アダルトチルドレンとは
原因は、子供の時の心の大きなトラウマ
アダルトチルドレンとは、直訳すると「成人した状態の子供たち」となります。近年では、「幼少期に親からの愛情不足や、心理的なトラウマを持ち続けながら成長したため、社会生活に対して違和感を持ったり、子供の時のトラウマにずっと苦しめられたままだったりする状態や人」の事を指す事が多くなっています。
成人してから精神疾患を発病する事が多い
アダルトチルドレンは、社会生活に違和感を持つために、成人して社会に出てから、自分と周りとのギャップやトラウマに苦しむ事によって、鬱やパニック障害、不安障害などの精神疾患が発病する確率が高くなります。
また、対人恐怖や外出恐怖に陥る事も多く、引きこもりとなる場合も少なくありません。
タイプ別のアダルトチルドレンを見てみよう
アダルトチルドレンは4タイプある
アダルトチルドレンは、主に「機能不全家族」と呼ばれる、親の愛情が不十分な家庭で育った場合や、虐待やネグレクト、共依存などの通常ではない親子関係で育った場合に発症されるといわれています。
アダルトチルドレンとなる成人は、子供の時の役割や親から受けた対応によって、4タイプに分かれています。
マスコットタイプ(ピエロや道化師とも呼ばれる)
家族の笑いや関心の対象に自分がなる事によって、家庭内の調和を保とうとしてきたタイプです。ひょうきんにおどけたり、わざとふざけたりする事によって、家庭内の笑いを一手に引き受けています。その反面、か弱く幼い、保護の対象にもなるマスコット的な存在も兼務している事が多いです。
元々の頭の回転が速く、ユーモアのセンスがあり、人当たりも良い反面、ストレスの処理が下手で、すぐに感情的になるため、成人になってからストレス耐性がなく打たれ弱い、衝動的に人を傷つけてしまうなどの弊害として現れます。
ケア・テイカー(お世話係)
家族の介護や年下の兄弟の面倒を見る、家事を率先して手伝うなどのお世話役として尽くしてきたタイプです。ケア・テイカーの中でもさらに、家庭内に問題が発生した時に、その相談役や解決役を担う「リトル・ナース」や家事や介護、育児などの役割を行ってきた「イネイブラー」、家族同士の衝突の仲介役を担ってきた「プラケーター」に分類されます。
優しく聞き上手、困っている人を放っておけない、責任感が強いという反面、常に自分が誰かの助けとなっている事に価値を見出すので、成人になって共依存などに陥りやすいです。例えば、借金やDVを繰り返す男性を「自分がいないと何もできない人」と思ってしまって、見捨てられず共依存となる女性などは、アダルトチルドレンであり、このケア・テイカーに該当する可能性が高いです。
プリンス・プリンセス(人形)
親の理想を押し付けられ、その通りに生きてきたため、自己を持つことなく大人になるアダルトチルドレンのタイプが「プリンス・プリンセス」です。自己を持たない為、自分の意見ではなく周りに合わせる事によって生きてきたため、指示が良く通る、協調性が高い反面自己肯定力が低く、周りに流されやすい傾向にあります。成人してからは、悪徳商法や詐欺に引っかかってしまう、ホストやギャンブルに入れ込んでしまうなどの傾向があります。
ヒーロー(期待を一身に背負ってきたタイプ)
親や周りの期待を一身に受けて来たタイプがヒーローです。親の期待に応えるために、ひたむきな努力をしてきたタイプであり、子供ながらに大人っぽい振る舞いを強要される事も多いです。管理職の適正がある、人を纏めるのが上手、努力家などの反面、完全主義のため、融通が利かない、他人を自分の思い通りに支配しようとするなどの傾向があります。例えば、結婚してから配偶者や子供に対してDVやモラハラなどで支配しようとする、自分の尊大さを押し付けようとするのは、アダルトチルドレンのヒーローのタイプが多いと言われています。
スケープ・ゴート(身代わりとして生きてきたタイプ)
家庭内に問題があるときに、それを家族に代わって具象化するタイプが、スケープ・ゴートです。家庭の中に問題がある時に、それを自分自身の行動として行います。立ち向かう勇気がある、行動力がある反面、反社会的、反抗的、自傷行為が目立つなどの問題点があります。また、未成年の望まない妊娠や少年犯罪などを起こす、アルコール依存やギャンブル依存に陥るタイプも、このスケープ・ゴートのタイプである可能性が高いです。
ロスト・ワン(迷子、存在しなかった子供)
親から捨てられる、虐待を受ける、ネグレクトを受けるなど、家庭内の問題によって自分に損害が出る時、もしくは自分の存在のせいで家庭内の調和がとれない時に、自分自身の存在を隠すことによって生き延びてきたタイプが、ロスト・ワンに当てはまるアダルトチルドレンです。
自立心が強く、誰にも頼らずに生きていけるサバイバル能力の高さもあり、いわゆる「手のかからないタイプ」の子供で、元々は育てやすいタイプの子供が、問題回避のために自分の存在を消す事が多くなっています。一方で、嫌だとはっきり主張ができない、絶望やあきらめの状態にある為、生きていく上での気力がなく、陰鬱な状態である事も多いです。大人になっても、物事をすぐに諦めてしまう傾向にあります。
どうしてアダルトチルドレンは生まれるのか?
無条件に注がれるべき親の愛情がない
子供は、親からの愛情をたくさん受けて育ちます。親は子供に無条件で愛情を注ぎ、それが子供に伝わって発育するのです。
ところが、この親からの愛情を何らかの原因で受ける事が出来なかった、もしくは育ってきた環境の中で強いストレスを受けながら過ごしてきた場合には、精神面での正常な発育が阻害されてしまいます。そして、家庭内の問題回避や自分自身の危険回避のために、前述のようなタイプ別に分かれた行動をとります。その結果、成人してからアダルトチルドレンとなるパターンが多くなっているのです。
次は、アダルトチルドレンが生まれやすい原因や生育状況について見てみましょう。
虐待やネグレクト
虐待を受けながら育った子供は、アダルトチルドレンとなる可能性も高まります。虐待と言っても色々なパターンがあり、親が子供に手をあげたり、物理的に傷つけたりする肉体的な虐待の他にも、子供に対して傷つく言葉ばかり言う、他の兄弟と差別して育てるなど精神的な虐待もあります。また、近親による性的な虐待もこれに含まれます。
もうひとつがネグレクトです。ネグレクトとは、子供の生活に必要な食事や入浴、着替えなどを与えず、放置している状態です。幼稚園や保育園に通わせないだけでなく、就学時期になっても小学校に通わせないなど、必要な教育を受けさせない事も、ネグレクトの一種と言えます。
虐待やネグレクトを受けて育つ子供の背景には、再婚や内縁状態の夫婦で、血のつながらない方の親から連れ子が虐待やネグレクトを受けるパターン、元々戸籍が提出されていないいわゆる「無戸籍状態の子供」など、色々な問題が隠れています。
また、虐待やネグレクトに走る親自体も、かつて自分の親から同じような仕打ちを受けていたパターンも多く、いわゆる「負の連鎖」を繰り返してしまっている場合もあります。
機能不全家族
機能不全家族とは、本来の家庭の役割を果たせない状態の家族の事を指します。例えば、夫婦仲が悪く子供の前でもいつでも喧嘩をしている状態の家族、母子家庭で、母親の恋人がいつのまにか住んでいる状態の家族、虐待などの理由で子供が児童養護施設への入退所を頻繁に繰り返している家族などが、機能不全家族にあたります。
本来家庭は安らげる場所でなければなりませんが、機能不全家族の中で育つという事は、子供にとっても強いストレスがかかる事になります。また、機能不全家族には、何らかの問題を抱えている事から機能不全となる原因がある為、その原因を回避するために、子供が自らが行動し、成長してアダルトチルドレンとなるパターンが多いです。例えば、両親が不仲の家庭の場合には、自分がひょうきんな振る舞いをして笑いものになる事によって、家族内の調和を保とうとする(=マスコットタイプ)、介護をひとりで抱えている母親の、ストレスからの虐待を避けるために、自分が介護や育児を担う(=ケア・テイカータイプ)などです。
条件付きの愛情
親からの愛情は、無条件で与えられるものですが、その愛情が何らかの条件下でしか与えられなかった場合には、子供にとっては強いストレスとなり、アダルトチルドレンを生み出すきっかけとなります。
例えば、常に学校の成績が良くなければ認められない(=ヒーロータイプ)、親の言う通りのファッションや髪型にしなければ愛してもらえない(=プリンス・プリンセスタイプ)などが該当します。
アダルトチルドレンが生み出す、様々な弊害とは
共依存に陥りやすい
アダルトチルドレンは、条件付きで愛情をもらっていたり、虐待やネグレクトを受けていたりなど、親から常に支配や管理をされている立場で生育されてきた子供が多いです。その為、自然と「誰かから常に支配されている状況」が当たり前に感じるようになってしまい、大人になってからは共依存となる可能性が高くなります。
共依存となる対象は、自分の親だけでなく恋人、配偶者や子供なども該当します。
社会に適合できない
社会に出て働きだすと、周りとの人間関係や社会環境に違和感を覚える事が、アダルトチルドレンは多いです。元々、正常ではない環境で過ごしてきたため、正常な環境こそが異常と感じてしまうのが、その原因と言われています。
その結果、会社を休みがちになり結局仕事が長続きしない、周りの人からの評価が低くなるため、元々の自己肯定感がさらに低くなってしまう、二次障害として鬱やパニック障害などの精神疾患を併発してしまうなどの、問題として現れてきます。
同じことを繰り返す
アダルトチルドレンとなってから結婚する、もしくは子供を持つと、自分自身がかつて親にされてしまった事を、自分の子供に繰り返してしまう事が多くなります。これは、自分自身が受けて来た親からの対応が当たり前に思ってしまっているパターンと、「自分は虐待を受けて育ったのに、無条件で愛される自分の子供が許せないと思ってしまうパターンに分かれます。
また、自分の子供は可愛いと思っているのに、無条件に愛する事ができない苦しみを抱える事も多いです。その結果、負の連鎖として自分も虐待やネグレクト、機能不全家族の形成などをしてしまいます。
負の連鎖を断ち切れ!アダルトチルドレンを寛解する為には?
医師の診断やカウンセリングを受ける
もしかしたら自分はアダルトチルドレンかもしれない、と思ったら医師の診断を受けてみたり、カウンセリングを受けたりして自分の心の中の澱を吐き出すのは大変有効です。
精神科や神経科、心療内科が該当します。必要に応じて、投薬治療や作業療法を受ける事によって、自分自身の精神的なダメージを癒していける可能性も高くなります。
インナーチャイルドを愛する
特に、自分自身がアダルトチルドレンであることから、自分の子供を愛せずに悩んでいる時には、子供と一緒にインナーチャイルドを愛するのが有効です。
インナーチャイルドとは「内なる子供」と言い、かつて子供のころの自分自身が、自分の中にいる状態です。自分の子供を愛するのと同時に、親からの愛情を受けずに育ってきたインナーチャイルドを愛し、癒せば、アダルトチルドレンの寛解に繋がる可能性が高くなります。
例えば、子供の時に親から髪を伸ばしたり、可愛らしい恰好をしたりするのを禁止されていた時には、自分の娘には思い切り可愛い恰好をさせてあげる、同時に自分もかつてできなかったおしゃれを娘と一緒に楽しんでみる、などの方法があります。
アダルトチルドレンを寛解する為の第一歩とは、かつて自分が受けていたストレスや処遇と向き合い、それ自身を癒す事ではないでしょうか。
コメント
コメント一覧 (2件)
アダルトチルドレンという言葉は以前から知っていましたが、種類が結構あるのだというのを知りました。自分自身、アダルトチルドレンの傾向があるため非常に興味を持って読み進めました。
アダルトチルドレンという言葉をニュースでは聞いたことがあるものの、詳しく知らなかったので、興味を持って読みました。アダルトチルドレンになる原因、タイプ分けやその後どうなりやすいかなども書かれていて興味深かかったです。