【アメリカ州制度】アメリカ中西部を代表する州「インディアナ州」解説

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。

今回のテーマは「インディアナ州」です。インディアナ州は、アメリカ中西部を代表する州ですが、特徴や歴史を通してどんなところなのか解説していきます。


アメリカ中西部に位置するインディアナ州は、かの有名なジェームス・ディーンやマイケル・ジャクソンの出生地であることや、州最大の都市であるインディアナポリスは、1990年代にアメリカのハイテク産業の中心として栄えました。

世界中にファンがいる自動車レースの「インディ500」の開催地でもあり、毎年5月のメモリアルデーに開催される際はおおよそ40万人が観戦に詰めかけるほどです。インディアナ州は経済だけでなく、スポーツでも広く知られている州なのです。

今回は、アメリカ中西部を代表するインディアナ州の特徴や歴史についてご紹介します。

インディアナ州の特徴

2018年時点でのインディアナ州の総人口は約667万人です。直近の10年間で20万人程度しか人口が増えておらず、他州よりも人口増加率は低い傾向があります。

アメリカでは知られた話として、インディアナ州民のことを「フージャー(Hoosiers)」と呼ぶ習慣があります。語源は「田舎者」ですが、現代では勤勉な働き者という意味で解釈され、インディアナ州民の愛称として知られています。

インディアナ州はこれまでに広大な土地を使ったトウモロコシなどの穀物栽培を始め、機械製造やコンピューター関連のハイテク産業など幅広い職種で成功を収めてきました。また、スポーツや芸能、芸術の分野にも力を入れており、数々の俳優や著名人を輩出し、世界的なイベントも数多く開催される場所です。インディアナ州は多彩な分野で成功している州と言えます。

1816年、エイブラハム・リンカーンが7歳のときに故郷のケンタッキー州からインディアナ州に引っ越してきました。リンカーンは、その際に通っていた学校の先生の演説に刺激を受け、大統領になったときにそれを実践したとされています。

1958年にはマイケル・ジャクソンがインディアナ州ゲーリーという街で生まれました。一家11人で生活していたという小さな生家は現存しており、その家の前の通りには「ジャクソン通り」と「ジャクソンファミリー通り」という名称が付けられています。

インディアナ州は古くから企業誘致に積極的で、コンピューター関連産業が急激に発達し始めた1980年から1990年代にかけていち早くハイテク関連企業誘致に動きました。近隣のイリノイ州シカゴなど世界都市よりも労働者の賃金が安く、高い技術が使えるとして多くの企業がインディアナポリスに集まりました。

現在では日系企業のトヨタやスバルなどの自動車メーカーが拠点を置いており、アメリカのフォーチュン500に選ばれる著名な企業としてAnthemやEli Lillyなどの医療保険大手や、医薬品大手などが本社機能をインディアナ州に置いています。

インディアナ州には「アーミッシュ」と呼ばれるドイツ系移民の宗教集団が生活しており、移民としてアメリカ大陸にやってきた時代の文化をそのまま残しています。いまも当時さながらの生活をしており、すべでが自給自足のため電気、水道、ガスには頼らず、移動には馬車が使われ、携帯電話も持たないほどです。


決して近代文化や技術を拒んでいるわけではなく、アーミッシュの伝統や思考を優先しているだけですが、現代においては貴重な存在と言えるでしょう。インディアナ州の北部のシップシュワナは世界で3番目に多くのアーミッシュが生活しています。
このようにインディアナ州は、経済だけでなく、芸能やスポーツなどあらゆる文化において特徴があります。

インディアナ州の歴史

インディアナ州は、1816年に19番目の州として認められました。この地での人類の生活の歴史は古く、氷河が溶けたとされる紀元前8000年頃に生活をしていたパレオ・インディアンが最初とされています。

パレオ・インディアンは旧石器時代に高い文明をもたらしたとされており、彼らが作った食器や調理の文化があったからこそ、後にインディアンがアメリカ大陸で生活ができたとともされているほどです。そんな文明を持ったインディアンの先祖がインディアナ州で生活をしていたのです。

1679年、フランス人探検家のカブリエ・ド・ラ・サールが白人として初めてインディアナの土地を訪れたとされており、この時からインディアンと白人の交易が始まります。フランス人はインディアンに宝石や武器、酒などと引き換えに毛皮を手に入れ、インディアナは当初「商売の場所」でした。

1702年には交易基地が築かれますが、1715年にはフランスが領土を主張するための砦を建設、1717年にはカナダも砦を作り交易の場所として領土を主張します。1750年代にはアメリカ東部から開拓を進めていたイギリス人たちもやってきて、三者がインディアナの土地を巡って対立しました。1763年、フレンチ・インディアン戦争の結果、この地はイギリスのものになりました。

インディアナ州の名称は、その名前の通りで「インディアンの土地」という意味です。準州として成立する前身時代からインディアンに対する尊敬の念が込められていました。とは言え、開拓を進めた白人たちがこの地のインディアンにした仕打ちは残忍で、とても尊敬しているとは言えない歴史があり、今日でも州名の由来と白人がおこなった言動の矛盾は物議を呼んでいます。

インディアナ州はアメリカ政府から徹底的に土地を没収された代表的な州のひとつです。1700年代には「契約」という概念を知らないインディアンを騙すようにして契約し、土地を手に入れます。そして、1800年代にはインディアナ州のインディアンはすべて強制移住させられます。

1830年、アンドリュー・ジャクソン大統領は「インディアンは劣等民族」と演説し、民族浄化政策が進められます。これを受けてインディアナのインディアンは徒歩で1,060キロも移動させられ、子供を含む多くのポタワトミ族のインディアンが命を落としました。

現在のインディアナ州、イリノイ州、ミズーリ州、カンザス州を横切るこの道はポタワトミ族の「死の道」と呼ばれています。この強制移住の結果、アメリカ政府はインディアナ州のインディアンは絶滅したと決定します。いまもなお、インディアンの子孫たちはこれを覆そうと裁判を続けています。

南北戦争後のインディアナ州は北部で工業が急成長し、とくに自動車産業が発達しました。この頃に、インディアナ州で石炭やガスなどのエネルギー源が豊富に産出されたことから経済成長を支えたとされています。

第二次世界大戦の際には鉄鋼製品や武器など軍需物資の調達が相次ぎ、この時の世界恐慌をよそ目に経済成長、人口増加を続けます。1973年にはオイルショックの影響を受けて、自動車産業などの工業は衰退傾向になりましたが、コンピューター関連事業の半導体製造や電子部品製造などが台頭し、医薬品製造、保険など経済は別の方向に成長を始めました。

インディアナ州は時代の流れに合わせて、経済や文化の発展を遂げてきた州と言えます。

インディアナ州の政治情勢

インディアナ州は2012年、2016年の大統領選で共和党を支持しています。もともと共和党の支持基盤ですが、民主党との差は圧倒的なことが特徴です。2000年と2004年の大統領選では、全国的に接戦だったにもかかわらず、インディアナ州では共和党が20パーセント以上の差をつけて勝利したほどです。

インディアナ州の経済

2018年時点、インディアナ州の失業率は3.4パーセントで、アメリカの平均値よりも低い数値です。インディアナ州では鉄鋼業や農業が巨大産業ですが、保険などの金融業も盛んです。

この背景には、州全体の失業率が12パーセント以上を超えたオイルショックの教訓が生かされており、幅広く事業を展開するという経済成長に長けた州と言えるでしょう。裏付けるようにアメリカの企業経営者向けの雑誌「CEO」で、インディアナ州はアメリカ中西部における最もビジネスをしやすい場所で1位でした。


インディアナ州の税金

2018年時点で、インディアナ州の消費税は7パーセントです。多くの地域では地方税はかからず州税のみ課せられます。食品や医薬品も課税対象のため実質的には税負担が大きくなります。また、所得税についても一律で3.4パーセントかかりますが、生活する地域ごとにも追加所得税が発生するため最終的な税率は高くなります。

2011年の州財政は、アメリカで50州のなかで最も歳入超過の州でした。日本円にして1,300億円ほど余ったため、州の職員に500ドルから1,000ドルが賞与として支払われたことがあります。

インディアナ州の銃や薬物問題

インディアナ州では医療用も娯楽用もマリファナは禁止されています。アメリカ中西部または北東部のなかでも全面禁止にしている珍しい州です。インディアナ州では銃に対する取り組みの格付けは「D-」とされています。購入時のバックグラウンドチェックがなく、州民10万人に対して銃の犠牲者数は13名になっています。

インディアナ州の教育または宗教事情

インディアナ州はアメリカ国内で初めて州の予算を公共教育に使うことが採用された州です。これが成立した1816年当時は、現実的ではありませんでしたが、その後の教育の重要性に一石を投じる法律となりました。1870年代には90パーセントの子供が学校に通い、大学生の学生の半分は州の支援を受けて学んでいました。インディアナ州は、現在では当たり前のような教育支援システムの先駆けだったのです。

インディアナ州の宗教は、キリスト教が80パーセントを超えており、次いでローマ・カトリックが主流とされています。州内にはノートルダム大学があるため、ローマ・カトリック教徒の比率が高めです。

まとめ

インディアナ州は古くから高い文明を持ったインディアンが生活をしていた場所で、工業や農業を主軸にして様々な分野で経済発展してきました。様々な分野の人が集まったことから、スポーツや芸能など文化の面でも成長した州と言えるでしょう。

本記事は、2018年8月12日時点調査または公開された情報です。
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インディアナ州
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