はじめに – 社会活動家インタビュー第3回「谷山 大三郎」さん
今回は、2019年に子どものいじめ・自殺防止活動の推進を目的としたプロジェクト「#stand by you」を立ち上げた一般社団法人てとり代表理事の谷山さんから、このプロジェクトに話や、ご自身の経歴などをお伺いしました。
1)名前と職業を教えてください
名前は谷山 大三郎です。職業としては、ストップイットジャパン株式会社代表取締役のほか、千葉大学教育学部附属教員養成開発センター特別研究員、千葉大学教育学部非常勤講師、一般社団法人てとり代表理事、 NPO法人企業教育研究会理事、一般財団法人SNSカウンセリング協議会理事等を務めています。
最近の活動として、大きなものとは、「一般社団法人てとり」の設立とその活動である「#stand by you」プロジェクトの立ち上げです。
<写真>
(左から2番目が谷山さん)
2)そのプロジェクトと「一般社団法人てとり」について教えてください
まず「てとり」ですが、こちらは、いじめ撲滅に取り組む一般社団法人で、子どものいじめ・自殺防止活動の推進を目的としたプロジェクト「#stand by you」に取り組む組織です。
この「#stand by you」プロジェクトには、支援者として、元・メジャーリーガー松井秀喜さん、アスリートの社会貢献活動を支援する「日本財団HEROs」、アスリートやアーティストの皆さんたちがいて、様々な協力をいただいています。
3)プロジェクト「#stand by you」とは?
「#stand by you」は、アスリートとアーティストが協働して、いじめなどの悩みを「相談できずに苦しんでいる子」と「助けられなくて悩んでいる子」に相談するきっかけと窓口を届けるプロジェクトです。
この窓口というのは、文部科学省の運営する「24時間こどもSOSダイヤル」(0120-0-78310)や、法務省の運営する「こどもの人権110番」(0120-007-110)、「いのち支える窓口一覧」や「Mex(ミークス)」です。
本プロジェクトの紹介動画もぜひご覧ください。
▼紹介動画
stand by youは、アスリートとアーティストが協働していじめなどの悩みを「相談できずに苦しんでいる子」と「助けられなくて悩んでいる子」に相談するきっかけと窓口を届けるために生まれたプロジェクトです。
4)谷山さんがこのプロジェクトをはじめる経緯やビジョンを教えてください
私は小学生の頃にいじめを受けていましたが、両親に心配をかけたくない思いから自分が悪いんだと思い込み、誰にも相談せず、我慢をして毎日を過ごしました。そんな時、担任の先生が気遣ってくれたことで、いじめから抜け出せました。
一人でも自分を大切に思い、心配してくれる人がいるだけで、心から救われる思いをした経験があります。本プロジェクトは、同じようにいじめに悩み苦しんでいる子どもの力になりたいという思いで立ち上げました。
この活動を始めて、多くの大人が子どもたちのために何か貢献したいという強い気持ちを持っていることを改めて実感しています。困難を乗り越えてきたアスリートやアーティストの皆様一人ひとりの力と思いが届き、より多くの方々と共に、子どもたちに寄り添い支え合う機会を増やしていきたいと考えています。
何より、子どもたちが悩みを一人で抱え込まず、信頼できる大人に相談し、いじめに悩むことなく日々を過ごせる社会づくりを目指すというのが本プロジェクトのビジョンです。
5)本活動の今後の計画について教えてください。
「#stand by you」は現在、三つの活動に取り組んでいます。
1)啓発動画の公開
まずは、いじめ問題に関する啓発動画の公開と配信です。
2019年8月26日(月)から、18歳以下の自殺が特に多くなるとされる「9月1日」を前に、参画するアスリートとアーティストらによる、子どもたちへの相談の啓発と相談窓口の周知を目的とした啓発動画を公開しました。
▼紹介動画
・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト)
https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php
・ Mex(ミークス)10代向け支援サービス検索・相談サイト)
https://me-x.jp/
2)インタビュー記事の公開
2番目に、インタビュー記事の配信です。
本プロジェクトに参画するアスリートたちの実体験・メッセージをお聞きし、誰かに相談し、助けられながら困難を乗り越えてきた経験についての記事を、学校で配布できるように無料で公開します。学校だよりや保健だより等と一緒にして活用をイメージしています。
これは、子どもたちが助けを求めて周囲に相談するきっかけを、学校や教育委員会と連携して、つくっていく取り組みです。
3)シンポジウム、研究会の実施
最後の3つ目に、シンポジウム、研究会の実施を、まず今年度複数回予定しています。
インタビュー記事を活用したSOSの出し方に関する授業の実施やまたいじめについて考えるシンポジウムの開催を通じて、学校関係者や保護者、研究者等と連携した活動を行います。
ご自身の大学の教育学部時代についてもお聞かせください。
千葉大学の教育学部に入学し、小学校教員を目指していました。ただ4年生の夏に受けた教員採用試験に落ちてしまい、夢を叶えることができませんでした・・・
現在、改めて、子どもに関わる仕事をすることができ、非常に幸せを感じています。
今は週1~2回、学校に伺って、講演活動を行なっています。とても勉強になる毎日で、大学時代に学んだことが活きています。
昨今のいじめ問題について よいところ わるいところなど
文部科学省の調査(*1)によると、2017年度のいじめ認知件数は約41万件と過去最多になっています。
また、厚生労働省の調査(*2)では、人口10万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」において、19歳以下の死亡率も統計を取り始めた1978年以降過去最多を記録しており、対策が急務となっています。
この問題について、私たちは、まずは、いじめなどの悩みを相談できずに苦しんでいる子どもたちに相談できる「相談窓口の存在」を知ってもらい、相談してほしいと考えています。
また、子どもたちに救いを求めて教職員や保護者に相談することを促し、いじめに悩んでいる友人を助けるような行動を取りやすいように後押ししていく仕組みを作っていきたいと思っています。
話は変わりますが、社会活動に関連して、日本やマチのために働く「公務員」について、関わったことのあるエピソードやその他考えをお聞かせください。
現在、いじめで悩んでいる子どもが匿名で報告相談できるアプリSTOPitの活動を広げています。教育委員会の方とも協働し、推進しているプロジェクトです。
初めて導入いただいたのは千葉県柏市様(2017年5月に自治体として初めてストップイットを採用し全中学校に導入)でした。前例がない中での導入で一時は導入が難しい状況もあったのですが、当時の生徒指導室長が積極的に動いてくださり、「民間SNSサービスの導入は前例がない」と渋る市の予算編成部署を説得くださいました。ここまで自ら動かれる公務員の方と初めて出会い感動しました。
公務員総研というメディアをどう思いますか?また、今後どういった企画やコンテンツがあればよいかご意見あれば教えてください。
公務員の方が主体的になり前例のない取り組みを成功させた事例集があれば、ぜひ読みたいです。
(公務員総研編集部)ありがとうございました!
付則)谷山大三郎さんのプロフィール
1982年12月生まれ。富山県出身。千葉大学教育学部卒業、千葉大学大学院教育学研究科修了後、2008年より株式会社リクルートに勤務(営業、事業推進、人事を担当)し、2015年に退職。同年よりNPO法人企業教育研究会に勤務。現在、ストップイットジャパン株式会社代表取締役、一般社団法人てとり代表理事、千葉大学教育学部附属教員養成開発センター特別研究員、千葉大学教育学部非常勤講師。
》STOPit ウェブサイト
http://www.stopit.jp/
》#stand by you ウェブサイト
https://standbyyou.jp/
コメント
コメント一覧 (2件)
谷山さんが行っている活動や、活動に至るまでの想いを知ることができたのが良かったです。私は教員の仕事をしていたので、谷山さんの想いに共感しました。谷山さんのように、社会を良くしようと活動されている方のインタビュー記事を他にも読んでみたいです。
てとりがどのような活動をしているのか具体的に書かれていてわかりやすかったです。インタビューの質問の文章部分が太字で強調されていて見やすかったです。