【アメリカ州制度】日本と繋がりの深い州「ハワイ州」解説

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。

今回のテーマは「ハワイ州」です。ハワイ州は、日本と繋がりの深い州ですが、特徴や歴史を通してどんなところなのか解説していきます。


日本人にとって最も身近なアメリカと言われるハワイ州ですが、観光地であるとともに実は長く深い歴史がある場所だということはあまり知られていません。いまでこそ観光地として有名ですが、古くから日系移民が多く暮らしアメリカ大陸との架け橋のような存在だったのです。

アメリカにとっても、日本にとっても歴史的な繋がりや、文化的な繋がりが強いハワイ州は訪れる機会が多いからこそぜひ知っておくことが満載です。

ハワイ州の特徴

2018年時点でのハワイ州の総人口は約142万人です。アメリカ国内において、人口そのものは多くありませんが人口密度が高いことが特徴と言えるでしょう。

とくにオアフ島は狭い土地に多くの人が密集している典型で、1,546平方キロメートル内に100万人が住んでいます。この場合の人口密度は、1平方キロメートルに637人の計算になり、アメリカ本土で最も人口密度が高いニュージャージー州ですら1平方キロメートルに438人ですから、非常に人口密度が高い場所と言えます。

意外に知られていませんがハワイ州はハワイ島、マウイ島、オアフ島、カウアイ島、モロカイ島、ラナイ島、ニイハウ島、カホオラウェ島の8つの島に加えて、100以上の小さな島によって構成されています。そのためアメリカ国内では「旅行でハワイに行きました」と言っても「どこの島ですか?」と必ず聞き返されます。ハワイという単語はあくまでも総称なのです。

余談ですが、ハワイ州はアメリカ本土とは異なり、先住民はインディアンではなくハワイアンと呼ばれる人たちです。ハワイアンやインディアン、エスキモー、ポリネシアンなどアメリカの先住民を総じて「ネイティブ・アメリカン」と呼びます。ネイティブ・アメリカンはよく耳にする言葉ですが、特定の先住民を指しているわけではありません。

ハワイ州の先住民については諸説あるものの、4世紀頃に南太平洋のマルキーズ諸島(マルケサス諸島)などからポリネシアンが、カタマランと呼ばれる手漕ぎの双胴船でハワイ諸島に辿り着いたことが起源と考えられています。

ハワイ州の最大の特徴とも言えるのが観光産業ですが、世界中の人を魅了するのが昔から姿を変えていない大自然です。とくにハワイ島では、いまもなお活発に活動を続けているキラウエア火山やマウナ・ロア火山は冷えて固まった溶岩の上を歩けるため観光名所にもなっているほどです。

日本との繋がりは1868年に始まりました。横浜から148名の日本人が船でハワイ諸島へ移住し、その後、パイナップル畑、コーヒー農園などのプランテーション農場で働きながら生活を始めました。いまもなお、ハワイ州全体で日系の名前がついた農場が多く存在しているのはこのような背景があるためです。

ちょうどこの頃、アメリカ本土では開拓が進められ、東部から始まった開拓が西部(現在のカリフォルニア州)にまで到達していました。念願だった太平洋への道を築いたアメリカ政府は、太平洋とその先を支配する上でハワイ諸島の価値に目をつけ、1898年、オアフ島のパールハーバーに大海軍基地を築きました。ここは現在もアメリカ海軍の太平洋艦隊基地として機能しています。

このようにハワイには、ハワイアン文化、観光産業の要となる大自然、日本との繋がり、そして太平洋を支配するための軍事拠点という特徴があります。


ハワイ州の歴史

ハワイ州は、1959年にアメリカ50州のなかで最後の州として認められました。独自の文化や政治であるハワイ王国を築いていたハワイアンと、開拓や軍事拠点としての利用価値を主張するアメリカ政府との間で、長く協議が行われてきました。

1778年、イギリス人海洋探検家のキャプテン・クックがハワイ諸島を発見したところから白人文化との接触が始まります。1795年、カメハメハ1世が3つに分断されていたハワイ王国を、白人が運び込んだ銃器を使って統一します。そしてハワイ王国が誕生しました。

1802年には中国からの移民がサトウキビ栽培のために移住し始めたり、ハワイ諸島にもキリスト教が広く浸透し始めました。ハワイ諸島の存在や、その利用価値は徐々にヨーロッパなどにも伝わります。1843年にはイギリス、1849年にはフランスがハワイ諸島の領有を主張し、ハワイ諸島は政治的な争いに巻き込まれるようになりました。

日系移民も増え始めた1881年には、ハワイ王国のカラカウア王が来日、明治天皇と会見し、両国間で正式な移民協定が成立します。カラカウア王はハワイ王国がアメリカ政府に乗っ取られることを懸念し、日本と手を組むために政略結婚を申し出たとされていますが、実現することなく終わります。

1891年、ハワイ王国8代目そして最後の王となるリリウオカラニ女王が、カラカウア王の後を継ぎます。リリウオカラニ女王はアメリカ政府との間の不平等条約を撤廃し王国を守ろうとしますが、これに憤慨した政府寄りのアメリカ人農場主など160名がクーデターを起こし、女王を軟禁します。

王国からの助けを求められた日本政府は東郷平八郎が率いる軍艦2隻をハワイに向かわせクーデターを威圧しました。結局、1894年クーデターを起こしたメンバーたちは臨時政府を設立し、ハワイ共和国を宣言します。翌年、女王擁護派が武装し臨時政府を倒そうとしますが抑圧され、多くの犠牲者を出し女王は逮捕されてしまいます。

1895年1月22日、長く続いてきたハワイ王国は滅亡しました。1898年には軍事拠点としての利用価値や扱いを考慮し、ハワイ諸島は準州になります。1941年には日本軍による真珠湾攻撃があり、太平洋戦争へとつながっていきました。

終戦後の1959年、ハワイ準州は正式にアメリカ合衆国第50番目の州として認められ、現在に続く観光産業が始まっていくのでした。

ハワイ州の政治情勢

ハワイ州は2012年、2016年の大統領選で民主党を支持しています。もともと日系や中国系などアジアからの移民が多く、移民や弱者に優しい政策や政党が好まれる傾向があります。ハワイ州の人種比率は本土と比較して、白人が30パーセント以下と少なく、アジア系が40パーセントを超えています。

また、ハワイ州には過去に実施されたアメリカ政府による中国人排斥法や日本人排斥法、ベトナム戦争など歴史的な背景が色濃く残っているため平和主義が好まれるのも事実です。

ハワイ州は、第44代大統領のバラック・オバマや、アメリカ上院議員を長年務めた日系2世のダニエル・K・イノウエなどアメリカ史に名を残す人物の出生地であることも知っておくといいでしょう。

ハワイ州の経済

2018年時点、ハワイ州の失業率は2.0パーセントで、アメリカのなかでもかなり低い数値です。多くは観光産業や農業などの従事していますが、軍関係の仕事も多く、狭い面積であるものの人々は何かしらの仕事にありつけています。

昔から、恵まれた気候のためサトウキビ栽培、パイナップル栽培などが盛んで、一時期はアメリカ経済を牛耳るほどの影響力を持っていた砂糖会社がいくつも存在していました。規模こそ縮小していますが、現在でも観光産業に加えて農業の影響力が大きいのが特徴です。

ハワイ州の税金

2018年時点で、ハワイ州の消費税は4.35パーセントです。州税が4パーセント、地方税の平均が0.35パーセントという内訳です。消費税は安く感じるかもしれませんが、多くの観光客からホテル税やリゾート税などが加算されています。ハワイ州の歳入の多くは観光客によるものと言えます。

ハワイ州の物流は本土から頼るしかなく、物価そのものが高い傾向があります。また、不動産はカリフォルニア州よりも高く、戸建て住宅の平均価格は600,000ドルとされています。本土の平均価格は200,000ドル以下ですので違いは明らかです。


ハワイ州の銃や薬物問題

ハワイ州では医療目的であればマリファナは合法ですが、娯楽目的での所持は違法です。仮に、観光客が医療目的でのマリファナの保持を主張しても、日本国の法律に違反しているため罰せられる対象になります。

ハワイ州の銃に対する取り組みのグレードは「A-」とされています。州民10万人に対して、銃事件の犠牲者は3.6人と非常に低く、購入時のバックグラウンドチェックも厳しいとされています。

ハワイ州の教育または宗教事情

ハワイ州にはハワイ大学や、オバマ大統領も通っていた有名私立校のプナホウ・スクールなど数多くの優れた教育機関が点在しています。なかには、独立系の学校としてカメハメハスクールなどのようにハワイアンが先祖の人によって選ばれた生徒だけが通える学校や、全授業をハワイ語で行うような学校もあります。

ハワイ州の宗教は、キリスト教が30パーセント、仏教が10パーセント、無宗教は50パーセントと多岐に渡ります。アジア系の移民が多いため、多くの宗教や文化が入り交じっているのが特徴と言えます。

まとめ

このようにハワイ州は、かつてはハワイ王国であったことや、戦後は観光産業と農業を中心に発展したこと、さらにはいまも日系やアジア系の移民が多く暮らす場所でもあるのです。今日でも、日本との縁があるのにはこのような歴史的な背景があることを知っておくといいでしょう。

本記事は、2018年8月11日時点調査または公開された情報です。
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ハワイ州
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