【アメリカ州制度】今、最も「熱い」と言われている州「テキサス州」解説

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。

今回のテーマは「テキサス州」です。テキサス州とはどんな所か、日系企業がテキサス州を選ぶ理由などについてご紹介します。


いま最もアメリカで「熱い」と言われている州はどこかご存知でしょうか?アメリカのなかだけで注目されているのではなく、我が国日本にも大きな影響力を持っている州が今回の主役です。

これからの将来、アメリカの経済の中心、さらには日本と最も繋がりが強くなるであろう州と期待されています。今回はそんな「熱い州」を経済や文化などを視点に深く掘り下げてみたいと思います。

次世代の拠点となるか?

いま最もアメリカで注目されているのは「テキサス州」です。日本人にとってはあまり関係がないとされてきた州のひとつですが、近年急速に繋がりが深くなってきています。

テキサス州はアメリカ南部にありメキシコとの国境に面しています。カリフォルニア州に次いでアメリカで2番目の人口と、アラスカ州の次に広い面積を誇り、州都はオースティンです。日本人にとって一番知られた都市は、NASAのジョンソン宇宙センターがある「ヒューストン」でしょう。

広大なテキサス州は日本の倍ほどの広さがあるため、地域によって気候が異なります。テキサス州南部は砂漠型で暑くなりますが、北部は寒くなります。夏は灼熱の暑さになりますが、日本と比較して冬でも温暖なため年間を通して過ごしやすいのが特徴です。

恵まれた気候や土地のため、アメリカ国内でも人気があり、ニューヨークやサンフランシスコなど不動産が高騰し過ぎているエリアから引越してくる人もいるほどです。

そして、日本の大手自動車メーカーであるトヨタや、空調シェア世界一のダイキン工業もテキサス州に拠点を構えています。とくに2014年に正式に発表されたトヨタ自動車がテキサス州のプレイノに本社機能を移転するというニュースは大きな話題を呼びました。

トヨタ自動車がカリフォルニア州からテキサス州に移転したことで、カリフォルニア州に拠点を置いていた関連会社もテキサス州に移転し、テキサス州の主要都市であるオースティンやヒューストンなどを中心に日系の街が増えつつあります。

日本を代表する企業が次々とテキサス州を目指す背景にはいったい何があるのか、多角的に解説していきます。

日系企業がテキサス州を選ぶ理由

トヨタを始めパナソニックなど多くの日系企業がテキサス州を選ぶ理由は、地理的利便性、物価・土地、石油、ビジネスフレンドリーなことです。

理由その1:地理的利便性

日本では国内の時差がないためあまりに気にかけることはありませんが、アメリカでは国内でも時差があります。さらに、アメリカを挟む形でカナダやメキシコなどにも生産拠点がある企業にとって時差は思いの外に厄介です。


とくにトヨタに関しては、時差だけでなく、カナダやメキシコの工場への直行便アクセスがあることも決め手になっています。テキサス州の主要国際空港であるダラス・フォートワース空港は、ロサンゼルス空港よりも発着回数が多く、世界で3番目に忙しく、利便性が高い空港と言われています。

国内線に強いアメリカン航空やサウスウエスト航空の拠点でもあり、アメリカ国内への移動に加えて、他州よりも南米へのアクセスが良い点も高い評価を受けています。陸路の利便性も高く、48時間以内にアメリカの主要都市の9割にアクセス可能です。広いアメリカにおいて移動や物流の利便性が高いことは大きなメリットです。

理由その2:物価・土地

テキサス州は他州と比較して物価が安いことでも有名です。とくに不動産が顕著にそれを物語っています。

以前、トヨタ自動車が拠点を置いていた、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のトーランス周辺では、アメリカで一般的な3LDKの一軒家を購入する場合、日本円で1億円ほどですが、テキサス州では3千万円程度と大きな開きがあります。

ここ数年の日系企業の進出により、2011年以降不動産は高騰し始めているものの、それでもロサンゼルスやニューヨークなどと比較して半額以下で済むのは魅力的です。ダラスやフォート・ワースは国内外から不動産投資先としても注目されているほどです。

企業にとっても広大な土地があるテキサス州は工場を建設しやすく、安く収められることから、食品や電子部品など様々な製造業からも人気があります。

テキサス州を始めとしたアメリカ南部エリアへ企業や工場が進出する一連の流れは「アメリカの製造業の回帰」として、強いアメリカの復活を予感させています。

理由その3:石油

テキサス州はアメリカ屈指の石油産出量を誇ります。テキサス州にはメキシコ湾に沿うようなかたちで多くの製油所があります。もともと、アメリカの石油産業は、たくさんの油田が見つかったテキサス州を中心に栄えました。

1900年代中頃には、自動車の発展とともに石油燃料の需要も増加し、テキサス州はオイルマネーを手に入れます。アメリカ国内の石油の需要に合わせるように製油所も建設され、テキサス州は現在でも石油生産量全米一位で、アメリカの製油の拠点になっています。このためテキサス州周辺ではガソリン代が安いというメリットがあります。

安い不動産に加えて、潤沢なエネルギー源があるテキサス州が、次世代のアメリカ経済の拠点になると言われるのも納得です。

理由その4:税金

テキサス州は税金の面でも優遇措置が多いのが特徴です。とくに企業にとっては大きな影響を受ける「法人税」がかからないことは魅力と言えるでしょう。ただし、売上税という名目で6.25%課税されますが、カリフォルニア州の最大10%の法人税よりは安くすみます。

個人にとって最大の魅力は州の所得税がかからないことでしょう。カリフォルニア州では最大で10%以上になるため、税金の優遇は企業にとっても、個人にとっても魅力なのです。加えて遺産税がかからないということもアメリカ人からは評価されています。

テキサス州が税金を優遇する背景には、石油事業などの収入があることなどがあげられますが、税金が安いことを理由に多くの企業が集まり、自然に税収も増えているという好循環が生まれていることも確かでしょう。

理由その5:ビジネスフレンドリー

日系はもちろん、アメリカ国内でも多くの企業がテキサス州を目指す理由にビジネスフレンドリーであることも重要です。税金が安く、土地も広く、交通の利便性も高いテキサス州は、企業に対して「法律」の面でも理想的な環境が整っています。

その代表例が「Right-to-work法」と呼ばれる法律です。これは労働者が働く企業に、労働組合があっても加入を強制しないという法律で、カリフォルニア州などでは、労働者は労働組合への加入が義務づけられており、組合費なども天引きで支払わなければいけません。


労働者は労働組合に加入することで、賃金や待遇の交渉がしやすくなるメリットもありますが、企業にとって労働組合は「目の上のたんこぶ」のような存在です。特にアメリカでは人種や人権などを理由に、企業側に強気な態度を取る労働組合は多く、企業にとって「リスク」でもあるのです。

テキサス州ではそんな労働組合への加入を強制されることがないため、労働組合が無理難題を主張する機会そのものを減らせるのです。つまり、テキサス州は企業にとってリスクを減らし、経営を円滑に進めやすい環境だということです。

さらに、企業側にとってメリットになることのひとつに、テキサス州を管轄にしている裁判所の判事たちが、法に従った判決を下す傾向が強いということがあります。

アメリカでは人種や人権などを盾に、時に法律で定められたことよりも感情が先行した判決が下され、裁判が無用に長引くことがあります。さらに、訴訟大国アメリカと言われるだけあって、頻繁に起きる裁判を多く抱え続けることは企業にとってリスクでもあるのです。

仮に、企業が製品に関連した過失があるとされて訴えられた場合、裁判は一般人から無作為に選出された陪審員の意見も考慮されます。その際に、原告の人種や人権、負った心の傷などに同情し、法を超えた判決が下ることがよくあります。

企業側はあくまでも法に沿った判決を下されるべきと主張しますが、裁判の場で感情論が持ち出されてしまうのがアメリカです。しかし、テキサス州では感情に押し流されることなく、上訴裁判所や、さらには州最高裁で法に沿った判決が下ることがほとんどなのです。

当然と言えば当然のことなのですが、アメリカという多人種文化、何にでも人権や権利を主張する国民性に鑑みると「法に従う」ことが出来るテキサス州は至極真っ当とも言えるのです。多くの企業はテキサス州のこの風潮を歓迎しているのが実情なのです。

このようにテキサス州は、法律の面でもビジネスフレンドリーであることが伺えます。そのため企業が進出しやすく、その結果、労働者も集まりやすい好循環が生まれているのです。

まとめ

いまアメリカで最も「熱い州」はテキサス州です。日系企業だけに限らず、アメリカの名だたる企業も移転をしてきており、これからますます栄えていくことが予想されています。

2022年にはテキサス州のダラスとヒューストンを90分ほどで結ぶ「新幹線プロジェクト」も計画されています。このプロジェクトはJR東海とテキサス州の企業が連携して実施するもので、線路や車体などすべて日本の技術が使われる予定です。

アメリカ発となる新幹線システムもテキサス州から始まろうとしているわけです。テキサス州は日本との繋がりも強く、これから先は目が離せない州のひとつとして覚えておくといいでしょう。

本記事は、2018年2月6日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

テキサス州
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