「外務省専門職員」になるには?
外交官ともいわれる「外務省専門職員」は、外務省に所属する国家公務員で、人事院が実施する国家公務員専門職員とは異なり、外務省が独自で採用試験を実施しています。
この「外務省専門職員」になるには、外務省が実施する国家公務員採用試験の一つである「外務省専門職員採用試験」に合格し、採用される必要があります。
この試験は、21歳以上30歳未満であれば学歴を問わず受験することができますが、国家公務員法以外にも、外務公務員法で定める日本の国籍を持たない人、外国籍を持っている人は、受験そのものができません。
第七条 国家公務員法第三十八条 の規定に該当する場合のほか、国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者は、外務公務員となることができない。
2 外務公務員は、前項の規定により外務公務員となることができなくなつたときは、当然失職する。
- 出典
- 外務公務員法第7条(外務公務員の欠格事由)
また、受験資格ではありませんが、その業務上、受験語学にかかわらず、TOEFL(iBT)100点以上又はIELTS 7.0以上のスコアを有していることを推奨しているのが、特徴です。この「外務省専門職員採用試験」は、平成25年は第一次試験受験者数307人に対し、最終合格者は38人と倍率約10倍となる狭き門の試験です。
ちなみに、外交官といった場合、外務省に入省する国家総合職(キャリア組)と外務省専門職員(ノンキャリア組)ともに、外交官といいます。
「外務省専門職員」の仕事について
「外務省専門職員」は、外務省に所属し、外務省の仕事を担う専門職員です。同じく外務省に入省した「国家公務員総合職」、いわゆるキャリア組のサポートを行う、いわば外務省の中堅職員的ポジションを担います。
外務省の国家公務員総合職と、外務省専門職員について
国家公務員総合職の職員は、他の省と同じく総合職キャリアとして、幹部または幹部候補として活躍してもらうため、本省・在外の様々な地域・分野のポストを経験してキャリアを積んでいきます。
外務省専門職員は、外交のスペシャリストとして、研修語と関連する国・地域の社会、文化、歴史等に通じた専門家、あるいは経済、経済協力、条約、軍縮、広報文化等の分野の専門家として活躍することが期待されています。
外務省専門職員の役割と仕事内容
外務省専門職員の役割は、大きく2つです。
一つ目は、海外の現地で直接、仕事を指揮する現場チームリーダーの役割です。2つ目は、その現場チームを日本でキャリア組(総合職)のもとサポートする役割です。
役割その1 「海外の現地でのチームリーダー」
まず一つ目の役割は、「現場の指揮」です。在外公館で、外交活動の現場最前線のリーダーとして、チームの指揮をとります。
大使館・総領事館等の在外公館の職員として、諸外国との外交交渉の窓口在外公館での主に、交渉や情報分析、ODA(政府開発援助)、邦人保護、広報・文化交流活動の業務を担います。
ちなみに、在外公館は、149の大使館総と63の領事館、8の政府代表部の計220の公館が設置されています。(平成29年3月時点)。
「外務省専門職員」は、特定の国家・地域で専門的に担当する役割のため、インドのスペシャリストや、北欧のスペシャリストといったように、自分が担当する国家・地域の語学はマスターしているのは当然で、その国・地域が、どこの国と関係が良いか、関係が悪いかなど含めそこに関連する国・地域にも精通し、経済、経済協力、条約等の専門家としても活躍する必要があります。
ちなみの勤務異動は、海外にある在外公館と外務省本省を、5~6年ごとに異動を繰り返すのが主流となっています。
役割その2「日本で、バックアップサポート」
外務省本省は、そもそも「日本の平和と繁栄を確保する」というミッションのもと、日本の「外交活動の中枢」行政機関として、外交政策の企画・立案を行っています。その外務省に所属する外務省専門職員は、外務省の総合職(キャリア組)の指揮下で、現場である在外公館の統括やサポートをする仕事を担います。
外務省という組織
外務省は、日本の外交政策を担う行政機関です。
「日本の平和と繁栄を確保する」をミッションに、海外と日本の関係つまり国際社会の中の「日本」を守り、また国際社会に貢献することを考え、活動します。
このミッションを実現するためには、例えば外交政策や通商航海、経済協力、条約締結などを行います。今の日本、100年後の日本がどうなるか、非常に重要な役割を担っています。例えば日米安全保障条約(1960年:新日米安保条約)など、日本の今に関わり、日本の平和にも関わる重要な役割を担っているということが想像できると思います。
このように、東京・霞が関にある外務省本省は、日本外交の「頭脳」であり「心臓」部分に当たり、 海外に拠点をおき「目耳」であり「手足」となる在外公館と緊密に連絡を取りながら外交政策 の企画・立案・実施にあたっています。
外務本省の組織は、大臣官房の下、総合外交政策局と、分野別に扱う4つの機能局(経済、国際協力、国際法、領事)と、5つの地域局(アジア大洋州、北米、 中南米、欧州、中東アフリカ)と、大使館、総領事館、政府代表部などの在外公館が世界各地に204拠点置かれています。
外務省専門職員の初任給、勤務時間や福利厚生について
初任給は、東京都特別区勤務の場合で213,840円(平成29年度採用試験情報)です。行政職俸給表(一)1級25号俸が適用されています。
なお、在外研修を受けている期間中は俸給等のほかに研修員手当が支給されます。在外公館勤務になった場合は研修員手当に代わって在勤基本手当等が支給されます。
外務省専門職員の勤務時間は、外務省の規定で1日7時間45分です。
勤務開始時間や終了時間は赴任先によって異なりますが、おおよそ8時30分ごろから勤務開始で、17時30分ごろに勤務終了です。しかし、業務上、担当する仕事や視察・出張先によっては定時で帰れないこともあります。例えば。時差の関係で、深夜に日本とのテレビ会議を行う場合や、赴任国との友好関係維持のため、パーティーや会食へ出席する場合などが考えられます。また、万が一、赴任先や関係国で大災害やテロ、日本人の行方不明事件などが起こったら、事件の早期解決に向けて勤務時間など関係なく対応します。
外務省で勤務する場合は、規定時間は9時15分から18時15分ですが、在外公館での勤務よりも忙しく、定時に帰れないことがほとんどのようです。特に国会が開催されている期間や大きな会議が開かれる前後などは、夜遅くまで仕事をすることになるでしょう。
外務省「専門職員」と外務省「総合職」の違い
世界各国で外交を主な仕事として活躍する外務省には、「総合職」「専門職員」の2つの職種があります。
外務省勤務の国家公務員「総合職」と「一般職」
総合職は、いわゆる「キャリア外交官」と呼ばれ、一般的には将来の大使や幹部候補生として、キャリアを積んでいきます。国家公務員一般職の大卒程度と高卒区分があります。
総合職は、大使や公使、事務次官といった重要な役職に就くために、さまざまな国で経験を積み、総合的な能力を身につけていきます。語学力はもちろん、世界全体の情勢を把握する能力や、高い交渉術などが必要になります。
この「総合職」として入省したい場合、他省庁と共通の「国家公務員総合職試験」を受験し、官庁訪問で外務省に訪問し、採用される必要があります。
外務省専門職員について
「外務省専門職員」は、高い語学能力を武器に、特定の地域の社会、文化、歴史等に精通した地域の専門家として活躍します。
外務省および在外公館で外交領事業務もしくはそれに関連する事務を行うため、外務省専門職員は総合職以上に専門的な語学力が求められます。
この外務省専門職員になるには、外務省独自の採用試験を受験し、合格する必要があります。
外務省専門職員の採用試験について
外務省が独自に実施している外務省専門職員採用試験に合格すれば外務省専門職員になることができます。この試験の最終合格者は、外務省専門職員採用候補者名簿に記載され、翌年4月に外務事務官として外務省に採用されます。
この試験には年齢制限があり、21歳以上30歳未満の人が対象で、
(1)大学卒の者及び大学を卒業する見込みの者
(2)短大または高専卒の者及び短大又は高専を卒業する見込みの者。また、人事院が(1)(2)の者と同等の資格があると認められる者も受験資格が与えられます。
さらに(1)(2)に加えて「日本国籍のみを保持していること」が条件です。
試験レベルは大学卒業程度の学力が基準です。倍率は6-7倍程度で、他の公務員試験と比べても、別段、倍率は高くありません。
試験は第1次試験と第2次試験が実施されます。
1次試験では基礎能力試験や専門試験、外国語試験などの問題が出題されます。専門試験は、憲法・国際法・経済学の3科目から2科目選択です。
2次試験では外国語での会話試験や面接などの人物試験・身体検査が行われます。
また、外務省専門職員を目指す受験者には、受験語学にかかわらず, TOEFL(iBT) 100点以上又はIELTS 7.0以上のスコアを有することが推奨されています。ただし、これは受験資格ではなく、採用後に研修を受け、語学力を上げることができます。
まとめ
外務省専門職員は、日本を代表して海外を飛びまわり、諸外国と様々な交渉を進める仕事です。入省後わずか数年で世界の第一級の人々と関わったり、日本では会うことが出来ないような閣僚や政治家、学術関係者と会って直接言葉を交わしたりすることもあります。
一見華やかな外交の裏には地味で細かい作業がたくさんあり、大変ではあるものの、国を代表して大きな仕事をするという環境にやりがいを感じることができるでしょう。国際社会化が進む現代社会において、その役割はさらに増大していくと考えられます。また、個々の人脈や能力を駆使して、日本のみならず世界中の人々のために働けるのも外務省専門職員の魅力のひとつです。
用語説明
在外公館について
大使館や総領事館、政府代表部を総称して「在外公館」と呼びます。世界各地に204拠点置かれています。
大使館
基本的に各国の首都におかれ、その国に対し日本を代表する機関で、外交官特権(治外法権など)を有します。
総領事館
世界の主要な都市に置かれ、領事事務を行う事務所です。その地方の在留邦人の保護や通商関係の援助、査証(ビザ)の発行、 日系企業の支援、政治・経済その他の情報の収集・広報文化活動などの 仕事を行っています。
政府代表部
国際機関に対して日本政府を代表する機関です、国際連合やウィーンにある国際機関、ジュネーブにある国際機関や軍縮会議などに対する政府代表部があります。
コメント
コメント一覧 (1件)
高校・大学時代に「外交官」(∴ 外務省専門職員)を目指していた私にとって、こちらの記事は現在の高校生達にぜひとも読んでもらいたい記事だと思いました。特に、役割の表現(「海外の現地でのチームリーダー」&「日本で、バックアップサポート」)には納得です。