【保育園の先生】保護者の相談内容とその支援について 事例をふまえて

近年は共働き家庭の増加やひとり親家庭の増加により、保育所に入所させたいというニーズが高まっています。育児休暇中のお母さんお父さんは子どもと1対1の関係になりやすいため孤立感を感じることがあります。そのような保護者に対して保育所・保育士は、特性を生かしてどんな子育て支援ができるのでしょうか。


保護者の支援方法

お父さんお母さんは子育ての悩みを抱えています

お父さんお母さんは子育てについて多くのことに悩みながら過ごしています。保育所に入所している場合、身近に子育ての相談をできる存在が保育士です。保育士は保護者との信頼関係を築きながら、保護者に「困った時は先生に相談してみよう」と思ってもらえるような保育士像が求められています。そのためには保護者の気持ちに寄り添って、誠実に対応することが大切です。

保護者の自己決定を尊重する

保護者の自己決定を尊重し、支えるためにはどういう点に留意するべきでしょうか。汐見(2017)は次のように述べています。

保護者に対する子育て支援において、保育者の役割は保護者の話をよく聞き、保護者が自分で解決していくための方法を導き出せるようサポートし、その自己決定を支えていくことです。「先生どうしたらいいでしょう?」と保護者に問われた時に、こうしたらどうですか」と安易に答えないようにしましょう。

例えば、「子どもへの声のかけ方が分からない」という悩みがあれば、「それはどんなときですか?」と具体的に聞き、問題点を見つけて、その解決法を一緒に考えていくという姿勢が大切です。その過程を通して保護者自身が「こんなふうにやってみます」と、自分で決めることが大事なのです。

その後は、登降園時の会話や連絡帳などを通して、保護者が頑張っている姿に寄り添っていきましょう。「よく頑張っていますね」と保護者の頑張りを認めたり、うまくいかないときには励ましたり「お子さんはこんなふうに変わりましたよ」と育ちを伝えていくことで保護者の子育てに対する喜びや、充実感を感じられるような支援が大切です。

出典
2017 汐見『保育所保育指針ハンドブック』p160

連絡帳での保護者支援

0歳児クラス、1歳児クラス、2歳児クラスは特別な配慮が必要で、また、まだうまく話せないため、保育所と家庭のやりとりするための連絡帳があります。3歳児以降の年少、年中、年長クラスは連絡帳はありません。そこには保護者に家での様子や体調などを書いてもらい、それを保育者が子どもが昼寝をしている間に書きます。

家でこんな様子でしたというものであれば特別気にしなくてもいいのですが、例えば、「子どもにキツくあたってしまって、そうすればいいかなやんでいます。」というつらい心のうちが書かれていたり、「入園当初保健師さんに相談してみたのですが、半年くらい経ち、何か気になる点はありますか?」などが書かれていることがあります。

基本的には連絡帳でのやりとりなので、決められた欄の中に保育者が返答を記入するのですが、このような非常に答えにくいものに関しては、迎えに来た時に保護者に直接話します。文章では誤解が生じる恐れがあるためです。また、保護者の気持ちに寄り添うという点からも、実際に会って話したほうが親切で、保育者の伝えたかった意図も伝わります。

そして保護者もまた、限られた記入欄の中で悩みや気になることを書いているため、本当の意図が伝わらない可能性があります。また主訴はまた別のところに存在する可能性もあります。保育者はその主訴をきちんと捉えることが大切です。実際に会って話すことで連絡帳に書いてあること以外の悩みや情報を引き出せることもあります。

また、最近は些細なことでクレームに発展することもあるため、保育者は細心の注意を払って保護者対応をする必要があります。保育者が保護者と直接話すことで、保護者は納得したり、安心したり、ほっとした表情を見せてくれることがあります。保育所は子どもへの支援だけではなく、保護者の支援も非常に重要です。

そして保護者から、もし保育士がわからないことを聞かれた時には素直に「すみません、わかりません」と伝えることが重要です。その場で適当なことを発言しても責任が取れませんし、なにより親切ではありません。そのような時には「上司に確認します」と返答し、質問の返答を後日まで待っていてもらうほうがよいとされています。

保護者からの相談の事例

左利きの子が矯正するかどうか

保護者から「うちの子は左利きなのですが、直したほうがいいのでしょうか」という質問を受けたことがあります。最初はその質問を受けた時にどのように答えたらよいかわかりませんでした。その時は上司である主担任の先生に聞き、私の代わりに答えてもらいました。その先生は保護者の意見を尊重し、「直したいようでしたら園でも右手で持つように声をかけてみますが、どんなでしょうか」という感じで話し、その保護者は「右手のほうがいいかなと思いますが、あんまり無理はさせたくないので・・」と話していました。

保育所としては子どもの自主性に任せるようにしました。右手で持ちたい時は右手で持ち左手がいい時には無理やり右手に変えることはせず見守ることにしました。私は上司の対応から、左利きを直したいと相談を受けた際の対応法を学びました。やはり左利きの子どもの保護者は利き手について悩む方が多く、それ以降も何度か同じ質問を受けました。私はそこで学んだように、子どもと保護者の意見を尊重するような返答を心掛けています。

食べようとしない子どもへの悩み

ある日、連絡帳に食事を自分で食べようとしないという内容が書いてありました。連絡帳には簡単に保育所での給食の様子を伝え、詳しくは子どもの迎えの時に話そうと思いました。お迎えが来た時に、「連絡帳のことですが・・」と話し始めると、お母さんは「それ、気になったので市の子育て相談に電話して解決しました!」とあっけらかんに答えていました。


私はほっとしたのと同時に、公共のサービスを利用できることを知っているかどうかが、子育てについても重要であると感じました。子育てをしていると必ず悩みやつらさを経験します。その時に例えば市役所のサービスで、子育て相談があったり、子ども家庭支援センターで、お母さん同士で交流する事業があったりする場合、それを知っていると、困った時にそれを活用でき、子育てに対する孤立感は減るように思います。

ちなみに食べようとしない子への対応は、食事の時間を決めて食べられるだけ食べさせ、あとは何かを食べたがっても、次の食事の時間まで与えないというようなメリハリが大事なのだそうです。

2017年告示版の保育所保育指針によると、食育に関する項目では今回の保育所保育指針では、保護者との連携がクローズアップされています。これは家庭での生活の質が、子どもの生活の質全体に深く関わっているためです。一日のスタートになる朝食をきちんと食べてから登園し、園でたくさん遊び降園後、就寝2時間前には夕食を済ませてしっかり睡眠をとる・・・という生活リズムを身につけるには、園での取組だけでは不十分です。(参考文献:2017汐見『保育所保育指針ハンドブック』)

このように食育の面でもそうですが、保育所保育指針に「日常の保育に関連した様々な機会を活用し子どもの日々の様子の伝達や収集、保育所保育の意図の説明などを通じて、保護者との相互理解を図るよう努めること」という規定があります。保育士は子どもの保育園での様子を具体的に伝えることが大切です。時には「こんなかわいい姿が見られたんです」と子どものエピソードなども伝えながら話すとより親密さが増していきます。

指しゃぶりが辞められない子ども

保育園で歯科検診があり、ある子が指しゃぶりによって口が前に出ていますと指摘されました。それを保護者のお母さんに伝えたところ、「うちでも辞めさせようと思ってネットを見ていろいろ試しているんです」と話していただきました。そのお母さんから「保育園ではどうですか?」と聞かれ、私は「保育園でもふとした時やお昼寝の時に指しゃぶりをすることがあります。」と答えました。そして「きっと指しゃぶりをすることで安心している面もあるんですね」とその子の気持ちを代弁する形で話をしていきました。お母さんから「無理やりではないのですが、指しゃぶりをしているのに気づいたら声をかけてもらえますか」と話が出ました。

そこで保育士はクラスの担任同士で話し合い、指しゃぶりをしている場面を見つけたら、優しく声をかけていくことにしました。このように保護者から意見をいただいたり、このように対応してほしいと言われた時には、職員間で情報を共有していくことが大切です。この先生はいいと言ったけど、この先生はだめというというように方針が決まっていないと子どもが迷ってしまうので対応はどの職員でも一致させるのがよいと言われています。

怪我への対応

保育所保育指針は「保護者の就労と子育ての両立等を支援する」と規定しています。保護者は大切な我が子を安心して預けられることが、安定して仕事にも専念できることにつながります。子どもが保育園で怪我をしてしまった時はその時の状況を詳しく伝え、深くお詫びをすることが大切です。子どもは発達段階に応じて様々な遊びに挑戦します。少し危険と感じることも、興味があると挑戦しようとします。保育士は発達を考えてしばらく見守り、危険と判断した時には理由を話し、その遊びを辞めるようにしていきます。

それでもどうしても怪我は起きてしまいます。その時にその怪我の状況によりすぐに保護者に連絡するか迎えの時でよいかを主任の保育士に相談するなどして決めていきます。保護者へ怪我をどのように伝えるかで信頼関係が築けるか、不信に思われるかが決まっていきます。保育士は怪我には細心の注意を払って未然に防ぐことと保護者への伝え方に気をつけています。

本記事は、2018年1月19日時点調査または公開された情報です。
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