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【消防の事務】消防局(消防本部)の「事務職」の仕事内容を徹底解説!

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近年、火災、救急をはじめ各地での集中豪雨、想定される大規模地震、また地下街での火災など、自治体における消防活動も多岐に渡り年々複雑になってきています。そんな中、消防の仕事といえば、「火災における消火活動」、「救急車での患者搬送」、「災害時の救助活動」等いわゆる「現場活動」のみに焦点があたり、事務の仕事についてはあまり知られていません。

消防の事務の仕事は現場活動の「おまけ」程度だと思われている方もいますが、実は大変複雑で事務量も多く、専門的な知識も必要です。

今回はこの消防での事務の仕事について解説します。

目次

消防局の「事務」は誰が行うのか

実は現在、消防限定で「事務職員」の採用枠を設けているのは東京消防庁くらいです。それ以外の自治体では、通常の「地方自治体の事務職員」として採用され、その中で配属先がたまたま消防局(自治体によっては「消防本部」になりますが、ここでは以下「消防局」とします)になる形が多く取られています。

しかし、この事務職枠の消防局への配属を取りやめ、消防吏員のみで事務を行う自治体も年々増加しています。

つまり、自治体によって、「事務職員と消防吏員が混在して事務を行う」ところと、「消防吏員のみで全ての事務を行う」ところが存在するのです。

ここでひとつ説明しておきますが、消防の事務においては、事務職枠採用の方が優れているとは言えません。消防から事務職枠採用職員が撤退していることからもわかるように、消防における事務は大変複雑で、専門的な知識を必要とします。

消防吏員を目指す人は、何も「火を消したい」「救急活動がしたい」人だけが採用されるのではありません。大学で建築を専門に学び、その知識を防災建築に生かしたくて消防吏員の採用試験を受け、数年間現場で火災、救急業務に携わったのち事務方として専門部署に配属になるようなケースも多くあります。

つまり大学等で学んだ化学、建築等の専門知識を生かした防災関係の仕事がしたくて消防吏員を目指す人も多いということです。そのため最近では消防吏員採用試験前に、専門学校や大学で専門分野を学ぶ人も多くなっています。

ただし複雑な事務内容とはいえ基本的に消防の事務も一般的には自治体の他の部署(市民サービス、福祉、教育など)と同じく「消防」における「行政」事務という位置づけになり、すべては「法」に基づき、「規定された手続き」にのっとり必要書類を介する事務になります。

先述したように自治体により事務職員が行う場合と消防吏員が行う場合がありますので、ここではそれらをまとめて、「消防局での各部署の事務(業務)内容」として紹介していきます。


消防局の「総務部」の仕事

「総務」は、多くの自治体の他部署と同じように消防局の公文書、予算、決算関連事務やその他多くの庶務関連事務を行います。総務部をはじめ各「部」はさらにそれぞれの「課」に分かれますが、自治体により名称も異なるため、部としての各業務内容として紹介していきます。

「人事」の仕事

「人事」は、その名のとおりすべての消防吏員の人事に関する業務を行います。

毎年人事異動もあり、その際は消防局から各消防署への異動もありますし、その逆もあります。また人事が各消防吏員の勤務評価を行い、それに伴い昇任、昇給していきます。消防吏員には「消防士長」「消防司令」「消防監」などの「階級」がありますが、それはそれぞれ自治体事務職員の「係員」「係長」「課長」等にあたります。

また、人事部職員は職員の服務規律の確保にも努め、自治体の職員に関する条例等に基づき、指導対象職員には「指導計画書」を作成し、それに従って定期的に研修や面談を行います。また、病気休職者に対する面談や書類手続きも行います。

給与計算のもとになる職員の出退勤時刻の管理、各種勤務手当関連のシステム入力、チェック作業なども人事の仕事です。この作業は毎日行いますが対象となる職員の人数が多ければ多いほど煩雑になります。

職員の「公務災害」に関することも「人事部」が行います。公務災害とは民間でいう「労災」のことですが、公務中に発生した負傷事故等について職員から報告があれば聞き取りを行い、事故の詳細をまとめ診断書を添付し「地方公務員災害補償基金」あてに補償金の請求を行います。消防では職業柄この公務災害事案も多くなります。

その他には職員の福利厚生事務や、職場環境の整備、職員のメンタルヘルス関連などの衛生管理業務もここで行っています。

「総務」の仕事

「総務」の仕事のほとんどは、消防に特異的なものではなく、自治体事務職の一般的な総務とほぼ同じになります。公文書を取り扱い、市議会の資料を作成し、また予算、決算関連事務を行います。予算については自治体の財政局に要求し、その際には消防で必要な各予算項目について熟知し、なぜこれが必要なのか、算出額の根拠についてもしっかりと説明できる能力が必要です。

また物品の購入なども「総務」が担当し、購入先の業者を決定する入札の方法なども決定しますが、一般の総務と同じく「入札方法」についても透明性を確保するために相当な神経を使います。

昨今自治体では特定の業者との癒着などの報道も相次いでいるため、「競争入札」ではなく「随意契約」(特定の業者を初めから指定し契約を結ぶこと)を行う場合には相当な説明責任が求められるのです。

これは消防に限った話ではありませんが、実際に自治体の業務には「個人情報保護」の観点からも「公益性」の観点からも、どうしてもその業者にしなければならない事由が発生することがあります。その際に総務は市民に向けて、随意契約に至った理由についても発表します。

そのため、この部署に求められる人材は、広く公文書の知識があり、消防全体の業務内容について細部まで把握していること、また契約事務等に精通し、その他あらゆる庶務業務を幅広くこなせる人材です。

「施設」の仕事

この部署では、消防局の所管するすべての施設管理事務を行います。また不動産の管理についても同様にここで行います。また、消防服などの「被服」に関しても職員への貸与、管理事務を行っています。

そのほかには、消防局の所管する施設の機械類の整備やその管理も行い、また庁舎の耐震化工事も行います。この部署には消防吏員以外に自治体の専門職種(電気、機械、建築)で採用された職員が配置されています。

「企画」の仕事

消防における「企画」部門は多くの自治体に設けられており、簡単に言うと「組織として常に改善、改革を行うために企画、立案」する部署、そして「外部への広報活動」を行う部署になります。


仕事内容としては、消防局で行われている業務を常に見直し、新規の事業を企画し、また場合によっては組織の再編成を行うなど、組織としてのあり方を常に検討していくので、この部署に必要な人材としては、古い慣習にとらわれず常に問題意識を持ち新しいことにチャレンジでき、また、それを実際に企画立案していく実行力のある人間が求められます。

そのほかにこの部署での仕事内容として、消防関係の諸規定について審査を行ったり、例規の編さん業務も行いますので、関係法令にも精通していなければなりません。

つまり「改革心」とともに法を含め消防全体に関する相当な「知識」が必要です。

他にも、広報活動として、報道機関への発表や、広く市民に向け、消防局で行っている事業を知ってもらうための情報をわかりやすく発信していく広報紙の企画、作成などや、「消防年報」という統計資料・活動報告をまとめた年報の作成も行います。

様々な事業を企画、立案する業務ですが、一例として他都市など外部に向けて「受託研修」なども行っています。これは消防業務を広く体験してもらうための研修で、希望する他都市の消防職員や、危機管理業務に携わる職員などを対象にしています。

このように他都市との横のつながりにも重点を置き様々なネットワークを構築しています。そのための様々な事務もこの部署の仕事です。

消防局の「予防部」の仕事

「予防部」は、その名のとおり火災の「予防」業務を行います。予防というと一見火災現場とも関係なく簡単な予防啓発業務だと思うかもしれませんが、とんでもありません。消防局内で膨大な「法」の知識が必要となるのは圧倒的にこの予防業務になるでしょう。その他にも「化学」「建築」の専門知識も必要です。

また、後述しますが大変責任の伴う仕事であり、かなりの専門知識が必要になります。

予防、規制について

店舗や事業所、居住用建物にはその条件によって様々な消防用設備の設置が必要です。そこには消防法や条例等に基づき事細かに厳格なルールがあり、それらにはすべて届出書類が必要です。予防の職員は、まず事業主が対象の建築物を建設する際に防火対策の取れる設計になるよう指導し、完成後には立入検査を行い、その後も正しく防火管理が行われているか査察を行います。

つまり、一つ一つの建築物に対して継続的にフォローし続けるということです。この査察については管轄の消防署員が行うことも多いですが、その消防署員への査察にかかる指導なども行い、また重大な違反が認められた案件ではみずから査察隊として「特別査察」を行い、対象事業主に対し是正、指導を行います。

事業主は不特定多数が利用する建物には「防火管理者」を置くことが消防法で規定されており、届出を行うこととなっています。この部署ではその届出に関する事務や、国家資格であるこの防火管理者の育成にも力を入れ、資格取得の講習会なども行います。

また、その中でさらに対象となる建物では防火管理者に加え「防災管理者」も置くことが規定されており、その届出指導も行っています。

火気使用設備等の保安、指導、それに伴う事務処理

予防担当部署では、火気使用設備等の保安、指導、それに伴う事務処理も行います。さらに「保安3法」と呼ばれる「火薬類取締法」、「高圧ガス保安法」、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」に基づきこれらを販売・貯蔵する事業所などに対し登録、認定、許可、届出事務も行っています。これらもすべて書類を介し手続きを行うので事務量も膨大です。また危険物を製造したり、取り扱う各種施設に関しても申請・届出事務を行っています。

ここで参考までに、各種届出書類に実際どのようなものがあるか、事務内容のイメージをつかむために書類名とその根拠法令のみをいくつか箇条書きにします。

法令

「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出署」(消防法第17条の3の2、消防法施行規則第31条の3)
「工事整備対象設備等着工届出書」(消防法第17条の14、消防法施行規則第33条の18)
「消防計画作成・変更届出」(消防法第8条、消防法施行令第3条の2)
「防火管理者選任・解任届出書」(消防法第8条、消防法施行規則第3条の2)
「全体についての消防計画作成・変更届出書」(消防法第8条の2、消防法施行規則第4条)
「統括防火管理者選任・解任届出」(消防法第8条の2、消防法施行規則第4条の2)
「防火対象物点検報告特例認定申請」(消防法第8条の2の3、消防法施行令第4条の2の2、消防法施行規則第4条の2の8)
「管理権原者変更届」(消防法第8条の2の3、消防法施行令第4条の2の2、消防法施行規則第4条の2の8)
「防火対象物点検結果報告書、防火対象物点検票」(消防法第8条の2の2、消防法施行令第4条の2の2、消防法施行規則第4条の2の4、6)
「消防訓練事前通報」(消防法施行規則第3条第10項、消防法施行規則第3条第11項)
「火薬類製造施設・火薬庫軽微変更届」「火薬類販売営業許可申請書」「火薬庫設置等許可申請書」(火薬取締法)
「高圧ガス製造許可申請書」「高圧ガス製造事業届書」「特定高圧ガス消費届書」(高圧ガス保安法)
「液化石油ガス販売事業登録申請書」「登録行政庁変更届書」「保安機関認定申請書」(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)
「危険物製造所・貯蔵所・取扱所設置許可申請書」(消防法第11条第1項)
「予防規程制定・変更許可申請書」(消防法第14条の2第1項)
「危険物製造所・貯蔵所・取扱所完成検査申請書」(消防法第11条第5項)
「圧縮アセチレンガス等の貯蔵又は取扱いの開始・廃止届出書」(消防法第9条の3)

以上ここには記事のスペース上、ほんの数種類のみを例示しましたが、このように法に基づく膨大な量の書類の事務処理を日々行っています。

ちなみにここでは6例しか載せていない保安3法にかかる書類だけでも実際は200種類ほどの書類があります。いかに防火対策や危険物に関する予防規制のための書類が多いかおわかりいただけるかと思います。また消防法だけではなく、自治体の火災予防条例により規定されているものも多くありますので、それらを含めると、取り扱う事務の量は膨大です。

予防部署の職員にかかる責任

次に予防部署の職員にかかる責任についてお話しますが、事業主は防火対象物となる建物を建築する段階から打ち合わせに訪れます。防火対策には事業主が負担する高額な費用が発生しますので、職員があらゆる法の知識を持ち、適切な指導を行っていなければのちに金銭の絡む重大なトラブルに発展するわけです。

また、不適切な指導のまま万一火災が発生した場合、消防隊が到着し消火活動を行おうとしても適切な場所に適切な設備がなければ大惨事を招くことになるのです。ですからこの予防部署では、防火、防災に関するあらゆる法の知識、そして建築などの専門知識も持ち合わせた人材が必要となります。


火災原因調査・鑑識

また、多くの自治体消防でこの予防部に設けられていることが多いのが、「火災原因調査・鑑識」部門です。これは文字どおり、火災の原因を調査するものですが、最近ではこの調査班を主人公にしたドラマも放送され知名度が上がっているかもしれません。真っ黒に焼けた火災現場からでも調査班は火元を特定し、そこから多くのことを突きとめます。

自治体によっては火災発生直後の初動調査は他の部署で行うこともあり、この予防部署では死者が発生するような大規模火災など、今後の火災予防に役立てるための鑑識・分析を行います。それにはやはり化学や建築学などの専門知識が必要になるのです。

また、あまり知られていませんが、火災とは大きなものだけではなく付近のゴミがぼや程度に燃える、自転車のサドルが燃えるなど、残念なことに報道されない小さな火災は放火も含め日常的に発生しています。それらも消防ではすべて一件ずつファイリングされており、作成した記録内容のチェックも事務の仕事です。

地域防災指導

また、その他に、地域防災指導業務として、火災予防運動や、地域の防火・防災意識を高めるための施策も考案し、放火対策も含め市民への広報活動に関する事務も行っています。この部分が一般的に予防の仕事として皆さんがイメージしているものに近いかもしれません。

消防局の「警防部」の仕事

警防という、消防独自の部署名にはなじみのない人が多いかもしれませんが、簡単に言うと、「消防活動における消防力の向上を目指して、業務計画、企画を行い、また現場の指揮、監督を行う」部署になります。つまりここは「現場」に直結している部署になります。

警防、水利

水利業務については後述しますが、警防業務としては、常に現場が効率的、効果的に活動を行えるよう、あらゆる施策を企画し、実行します。消防部隊の出場計画を立てたり、地下街や高層階の建物、石油コンビナートなど特殊で危険な場所における警備の計画も立てていきます。

また、消防活動の統計事務を行い、そのチェックをするなどの事務もこの部署の仕事になります。

消防車等、車両や設備の検査や整備

また消防車等、車両や設備の検査や整備を行うのもこの部署になります。「消防車」が好きな人にはこの部署は向いているかもしれません。自治体にもよりますが、例えば毎年消防車両を新しくしたり、整備する費用について自治体の財政局に予算要求を行います。その金額は消防車両の更新だけでもなんと10数億円になります。

消防車両などにかかる費用のうち一定の額については補助金がおりるのですが、補助金でまかなえない部分を自治体の一般財源で予算要求します。補助金を差し引いてもまだ数億円単位の金額になります。当然簡単に予算がおりるわけではなく、車両の性能を熟知して、車両更新の必要性について説明できる職員が必要となります。実際に実務として財政局に予算要求を行うのは総務の仕事になりますが、まず総務に消防車両の性能や必要性を説明し、多くの資料を作成するのはこの部署の仕事になります。

情報システムの管理、保守

消防局のあらゆる情報システムの管理、保守を行うのもこの部署の仕事です。この業務の担当にはおもに消防吏員ではない専門職採用(機械)の職員が配置されています。

この警防全体で必要とされるのは、消防の現場活動について熟知しており、なおかつ建築や化学、車両の専門知識も持ち、それにより効果的な消防活動をいかに行うかについて戦術を立てる能力のある人材ということになるでしょう。

水利

次に「水利」に関する業務ですが、消防における「水利」とは路上に設置されている消火栓や防火水槽、ため池のことです。皆さんもよく「消火栓」「防火水槽」と書かれた丸い標識を通りで見かけたことがあるのではないでしょうか。そのほかに消防水利とは火災の消火活動に利用することのできるプール、河川、溝などもこれにあたります。火災においてこの消防水利はとても大切なものです。これが整備できていないと、火災現場で消火活動ができず、大惨事を招きます。

消防法で、事業者は、開発区域内に規定に基づく消防水利施設等を自己の負担において整備しなければならない、と定められています。また水利施設等の位置は、防火対象物からの距離も細かく規定されており、自治体と協議のうえ決定しなければなりません。そのためこの部署には、事業者が消防水利施設を設置するにあたって相談、打ち合わせに訪れますので、地図を広げ、位置を確認しながら適切な指示指導を行い、事務処理を進めていくのが水利担当のおもな仕事です。火災現場において、いざという時に万一この消火栓等水利施設に不備があっては大変ですから、ここでもしっかりとした消防水利の知識が職員には必要となります。また水利が不足しないように消火栓、防火水槽などを新たに企画し管理事務を行うのもこの部署の仕事です。

警防部の中心、「司令」の仕事

この部署は、皆さんが119番通報をした時に「〇〇消防です。火事ですか救急ですか。」と応答してくれる、「指令室」のある部署です。現在は、指令室と呼ぶ自治体も少なくなり、東京消防庁に次ぐ規模である大阪市消防局を例にすると、「指令情報センター」という名称です。そこには壁一面に大型のマルチスクリーンと、デスクには10数台の統合指令台が並んでおり、365日24時間体制で指令管制業務を行っています。

大型スクリーンには119番通報状況をはじめ、大阪市内全域の火災・救急情報が常時表示され、また各消防署の消防車および救急車の動きも一目でわかるようになっています。また市内の高層ビルに設置されたカメラ映像に切り替えることもでき、あらゆる災害に即座に対応できる仕様になっています。センター内には一般の市民や小学生等が社会見学に訪れることもあり、その案内業務も行っています。

この指令情報センターだけではなく、司令の部署は警防部の中でも各消防署等「現場」への指揮監督を行う消防活動の中核を担う重要な部署です。

災害現場の指揮、活動支援、また技術指導も行っており、また国際消防救助隊の派遣業務等、自治体を越えた消防活動についても積極的に行っています。また火災原因や損害について、初動調査を行うのもこの部署の仕事です。そして日々この部署には引継ぎや報告、また連絡を密にするため現場からの消防吏員の往来があり、部署内は常に活気のあるイメージです。

消防局の「救急部」の仕事

救急部は、その名のとおり消防の救急部門を担当しています。現場のすべての救急活動を指揮、監督するほか、救急では当然、搬送先の病院とのかかわりが多くなるため、病院など医療機関、また医師との連絡調整の窓口となる事務がここでは多くなります。また救急に関する統計事務を行ったり、データの収集も行っています。さらに市民を含むあらゆる民間団体との救急救命講習の開催などについても企画、立案し連絡調整事務を行います。

近年では、消防の救急部門はただ患者を病院まで「搬送」するのではなく、いかに搬送中から迅速に医療行為が行えるか、そのことに重点を置いていますので、国家資格である救急救命士の育成にも力を入れており、その一例として、救急救命士は自発呼吸のできない患者に「気管挿管」(気管に細い管を入れ、気道を確保すること)を行うことができますが、実習として実際に意識のない救急患者に挿管することはさすがにためらわれます。そこで、医療機関で全身麻酔での手術予定のある患者等に「協力のお願い」として文書を配布し、手術中の気管挿管を、医師の監修のもと救急救命士に実習として行わせてもらえるよう依頼したりします。もちろん患者は断ることもできますが、協力してくれる患者がいれば、ここでは貴重な実習の機会となります。

このように、救急が医療機関と連携する体制を整えていくことが事務内容のひとつになります。


先述した例もそうですが、国をあげてすすめている、消防と医療機関との連携体制を「メディカルコントロール体制」といい、これは救急隊が患者に迅速で的確な応急処置を施せるよう、現場から医師に指示をあおぐことができる体制のことを言います。また救急救命士が医療機関で定期的に実習を行うことができるなど、患者の救命率向上のために構築された体制であり、この体制のさらなる課題等について協議するために、各自治体では「メディカルコントロール協議会」という会議が定期的に開催されています。メンバーは医師、消防吏員等からなり、この協議会の開催、出席に関する事務などもこの部署の仕事になります。

また、大規模災害時に予想される、患者の大量搬送に対する対策や、NBC災害と呼ばれる、「放射性物質」「生物」「化学剤」災害の救助活動についても体制強化を図っています。このように、救急部では、あらゆる医学的知識や化学など理系の高度な知識が必要となります。

まとめ

この20数年の間に、阪神大震災、地下鉄サリン事件(平成7年)、茨城県東海村のJOCウラン加工施設臨界事故(平成11年)、アメリカ同時多発テロ(平成13年)、そして東日本大震災(平成23年)と、予測不可能な災害、事件事故が多発しました。

今後はこの教訓を生かしてあらゆる方向からの災害対策がますます必要になってきます。その意味でも今後の消防ではますます業務も高度化し複雑化していくでしょう。

ですがやはり、事務、現場の違いはあれど人命救助にたずさわる消防の仕事は、なにものにも代えがたいやりがいを感じることができ、素晴らしい仕事です。皆さんもこの消防の仕事に注目してみてはいかがでしょうか。

本記事は、2017年9月20日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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