ケース1:仲の良いママ友ができたと思ったら、マルチ商法の勧誘
出会いは出産する産婦人科の母子学級だった
現在女の子を育児中のAさんが合ってしまったケースについて説明します。Aさんは、妊娠7か月ごろに妊婦健診を受けている産婦人科の主催している母子学級に出席しました。初めての出産を控え、沐浴の仕方や赤ちゃんのケアの方法、妊娠中に必要な栄養の勉強など、とても有意義な知識を得る事ができました。
母子学級の一環に、お母さん同士の交流の時間がありました。月齢の近い方同士でグループになって、自由にお話をする時間です。Aさんはその時、月齢が全く一緒のBさんに出会いました。お互い妊娠している子供が女の子、そして家も近所と言う事もあり、すっかり意気投合。連絡先を交換しました。
出産までの間、励まし合う事に
月齢も近いAさんとBさんは、頻繁に会ってお茶をする仲になりました。正期産に入る前に、赤ちゃんの為の肌着やおむつなどを一緒に買い物したり、出産に対する不安な気持ちも言い合ったりしました。
その後月日は流れ、励まし合いながらも2人とも無事に出産。入院期間はずれてしまったので一緒に入院する事はありませんでしたが、メールでお互いの出産をお祝いし合ったりしました。
1か月検診で再会後、子供を含めた交流が続く
2人が再開したのは、赤ちゃんの一か月検診です。お互いの赤ちゃんを見せ合い、久しぶりに再開した2人は、その後もメールで連絡を続けます。
特に、Aさんは転勤族の為に誰も知らない土地にて一人で子育てをしていました。旦那さんも激務の為、閉塞感が募る育児中のAさんにとって、Bさんの存在は大きなものとなっていきました。
授乳の開いてきた3か月ごろから2人で会う様になり、お互いの家で子供たちを遊ばせたり、支援センターに出かけたりしていました。
雲行きが怪しくなった6か月ごろ、マルチ商法の勧誘に合う
子供が同月齢だったので、2人は自治体の離乳食教室にも一緒に参加しました。その後、Aさんは赤ちゃんの離乳食を6か月になったと同時に進めて行きます。けれども、Aさんの赤ちゃんはドロドロのおかゆを嫌がって飲み込んでくれませんでした。
ベテランのお母さんなら、ドロドロ状態のおかゆの食べが悪い赤ちゃんがいるのも珍しくない、という事も分かります。けれども、Aさんは初めての育児だったため、上手く離乳食が進められない事に焦りといら立ちを感じてきてしまいました。
ある日、Bさんの家にお邪魔していつものように赤ちゃんを遊ばせている時、ふとAさんは離乳食が進まない悩みを吐露しました。育児に対する悩みを相談できる相手もAさんにとってはBさんしかいなかったので、Bさんの離乳食の進みも気になった事もあり、相談してみたのです。
その時、BさんはAさんに「使っている離乳食の食器が悪いかもしれない」「食材が悪いかもしれない」と言ってきました。そして、Bさんの離乳食の進みを聞くと、順調であると。「我が子の離乳食も、Bさんと一緒の食器や食材を使えば進むかもしれない」そう思ったAさんは、Bさんにどんな食器や食材を使っているのか聞いて見ました。
そこで紹介されたのが、マルチ商法でも有名なメーカーの食器と離乳食にも使える野菜のペーストなどのセットでした。ところが、Aさんはこのメーカーがマルチ商法である事は知らなかったのです。「私も使ってみたい」とBさんに聞いたところ、まず会員にならなければいけない事、そしてBさんから購入すると、Bさんにもインセンティブが入る事などを説明しました。これを生かせば、育児に良い物を進めながらお小遣い稼ぎもできる、私も育児の先輩ママさんから勧められた、とBさんはAさんを言葉巧みに勧誘し始めました。
夫に相談してみた所、マルチ商法という事が発覚
会員登録には、個人情報を記入する欄があったので、Aさんは「夫に相談してから」と一応夫の許可をもらってから会員登録をしようとその場ではBさんの勧誘には乗りませんでした。
帰宅後、夜遅く帰ってきた旦那さんにBさんに紹介された商品について相談してみました。すると、夫から「それはマルチ商法の勧誘だ」と言われました。大切なママ友であるBさんを否定されたような気分になり、Aさんと旦那さんは口論になってしまいました。
Aさんの旦那さんは、インターネットでBさんから勧誘されたメーカーの事を検索し、Aさんに見せました。実際にマルチ商法の手口に引っかかってしまった人の体験談、それによって何人もの友達を失くしたり、家族からも信頼を失ったりした人の体験談などが記載されていて、AさんはやっとBさんにマルチ商法に勧誘された事に気が付いたのです。
もしも旦那さんに相談しなかったら、Bさんと同じ道をたどっていたかもしれない
AさんはBさんに次回会った時に断ったのですが、その後会うたびにBさんはAさんに勧誘を行ってきました。実際にそのメーカーの商品を使っている人たちの感想が聞ける交流会に行かないか、と誘われたこともありました。
Aさんは自宅も知られている事から、しつこい勧誘がだんだん怖くなりました。運よくその後すぐにAさんの旦那さんの転勤が決まったので、Bさんに行先を告げる事無くBさんと離れる事ができ、今に至ります。
Aさんがもしも旦那さんに相談していなかったら、そして旦那さんがAさんを止めなければ、AさんはBさんと同じ道をたどっていたかもしれません。
これは、Aさんの様に特にひとりで子育てを頑張っている女性が出会う悪質なケースとなっています。最初はママ友として仲良くしていたら、マルチ商法や宗教などに勧誘された、というパターンが多いです。
ケース2:育児のイベントに誘われたら、宗教の勧誘だった
中年女性から駅前で道を聞かれ、そのままイベントの紹介に
次に、2人の男の子のママであるCさんが出会ったケースを紹介します。Cさんの第一子がまだ赤ちゃんの時のお話です。ある日Cさんは、駅前に用事があり赤ちゃんをベビーカーに乗せて歩いていました。そして、駅の改札口近くで、中年女性から「〇〇に行きたいのですが、どちらに行けばよいですか?」と道を聞かれました。
Cさんは中年女性に乗る線や乗り口を教えると、中年女性から丁寧にお礼を言われました。Cさんはその場を後にしようとすると、中年女性は「ちょうど育児に関するイベントを主催しているから、今度良かったら来ませんか?」と誘ってきました。
その時に紹介された場所は、市民会館の一室でした。Cさんは公民館や市民会館で開催されている、自治体主催のイベントには多く出席していたので、そのひとつかと思いました。提示された日時も特に用事がなかったので、参加する事にして、その場を後にしました。
当日参加してみると、なんだか様子がおかしい事に気付く
紹介された日時となり、Cさんは赤ちゃんを連れて市民会館の一室をおとずれました。
入口では、住所と名前、電話番号の記名が求められました。児童館の利用時や、週で開催している自治体の育児イベント参加時にも、初回に名前や住所の記入をして登録をします。その為、Cさんは特に疑うことなく、受付で住所と名前、電話番号を記名しました。
一室に入ると、フロアマットを敷いた一角が用意されており、赤ちゃんを遊ばせながら複数のお母さんたちがいます。自治体の育児イベントでは、顔見知りになっているお母さんたちもいるものの、今回の会場内に知り合いは誰もいませんでした。また、育児イベントなら複数のスタッフが室内にいて、お母さんたちの相談に乗ったり、赤ちゃんを一緒に遊ばせたりしますが、部屋の中には監視をするように立っている女性が一人いるだけでした。その事を少し不思議に思いながら、Cさんもいつものように用意されているおもちゃで赤ちゃんと一緒に遊び始めました。
Cさんが赤ちゃんを遊ばせてしばらく経つと、道案内をしてこのイベントを紹介された中年女性が入室してきました。「今日は皆さんお集りいただきありがとうございます」と挨拶が始まりました。育児イベントでは、この後手遊びをしたり、工作をしたり、ボランティアの人による紙芝居や人形劇が始まったりします。Cさんも、「これから、何か始まるのかな」と楽しみに待っていました。
すると、中年女性がテープレコーダーを一台用意しつつ、話しを始めました。まずは女性自身の育児の経験についてです。「子育てに関する講話でも始まるのかな」とCさんは思っていたのですが、だんだん雲行きが怪しくなっていきます。
テープレコーダーから他人の体験談が
中年女性の体験談の中には、自分の息子の家庭内暴力がひどくなった事、次女が登校拒否になった事、女性自身も離婚を経験したことなどがありました。そんな中で、女性はとある宗教に出会ったと言う体験を話し始めました。
その宗教の教え通りにしたことで、家庭内の問題ごとが全て解決できた、という事や、今でも育児を頑張っているお母さんたちに、この教えは役に立つなどと語り始めました。
そして、テープレコーダーには、他の人の喜びの声と言うべき、体験談がたくさん入っていました。「○○教に入ったら、子供のアトピーが治った」「○○教で、夫婦仲も順調に」「○○教で子供の夜泣きがなくなった」などです。
Cさんは、聞いている内に「おかしいな?」と思っていたのですが、テープレコーダーの声を聞いた途端に、宗教の勧誘である事に気が付きました。
Cさんは、この場から離れなければいけないと思い、とっさに赤ちゃんのおむつを替えるふりをして、荷物を持ってその場を離れ、そのまま帰宅しました。
Cさんの話では、周りには中年女性の話をぼんやりとしながら聞いているお母さんもいたそうです。特に小さい赤ちゃんを育てているお母さんは夜泣きや授乳の対応もあり、寝不足である事が多いです。また、中には誰にも頼れる人がいない中で育児をしている人もいるかもしれません。そんな中、誰かに頼りたいと言う気持ちで、宗教に勧誘されるとふらふらと着いて行ってしまう人もいるのではないでしょうか。
数日たって、自宅に中年女性が訪問してきた
その後、Cさんの自宅に何と中年女性が訪ねてきました。そう、受付で自宅の住所を記入してしまったので、それをたどって訪ねて来たのです。そして、子育てで何か困っている事はないかと尋ねてきました。
宗教の勧誘という事をCさんは理解していたので、「大丈夫です」と突っぱね、家に上げる事はありませんでした。その後は知らない電話番号から何度も着信が入るようになったのですが、もしかしたらあの女性からかもしれない、という気持ちがあったので絶対にCさんは電話に出ないようにしました。
Cさんは、その後自治体の民生委員さんが中心になって開催されている育児サロンに参加した時、顔見知りの民生委員さんにこの事を報告しておきました。少しでも、育児イベントだと騙されてしまうお母さんがいないようにと望みながら。
口頭での勧誘は、乗らない方が吉
ママ友や公的な育児イベントを騙って、新米の育児ママさんをマルチ商法や宗教に勧誘する手口があるという事が分かりました。特に悪質なのが、ママ友として信頼させるまで一切勧誘をしない事、そして育児イベントは公民館や市民会館など、登録さえすれば借りられる公の施設で開催する事によって、自治体の育児イベントのように見せるという事です。
せっかく仲良くなったママ友でも、少しおかしいな?と思った時には離れるようにしましょう。ママ友を失う事になっても、もっと大きなものを失う事を防げます。また、ママ友は幼稚園入園や卒園、小学校入学や卒業、と子供の成長に合わせてお付き合いも変わってきます。ライフステージによって、別れもあれば、新しい出会いも沢山あります。
育児のイベントに参加する時には、口頭での誘いは避けた方が良いです。今回のCさんのケースのように、道を聞くふりをして子供連れの人に話しかけるケースもあれば、直接子供がいると思しき家庭に訪問して「イベントに参加しませんか」とインターフォン越しに勧誘してくることもあります。
信頼できる育児イベントは、児童館や保育園、幼稚園、支援センターなどが主催で行っている物や、自治体の広報やホームページにイベントとして紹介されている物です。紹介されている物は、主催団体が記載されているので、もしも不安な場合には確認してみましょう。
まとめ
小さい子供を育てているお母さんたちを狙った悪質な勧誘や手口がある事が分かりました。騙されない為に大切なのが、周りに何でも相談できる人を作る事。両親やご主人が頼れない、友人も誰もいない環境でも、自治体の育児相談を利用したり、支援センターや児童館で保育士や児童指導員に相談したりする事もできます。住んでいる所には、児童委員を兼ねた頼れる民生委員さんもいます。上手に活用して、孤育てを打破しましょう。
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ただでさえも子育てで疲労困憊な中、人の弱みにつけこみ、こういった悪質な勧誘や汚い手口で活動している人間がいることが信じられません。本当の意味で寄り添っていける社会を作っていかなければ未来はないと思いました。