【国家公務員】医師免許を持つ「医系技官」の仕事内容

厚生労働技官の「医系技官」の仕事内容をご紹介します。

医師免許や歯科医師免許を活かし、医師ではなく国家公務員として働く「医系技官」は、全国の医師を政策や制度面から支える仕事を担っています。


医療政策のスペシャリスト「医系技官」の仕事

主に厚生労働省に所属する国家公務員の一員であり、「厚生労働技官」という技術系行政官の一職種である「医系技官」は、医学や歯学の専門知識を活かした医療政策に関わる仕事を担います。

具体的に「医系技官」にはどのような業務が任されているのか、説明します。

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「医系技官」の仕事内容

「医系技官」としての業務は、東京にある厚生労働省本省内だけでなく、他府省庁や全国の地方自治体、そして海外にも広がっています。

このことは国民の医療や衛生、保健、健康といった課題は、厚生労働省内だけではなく、さまざまな組織との交流や連携が必要なことを物語っています。

世界中、日本中でそれぞれ勤務する「医系技官」はどのような仕事をしているのか、勤務先ごとにご紹介します。

厚生労働省に所属する「医系技官」の仕事内容

厚生労働省の中で、「医系技官」が活躍する部局はさまざまです。それぞれの部署と、その部署での「医系技官」の主な仕事内容について解説します。

医政局の業務

医政局は国の医療体制に関する法律を所管しています。具体的には、病院の施設基準や医療の安全性などを定めた医療法や、医師法や歯科医師法など医療職種の資格についての法律についても担当しており、国民へのより良質で効果的な医療体制の提供を目指す部署です。

医政局の「医系技官」は各地方自治体とも連携し、地域の診療体制の見直しや、地域によって医師の数に偏りが出ていることへの対策、医師の働き方対策などにも取り組んでいます。

そして臨床研究や治験の活性化や再生医療研究の推進、そして先進医療や医療機器についての体制を整備するなど医療政策の企画立案の中心とも言える業務を「医系技官」が担当しています。

また、医政局の歯科保健課では、歯科医師免許を持つ「医系技官」が歯科疾患に対する適切な医療体制の提供を目指して、歯科医師の研修などを担当しているようです。


健康局の業務

健康局は、各地方にある保健所などを通じてその地域の保健の向上する仕事のほか、エボラ出血熱や、エイズ、結核、新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症や、糖尿病、がんなどの生活習慣病の対策、難病対策、適正な臓器移植の推進などを担当しています。

例えば、「医系技官」として難病対策に関わる場合には難病対策課という部署に配属されます。難病といっても多種多様な症状があるため、それぞれに合わせた医療提供体制の在り方を調整します。

臨床現場の実態を把握し、実現可能な形を有識者とともに考え実現していくためには「医系技官」の現場を知る力と、せんもんちしきが不可欠です。また、難病の治療方法の開発や、疾患の克服に向けた研究の動向を日々確認し、研究を支援していくことも重要な役割のようです。

老健局の業務

老健局は、これまでに例のない高齢社会を迎える日本において、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるような介護保険制度をはじめとする高齢者介護・福祉施策を推進する役割を担っています。

介護が必要になってもできる限り自宅や地域で自立した日常生活を営むことができるよう、必要な介護サービスを提供することは今後高齢化していく日本社会には不可欠です。

老健局の「医系技官」は、要介護認定制度や介護報酬制度の見直し、改善などに取り組むほか、医学の知識から介護状態にならないよう介護予防の取り組みや、また介護をする側の人材確保など、介護についての体制・政策を総合的に検討しています。

保険局の業務

保険局は、健康保険、船員保険、国民健康保険などの医療保険制度や、後期高齢者医療制度に関する政策の企画立案に関する業務を担います。

保険局の「医系技官」は、2年に1度行われる診療報酬改定の業務を担当する場合があり、常に最新の臨床現場の状況を踏まえながら、適切なルールを作ることが求められます。制度を作る行政官としての能力と、現場を知る医師としての能力が必要な業務と言えます。

大臣官房国際課の業務

厚生労働省の大臣官房国際課という部署では、WHO(世界保健機関)や G7、G20といった、保健分野での世界の国々との多国間連携の対応を担当しています。

「医系技官」としての具体的な業務は、WHO総会やG7保健大臣会合といった、世界の国々が参加する会合に向けての合意文書の文言交渉や、会合本番に向けた発言・交渉の準備などがあるようです。

そのほかの部局で働く「医系技官」

厚生労働省内には、上記以外にも「医系技官」が活躍する部署が多数あります。例えば、大臣官房内の健康危機管理・災害対策室、医薬・生活局や労働基準局、子ども家庭局、社会・援護局などです。

また、全国の空港や港などにある検疫所で勤務する「医系技官」もおり、感染症の水際対策などにあたっています。

「検疫官」の仕事と「検疫所」の役割について

感染症対策の最前線にいる公務員として注目されている「検疫官」。厚生労働省所管の検疫所がどのような業務を行い、その中で「検疫官」がどのような仕事を担当しているのかを解説します。

環境省や文部科学省など他省庁に出向する「医系技官」の仕事内容

「医系技官」の中には、厚生労働省から出向というかたちで、環境省や文部科学省などで働く方もいます。


環境省への出向では熱中症対策について、医学の専門知識を背景とした一般の人への予防知識の普及啓発業務を担当する「医系技官」がいます。

文部科学省への出向では、学校保健の分野に関わる「医系技官」がおり、アレルギー対策や感染症対策、子どもの近視対策など、学校保健のあらゆる課題について取り組んでいます。出向という立場を活かし、厚生労働省とも密に連携することができる仕事です。

全国の都道府県に地方出向する「医系技官」の仕事内容

「医系技官」の中には、全国の都道府県に地方出向する職員もいます。

高齢化率の高い秋田県に出向している「医系技官」は、健康寿命日本一を目指すための取り組みを、医師としての知識や、行政官としての知識を活かして進めています。

そのほか、地域医療の体制強化や、医師不足や偏在についての対策は全国で必要とされており、都道府県に派遣された「医系技官」は、保健医療計画、医師・看護師確保、救急医療、がん対策や小児・周産期医療など医療提供体制の確保に関する業務を担当しています。

WHOなど、海外の組織へ派遣される「医系技官」の仕事内容

WHOなど、海外の組織へ派遣される「医系技官」もいます。

海外で活躍する「医系技官」は、WHOに派遣され、途上国の医療体制の整備に関わったり、長期在外研究員としてアメリカの保健福祉省で研究をしたり、海外の大学院に留学し、外国の公衆衛生などについて学んだりしているようです。

まとめ

このページでは、厚生労働省の行政官として、そして医師や歯科医師としての知識やスキルを持つ「医系技官」という国家公務員について、どのような仕事を担当しているのか、所属先と仕事内容をご紹介しました。

「医系技官」の仕事は、臨床医師とは異なり、臨床の現場では出会わないような人や業務と、広く関わることができるという特徴があります。

中には「医系技官」の道を選ぶことで、医師としてのキャリアから離れることに抵抗があったという方もいるようですが、日本全国の医療体制について検討し、改善していくことを任されたり、世界規模で公衆衛生の改善に携わったり、スケールの大きい仕事や、あらゆる人に影響を与えるような仕事にやりがいを感じる方も多いようです。

「医系技官」の仕事は多岐にわたりますので、より具体的な仕事内容について興味がある方は厚生労働省が発信している「医系技官採用情報」などでご確認ください。

▼参考:厚生労働省「医系技官採用情報」
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/saiyou/ikei/index.html

本記事は、2020年3月30日時点調査または公開された情報です。
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