はじめに - 市役所職員、小林英介さんによるコラム
真面目に働いている人が多いというイメージの公務員。たびたび話題になるのは公務員の副業についてです。
「公務員って副業はできるのか?できないのか?」
このような疑問を持つ人も多いでしょう。今回の記事では、公務員の副業について、前・後編に分けて考えていきたいと思います。
》公務員は副業をしたらダメなのか(後編)- 処分の種類を解説
2019年に市役所の「事務系職種」に現役合格した小林英介さんに、「公務員は副業をしたらダメなのか」というテーマでコラムを書いていただきました。後編である今回は、もし公務員の副業が発覚した場合、どのような処分が下されるのかについて解説いただきます。
副業に関する総務省の通知
総務省は2020年の1月、副業に関して以下のような趣旨の通知を出しました。
「副業に関して明確な基準を設定し、その基準を公表すること。ただし、副業は公務員としての職務に影響を及ぼさないこと。」
現代の日本社会では、働き方の変化が起きています。共働きや母子家庭など、さまざまな家庭環境のもとで生活しなければならない人がいます。
企業や地方などでも人手不足が問題となっており、人員をどうやって集めれば良いのか苦慮している企業もあるといいます。
これからは、公務員が労働力として協力する時代になる可能性があります。副業に関する通知を出した理由には、これらのようなことが挙げられるでしょう。
ちなみに、法律には公務員の副業について明記しているものがいくつかあります。今回は地方公務員法と国家公務員法の2つの法律から、条文をピックアップして解説します。
条文を解説:地方公務員法
地方公務員法は、
・地方公共団体の人事機関並びに地方公務員の任用
・人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件
など沢山のことが書かれている法律です。(地方公務員法1条より抜粋)
この地方公務員法38条にはこのような規定があります。
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
それでは地方公務員法38条に書いてあることを、分解してみましょう。
A 商業、工業又は金融業
B その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社
C その他の団体の役員
D その他人事委員会規則で定める地位を兼ねること
E 自ら営利企業を営むこと
F 報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事すること
以上のABCは許可を得なければ、副業をやっちゃだめということが書いてあります。
条文を解説:国家公務員法
国家公務員法は、
・国家公務員たる職員について適用すべき各般の根本基準(職員の福祉及び利益を保護するための適切な措置を含む。)を確立し
・職員がその職務の遂行に当り、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で、選択され、且つ、指導さるべきこと
以上を定めている法律です。(国家公務員法1条より抜粋)
ひとことで言えば、国家公務員のことについて書いてある法律と表現できるでしょう。
国家公務員法103、104条にも以下のような規定があります。
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
2項
前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
3項
営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員に対し、人事院は、人事院規則の定めるところにより、株式所有の関係その他の関係について報告を徴することができる。
4項
人事院は、人事院規則の定めるところにより、前項の報告に基き、企業に対する関係の全部又は一部の存続が、その職員の職務遂行上適当でないと認めるときは、その旨を当該職員に通知することができる。
5項
前項の通知を受けた職員は、その通知の内容について不服があるときは、その通知を受領した日の翌日から起算して三月以内に、人事院に審査請求をすることができる。
6項
第五項の審査請求をしなかつた職員及び人事院が同項の審査請求について調査した結果、通知の内容が正当であると裁決された職員は、人事院規則の定めるところにより、人事院規則の定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならない。
(7項は省略)
103条1項では
A 商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社
B その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ねること
または
C 自ら営利企業を営んではならない
と明記されています。
ただし、「人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。」(2項)とあり、許可を取れば副業は可能とされています。
103条3項以降は報告(3項)や通知(4項)、不服審査請求(5項)、辞職(6項)についての規定があります。
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
104条には、
A 職員が報酬を得ること
B 営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ねること
C その他いかなる事業に従事すること
もしくは
D 事務を行うこと
これらA〜Dをするには、内閣総理大臣、その職員の所轄庁の長の許可が必要だと明記されています。
公務員の副業が増えない理由
許可を取れば副業はやってもいいのですが、副業をする公務員はなかなか増えなかったのが実情です。
考えられる理由としては、
1)公務員という立場上、副業をしてはいけないという風潮がある
2)副業をしたい人はたくさんいるものの、副業に至るまでのハードルが高く、申請を出しても認められない事例が相次いでいる可能性が考えられる
3)そもそも公務員としての仕事が忙しく、副業をやる暇がない
などがあるでしょう。
ところで、もし副業をしていることが判明してしまった場合、どのようになるのか気になるという人もいると思います。
後編では、副業をしていることが判明した場合、どのようになるのかについて解説していきます。
まとめ - 編集部より
以上、「公務員は副業をしたらダメなのか(前編)- 法律の条文を用いて解説」でした。
引き続き、公務員が副業した場合の処分について解説してくださいました。ぜひ後編の記事もご参考ください。
》公務員は副業をしたらダメなのか(後編)- 処分の種類を解説
2019年に市役所の「事務系職種」に現役合格した小林英介さんに、「公務員は副業をしたらダメなのか」というテーマでコラムを書いていただきました。後編である今回は、もし公務員の副業が発覚した場合、どのような処分が下されるのかについて解説いただきます。
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