【アメリカ州制度】北にあり厳しい寒冷地の州「ミネソタ州」解説

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。

今回のテーマは「ミネソタ州」です。ミネソタ州はミネアポリスとセントポールの2つの都市が州の核になっている地域ですが、特徴や歴史を通してどんなところなのか解説していきます。


「アメリカの冷蔵庫」と揶揄されるほどに厳しい寒冷地としても有名なミネソタ州ですが、ミネソタ州の自動車のナンバープレートには「Ten Thousand Lakes(1万の湖)」という文言が刻まれているほどに水に恵まれた場所です。

同州にあるイタスカ湖はミシシッピ川の源流とされており、この水は南へおおよそ4,000キロ下ってメキシコ湾に流れ着きます。水や豊かな自然に恵まれているミネソタ州ですが、アメリカのなかでも「意識高い系」の人が住む場所としても有名です。今回はそんなミネソタ州についてご紹介します。

ミネソタ州の特徴

2018年時点でのミネソタ州の総人口は約557万人です。第二次世界大戦以降、250万人程度だった人口は、急激に増加し現在でも人口増加が続いています。ミネソタ州の人口の9割は白人で、黒人は1割に満たないとされています。圧倒的に白人が多い州ですが、そのルーツはドイツを始めとする北欧諸国です。

2010年の国勢調査では州民の38パーセントがドイツ系、32パーセントがノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどの北欧系が占めていることが判明しました。その他にも、11パーセントがアイルランド系、イギリスは6パーセントでヨーロッパにルーツを置く系統が多いと言えます。

このようなヨーロッパ系の人種が多いことからか、ミネソタ州で生活している人は政治や健康、仕事あらゆる面において「意識が高い」と評されることがあります。選挙の際には、ワシントンD.C.や他州の平均投票率が61パーセントに対し、ミネソタ州は常に70パーセント以上です。

健康についても州民の意識は高く、アメリカで最も早く受動喫煙防止法を州法で制定した州でもあります。1975年に公共の場での喫煙を制限したミネソタ州の決断は、アメリカ全土にタバコの有害性を訴える先駆けとされました。

ミネソタ州南部のロチェスターにあるメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)は、アメリカで最も信頼できる医療機関としても知られており、アメリカ歴代大統領を始め、政治家、資産家など多くの富豪が通う医療機関です。このようなことからも健康に対する意識が高い州という印象が定着しているのです。

ミネソタ州には「ツインシティーズ」と呼ばれる代表的なふたつの都市があり、人口はそのふたつの都市に集中していることが特徴です。州都であるセントポール、ミシシッピ川向かいにあるミネアポリスはミネソタ最大の都市です。セントポールは政治の中心として栄え、ミネアポリスは経済や文化の中心として発展しました。

ミネアポリスはスポーツや芸術などの文化も充実しているため、公共交通も充実しており、観光客の数も多いことが特徴です。一方で、セントポールには開拓時代から続く歴史や、州の発展に貢献した鉄道など「東部最後の街」と評される歴史的な価値が点在しています。

このようにミネソタ州は、水に恵まれた土地で、ヨーロッパ系の人が多く生活していることから、他州よりも少し異なる性質を持った州と言えます。

ミネソタ州の歴史

ミネソタ州は、1858年に32番目の州として認められました。州名はミシシッピ川に流れ込むミネソタ川に所以します。また、ミネソタはインディアンの言葉で「水」を表すミネと「曇り空」を表すソタを組み合わせたものです。そのため、州内にはミネアポリスやミネトンカ湖など水にちなんだ地名が多いことが特徴です。


1659年にフランスの毛皮交易商がこの地に入ってきたことが先住民族と白人の初めての接触とされています。もともとはインディアンのスー族がこの地で生活していましたが、開拓者達によって東部エリアを追い出されたオジブワ族が逃げ込んできたことにより、ミネソタはインディアン同士でも争いが起きる場所になりました。

1783年、アメリカとイギリスの間でアメリカ独立戦争の終結を意味するパリ条約が結ばれます。これによりミシシッピ川から東側はすべてアメリカ合衆国のものとなり、西側はフランスの領土となりました。後の1803年にアメリカがフランスからミシシッピ川の西側を買い取り、現在のミネソタ全域がアメリカのものとなります。

アメリカがフランスから広大な領土を買収したことは「ルイジアナ買収」と呼ばれ、これによって現在のアメリカ領土の原形ができたと言えます。現在のアメリカ大陸中央部分を北から南まで丸ごと(15州分)フランスから格安(1,500万ドル)で買い取ったのです。

現在のミネソタ州の土地は1800年代前半まで、イリノイ準州、ミシガン準州、ウィスコンシン準州などの一部として組み込まれていました。ミネソタ川とミシシッピ川の合流点にスネリング砦が築かれ、物流や交易の要所として発展していきます。1850年には現在のミネアポリスの地に初めての家が建設されました。

1851年までに多くの先住民族とアメリカ政府との間で条約が結ばれ、ミネソタの地は開拓者のものになっていきました。開拓者たちはスネリング砦を起点として道路や農作物を作り、街を築いていき現在のミネアポリス市設立に繋がります。このスネリング砦はミネソタ州の原点あるいは中心として重要な役割を果たしました。

対照的にセントポール市は、ミネアポリスでウイスキーの取引をしていた軍人やヨーロッパ系開拓者が半ば追い出されるような形で新たに築いた場所とされています。1820年頃のセントポール市にはインディアン、ヨーロッパ系開拓者、アメリカ軍人など多様な人が生活をしていました。

このようにミネソタ州の2大都市が「ツインシティーズ」と呼ばれるのには開拓時代からほぼ同じように発展してきたことに所以しています。現代において両都市は互いを良きライバル都市と捉え、様々な特徴を活かして発展を続けています。ミネソタ州を知る上でミネアポリスとセントポールは覚えておくといいでしょう。

ミネソタ州の政治情勢

ミネソタ州では2012年、2016年では民主党を支持しました。もともと政治に関心が高いヨーロッパ系の人達が多いため、他州よりも投票率が高い傾向があります。また、リベラルな思考を持った人が多く、伝統的に民主党が強いことが特徴です。一方で、第三政党の動きも活発で、市長や州知事に第三政党出身者が選出されることもあります。

大統領選の際、アメリカ国内平均の投票率が61パーセント程度に対し、ミネソタ州は78パーセントと高く、これまでに選挙違反に該当する行為もないとされています。とくに政治に関しては意識が高い州民が多いと言えます。

ミネソタ州の経済

2018年時点、ミネソタ州の失業率は3.1パーセントです。2009年のリーマンショック以降でも常にアメリカの平均失業率を下回っています。一人当たりの年収ではアメリカでトップ10に入り、世帯収入ではトップ5に入るほどでアメリカのなかでは裕福と言えるでしょう。

もともとは木材など原材料の調達が主産業でしたが、現在ではサービス業も発展してきており、アメリカの売上トップ1000社のなかで32社がミネソタ州に拠点を置いています。小売業大手のターゲットや家電大手のベストバイなど、アメリカ国民には広く知られた企業が多いのが特徴です。

ミネソタ州の税金

2018年時点で、ミネソタ州の消費税は7.42パーセントです。連邦税が6.875パーセントに対して、地方税の平均が0.55パーセントです。ただし、家庭で消費される食材、衣類、医療、薬は非課税です。

所得税は5.35パーセントから7.85パーセントの累進課税制で、州民は地方所得税も含めた平均で10.2パーセントの所得税を収めています。この数値はアメリカの平均よりも1パーセント高い数値です。この他にも不動産には固定資産税も発生するため税の負担は大きいと言えます。

ミネソタ州の銃や薬物問題

ミネソタ州は医療目的に限りマリファナの使用が許されています。ミネソタ州には野生の麻が育っており、道路脇や家庭の庭にも生えているほどです。1940年代に第二次世界大戦用の繊維麻として用いることを目的に生やしていたものが、鳥や虫によって州内に広がったとされています。禁じられているものの、麻の葉は非常に身近なものです。

ミネソタ州の銃への取り組み格付けは「C+」とされています。州民10万人に対して銃による犠牲者は7人と低いものの、購入時のバックグラウンドチェックを実施していません。


ミネソタ州の教育または宗教事情

ミネソタ州の教育水準はアメリカの平均よりも上で、とくに幼児教育における計算力や識字率が高いとされています。1858年、準州から州に昇格した際に議会が最も注力したことが師範学校の設立でした。この影響を受け、州民は古くから教育に対する意識が高いのが特徴です。

ミネソタ州は州民の80パーセントがキリスト教のプロテスタントとされています。次いでカトリックが主流です。近年、ツインシティーズにはイスラム教なども増えつつありますが、依然としてキリスト教が大多数を占めています。

まとめ

このようにミネソタ州は、投票率や世帯所得に裏付けられるように政治や経済などに関する意識が高い人が集まっている場所と言えます。また、ミネアポリスとセントポールの2つの都市が州の核になっていることも特徴です。

本記事は、2018年10月10日時点調査または公開された情報です。
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ミネソタ州
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