アメリカの学校で行われている「いじめ対策」 - ピアメディエーション

「いじめ」を解決するための方法として、アメリカでは「ピアメディエーション」という手法を使うことがあります。

本記事では、アメリカで学校の先生として働いた経験のあるTさんに、「ピアメディエーション」によるいじめ解決へのアプローチについて、まとめていただきました。

はじめに – アメリカの学校で行われている「いじめ対策」

これまで、いじめは悪い、絶対にしてはいけない、と一生懸命生徒達に教えてきました。しかし残念ながら、学校内でのいじめがなくなる気配はありません。

それどころか、何か揉め事が起こっても問題が小さいうちは学校や保護者が解決を先延ばしにしたせいで、最終的にはテレビのニュースになるような大問題に発展してしまった場合もあると思います。

ではもし、いじめの当事者達が、話し合いによって自分達で解決策を探っていけば、いじめ問題はなくなるのでしょうか。

そこで今回は、アメリカの学校でよく使われる話し合いによる紛争解決、「ピアメディエーション」をご紹介したいと思います。

「ピアメディエーション」とは?

訴訟大国アメリカでは、ちょっとしたトラブルでも裁判をして解決しようとします。しかし裁判に持ち込むと、解決するまでに莫大な時間と費用がかかります。その上裁判に負けると、びっくりするような金額の損害賠償金を請求されます。

そこで1970年代頃から、裁判に持ち込まずに調停によって、話し合いで争い事を解決する方法(メディエーション)が多く用いられるようになりました。

メディエーションは、紛争の事後解決から事前予防、または対立の悪化防止など、アメリカ社会で大きな役割を担い、現在では、メディエーションによる紛争解決法は大人社会だけではなく、学校内で起こった生徒間の揉め事の解消などにも多く用いられていて、特に生徒間で行うメディエーションのことは、「ピアメディエーション」と呼ばれています。

「ピアメディエーション」のピア(peer)は、仲間・クラスメートまたは友人という意味で、第三者を介して対立している当事者同士が直接話し合い、共通意見を見出しながら双方納得のいく解決策を探っていきます。この場合の第三者は、クラスメートがなる場合が多いですが、スクールカウンセラーやクラスの担任の場合もあります。

アメリカの学校では、初期のいじめ問題に対処する方法として、「ピアメディエーション」が用いられる場合があります。しかしメディエーションを使ったいじめ対策法には賛成反対、両方の意見があります。

「ピアメディエーション」 – 賛成意見

「ピアメディエーション」賛成派は、暴力や罰則を使わずメディエーションを使っていじめ問題を解決していく事で、メディエーションに関わった生徒達が、平和な社会を建設できる能力も育成できる点をあげています。

いじめた子自身が、いじめた相手との関係修復を図ることによって、感情的な対立も残りにくく、いじめられていた生徒や仲裁役の生徒たちも、いじめとは何か、そして今後もし、またいじめが発生した場合、どのように対処すべきかを学ぶことができるそうです。

それ以外にも、学校内で起こった紛争や生徒が犯した少年犯罪をメディエーションによって解決すると、再犯率が60%も減少して、和解率も80%以上、そしてその90%以上が和解内容の履行を果たしているという調査機関の発表もあります。

「ピアメディエーション」 – 反対意見

意見の食い違いによって起こった諍いを、暴力や罰則ではなく対話によって穏便に解決するのは、素晴らしいことだと思います。そしてピア・メディエーションをうまく使えば、学校でのいじめは根本から解決されるはずです。

しかし、いじめ対策にピア・メディエーションを使うことに対して、反対の意見もあります。

反対派の理由としては、自分をいじめた子供と面と向かっての話し合いをしなければならないメディエーションは、いじめられている子供にとって、大変な精神的負担になるという点です。

仲裁役の第三者を交えるとしても、メディエーションは当事者が自主的に紛争を解決することが大前提です。そのためいじめられている側は、いじめの張本人と何度も話し合いを繰り返し、時間をかけて和解を目指していかなければならないわけですが、いじめられた側からすれば、そんなことをするよりも、いじめの張本人と会うことを避け、転校したり、引きこもったりして、なるべく早く自分の身の安全を確保して、心の傷を癒したいと思っている場合がほとんどです。

また仲介人がいくら私情を挟まず、公平に対処するよう努力しても、いじめている側いじめられている側両方に、時として間違ったメッセージを送ってしまう可能性があります。

例えば双方を目の前にして、誰にでも良い点と悪い点があると仲裁人が言ったとします。するといじめられている側は、いじめている側が100%悪いとは限らない、もしかしたら自分にも悪い点がある(かもしれない)ので、いじめという罰を受けてしまっているのだ、と解釈してしまう場合があります。

そしていじめをした側には、いじめた側は100%不適切な行動をとっていて、いじめはすぐにやめなければならないと伝えなければならないのに、仲裁人が誰にでも良い点と悪い点があると言った時点で、いじめにも良い点があると、いじめの行為自体を正当化するようなイメージが伝わってしまう場合もあります。

いじめは、意見の食い違いなどが原因の対立とは異なり、児童虐待や家庭内暴力などと同様、いじめられている子供が一方的に犠牲になる被害化の一形態です。そして残念な事には、「ピアメディエーション」によっていじめっ子がいじめをやめたという事例は、まだ報告されていないそうです。

まとめ

「ピアメディエーション」を使って、意見の食い違いによるトラブルを対話によって平和的に解決するのは、とても建設的な行為だと思います。

しかしいくら生徒が「ピアメディエーション」を通して、会話による解決法を学べるとしても、いじめを止める事ができないのなら、対話によるいじめ解決を目指していくのは、本当に正しい事なのでしょうか。

本記事は、2020年3月30日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG