子どもの被害を防ぐために。日本の「チャイルドシート」が正しく使われていない実態レポート(2022年8月情報)

事故の際、子どもの命を守ってくれるはずの「シートベルト」ですが、子どもに対しては安全とは言い切れない事故が起きています。

また「チャイルドシート」の取り付け方法が間違っていたために子どもだけが車外に投げ出されるという事故も起きており、法整備が甘いとの指摘もあります。


子どもが「シートベルト」をしていたのに、車外に投げ出されるケースも。

子どもの命を守るために、まずは交通事故を起こさないようにするのが一番ですが、万が一事故が起きてしまった時でも被害を最小限に食い止めるためには「チャイルドシート」や「シートベルト」を正しく使うことが大切です。

子どもは「シートベルト」さえしていれば安心、とは限りません。「シートベルト」をしていたのに車外に投げ出されてしまった、「チャイルドシート」に座っていたのに、チャイルドシートごと車外に投げ出されてしまうケースが相次いでいます。

子どもの体格に合った取り付け方などを知らない大人が多すぎるという問題点もあるようです。

日本は「チャイルドシート」の着用義務が欧米各国に比べて緩い

日本の「チャイルドシート」の着用義務についてご紹介します。日本はヨーロッパ諸国に比べると、着用義務のある年齢が低いという特徴があります。

日本で「チャイルドシート」の着用義務があるのは5歳まで

日本では、2000年の4月1日から、自動車の運転者は、「チャイルドシート」を使用しない6歳未満の幼児を乗せて、 運転してはならない、つまり5歳までは「チャイルドシート」を使用することが義務付けられました(道路交通法第71条の3第3項)

また、2008年6月1日以降は、年齢に関係なく後部座席も「シートベルト」の着用が義務化されました。

6歳未満の「チャイルドシート」着用率は7割

警察庁によると、警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が、令和元年6月1日から6月16日までの間に実施した「チャイルドシート使用状況の全国調査」の結果、全国の「チャイルドシート」の平均使用率は70.5% にとどまっています。(前年比+4.3ポイント)

「チャイルドシート」を使用していない3割の子どもたちは、「車両シートにそのまま座っていた」のが半数程度、そのほか「チャイルドシートに座っているがベルトをせず」、「大人用のシートベルトをしていた」、「大人が抱っこしていた」などという状況だったようです。

▼参考URL:警察庁|子供を守るチャイルドシート

「チャイルドシート」を着用していないとどうなるのか?動画で確認できます

全日本交通安全協会では、チャイルドシートの正しい使い方を知ってもらうためのDVDを制作しているようです。


下記のページからも一部視聴できますので、ご覧ください。

▼参考URL:一般財団法人 全日本交通安全協会|DVD「チャイルドシートで守ってね!」を制作

「チャイルドシート」着用義務。ヨーロッパでは12歳までが主流の一方で、日本では5歳まで。

「チャイルドシート」を法制化しているのは日本だけではありません。ヨーロッパのほとんどの国が法制化しています。しかし、その着用義務の年齢が日本とは大きく異なります。

ヨーロッパ諸国の多くは「12歳まで」、もしくは「身長135cmから150cmまで」の着用が義務付けられているようです。着用義務年齢が比較的低いフランスでも「10歳まで」というように、日本よりも体格の良い人が多いヨーロッパでさえその年齢まで「チャイルドシート」が義務になっている事実があります。

日本で使用が許可され、市販されている「チャイルドシート」も国連欧州基準(UN/ECE)に適合した製品なのですが、日本での着用義務は「5歳まで」というのが「日本の法整備は緩い」と批判される要因になっています。

「シートベルト」が安全に使えるのは150cmまたは140cmから、という不思議

日本の自動車メーカーは「身長150cmからシートベルトが安全に使える」と説明しているようです。

衝突実験などで使われる最も小さいダミー人形は身長150cmであり、身長150cm以下では安全確認さえされていない実態があります。

JAFでは「身長140cmからシートベルトが使える」としているので、140cm以下で、6歳以上の子どもに関しては安全が確認されていないのに「チャイルドシート」が義務化されていない状況になっています。

以上のように、子どもの安全が保たれているとは言い切れず、空白の年齢層がある不十分な法制度の状態だということがわかります。

▼参考URL:JAF|シートベルトなんでもQ&A

「チャイルドシート」が正しく設置されていなかった事故

「チャイルドシート」を取り付けているから絶対安心とは言い切れません。「チャイルドシート」を使用していたのに、不正に取り付けられていたために子どもが被害に遭ってしまった事故が発生しています。

チャイルドシートごと投げ出される事故

2019年にドイツで起きた事故では、車が木に衝突した際に後部座席にいた3人の子どもが負傷しました。3人はチャイルドシートに座り、後部座席に座っていたにもかかわらず、チャイルドシートごと投げ出されてしまったのです。

その原因は、チャイルドシートが不正に取り付けられていたことにあったようです。

小さい子どもの「シートベルト」は必ずしも安全ではない

北海道南幌町では、助手席に乗っていた小学3年生の男の子だけが投げ出され、意識不明となる事故が起きました。この車は右折車を避けようとしてハンドル操作を誤り路外に逸脱し横転したようです。大人4名と小3の男の子が乗っていましたが、車外に投げ出されたのはこの男の子だけでした。

この事故について、警察のコメントでも「シートベルトが体に合っていなかったのではないか」とあったようです。


男の子は助手席でシートベルトを着用した状態で座っていたとされていますが、小学校3年生なら身長は130cm前後と思われます。身長150cm以上で安全に使用できるシートベルトで確実に拘束できない身長であった可能性があります。

チャイルドシートに関するSNSのコメント

まとめ

このページでは、交通事故から子どもの命を守るために「チャイルドシート」の正しい使用が必要であることをご紹介しました。

日本では5歳までしか着用義務が無い「チャイルドシート」ですが、実際には6歳以降、シートベルトだけでは安全を守れない場合があります。それには、小さな子どもの体格が関係しています。

また、6歳以降も「チャイルドシート」を使うことが有効なのですが、正しく取り付けなければ、安全は損なわれます。

正しい「チャイルドシート」の使用、適正な体格になってからの「シートベルト」のみへの移行などで防げる事故があるかもしれません。

また、世界に比べて緩いと批判される「チャイルドシート」の関連法も、子どもの命を守るために、見直されることが期待されます。

参考資料サイト

警察庁|子供を守るチャイルドシート

一般財団法人 全日本交通安全協会|DVD「チャイルドシートで守ってね!」を制作

FRIDAY DIGITAL|小学生の死傷者は年1万人超!チャイルドシート関連法が緩すぎる

JAF|シートベルトなんでもQ&A

本記事は、2022年9月22日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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