総合目録(そうごうもくろく)
総合目録とは、ある特定の図書館や専門機関がもつ蔵書データを各自提供し、統合された書誌所蔵データベース(総合蔵書データベース)のことです。
次に紹介する横断検索が増えたことで目立たなくなっていますが、国立国会図書館総合目録データベース(ゆにかねっと)、NACSIS-CATなど、健在のデータベースもたくさんあります。
数としては、都道府県立図書館が維持している総合目録が最も多いです。サーバ所有機関にはデータ管理などでかなりの負担がかかりますが、検索スピードが横断検索よりも圧倒的に早いことから、比較的使い勝手が良いと言えます。
横断検索
横断検索とは、様々な機関のWeb検索にデータを一度に送信し、その結果を一括して表示するシステムのことです。維持管理にそれほど手数を取られないため、多くの自治体で採用されています。
横断検索はあくまでも門番の役割であって、検索は各機関のデータベースにさせるため、結果の取得に時間がかかるのが難点です。公共図書館など、結果の即答を求められるような現場では少々使いにくいかもしれません。
しかし、広域の情報を一気に調べられる強みがあるため、「とにかく遠方でもいいから、所蔵している図書館を探してほしい」というレファレンスや、時間をかけてもいいレファレンスには便利なツールと言っていいでしょう。
時々、現場の司書でも総合目録と横断検索の区別がついていない人がいます。ですが、最近では図書館実習生を受け入れている図書館も多く、区別がついていないままだと実習生の前で恥をかきますので気を付けましょう。
ILL
ILLとは、Inter-Library-Loanの略称で、「図書館間相互貸借」と訳されます。図書館の現場では「相互貸借」と言うことが多いですが、システムの略称としてILLもよく出てくるので覚えておきましょう。
どこの図書館でも、所蔵できる本の量には限りがあります。そこで、いくつかの図書館がネットワークを作り、利用者から要求があった本を自分の図書館で持っていない場合、ほかの図書館から借りて提供するケースがあります。これがILLです。
図書館によっては、ILL専門の部署を設けてまで対応しているところもあります。現場に入ったらすぐに使う用語なので覚えておきましょう。
AV資料
この用語を見て良からぬ妄想をした人も多いでしょう。残念ながら、そちらの意味ではありません。図書館でのAV資料はAudio-Visual資料、つまり視聴覚資料のことです。学校図書館などのシステムでもAV資料と表示されるため、食いついてくる男子生徒が多いのですが、この話を聞いて落胆するというのはもはや図書館あるあるネタです。
一口にAV資料と言っても、色々な種類があります。昔ながらの16ミリフィルムやVHS、CD、DVD、最近ではBlu-rayに対応する図書館も増えているようです。図書館によっては、古い媒体が使えなくなる前に、新しい媒体へと変換する事業を行っているところもあります。
また、図書館システム上では、AV資料は図書や雑誌と区別して登録されているので、映像資料が欲しいときなどには絞り込み検索ができます。スピーディーな調査をするためにも覚えておきましょう。
デジタルアーカイブ
デジタルアーカイブとは、古い文献や絵画、フィルム、写真などをデジタル化して、原本を直接見なくてもデータとして閲覧できるようにするシステムのことを言います。現在では、国立国会図書館のほか、都道府県立図書館の多くがこのデジタルアーカイブに参戦しています。
デジタルアーカイブはマスコミ関係者も注目していて、何か歴史関係の特集を組むときに、このデジタルアーカイブを見てデータ提供の依頼を図書館に行う制作会社が多数あります。テレビで、「○○図書館所蔵」と書いてある映像を見たら、そのほとんどはデジタルアーカイブと思って間違いありません。
デジタルアーカイブは各図書館の特色を出しやすいため、どこの図書館でも積極的に推進しています。特に若い職員はデジタルアーカイブを担当する部門に配属される可能性が高いので、余裕があれば映像技術などについて勉強しておくと採用にも有利に働くかもしれません。
機関リポジトリ
機関リポジトリとは、主に大学図書館で行われている取り組みです。各大学では、研究器用や博士論文など、多数の研究成果が発表されます。これをPDFにして、世界中のどこからでも無料で参照できるようにシステム化したものが機関リポジトリです。
最近では、大学に属さなくても専門的な研究をする人が増えてきました。また、普段あまり図書館に出向くことができないような社会人大学院生にとっても、24時間アクセスできる機関リポジトリは強い味方です。
機関リポジトリは、大学の成果物のほぼ全てを網羅しています。もし、特定の研究者の論文がうまく見つからない時は、所属する大学の機関リポジトリにアクセスして再度調べ直してみましょう。思わぬ拾い物が出てくるかもしれません。
なお、機関リポジトリの多くは、大学の附属図書館が管理しています。「この大学は機関リポジトリをやっていたかどうか…」という場合には、まず附属図書館のHPを見てみましょう。まれに特許などの関係で論文の一部を学内限定公開にしていることがあるので、そのような場合には国立国会図書館に問い合わせる、あるいは発行元の大学に問い合わせるといった作業が出てくることがあります。
ICタグ
最近ではファストファッション店などでも積極的に採用されるようになったICタグですが、実は以前の一番大きい市場は流通大手の会社と図書館でした。図書館では、大量の本を管理する必要があります。昔はバーコードなどで貸出管理をしていましたが、最近では本や雑誌の盗難が相次いでしまい、多くの図書館がICタグを利用するようになりました。
ICタグでの資料管理により、入退館時の貸出チェックができるようになりました。そのため、入り口で荷物をロッカーに預けたり、職員が見回りをしたりといった人員の投入が不要になり、それ以外の部分に人員を割くことができるようになっています。
ただし、一部の大きな図書館ではICタグとロッカーを併用したり、より厳しいチェックイン・チェックアウトシステムを導入したりしているところもありますので、もし大きい図書館に行くという利用者がいたら、入退館管理の面でのアドバイスもしておくといいかもしれません。信頼度が一気に増します。
ポータルサイト
ポータルサイトとは、ある分野の情報について、総合的に情報を集めたサイトのことです。
Google検索ばかりしているとなかなか気が付かないのですが、ある特定の分野について集中的に調べたいときは、こうしたポータルサイトにアクセスする方が早い場合があります。ポータルサイトは国の機関のほか、都道府県立図書館などが運営している場合がありますので、時間のある時に各図書館でどのようなポータルサイトを開いているかチェックしておくといいでしょう。
ポータルサイトが一番の威力を発揮するのは、地域情報を調べるときです。観光などである地域に行くので情報をまとめて探したい、あるいは特定の地域の歴史について調べている、などといった時には、該当の都道府県立図書館のHPにアクセスして、ポータルサイトを開いていないかチェックしてみましょう。下手にGoogle検索で右往左往するよりも早く情報を得ることができます。
キュレーションメディア
キュレーションメディアとは、いわば「まとめサイト」のように、特定の分野についてまとめたメディアのことです。
先に説明したポータルサイトは、専門の職員や司書が情報を厳選してまとめていますが、キュレーションメディアを作っている人間のほとんどはその分野の素人です。そのため、嘘の情報が大量に紛れ込んでしまい、アクセスした人を情報の迷路に放り込んでしまいます。
キュレーションメディアのほとんどはSEO対策を施しているため、Google検索などで上位に来てしまいます。そのため、Google検索しかしない人の目には、その嘘の情報が全てのように映ってしまうことがあります。こうした場合の誤解をどのように解くがが、司書の腕の見せ所かもしれませんね。
情報リテラシー
情報リテラシーは、よく「情報の読み書き能力」と訳されることがありますが、現代ではそれに「情報を発信する能力」がプラスされています。
先ほど上げたキュレーションメディアもそうですが、最近はSNSなどのデマ情報に惑わされる人が増えてきました。なぜ惑わされるかというと、端的に情報を読み解く能力が不足しているからです。
情報には、発信時刻・発信場所・発信媒体といった「メタ情報」というものが含まれていることが多々あります。こうした「メタ情報」を考え合わせれば、デマに惑わされることはあまりないのですが、人間は端的に情報を見てそれを発信してしまうので、デマが拡散していきます。
まだあまり知られていませんが、現状を受けて、司書が情報リテラシー分野の教育役になれないか、各地で模索する動きが出てきています。もしかしたらあなたにも、そうした役割が回ってくるかもしれません。あなたには、デマに踊らされない自信はありますか?
まとめ -多様化する業務・多様化する用語-
ここで紹介した用語は、あくまでもホットトピックの一部に過ぎません。図書館情報学の分野は日進月歩ですので、次々と新しい業務や用語が出てきます。
現場に立つと、新しい知識を吸収することに鈍感になりがちです。ですが、そのままでいると時代遅れの本のお守りと化してしまいます。常に、「新しもの好き」な自分でいることを心がけましょう。どんな小さなことでも構いません。その積み重ねが、あなたを成長させていくのです。
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