衆議院と参議院とは?
日本の立法制度では衆議院と参議院の2つの院で国会が構成される「二院制」を採用しています。
今回は、衆議院と参議院について解説していきます。
衆議院について
衆議院の定員・任期について
衆議院議員は、議員定数が480名と定められており、任期は4年です。
衆議院の解散について
ただし、任期の最中でも「解散」が行われた場合、再び選挙を行うため衆議院議員としての資格を失う場合があります。衆議院の解散を行う権限は内閣が持っています。
解散が行われるパターンはいくつかあり、なかでも多いのが内閣総理大臣が解散を宣言するケースです。解散することで内閣が政権を担当してもいいのかと、国民に問いかけ、結果として議席が増えるor減らなければ、「国民の支持を集められている」という後押しになります。
そのため、内閣総理大臣による解散は、内閣総理大臣の支持率が高いタイミングで行われます。そのほか、衆議院で内閣不信任案が可決される、衆議院で内閣信任案が否決される場合に解散が行われます。
国会議員である衆議院議員になるには
衆議院議員に立候補者するには、日本国民であり満25歳以上であれば可能です。
また、衆議院は、選挙が行われると定数の480人全員が選挙し直すため、1度衆議院議員になれたとしても、継続するには4年に一度は必ず選挙に参加しなければなりません。
一見すると「安定しない」と思われるかもしれませんが、4年に1度入れ替わることによって「世論が反映されやすくなる」というメリットがあります。
参議院について
参議院の定員・任期について
参議院議員は、議員定数が242人と定められており、衆議院議員と比べるとおよそ半分ほどです。また、任期は6年と衆議院議員よりも2年も長いです。
参議院の解散について
参議院には、解散がないため衆議院議員と比べると1度当選すれば任期まで継続することができます。ただし、参議院は3年ごとに選挙を行い、半数となる121名が改選されます。
なぜ任期ごとにまとめて選挙を行わないのかというと、議院の継続性を保つことと、仮に衆議院議員が解散し選挙のタイミングが被ってしまった際に、国会の空白化を防ぐことが目的です。
国会議員である参議院議員になるには
参議院議員に立候補するには、日本国民であり満30歳以上であれば可能です。参議院は、3年に1度選挙が行われる以外は解散もないため、安定して政治に取り組める環境が整っています。
衆議院と参議院の2つの院があることのメリットは2つ
前述したように日本では、衆議院と参議院の「二院制」で国会が成り立っています。
では、なぜ二院制を採用しているかというと、2つの異なる院があることで、2つのメリットがあります。
二院制のメリットその1 ダブルチェックができること
衆議院と参議院の「二院制」のメリット1つ目は、ダブルチェックができることで、誤った法案が通らないようにすることです。法案が提出されると、まず衆議院がチェックを行い、その後参議院がチェックします。
このように2度に渡りチェックを行うことで、誤った内容の法案が通ることを阻止しています。仮に1院のみが存在していた場合、国民の利益よりも自分たちの利益を優先した法案を通してしまうかもしれません。
しかし、2つの院がチェックを行うことでお互いにチェックしあい、不必要な法案が通過するリスクが減ります。
二院制のメリットその2 新しい声と積み重ねてきた声が反映できる
衆議院と参議院の「二院制」のメリット2つ目は、異なる2つの視点を持つことができるということです。
衆議院は解散があることに加えて4年に1度議員が入れ替わることで「今の世論が反映されやすい」という特徴があり、参議院は解散がなく3年に半数だけ議員が入れ替わることから「じっくりと継続的な考えが反映される」という特徴があります。
この2つの特徴があることで、国の運営をより幅の広い考えで進めることができます。
日本ではいつから「二院制」が採用されたのか
1889年に大日本定国憲法が制定されましたが、憲法発布の翌年1890年には国会議員を選出する選挙が行われています。そして当時の国会となる「帝国議会」が同年に行われ、その時点では衆議院と貴族院からなる二院制を採用していました。
日本の憲法や政治システムはイギリスに大きな影響を受けており、イギリスも貴族院と庶民院からなる二院制を採用していたことから日本でも二院制が採用されたと考えられています。
当時の貴族院は、皇族や華族らが議員となっており、議員の多くが任期のない終身任期でした。しかし、1947年に大日本帝国憲法の廃止とそれにともなう日本国憲法の発布により、貴族院は廃止され、新説された参議院が受け継ぎました。
衆議院の優越について
原則として衆議院と参議院は同等の権限を持ち、対等な関係であるとされています。では、とある法案Aが提出された際に、衆議院と参議院で意見が異なった場合どうなるでしょうか?
まず両議院の代表者で話し合いを行いますが、それでも決まらなければ、法案Aを通すかどうかは「衆議院の議決によって決定」します。これを「衆議院の優越」と言います。
衆議院と参議院は対等な関係なはずなのに、衆議院に優越があるのは矛盾しているように感じるかもしれません。しかし、衆議院は任期が短く解散もあることから、より民意が反映されやすい国会院です。そのため、最終的には衆議院の決定を民意だと考え議決する方針がとられています。
また衆議院の優越はこれだけではありません。法案の審議は衆議院と参議院のどちらから始めてもよいのですが、国の予算を決める審議や海外との条約の審議は衆議院から始まり、内閣不信任案の決議も衆議院が行うなど、衆議院が優先的に行うことになっています。
海外で二院制を採用している国は?
日本だけではなく193ある国のうち、アメリカ合衆国やイギリス、ドイツなど78ヶ国が二院制を採用しています。つまり、およそ半数以上の国は一院制を採用していますが、民主国の多くで二院制が採用されているようです。
一院制とは?
一院制とは、「民意は1つである」という思想から、議会が1つの議員で成り立つ制度です。採用している国は、中華人民共和国や北朝鮮、フィンランド、ブルガリア、バチカン市国などです。
一院制のメリットとデメリット
一院制には議院同士の意見が対立することがなく法律の制定までにロスが生まれにくい、人件費や選挙費用を節約できるというメリットがある一方で、1つしかない議院が解散してしまうと議会決議に対応できない、立法権が1つの議員に集中することで衝動的に法律が制定されてしまう可能性があるというデメリットもあります。
まとめ
国会は、衆議院と参議院という2つの議院があることで、民意の声を反映させつつも誤った法律を制定させない仕組みが成り立っています。
国会議員を目指すのであれば、衆議院と参議院のそれぞれの特製を確認し、より自分の成し遂げたいことが遂行できる(この場合、国民のために成し遂げたいこと)議院を選び立候補するとよいでしょう。
訂正のお詫び
誤)1974年に大日本帝国憲法の廃止とそれにともなう日本国憲法の発布により
正)1947年に大日本帝国憲法の廃止とそれにともなう日本国憲法の発布により
訂正してお詫びいたします。(訂正日:2021年7月14日)
コメント
コメント一覧 (6件)
ためになった
勉強になった
ためになりました
ためになりましたが、「1974年に大日本帝国憲法の廃止とそれにともなう日本国憲法の発布により」は、1947年の間違いではないでしょうか。
ご指摘ありがとうございます。申し訳ございません。ご指摘の通りでございました。訂正しました。
とても分かりやすい記事で、役に立ちました!
一つだけ気になるところがあります。参議院の定数のところですが、
定数は「242人」ではなく「248人」ではないでしょうか。
最後に、公務員総研の編集部の皆さん、とても分かりやすい記事を書いていただき、本当に感謝しています。
これからも頑張ってください。