大学の「知的財産」に関する事務職とは?
大学には、学問のプロフェッショナルである教授や准教授が在籍しています。教授や准教授は、大学の学生に講義や試験を行うだけでなく、様々な学問に関する活動を行っています。その活動の一環に、知的創作物の作成があります。具体的には文章を書く、絵や図を書く、何かのアイディアや発見をする、などです。そして、色々な面で財産として価値があると判断された知的創作物の成果を、「知的財産」と呼びます。
知的財産の中には、アイディアや発想、学術の説など形のない物もあります。また、文章やデータ、音声など色々な形があります。その為、知的財産を作成した人の財産として守らなければ、他人に無断で借用、転用などをされる危険性があります。この知的財産を、作成した人の権利として保護する為にある権利が、「知的財産権」です。
知的財産権を取得するためには、色々な手続きが必要になります。その為の作業を行う「知的財産研究室」という部署が各大学には併設されています。そして、知的財産研究室には研究室長を始めとした事務員が在籍しています。
大学の事務職員の仕事内容は?
事務員によって任される仕事が異なる、分業スタイルを取っている所もあれば、多くの仕事を皆で手分けして行うスタイルの所もあります。一方、学部によって担当する、教授や准教授によって担当する、などで仕事の範囲を分けている場合もあります。
今日紹介するのは、知的財産権を取得するために必要なデータ化のための作業をする事務員のお仕事です。大学によって異なりますが、教授の知的財産をデータという形にする事が仕事になります。
知的財産の預かり
まず、教授や准教授の知的財産をお預かりします。手書きの文書の事もあれば、あらかじめフォーマットに入力済みのデータをそのままお渡しいただける事もあります。受け取る方法も、教授の元へ取りに行く、教授が研究室まで持ち込んでくれる、メールなどで添付して送られてくるなどです。
受け取った知的財産をデータ化します。図などはスキャンします。手書きの文章はそのままフォーマット上に打ち込みます。そのままデータを渡して貰えた時には、きちんと入力がされているのかをチェックし、必要に応じて修正を行います。知的財産のデータ化が終了すれば、指定された保管場所にデータを保存して一仕事が終わります。
知的財産に関する問い合わせ
受け取った知的財産の文字が読めない、などデータ化に対して問題のある点や疑問点があった場合には、教授や准教授にその問い合わせをします。内線やメールで問い合わせをする事もあれば、問題のある箇所が多い場合や説明が難しい場合には直接教授や准教授の所へ出向く事も少なくありません。もしくは、学会や出張などに出てしまい大学内にいない事もあるので、担当している教授や准教授のスケジュールも把握しておかなければいけません。勿論、講義中なら終わってから問い合わせをします。他にも、提出をお願いした知的財産の期限が迫っている時なども問い合わせをします。
データ化以外の雑務も行う
知的財産のデータ化の他にも、データ化担当の事務員は基本的なパソコン操作ができる場合が多いので、教授や准教授から色々な頼まれごとをされる事が多いです。「手書きの書類をワードやエクセルにまとめて欲しい」「送付する書類のフォーマットを作って欲しい」などが多いです。メールの送り方が分からない、インターネット上の一部分だけスクリーンショットが取りたい、などのお願い事も多いです。たまにお使いに行って来て、といった依頼を受ける事も…。勿論、本業であるデータ化に支障がないように、無理のない範囲ですがデータ化以外の仕事を請け負います。
知的財産研究室で仕事 一日の流れ
9:00 出勤・室長からの挨拶や申し送り後就業開始
9:30 知的財産に関するデータの作成依頼や修正を中心に行う
11:30 昼食休憩(12時からは学生が多くなるので、昼休みは30分早くなっていました)
12:30 引き続きデータの作成や修正がまだあればそちらを優先させる。教授や准教授の所に色々な用件で出かける事もある。他の依頼などがあればそれに取り掛かる。
15:00 研究室の近くのスペースで小休憩
17:00 退社
知的財産研究室の事務職員はどんな人が向いている?
大切な知的財産をお預かりし、データ化をする仕事の為、スピードよりも作業の正確性が求められます。綿密な作業も多く、同じ作業を繰り返す事も多いので、根気のある方やコツコツ細かい作業をする事が得意な方、同じ作業の繰り返しも苦にならない方も向いています。既にデータ化されたものを提出される時には、内容に誤りがないかを確認する業務もありますので、細かいところまで気が付く事ができる方にも向いています。
教授や准教授からの依頼事項も多いので、色々な対応ができる柔軟性や臨機応変さがあればなお良いです。業務外の事でも無理のない範囲で引き受け、気持ちよく仕事ができる方は事務室内でも教授や准教授からも好印象です。
求められるスキルは、パソコン操作ができれば大丈夫です。それに加えて、外国人教授や教員とコンタクトを取る事も少なくありませんので、英語に抵抗がなければなお良いです。日本に住んでいる外国人の方が多いので、日常会話程度の英会話ができれば大丈夫です。
知的財産研究室にはどんな人が働いている?
事務員は正社員・派遣と様々
知的財産研究室で働く事務員は、大学の正規雇用の職員もいれば、派遣社員もいます。派遣社員も、一般の人材派遣会社の派遣社員もいれば、大きな大学の場合は大学が持っている派遣会社の社員もいます。
一般の人材派遣会社の派遣社員は、20代から40代までの女性が多く、大学の派遣会社の派遣会社は元々大学の正規職員だった方がリタイアして、派遣社員として出向して働いているパターンが多く、60代の男性が多かったです。
派遣社員も、長期契約をしている派遣社員もいれば、一時的にデータ処理数が増えてそれをこなす為の増員に伴う、一か月ほどの短期勤務の派遣社員もいます。
教授・准教授
教授や准教授は、学生の夏休みや冬休みの間には休みを取る場合もありますので、研究室によっては、事務員も学生と同じ期間休みを取る事ができる所もあります。その為、幼稚園生や小学生、中学生のお子さんがいる女性も、お子さんが長期休みの時は一緒に休みが取れる仕事の為、研究室によっては働きやすいと言えます。残業もほとんどありません。
知的財産研究室の事務員の楽しみとは?
知的財産に関わる業務になりますので、何かを突き詰めて考える人や、大学で専攻していた学問がある方は、楽しみながら仕事をする事もできます。時には、データ化するためにチェックしていた教授や准教授の学術発表や文書を、つい読みふけってしまうという事もあります。勿論、自分が取り扱う知的財産は口外してはいけませんが、色々な知的財産と触れ合う機会がある為、自分はとある研究の最先端に立ち会っているのかもしれない、という高揚感も味わう事ができます。
大学の中にある研究室の為、利用する施設は全て学生と一緒です。勿論学食も利用できます。安くておいしい学食が毎日利用できるので、お財布にはとても優しいお仕事です。学食だけでなく、大学構内にある書店やコンビニなども利用できます。大学構内にほとんどの施設が揃っている事が多いので、昼休みだけでなくちょっとした休憩のついでに自分の買い物を済ませる事もできました。
常に学生が近くにいる環境の為、昼休みなどで学生が多くいる時間帯には、今どきの大学生のファッションや話題などにも触れる事ができます。たまに学生から話しかけられる事もあり、話していると学生時代に戻ったような気分でリラックスする事もできます。
ここが大変!知的財産研究室の事務員の苦悩
データ化する知的財産に問題点や疑問点があった時には、教授や准教授に問い合わせをする事になりますが、その当人がなかなか捕まらない事があります。
講義や試験中でもなく、かつ学会や出張に行っているという訳でありません。とはいえ、広い大学構内のどこにいるのか分からない為、自力で探すわけにもいかず、この場合は教務室や他の研究室の事務員に言付をしておく、一応メールなどで連絡を送っておくなどの手段を取り、一時保留になります。その為、進めたくても進められない業務が溜まってしまう事があります。
自分がどの作業をどれだけ持っているのかを把握しておく必要があります。
業務外のお願い事も沢山ありますので、「自分の担当業務以外はやりたくない!」という方には不向きです。
知的財産研究室を含め、大学事務員になるには?
知的財産研究室を含めて、大学の事務員になる為には色々な方法があります。
大学の求人情報
ひとつは、大学の求人情報を得る事です。
大学のホームページには、採用情報を記載している所も多くなっています。正規採用や特定の大学の事務員として働きたい時には有効な方法です。
求人サイトの活用
次に、求人サイトを活用する事です。
正規採用の他にも欠員が出た時や、研究室を拡大する時など増員する時には、一般の求人サイトに大学事務員の求人情報が出る事も少なくありません。正規採用だけでなく、パートやアルバイトとしての採用もありますので、ライフスタイルに合わせた働き方もできます。
人材派遣会社を利用
最後に、人材派遣会社に登録する事です。
一般の派遣会社でも大学事務員の派遣を行っている所は数多くあります。短期・長期とも紹介を受ける事ができますので、とりあえず大学事務員の仕事を体験してみたい、と思った時には短期で働く事もできます。また、独自で派遣会社を持つ大学もあるので、そこに登録しておく方法もあります。
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