日本における「国家安全保障会議(日本版NSC)」について

2013年12月に創設が国会で承認された日本の外交や安全保障に関する政策や国家戦略の司令塔となる 国家安全保障会議について説明します。この会議は米国のNational Security Council;NSC (国家安全保障会議)をモデルとしていることから日本版NSCとも呼ばれています。

国家安全保障会議とは?

日本版NSCとも呼ばれる国家安全保障会議は、1954年に国防会議として設立され、1986年に改組された安全保障会議を前身としています。

国家安全保障会議の目的は、国家安全保障会議設置法に基づき、国家安全保障に関する重要事項や重大緊急事態への対処を審議することです。主任となるのは内閣総理大臣であり、状況に応じて開催される3つの形態の会合を設置しています。

国家安全保障会議の中核をなす1つ目の会合は、4大臣会合であり、通常2週間に1度、首相・官房長官・外相・防衛相により開催されます。その他、自衛隊派遣が必要な時などには4大臣に加え、総務相・財務相・経済産業相・国土交通相・国家公安委員相を含む9大臣会合が開催されます。3つ目の形態は緊急大臣会合と呼ばれ非常どきに開催され、首相と官房長官、さらに首相が事前に指名した官僚の間で行われます。

国家安全保障会議では主に国防、武力攻撃などへの対処方針、自衛隊の活動方針、そしてその他国家の安全保障に関わる基本方針が話し合われています。

国家安全保障会議創設の経緯

国家安全保障会議は1954年に自衛隊の創設と共に設置された国防会議を起源としています。

この国防会議では閣僚による中長期的な防衛計画がされており、自衛隊に対する文民統制機能の一旦を担っていました。1986年には内閣の危機管理労力強化のため安全保障会議へと改組され、防衛計画に加え、重大緊急事態への対処も審議事項に加えられました。その後も北朝鮮のミサイル発射実験や核実験、自衛隊の海外派遣の増加など、国家の安全保障需要の変化に伴って安全保障会議の果たす役割は大きくなりました。

日本版NSCと呼ばれる現在の国家安全保障会議の創設が初めて提唱されたのは2006年に発足した第一次安倍内閣においてです。首相官邸における外交・安全保障の司令塔機能の再編・強化を目指し、2007年4月には安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案が国会に提出されました。

しかし同年9月に安倍総理が辞任したためこの法案は廃案となりました。その後、2012年12月に第二次安倍内閣が発足し安倍総理は就任直後の記者会見で日本版NSCの設立を目指すことを表明しました。2013年1月のアルジェリア邦人人質事件で各省庁が情報を個別に官邸に報告し、断片的な情報により対応が遅れたことなども創設に拍車をかけ、2013年に国会で法案が可決され創設が決定されました。

国家安全保障会議の構成は?

日本版NSCでは前に説明した3つの形態の会合の他に、2つの会議内組織が置かれています。

1つ目が国家安全保障担当総理補佐官と呼ばれ、国家安全保障に関する重要政策に関して、会議に出席し、総理を直接補佐する立場で意見を述べることができる立場を持っています。

2つ目は内閣官房国家安全保障局です。国家安全保障会議を恒常的にサポートし、国家安全保障に関わる外交・防衛政策の基本方針の企画立案、そして調整に専従する組織として新設されました。内閣官房国家安全保障局は、緊急事態への対処にあたり、国家保障に関する外交・防衛の視点から必要な提言を実施し、情報コミュニティに対し、適切な形で情報を発注することを任務としています。スタッフには民間、また自衛官等からの認定も可能となっています。国家安全保障局長は内閣危機管理監を同格とされており、お互いに緊密に連携しています。

安全保障会議からの主な変更点は?

国家安全保障会議は、前身であった1986年に発足した安全保障会議と比べて幾つかの変更点が加えられています。

会議での審査対象が、安全保障会議での国防に関する重要事項から、日本版NSCでは国家の安全保障に関わる重要事項へと拡大されています。

また開催される会議は9大臣会合のみであった安全保障会議時代から、4大臣会合と緊急事態会合を新設し、3つの形態を持つようになりました。またこれまで設置されていなかった各会議での幹事のポジションが明記され、幹事が議長及び議員を補佐するということが決められました。

国家安全保障局が新たに設置されたことを受け、安全保障会議では内閣官房によって管轄されていた会議に関する事務が国家安全保障局によって処理されるようになりました。

アメリカやイギリスのNSC について

米国では、第二次世界大戦後の1947年にNSCが設立されました。目的は第二次世界大戦の経験を踏まえた上で、軍事戦略と国家安全保障戦略の調整と統合で、現在の運用方法は1980年代のブッシュ(父)政権時代に確立しました。

米国のNSCはアメリカ合衆国の安全保障の司令塔であり、大きく分けて3つの機能があります。一つ目は大統領への政策助言、二つ目は中長期的な安保戦略の確立、そして三つ目が各省庁の調節です。

NSCの法定メンバーは、大統領、副大統領、国務長官、エネルギー長官ですが、各政権により財務長官、司法長官を初めし大統領が必要とするメンバーが法定アドバイザーとして出席します。また、日本では、国家安全保障会議による決定の後、閣議決定を経て正式に政府の決定となりますが、米国のNSCは大統領がメンバーであるため、NSCでの決定が即座に政府の決定となります。

米国のNSCの特徴は大きく分けて3つ挙げられます。一つ目はNSC委員会制度、二つ目が、補佐官の重要性、そして最後が大規模なスタッフ組織です。NSCの委員会制度は、大統領が議長となる会議の下に3つのレベルの会議が存在します。The NSC Principals Committee と呼ばれる長官級委員会、The NSC Deputies Committee (副長官級委員会)、そしてInteragency Policy Committee と呼ばれる省庁間政策委員会と呼ばれる会議です。それぞれが外交安保政策に関わる政策課題を省庁間で調整し、ボトムアップする役割を果たしています。

二つ目の特徴である補佐官の重要性は、米国ならではの補佐官の補佐官の待遇にあります。米国では補佐官は閣僚級の待遇であり、日常的に大統領に助言を行うとともに会議等に出席し会議を補佐する役割を担っています。これらの補佐官は大統領によって選出され、様々なバックグランドを持つ人材が選出されています。

最後の特徴であるスタッフ組織の規模は、約320名を抱えていると言われており、かなり大規模なものであると言えます。スタッフの数や構成は各政権により変化します。

英国で国家の外交・安全保障に特化する組織が設置されたのは2010年5月のことです。英国のNSC制度の特徴は内閣委員会制度、そして米国と同じく補佐官の重要性で、米国のNSCは内閣委員会の一つとされています。

内閣委員会は首相の決定で内閣に設置され、閣僚をメンバーとする組織です。NSCのメンバーは首相、副首相、財務大臣、外務・英連邦大臣、国務大臣、内務大臣、エネルギー気候変動大臣、国際開発大臣、財務相主席担当官、そして内閣大臣の10名で構成され、加えて補佐官が同席します。各政権により、政策課題に合わせて小委員会が設けられる場合もあります。英国でも米国と同様補佐官の役割は大きく、官僚が就任し、閣僚級の待遇を受けます。

国家安全保障会議の課題は?

日本の国家安全保障会議の課題の一つは補佐官の果たす役割の明確化です。

現在日本の国家安全保障会議における補佐官の役割は総理への助言と会議への出席のみしか法案に定められておらず、また英米の補佐官が一人で担っている役割を国家安全保障局長と分担する形となっています。

また補佐官が専属のスタッフを持たず、官僚機関への指揮権限も有していないため、首相に効率的な助言ができているのかという点も指摘されています。

そのほか、情報の流れの確保の面でも不安要素が残っています。外交安保戦略のためには、効率的な情報収集は必要不可欠な要素ですが日本の国家安全保障会議においての情報収集は既存の情報コミュニティを活用したものとなっており、高度な業務に対して十分な情報収集を期待できないのではないかという不安があります。このような意見に対して、米国のCIAのような独立した情報機関を創設するべきだとの意見も出ています。

日本版NSCの決定のあり方も問題視されています。前に述べたように、日本ではNSCでの決定の後に閣僚決定を経なければ法的効力をもつ正式な決定とはならず、非効率である上に、緊急時に迅速な対応が期待できないとの見方があります。

最後に不安要素として、日本版NSCには各行政機関が保有する秘密情報が集約されるため、特定秘密保護法により、情報が外部に漏れない仕組みが出来上がることによって、国民生活に重要な影響を持ちうる安全保障課題について主権者である国民の目から隠れたところで政策立案プロセスが進んでしまう可能性があるということが挙げられています。

本記事は、2020年4月6日時点調査または公開された情報です。
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