国立大学法人の非常勤職員とは?
国立大学法人の非常勤職員は、他の常勤職員と全く異なる仕事をするというわけではなく、各部署で常勤職員が行っている業務の補助、または教授が行う研究・業務の補助を行っています。
国立大学法人の常勤職員となるには、一年に一回行われている各地区の国立大学法人等職員採用試験を受験し、筆記試験である一次試験と面接である二次試験に合格しなければなりません。しかし、非常勤職員はそのような採用試験の受験は必要なく、ハローワーク等の就職支援情報や、各大学のホームページにて募集情報が随時発表されるので、その情報をもとに直接大学に履歴書を送付し、面接試験を受けることになります。
国立大学法人とは
国立大学法人とは、以前は文部科学省の内部組織であった国立大学を法人化することにより、より大学運営を透明化し独創的な高度教育機関へと発展させていくためにできた組織です。国立大学法人の職員は、公務員ではなくなりましたが、公務員宿舎に入居可能、年金や健康保険として共済組合に加入できるなど、公務員として扱われる部分も多く残っています。公務員が入ることのない雇用保険には加入が義務付けられています。
国立大学法人の非常勤職員も、勤務日数が要件を満たす場合は雇用保険にも自動的に加入することになりますが、健康保険は共済組合ではなく国民健康保険に加入することになります。時短のパートで雇用される場合、夫の扶養に入ったまま勤務している人もいます。雇用体系にもよりますが、非常勤職員も年休やリフレッシュ休暇、お盆・正月休みを取得できる場合も多いです。
国立大学法人の組織
現在、日本には86校の国立大学法人があり、そのうち総合大学が47校、専門大学が33校、女子大学が2校、大学院大学が4校となっています。
国立大学法人は、独立行政法人の一形態とみなされています。そもそも、独立行政法人というのは、日本の省庁の機関であったものが、独立して法人組織となったものです。日本の安全や経済、社会に役立つような事業の中で国家が直接業務を行う必要はないものの、完全に民間事業とすると行われない恐れがある業務や、独占してどこかが行う必要がある業務を担っている組織となります。
国立大学法人は他の独立行政法人と比べてより自主性を尊重する必要があるため、学長の任命は中期目標に大学の意見が強く反映されるよう工夫されていたり、独立行政法人通則法の適用についても各大学の教育研究の特性に配慮するよう定められていたりと他の独立行政法人と異なる部分もあります。
事務職員補佐業務と教授補佐業務
国立大学法人非常勤職員の業務は多岐に渡りますが、大きく分けると事務職員の補佐業務と教授の補佐業務に分かれます。
事務職員の補佐業務について
事務職員の補佐業務の場合は各課、各係の常勤職員が行っている業務について入力作業や確認作業などを常勤職員とともに行います。大学の規模にもよりますが、大きい総合大学の場合は、学部ごとに総務課、人事課、会計課、施設課、学務課、国際課、入試課等の課があり、そこで各係に数名、非常勤職員がついて業務の補助を行う形になっています。
総務課であれば職員の年休や給与の計算、人事課であれば就職セミナーや採用者面接の運営、施設課であれば学内の各施設の備品管理や調達、学務課であれば学生の授業カリキュラムの作成や把握、国際課であれば留学希望者や受け入れに関する手続き、入試課であれば試験の入学試験や学生募集の手続きなどそれぞれの業務を各課の常勤職員が行っているので、その業務の一部を常勤職員に指示を仰ぎながら行います。
教授の補佐業務について
教授の補佐業務の場合は、各研究室や学科ごとに非常勤職員がつき、教授のスケジュールの管理や研究に関する物品の発注や入力作業、教授の出張の手配や報告手続きの補佐など、秘書業務のような形で仕事を行います。技能補佐員等の特殊な知識や経験をもとに採用された人は、研究室の研究を教授や学生とともに行います。
国立大学法人の非常勤職員に必要なスキル
非常勤職員の中でも、事務職員は特に資格等要求されることは少ないですが、ワードやエクセル等の基本的なパソコンの知識を持っていた方が業務をスムーズに行うことが出来ます。技能補佐員など、研究室で教授の補佐を行う場合は、係る研究に対する知識や経験、学歴を要求される場合もあります。また、大学で働くため、どのような業務でも学生や教授、職員、業者など多くの立場の人と関わることが多いため、事務作業だけでなくコミュニケーションも円滑にとることが出来た方が良いといえます。
国立大学法人の非常勤職員のやりがい
まず、学生たちが希望を持って大学生活を送っている様子を間近で感じながら、それをサポートしているという気持ちを持って業務を行うことができます。大学にはそれぞれ特色があり、そのカリキュラムを元に努力している学生達を見ていると、社会人である自分ももっと頑張らなければという気持ちになります。
また、特に教授の補佐業務を行っている場合は、今まで全く知らなかった専門的な研究の最先端にいる人たちを間近で見られるため、少しでもその業務が円滑にいくよう事務的な部分をサポートしたいと思うようになります。
国立大学法人の非常勤職員になって大変な事
国立大学法人は、高度教育機関という性質上、専門的な用語や物品名が飛び交うことも多いので、単純な入力作業や計算作業を行っているだけでも、聞きなれない言葉について尋ねたり、調べたりすることが必要です。
また、あくまで非常勤職員ですので、採用期間が限定されていることもあり、最長で5年しか働けなかったり、1年更新を数回繰り返すことで、数年働けると思っていても更新時に勤務更新されず、辞職になったりすることも起こりえるのは覚悟しなければなりません。
国立大学法人の非常勤職員の一日の流れ(教授補佐業務の場合)
10:00 出勤、メールチェック
担当の教授からその日行ってほしいことや、発注してほしい物品などがメールやメモで届いているのでそれらをチェックし、優先順位を付けます。
10:30 郵便物確認、各研究室へ配布
学内外から各教授へ書類が届くので、それらを仕分けし、各教授へ届けます。その際に教授から宅配や郵便で送ってほしい物を預かります。
11:00 物品発注
取引先の業者へ、教授から頼まれていた物品を発注します。また業者から以前発注していた物品や伝票を受け取ります。
12:00 昼食
学内の学生食堂で昼食をとることもできます。
13:00 出張予定と領収書の確認
教授は学会等で出張へ行くことが多いので、そのスケジュールを確認し、出張入力システムへ入力と、出張後に教授から受け取った領収書や報告書を確認、整理し会計課へ提出します。
14:00 物品伝票の入力
教授が研究費で購入した物品を、伝票を元に物品入力システムへ入力します。年度末には各研究室に振り分けられた研究費と物品の購入費を合わせなくてはならないので、研究費の残額を計算し、教授へ報告します。
16:00 物品・郵便物の配送
教授から預かった物品を宅配業者へ配送依頼を行ったり、郵便に出したりします。学内の他の学部や課へ書類等を届けに行くこともあります。
17:00 帰宅
給料や福利厚生・退職金や退職の理由など
非常勤職員の雇用体系や、勤務時間は各大学や、その時の応募条件によって異なるので、一概には言えませんが、一例として国立大学法人に非常勤職員として採用された場合の給料や福利厚生等についてご紹介します。
まず給料については、応募条件に時給を書かれていることが多いです。例えば時給800円で、10:00~17:00の時短パートとして採用された場合、800円×7時間×平日数となり、月給でいうおおよそ10万円ほどになります。
福利厚生については、非常勤職員であっても、年に10日の年休が付与されたり、リフレッシュ休暇が年に3日付与されたり、他の職員と同じように産休育休制度を使える場合もあります。
また、退職金はありませんが、雇用保険に加入しているので、ハローワークで所定の手続きを行った上で、認定手続きを受ければ、失業手当を受給することも可能です。退職の理由はほとんど更新の期限がきれて退職する場合が多いようです。各大学で更新延長の上限が決まっていることが多いので、上限いっぱいまで働いた後は、退職しなくてはならなくなります。
非常勤職員合格時の試験内容体験談
国立大学法人の非常勤職員については、常勤職員のように決まった試験を受ける必要はないので、私の場合はハローワークで応募を見つけ、そちらを介して応募しました。国立大学法人の非常勤職員を選んだのは、土日休みで福利厚生も整っており、前職が公務員であることを事務仕事の中でも生かせそうだと思ったからです。獣医学部の教授補佐業務の内容の募集であり、採用人数は1名でした。
履歴書を送付した後、数日後に電話があり、面接の日程の連絡を受けたため、その日程で大学へ面接に向かいました。学歴や資格などの条件はなく、面接中にワードやメールなどパソコンにおける簡単な操作が可能か確認されました。大学について、どのような特色があり、応募する学部がどのようなことを行っているか調べていきましたが、特にそのようなことは聞かれず、私の場合は前職が公務員であったため、どのような仕事をしていたかと、なぜ退職したのかということを聞かれました。
その日のうちに採用の連絡があり、募集に書いてあった採用日から採用され働き始めました。特に試用期間はなく、給料も最初から同じ額支払われましたが、前任者から業務について引継をしてもらいスムーズに仕事を始めることが出来ました。
まとめ
非常勤職員というと、簡単な仕事ばかりと思いがちですが、国立大学法人の場合は、非常勤職員の割合がかなり大きいため、割り振られる業務も多岐に渡り、常勤職員と同じような仕事をこなす必要があるときもあります。もちろんそのような場合も上司や常勤職員の人たちにフォローしてもらいながら作業できるため、やりがいを持ちながら、仕事とプライベートや家庭を両立しやすい職場と言えます。
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