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【公務員の定年退職】警察の定年退職後の「再就職先」について

今の60代は、まだまだ元気で働けます。定年を迎えた後の「警察官OB」は、再就職先としてどのような選択肢があるのでしょうか?

今回は、地方公務員である「警察官」」の定年後の再就職事情についてまとめました。

2018年07月05日更新

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目次
はじめに
再就職は警務部が世話をしてくれる
ネットで閲覧できる再就職先
幹部職の警察官は顧問・部長クラスで迎えられる
企業が警察官に求めるもの
問題を起こした警察官の再就職事情
まとめ
【公務員の定年退職】警察の定年退職後の「再就職先」について

はじめに

最近の交番では、どう見ても高齢の「おまわりさん」を見かけることが増えました。よく見るとユニフォームも少し違います。あの人たちは「交通相談員」といって、各県警で再雇用した警察官OB(60歳~65歳)で、「地方公務員特別職嘱託員」に当たります。

「空き交番」が問題になった1980年代後半に、慢性化している地域課警ら隊員の人手不足を補うために、北海道警で初めて採用され、その後各県警に拡がりました。経験豊かなOBが多いので、住民にも評判が良いようです。

今の60代は、まだまだ元気で働けます。それは、おまわりさんも同じで、交通相談員に限らず、様々な職場でOBたちは活躍しています。

今回は、地方公務員である警察官の定年退職後の気になる再就職先について解説します。

再就職は警務部が世話をしてくれる

警務部は、いわゆる内部部局です。おまわりさんや刑事さんのように、われわれ一般市民が接する機会はほとんどありません。

例えば、警察官が不祥事を起こすと、マスコミ対応もこなします。

「地域部通信指令課勤務の巡査部長を本日午後5時31分、殺人容疑で逮捕しました。重大事件の被疑者として警察官が逮捕されたことを、心よりおわびします」

少し前ですが、福岡で警察官が妻子3人を殺害した事件の報道発表で、警務部長と首席監察官が3分以上に亘り頭を下げ続けていました。

このように、警務部の仕事は、数万人にもおよぶ県警職員の異動・昇進、さらには警察官の不祥事の内部調査まで掌っています。つまり、警察官の運命を左右する集団といっても過言ではありません。

幹部職の警察官は斡旋

そんな警務部は、定年を迎えた警察官の再就職の面倒もみてくれます。幹部職の警察官に対しては警務部があっせんに近いことまでやってくれますが、一般職の警察官は自分で再就職先を見つけなくてはなりません。

一般職の警察官が再就職するまでの流れ

警務部は、通例は4月・10月の時期に向け、物品納入等で普段付き合いのある業者、防犯協会などの集まりで面識のある企業の総務担当者、息のかかった公益団体などから「企業連絡票(採用予定の職種等を記載)」かき集めます。

一方で退職予定の警察官は、警務部に「再就職希望連絡書」を提出します。警務部の担当者は、「連絡票」と「連絡書」をマッチングし、条件の合った企業があれば、本人に紹介するという流れです。そこから採用につなげられるかは、あくまで本人次第です。

一般職の警察官は、連絡票を片手に、大学生さながらの就活に明け暮れます。ただし、なかなか再就職先が決まらない場合は、警務部の担当者が八方手を尽くして頭を下げて回ってくれるようです。

サラリーマンの場合、自分で再就職先を探さなければなりません。当然、現役時代の取引先を頼ったり、かつての上司・先輩が面倒を見てくれたりすることはありますが、少なくとも人事部が組織としてサポートしてくれるのは証券会社・損保・銀行ぐらいです。

警察一家は、鉄の掟を職員に強いる厳しさの反面、最後まで仲間の面倒を見る温情も兼ね備えているのです。

ネットで閲覧できる再就職先

ベールに包まれている感のある警察官の再就職先ですが、実は幹部職の警察官に関してはネットで閲覧できます。

公開のきっかけとなったのは捜査資料漏洩事件

2011年に、品川美容外科の医療過誤を巡る捜査資料漏洩事件が発覚します。捜査の現場指揮をとる責任者(警部)が同病院の顧問(警察OB)に捜査資料を流し、見返りに接待や再就職を要求するという悪質な事件でした。ちなみにこの事件で、元警部は実刑判決を受けました。

この事件で世論の非難を浴びた警視庁は、しぶしぶ「警視庁職員の再就職に関する要綱」を制定し、幹部職の警察官の再就職情報を公開することにしました。その後、各県警も警視庁に倣って、幹部職の警察官の再就職情報を公開するようになりました。

県警によってばらつきはありますが、各都道府県とも概ね警視正(県警部長や大規模署長クラス)や警視(中小規模署長や県警課長・参事官クラス)の再就職先を、氏名も合わせて公開しています。

その他、内閣官房人事局は、特定地方警務官(交番巡査から警視正以上に昇りつめたノンキャリの星)の再就職先を、まとめて公表しています。

鳥取県警の場合、一般職の警察官も民間企業・自治体・公益団体の別に人数を公表しています。

幹部職の警察官は顧問・部長クラスで迎えられる

地方の場合は地元企業に再就職

具体的にどんな職場に再就職しているのか、青森県警を事例に見てみましょう。まず警視正クラスです。

生活安全部長→自動車安全センター青森事務所長
刑事部長・交通部長→青森銀行業務顧問
警備部長→日本中央競馬会 ウインズ津軽准一般常勤嘱託(主幹)
八戸警察署長→電源開発株式会社 大間現地本部青森事務所調査役

続いて、警視クラスです。こちらは総勢13名、民間企業は4名で、再就職先は以下の通りです。
・三八五流通株式会社警備部長
・三本コーヒー株式会社顧問
・紅屋商事株式会社弘前本部渉外課マネージャー
・損害保険ジャパン日本興亜株式会社東北保険サービス部八戸保険サービス課嘱託

公益団体は全体の2/3に相当する8名で、再就職先は以下の通りです。
・青森県暴力追放県民センター専務理事
・青森県防犯協会連合会ー専務理事
・青森交通安全協会専務理事
・青森地区安全運転管理者協会事務局長
・日本道路交通情報センター青森センター主管
・青森環境開発株式会社非常勤執行役員
・青森病院非常勤特別職
・東北医療福祉事業協同組合専務理事

たった一人だけですが、県警本部の広報課参事官が再任用(定年延長)されています。広報課はマスコミ対策の部署ですが、生き字引のような存在で、余人をもって替え難かったのかもしれません。

地方の場合、幹部職の警察官も基本的に地元出身なので、全員が青森県内で再就職しています。みなさん、事務所長・部長・顧問といった肩書で迎えられることが多いようです。

最も受け入れているのは公益法人

ちなみに、内閣人事局が公表している特定地方警務官117名の再就職先で、一番多いのはやはり自動車安全運転センターの5名です。みなさん、各県の事務所長に収まっています。

その他、警友会けいゆう病院・日本防災協会・警察職員生協・交通安全協会・トラック協会・自動車販売協会・指定自動車教習所協会など、財団法人・社団法人系への再就職が目立ちます。

民間企業では、「株式会社たいよう共済」が4人と目立ちます。調べてみると、警察共済組合が出資者となっている共済(特定団体を相手にした生命保険・火災保険・自動車保険事業)でした。

警視庁OBの就職先は華やか

首都東京の治安を守る警視庁は、階級最高位の警視総監をトップに仰ぎ、ときにその権限は上級官庁である警察庁にも匹敵すると言われています。

それだけに再就職先も他の県警とは別格で、日本興亜損保・住友商事・東レ・住友不動産・日本通運・コナミ・明治安田生命・三菱UFJ銀行・第一生命保険といった一流企業がズラリと並びます。

一般職の警察官の再就職先は地味

警察職員の大多数は、警部(県警本部係長・警察署課長クラス)、警部補(県警本部主任・警察署係長クラス)で警察人生を全うします。

その先の人生ですが、鳥取県警の公表資料によると、定年退職者28名のうち再就職は23名、「退職後は悠々自適」とはいかないようです。

23名のうち2/3に相当する16名は公益団体に再就職しています。一般職の警察官も、幹部と同じように交通安全センター等が最も多く受け入れているようです。もちろん立場は格下で、現役時代の上下関係を再就職先でも味わうことになるようです。

企業が警察官に求めるもの

反社会勢力への対応ニーズは減る

21世紀に入るまでは、暴力団・右翼とそのフロント企業・企業舎弟が絡んだ経済事犯が盛んでした。総会屋への利益供与、街宣車で本社ビルに乗り込んでの恫喝、事務ミスに付け込んで銀行支店を脅迫・不正融資強要などが日常茶飯事で新聞紙面を賑わしていました。

そんな時代なら、警察官OBにも活躍の場面は多かったでしょうが、企業のガバナンスも強化され、暴力団への締め付けが格段に厳しくなった現在は、反社会勢力もすっかりナリを潜めています。荒れる株主総会も今や昔です。

民間企業ではクレーム対策も担当

現在、警察官OBは企業・団体のクレーム対応を担当することが多いようです。

例えば病院内でのクレームは、医師・看護師・職員が身の危険を感じたり、金銭を要求したりというケースもあります。大きな病院ですと、クレーム件数は数百件に上るともいわれます。警察に通報するケースも数十件はあります。

そうしたクレームのうち、現場では対応しきれないような厄介なケースを丸く収めるのが、警察官OBの仕事です。いたずらに強面で臨んだりすると相手も強く反発、大きなトラブルに発展しかねません。硬軟織り交ぜた、微妙なバランス感覚が求められます。

もちろんインフォームドコンセントが欠けていたなど、病院側に落ち度があるケースも多いようです。再発防止を図るには、医師や看護師サイドに改善を促すことも大切です。

その他、看護師さんのストーカー相談(患者からストーカーされるケースが少なくない)に応じることも多いとか。

再就職は楽なように見えますが、結構大変ですね。

公益法人は警察官OBの牙城

暴力追放県民センターや防犯協会など、警察庁は多くの所管公益法人を抱え、OBを送り込んでいます。

例えば、全国防犯協会連合会の専務理事には元大阪府警本部長(キャリア・警視監クラス)が収まっています。そして、各県支部の専務理事には、地元の幹部職の警察官(ノンキャリ)が就任します。

では、防犯協会は何で稼いでいるのでしょう。なんと、地元企業の正会員・賛助会員から集める会費収入や県からの補助金も重要ですが、それほど大きくはありません。

最大の収入源は、自転車防犯登録収入です。自転車の購入者には、法律により防犯登録が義務付けられています。550円を払って、防犯登録シール(所轄警察署名と防犯NOを印字)を自転車に貼りますよね。この550円が、警察官OBの生活の糧なのです。

例えば、宮城県防犯協会の場合、自転車登録台数が年間10万台強、防犯登録収入が64百万円で、総収入(86百万円)の3/4に相当します。

盗難された場合や、駅前で撤去された場合に探してもらうのになくてはならないのが、防犯登録シールです。職務質問を受けたときにも、シールを貼ってないと盗難を疑われたりと非常に面倒です。

防犯協会だけではありません。自動車安全運転センターは、事故証明や運転経歴証明書が収入源の大半を占めます。いずれも、手数料は1件約500円といったところです。

問題を起こした警察官の再就職事情

警察庁の発表によると、平成29年に懲戒(戒告・減給・停職・免職)処分を受けた警察官は260名いるそうです。一番多いのは「異性関係」、セクハラ・不倫の類で、全体の1/3を占めています。その後、横領・詐欺、交通事故と続きます。

たとえ警察官でも、起訴されるような犯罪行為でない限り免職されるケースは稀のようです。

ところで、不祥事を警察が発表するとき、「処分は停職3か月、本人は既に依願退職」と報道されるケースが多いと思いませんか?

問題を起こした警察官は、たとえ免職にはならなくても、現実には警務部の監察官(警察官の不祥事を取り締まる怖い存在)に退職の意向を問いただされ、殆どが辞表を提出することになるようです。

組織を追われた警察官は、明日から食うのも困る事態に追い込まれるのでしょうか?どうやら、自発的に辞表を書いた警察官には、温情がかけられるようです。通常の定年退職者と同じように、警務部が交通安全協会・警備会社・取引業者に再就職をあっせんしてくれます。

規律を重んじる「警察一家」は、その反面、心ならずも道を外れた仲間にも優しいんですね。

まとめ

われわれ民間人に比べ、地方公務員である警察官の再就職事情は恵まれているのは間違いありません。最近では役所による再就職の仲介を禁じる県も増えましたが、警察は例外です。

警察官が使命感と誇りを保ち、市民生活の安寧を守り続けてもらうためには、老後も含めた生活保障は欠かせないのでしょう。

それでも、再就職先と警察との癒着を防ぐために、幹部職の警察官に関する再就職情報公開や公益法人の収支報告等を通じ、透明性の確保に一層努める事が求められます。

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