改正原案は成立する」とも定められており、有権者全体、つまり国民全体の過半数ではなく、あくまでも有効投票数の50%以上で成立するといった、憲法では具体的に触れられていなかった「過半数」の意味についても具体的になりました。

また、投票前の選挙活動について「公務員や教員の地位を利用した投票運動を禁止する」「テレビ・ラジオによるコマーシャルは投票日の2週間前から禁止する」などの条項も、定められました。

「国民投票法」の問題点

国の根幹とも言える「憲法」の改正について具体的にルールを作った「国民投票法」については、護憲派を中心にさまざまな問題点の指摘がされており、現在でも議論が続いています。

代表的な問題点としては、まず、投票数が何票以上であればその「国民投票」の結果が有効なものとして扱われるかという「最低投票制度」を定めていないことが挙げられています。

「最低投票制度」がない場合、極端に言えば、たとえば投票数がたった10票だったとして、賛成が9票であれば過半数を超えているから有効、となってしまいます。ほかの1億人の国民の民意は反映されないことになるのです。

さらに、投票権を有する者の年齢と、成年年齢が20歳と定められていることの整合性をどう考えるのか、ということや、テレビ・ラジオの規制は妥当なのか、またインターネット上のさまざまな選挙運動はどう扱うのかということ、そして教員の「地位利用」と教育の関連性という視点からも、さまざまな異論や疑問の声があがっているようです。

「憲法改正」のための「国民投票」の流れ

「国民投票法」によって決められた「憲法改正のための国民投票」がどのように行われるのか、おおまかな流れをご紹介します。

1)憲法改正原案の発議

「国民投票法」で定める「衆議院100人以上」かつ「参議院50人以上」の国会議員の賛成により、憲法改正案の原案(正式には「憲法改正原案」というようです。)が発議されます。

2)憲法改正の発議

「憲法改正原案」は、「衆議院憲法審査会」と「参議院憲法審査会」で審議されます。そして「衆議院本会議」と「参議院本会議」にて3分の2以上の賛成があれば可決されます。

「憲法改正原案」が衆参両院で可決した場合は、国会が「憲法改正」の発議を行い、これをもって国民に「憲法改正」を提案したものとされます。

3)国民投票の期日

「憲法改正」が国民に向けて提案されると、次はいよいよ「国民投票」。「国民投票」の期日は、「憲法改正」の発議をした日から起算して、「60日以後180日以内」のうち、国会が議決した期日が設定されます。


4)広報・周知

「国民投票」の国民への広報と周知については、まず憲法改正案の内容を国民に知ってもらうことを目的にした、「国民投票広報協議会」が設置されます。この協議会には各議院の議員から委員が10人ずつ選任されます。

「国民投票広報協議会」では「憲法改正案」の内容や賛成・反対の意見、そのほか参考となる情報を掲載した「国民投票公報」の原稿作成や、投票記載所に掲示する「憲法改正案要旨」の作成、「憲法改正案」などを広報するためのテレビやラジオ、新聞広告などを行います。

また、総務大臣、中央選挙管理会、都道府県及び市町村の選挙管理委員会などの選挙を担当する組織については、「国民投票」の方法や「国民投票運動」の規制、そのほか「国民投票」の手続きに関しての、必要な事項を国民に周知することを担当するようです。

5)国民投票運動

「国民投票運動」とは、「憲法改正案」に対して、賛成又は反対の投票をするよう、または、投票しないように勧誘することです。

「憲法改正」については、政党やその他の団体、マスコミ、個人などが、一定のルールのもとに「国民投票運動」を行うことができます。

ただし、投票期日2週間前、つまり14日前からは、「国民投票広報協議会」が行う広報のための放送を除き、テレビやラジオの広告放送は制限されることになっています。

6)投票

その後、いよいよ「国民投票」の投票当日を迎えることとなります。

「国民投票」の投票権は、「憲法改正案」ごとに一人一票です。

投票用紙には、賛成の文字及び反対の文字が印刷され、「憲法改正案」に対し賛成するときは賛成の文字を丸で囲み、反対するときは反対の文字を丸で囲んで、投票箱に投函すると決められています。

また、ほかの選挙の投票と同じように、期日前投票(投票期日前14日から)や不在者投票、在外投票なども認められています。

7)開票

「国民投票」の投票の後には、開票が行われます。

「憲法改正案」に対する賛成の投票の数が、投票総数(賛成の投票の数+反対の投票の数)の2分の1を超えた場合は、国民の承認があったものとなります。

開票の結果を受けて、内閣総理大臣はすみやかに「憲法改正」の公布のための手続きを進めます。

8)結果を官報で告示

最後に、「国民投票」の結果を官報で告示して、「憲法改正」が認められたことが国民に知らされる、という流れが想定されています。

まとめ

このページでは、意外と知られていない「憲法改正」の方法と、その際に行われる「国民投票」について解説しました。

「日本国憲法」は戦後1946年に制定されて以来、一度も改正されたことがありません。そのため、実際に「憲法改正発議」となり「国民投票」が行われたことが無いため、誰も経験したことがないということもあり、実はどのような手続きで「憲法改正」が行われるのかを知らないという方は多いのではないでしょうか。

公務員を目指す方なら、憲法改正の流れや国民投票法の内容とそれに対する異論はおさえておきたいところです。

「日本国憲法」が制定されてから70年以上が経過した今、これから実際に「憲法改正」のための「国民投票」が行われる日がくるのか、それとも「国民投票」の制度だけが残っていくのか、ますます議論は活発になりそうです。

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本記事は、2019年12月6日時点調査または公開された情報です。
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【公務員試験重要科目「憲法」】「日本国憲法」の全文解説

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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