【出世する人としない人】刑務官の昇任ルールについて

国家公務員「刑務官」の昇任の仕組みについての解説ページです。出世する人としない人、刑務官の昇任ルールは、他の省庁にはなく、徹底した実力主義のようです。その内容について、元・刑務官の小柴龍太郎氏に執筆いただきました。


刑務官の昇任管理はとても重要

刑務官とはいえ人の子。できれば出世したいと思います。中には「そんなの関係ない!」という人もいますが、同じ経歴の同僚が昇任したのに自分はそのまま、ということになれば心中穏やかでなくなるはず。気分を害し、すねて、仕事へのやる気が失せるといったことにもなりかねません。それでは刑務所が困ります。法務省としても困る。

だから、刑務官の昇任管理はとても重要なのです。公平にしなければならない。えこひいきなどが入り込まないようにしなければならないのです。そしてそれを可能にしているのが昇任基準といわれるものです。2万人ほどもいる全国の刑務官の昇任管理がこの基準に基づいて行われるわけです。

次から書く内容は私の現役時代の経験に基づくもので、多少現在と違う部分もあるかもしれませんが、基本的には同じだと思います。

昇任基準と人事院

まず、例えば、「〇級△号以上、在級年数◇年以上」などというのが昇任基準です。これをクリアしないと昇任させないわけです。同時に、この昇任基準をクリアしても勤務成績が悪ければ昇任させません。これによって現場の刑務所長などの裁量を加味させる仕組みです。

それでは、法務省が昇任基準をどんどん甘くすれば刑務官の出世が早くなるかというと、そうはいきません。人事院がにらみをきかせていて、ほかの省庁の職員とのバランスなどを見ながらコントロールしているからです。そのツールが級別定数というものです。刑務官の級ごとに法務省が使える数が決まっているのです。この数を超えて刑務官を昇任させることはできません。国家公務員間の昇任スピードや生涯給与の均衡がそれによって保たれているわけです。なかなかうまくできています。

実力主義の昇任管理?

それでも、優秀な刑務官にはそれなりに高い給与を与える仕組みを整え、やる気を出してもらい、強靭な組織としたいので、法務省(矯正局)では研修制度と昇任制度をリンクさせる方式を採用しています。上位の研修を終えたらほかの刑務官よりも早く昇任できるようにしているのです。このような研修は一般の研修とは違って「昇任研修」といわれ、中等科研修とか高等科研修などがそれに当たります。

大雑把に言えば、中等科研修をクリアすれば係長クラスまで昇任でき、高等科研修を卒業すれば課長クラス以上まで行けます。刑務所長やそれ以上までになれるのです。I種試験を合格して入省してきたいわゆるキャリア組と同じくらいのクラスまで行ける、いわば新幹線のような超特急コースです。

その分、昇任研修は誰でも受けられるものではありません。競争試験に合格した者だけが受講できる。「完全な実力主義」です。学歴は関係ない。その後の出世も実力次第です。

その結果、高等科研修を卒業した高卒の刑務官が東大卒のキャリアより出世するといった現象が生じます。ここまで実力主義を徹底している昇任管理は全省庁を通じてほかにはないそうです。

ある意味、国家公務員の人事制度のお手本というか、理想の形が刑務官の世界で実現できているわけです。刑務所という厳しい現場を支えるために先人が創り上げた作品と言ってもいいのかもしれません。

本記事は、2017年4月15日時点調査または公開された情報です。
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