アメリカの「州」って何? - アメリカ国家を構成している「州制度」入門

アメリカの州制度についての解説ページです。日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国について、州制度や州の成り立ちや、州によって違うルール、州があることによって人々の生活にどのような影響があるのかなどについてご紹介します。


みなさんは現在アメリカにいくつの州があるかご存知でしょうか。

アメリカ国旗に描かれている星の数が州の数を表していますが、現在は50の州が存在しています。今回は、アメリカ国家を構成している「州」について深く掘り下げてみたいと思います。

主に、州の成り立ちや、州によって違うルール、州があることによって人々の生活にどのような影響があるのかを日本人目線で見てみたいと思います。

アメリカを知る上で「州」という概念を知ることは重要なことですので、ぜひおさらい程度に読んでみてください。

アメリカの州の成り立ち

現在、アメリカ合衆国を構成しているのは「50の州」と「ワシントンD.C.」です。アメリカの首都であるワシントンD.C.は州という扱いにはならず、特別区という扱いです。D.C.の意味は「District of Columbia」の頭文字で、コロンビア特別区であることを指しています。

そもそもアメリカに州というものが出来たのは、1620年に102名のイギリス人キリスト教徒達が、本国イギリスで宗教的な迫害を受けて飛び出してきたところから始まります。

彼らはプロテスタントと呼ばれる人たちで、後にアメリカを建国する中心となります。彼らがイギリスから乗ってきた船が、かの有名な「メイフラワー号」で、おおよそ60日かけて、現在のマサチューセッツ州プリマスという町にたどり着きました。

新天地に着いた彼らは、自分たちの手で新しい国を作ることを前提にした法律を制定します。それを文書に残したものが「メイフラワー誓約」です。この文書こそが、後のアメリカ合衆国に繋がる原点と言えるでしょう。

彼らは自らが制定した法や規律に沿って新しい国作りを始めていき、土地や農作物の生産を先住民のインディアンたちと協力しながら進めました。現在のニューヨークがある東海岸一帯を中心にして、次第に規模が大きくなっていき、それらの土地を「区分け」しました。これが現在に続く「州」の原型です。

プロテスタントたちによって作られた植民地は13に及び「13植民地(Thirteen Colonies)」と呼ばれるようになります。そして、1787年にデラウェア州が初めにアメリカ合衆国の憲法を批准したことで「アメリカで最初にできた州」と言われるようになりました。ちなみに、デラウェア州はニューヨークの南、ワシントンD.C.の東にある全米で2番目に小さな州です。

デラウェア州がある周辺には、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンD.C.など現在でもアメリカの中心となる都市が集中していますが、この界隈に大都市が集中している理由こそ、アメリカ建国の縁の地だからなのです。


豆知識としてご紹介しますが、フィラデルフィアは現在のアメリカの首都であるワシントンD.C.の前の首都で、ニューヨーク市はフィラデルフィアの前のアメリカの首都でした。

現在のアメリカを構成する50の州ですが、もともとは東海岸一帯の13の州から始まった

歴史を押さえておくと今後も役立つと思います。ちなみに、アメリカ建国に縁がある東海岸の人は裕福でプライドが高い人が多いことで有名です。

州によってまったく違う法律・税金

日本では全国一律で同じ法律が適応されます。細分化していくと市の条例や町の条例などが出てきますが、アメリカはそれに加えて「州法」というものが存在します。この州法こそ、アメリカで生活する人たちにとって大きく影響するものです。ここでは、州ごとによって異なるルールをいくつかご紹介します。

まず、始めに州ごとに違う代表格と言えるのが「税金」です。これは人々の生活に直結することなので、アメリカへの移住や留学を検討する際には大きな焦点になるでしょう。

我々に最も影響がある「消費税」で比較してみましょう。アメリカには消費税がない州もあれば、10%以上かかる州もあります。2017年現在、アメリカで消費税がかからない州は、モンタナ、オレゴン、ニューハンプシャー、デラウェアです。逆に消費税が高いのは、カリフォルニア、ニューヨーク、ワシントン、テネシーでいずれも9%近くかかります。

さらに、消費税に加えて都市ごとにかかる税金もあるため、消費税にプラス1%程度余計にかかります。カリフォルニア州の代表的な観光地であるロングビーチエリアでは10.250%も消費税が発生します。

例えば、モンタナ州とテネシー州でまったく同じ500ドルのテレビを購入した場合、モンタナ州は500ドルですが、テネシー州では9.45%の税金がかかるので547ドルかかります。

アメリカでは、一般的に食材には税金はかからない、もしくは割安の税金になるとされていますが、税金の違いは生活に与える影響が多いので、ぜひとも押さえておきたい「州による違い」のひとつと言えるでしょう。

州によってまったく違う法律・マリファナ

2018年1月1日からカリフォルニア州で、マリファナの嗜好品としての使用が解禁されました。カリフォルニア州はロサンゼルスやサンフランシスコなどがあることからアメリカ西海岸の主要エリアとされています。日本人観光客や留学生、駐在の日本人も多いカリフォルニア州で合法的にマリファナが吸えるようになったのです。

マリファナが解禁された背景こそ「州法の違い」です。カリフォルニア州では慢性的な問題となっている税収を解決するためにマリファナの嗜好品利用を解禁し、少しでも税収を改善させようとこの取り組みを始めました。

一方で、隣のアリゾナ州では同様に税収の問題こそ抱えているものの、嗜好品利用は禁止されています。ただし、医師の処方箋があれば購入も使用も可能という条件付きの使用許可もあります。

このマリファナ合法化の動きは全米で加速しており、州法で全面的に禁止して違法取引が行われる状況を続けるよりも、さっさと解禁してしまえば違法取引も減り、税収も増えるということから容認意見が強まっています。

2016年12月には、アメリカのなかでも学歴が高い人が集まり、裕福な人が多いとされているマサチューセッツ州ですらもマリファナは合法化されました。それに加えて、人口が多く西海岸を代表するカリフォルニア州でも合法化された今回の一件は、大きな転換期と言えるでしょう。

マリファナの合法化は、州によって異なる税金と同様に、州による違いの代表的な違いのひとつです。


最後に注意勧告ですが、留学生や観光客がマリファナの使用が合法な州において、マリファナを吸引することは日本の刑法2条に接触するため厳罰の対象になります。例え合法でも、アメリカの警察はマリファナの吸引や所持をしている人を容赦なく捕まえます。不快な思いをしないためにも手を出さないようにしてください。

州によってまったく違う法律・運転免許

アメリカは州それぞれで運転免許証に関するルールが異なります。アメリカで留学生生活を送る場合や、駐在する際に混乱する可能性があるので、あらかじめよく理解しておきましょう。

日本人に馴染み深いカリフォルニア州で運転免許を取得できるのは18歳からですが、お隣のアリゾナ州では16歳から取得可能です。これには、公共交通機関がある程度発達しているかどうかということや、他州と比較して事故率が高いかどうかなどが関係しているとされています。

特にカリフォルニア州は交通量が多く、無謀な運転をする人が多いため、他州と比較して運転免許を取得できる年齢を引き上げているようです。他にも、他州からカリフォルニア州に転居してきた場合、10日以内に免許を書き換えなければいけないという決まりがあります。

日本では北海道や沖縄で運転免許を取得した人が、東京に転居する際には免許証の住所変更をしなければいけませんが、アメリカではテストのやり直しが義務付けられています。

つまり、州が変われば運転免許証のルールも変わるということです。もちろん、原則として交通ルールは同じですが、州によって定めているルールに従う必要があるのです。運転免許書は身近な問題で、なおかつ日々の生活に直結することなので、この州による違いに陥らないようにしましょう。

ちなみに、ノースダコタ州などでは14歳から車の運転が可能です。夜間運転を含んだ20時間以上の実務訓練とテストをパスすれば、16歳まで有効の「仮免」が発行されます。

仮免取得後から15歳までは、保護者や21歳以上の家族または25歳以上で家族が許可した免許保有者の同伴を条件に運転可能です。15歳から16歳までは単身での運転、または同乗者1名までの制限内で運転が許されます。そして、16歳以降は正式な運転免許を取得することになります。

日本のように学校に通うのに電車やバスなどの公共交通機関が発達していないアメリカでは、若いうちから車が運転できるのが実情です。しかし、このルールは州によって異なるため注意も必要なのです。

アメリカの州による違いを表している代表的な例のひとつです。

まとめ

アメリカは広く、大きいため州によって区分けされており、なおかつ州によってルールや文化が異なるということは理解できたことと思います。さらに、それらは生活する我々に大きな影響を与えることばかりです。とくに税金については日本とは仕組みも違い、出費も変わることが分かると思います。

アメリカでは生活する州によって生活のルールや税金、文化までも大きく変わります。日本では馴染みがないことですが、アメリカではごく当然のことですので「州による違い」という感覚を身につけておくことは重要と言えるでしょう。

さらには、この州による違いこそがアメリカらしさでもあるという解釈ができると、アメリカをより一層理解できるようになるでしょう。

※参考:アメリカ合衆国の州 50の一覧 (ABC順)

▼州名 略称 英語表記
アラバマ AL Alabama
アラスカ AK Alaska
アリゾナ AZ Arizona
アーカンソー AR Arkansas
カリフォルニア CA California
コロラド CO Colorado
コネチカット CT Connecticut
デラウェア DE Delaware
フロリダ FL Florida
ジョージア GA Georgia
ハワイ HI Hawaii
アイダホ ID Idaho
イリノイ IL Illinois
インディアナ IN Indiana
アイオワ IA Iowa
カンザス KS Kansas
ケンタッキー KY Kentucky
ルイジアナ LA Louisiana
メーン ME Maine
メリーランド MD Maryland
マサチューセッツ MA Massachusetts
ミシガン MI Michigan
ミネソタ MN Minnesota
ミシシッピ- MS Mississippi
ミズーリ MO Missouri
モンタナ MT Montana
ネブラスカ NB Nebraska
ネバダ NV Nevada
ニューハンプシャー NH New Hampshire
ニュージャージー NJ New Jersey
ニューメキシコ NM New Mexico
ニューヨーク NY New York
ノースカロライナ NC North Carolina
ノースダコタ ND North Dakota
オハイオ OH Ohio
オクラホマ OK Oklahoma
オレゴン OR Oregon
ペンシルバニア PA Pennsylvania
ロードアイランド RI Rhode Island
サウスカロライナ SC South Carolina
サウスダコタ SD South Dakota
テネシー TN Tennessee
テキサス TX Texas
ユタ UT Utah
バーモント VT Vermont
バージニア VA Virginia
ワシントン WA Washington
ウェストバージニア WV West Virginia
ウィスコンシン WI Wisconsin
ワイオミング WY Wyoming
ワシントンDC DC District of Columbia (Washington,D.C.)

本記事は、2018年1月24日時点調査または公開された情報です。
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