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助成は42歳まで…不妊治療の止め時やリミットなどの考察

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目次

不妊の原因を知っておこう

年齢や体質だけでなく、原因不明である事も

不妊、というと以前までは女性のみの問題で、子供ができない夫婦でも「妻のみに原因があるのではないか?」と思われがちでした。けれども、現在では男性側に不妊の原因がある男性不妊も多く、不妊といっても一概に妻側に問題がある、夫側に問題があるとは言えなくなりました。

不妊の原因は、夫や妻の加齢による生殖機能の低下、ストレスや疲労、持病などの外的要因、子宮奇形や精子の量が少ない・運動量が低いなどの体質的な物が代表に挙げられますが、必ずしも高齢の夫婦のみが不妊という訳ではなく、かつ検査をしてもこれといった不妊の原因が特定できない事も多くなっています。

ただし、夫婦どちらかの年齢が高齢になればなるほど、妊娠はしにくくなります。妊娠だけでなく染色体異常の発現率も高くなりますので、流産や死産、何らかの障害を持つ子供の誕生する可能性も高くなってしまう事は、妊娠・出産を希望する上では覚えておかなければいけません。

何故、高齢出産となってしまうのか?

高齢になると不妊、という認識は実はつい最近

高齢になると妊娠しにくくなる、という認識が広がったのは、実はつい最近の事と言わざるを得ません。

元々、高齢出産自体はあまり珍しい事ではありませんでした。とはいえ、昔の日本では一人の女性が多くの子供を産む事がほとんどで、若い時から次々と子供を産んでいく為、一番末の子供は35歳から40歳で産んだ、という事も珍しくなかったのです。しかし、これはあくまで経産婦のケースであるので、複数の子供を産んだ前提がある上で、40歳の時にまた出産するのと、初めての子供を40歳で出産するのでは、妊娠する可能性も、また出産までに母体に何らかのトラブルが生じて、ハイリスクとなる可能性も全く違うのです。

女性の社会進出や、有名人の高齢出産も出産年齢の引き上げの原因に

女性も社会に進出して役職に就いたり、キャリアを積んだりするのも当たり前になりました。例えば大学を卒業後は更に大学院に進み、その後就職をしたとしてもだいたい25歳前後で社会に出る事となります。そこから働き始めてキャリアを順当に積み始める時には、30歳も半ばになってしまっています。先に女性がキャリアを積んでから結婚・妊娠・出産をしようとすると、最短でもどうしても35歳を過ぎたあたりになってしまいます。

また、高齢出産をする芸能人や有名人も多くなりました。特に、芸能人は実年齢よりも見た目が若々しく見える女性も多いです。見た目も年齢よりも若く見える芸能人が、次々に高齢出産をしている姿を見ていると、一般人でも高齢出産は当たり前のように錯覚してしまう風潮にもあります。

医療技術は向上しても、人体の機能は向上しない

かつては初産で30歳の場合には、高齢出産と定義されていました。けれども、今は初産で35歳が高齢出産と定義されるようになり、初産年齢自体も引き上げられる様になりました。また医療技術が向上し、高齢出産でも無事に出産できるケースがほとんどです。不妊に悩む場合に受ける不妊治療の技術も格段に向上しました。

けれども、いくら医療技術が向上しても、人体の機能自体は向上しません。医療の力のみに頼って妊娠・出産を行う事は、少なからずリスクが伴う事を覚えておかなければいけません。また、一部には「不妊治療は神の領域を犯す行為である」といった、不妊治療に対する厳しい声もあります。

内容や費用も幅広い 具体的な不妊治療とは

不妊治療にかかる費用の平均は100万円とのデータもある

なかなか子供ができない夫婦は、不妊治療を検討するようになります。まずは、不妊の原因を特定するために色々な検査を行い、もしも原因が分かった時にはそれを改善して妊娠する為の方法を、もしも特別な原因が分からない時には、タイミング法から始めてみる事になります。

タイミング法とは、保険適応になる不妊治療の中でも気軽に始めやすい方法です。医師の指導の下で、妊娠しやすい排卵日前後を特定し、その周辺で性行為を持つ事によって妊娠へ導く治療方法です。費用も保険適応ですので、数千円で済みます。


タイミング法で妊娠しなかった場合には次のステップに進む事になります。まずは人工授精です。ここからの不妊治療は保険適応外となりますので、タイミング法とは異なって高額な不妊治療の費用が掛かる事になります。

人工授精の場合には、1回で1万5千円から2万円前後の費用となります。人工授精の上の段階である体外受精や顕微授精にステップアップすると1回20万円から50万円ほどになります。

不妊治療にトータルでどのくらいの費用が掛かったのか、というアンケート結果では、平均100万円というデータもあります。

不妊治療に対する助成金もある

高額な不妊治療の費用ですが、何と各自治体によって不妊治療に対する助成金制度を設けています。この助成金制度について見てみましょう。

助成を受ける為には制限もある、不妊治療の助成金制度

「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」

まず、国が行っている不妊治療の助成金制度に、厚生労働省が設けている「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」があります。高額な不妊治療費の助成が受けられる、とてもありがたい制度なのですが、これを受けるのには色々な制限がある事を覚えておかなければいけません。

ひとつは、所得制限です。夫婦合わせて年間所得が730万以上の世帯はこの制度を受ける事ができません。少しの所得制限でこの助成が受けられない、と思う方がいるかもしれませんが、これは、「年収」ではなく「所得」です。所得は、年間の総収入ではなく、総収入額から各種保険料などを控除した後の、純粋な手取り額です。つまり、不妊治療にかかった医療費も控除に含める事ができますので、年収ではなく所得制限ならひっかからない可能性もありますので、良く確認しておきましょう。

もうひとつが、戸籍上夫婦でないと助成が受けられない事です。内縁関係など、戸籍上夫婦でないカップルはこの助成を利用できません。

次に、助成が受けられる不妊治療の内容です。この「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」の助成対象となる不妊治療は、体外受精か顕微授精のみとなります。タイミング法や人工授精は助成の対象外です。

最後に、年齢制限があります。40歳未満の場合にはこの助成を通算で6回まで受ける事ができます。42歳までなら、通算で3回までです。そして、43歳以上になると、この助成を受ける事ができなくなるのです。

自治体ごとに独自の助成制度もある

厚生労働省が設けている「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」以外にも、住んでいる自治体によって独自の助成制度を設けている場合があります。人工授精も助成対象になる、所得制限がない、内縁関係でも助成対象になるなど、自治体によって助成が受けられる内容は異なりますので、「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」以外にも、不妊治療に対して受けられる助成金はないのか、住んでいる自治体によって確認してみると良いでしょう。

助成金の申請方法は、きちんと確認しておこう

「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」や、自治体が設けている独自の不妊治療への助成金を受ける為には、申請を行わなければいけません。

申請には、都道府県が指定している特定不妊治療費助成申請書や特定不妊治療証明書の書類の他にも、住民票や戸籍謄本などの婚姻関係が証明できる書類、夫婦の前年度の所得が証明できる書類、そして不妊治療を受けた医療機関で受け取った領収書のコピーなどが必要になります。

また、申請する期限についても都道府県によって異なっています。治療が開始した時に申請する所もあれば、治療が終了した時に申請する所もあります。これも、自分が住んでいる自治体によって異なりますので、確認しておきましょう。

そして、申請をしてから実際に助成金が受け取れるまでは、2か月ほどかかります。助成金頼みで不妊治療を受けるのではなく、あらかじめ申請してから助成金を受け取るまでに時間がかかる事も覚えておきましょう。

立ちはだかる「年齢制限」

かつてはこの「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」には、年齢制限が設けられていませんでした。ところが、2016年度からこの制度は、42歳以下の方のみ助成が受けられると言う、年齢制限が設けられました。


前述の通り、妊娠の確率は年齢が高くなるにつれて低くなっていきます。特に体外受精の成功率は、32歳の場合には20%となっていますが、40歳になると7.7%まで減少します。45歳になると、何とわずか0.6%の成功確率にまで減少してしまいます。

また、体外受精を試み、受精自体は成功してもその後受精卵が育たずに流産、染色体異常の発現確率も上がる為に死産のリスクも高くなります。高度な不妊治療を以てしても、やはり人間の「老い」には立ち向かえないのです。

また、以前より「成功確率の低い高齢出産の人に対する助成を厚くするよりも、若年層や子育て世代への助成に回した方が良いのでは?」との意見もありました。それらを踏まえて、「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」にも年齢制限が設けられたと考えられます。

「年齢制限」がもたらす、不妊治療の止め時とは

「不妊治療スパイラル」に陥る事も

不妊治療は、前述の通りとても高い費用がかかります。いくら助成が受けられるとしても、その額全てが補填されるわけではありません。

不妊治療を受けている夫婦の中には、今まで高額の不妊治療費を支払ってきたからこそ、「諦めたくない」と考えてしまう方も実はいます。なかなか結果の出ない不妊治療に対して、もっと多くの費用をつぎ込み、妊娠するまで続ける、いわゆる「不妊治療スパイラル」に陥ってしまっている場合もあるのです。

不妊治療を諦めるという事は、今までかけてきた不妊治療への費用や、自分自身への努力、身体への負担などの全てを諦める事にもなります。その為、なかなか不妊治療の止め時が見つからずに、苦しんでいる夫婦も少なくありません。

また、不妊治療スパイラルに陥ってしまうと、「妊娠・出産がゴール」となってしまう事があります。不妊治療に活力を注ぎ過ぎたせいで、出産後の育児がおざなりになってしまう、理想と現実とのギャップに悩んで、産後鬱となってしまったり、夫婦間の溝が深まるいわゆる産後クライシスになってしまったりもします。

言うまでもなく、妊娠・出産はゴールではなく育児のスタートです。過度な不妊治療は、子供を持つ事ではなく、妊娠出産する事が目的となってしまう危険性もあるのです。

助成の年齢制限が、止め時のきっかけにも

「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」に年齢制限が設けられた事によって、年齢制限である「42歳まで」を不妊治療の止め時として設定する人も多くなりました。

不妊治療を止めて、子供を持たない生き方を選ぶとしても、その女性自身が満足して生きられる事が一番大切なのではないでしょうか。

今後は、女性が若いうちから出産をしてもキャリアを積みやすい社会体制を整えるなど、働く、家を守る、育児をする、介護するなど、女性のライフスタイルに合わせて人生設計がしやすい社会にしていかなければいけないと考えています。特に、女性が妊娠、出産がしにくい現状のままでは、少子化に歯止めは利きません。

それに加えて、子供を持たない選択をした女性や、子供を持てなかった女性に対しても、全ての女性が満足して生きていける社会にしなければいけないと考えています。

本記事は、2018年9月3日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

憧れの職業から時事問題まで、母親と女性の視点から。子供達の成長と被災地復興を見守る「千谷麻理子」さんの執筆する解説記事・エッセイ・コラム記事です。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 不妊治療は、女性の誰でもがあり得ることです。
    年齢が高くなると、それもまたリスクが大きく、更に原因不明で不妊症というケースもあるということを知ることができてよかったです。
    原因は女性だけではなく、男性にもある可能性があることも、認識しておきたいとおもいます。
    また、不妊治療には助成金が申請できるということも知ることができました。

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