消防士の給料・年収・働き方(全体)

消防士の給料・年収、初任給やエリア別の給与比較、特有の手当について解説します。


目次

「消防士」の月収・ボーナス・年収早見表。消防士の給料の手取りは、この7〜8割くらい!

「消防士」の平均的な月収、ボーナス、年収について表にしてご紹介します。

総務省が行った「令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果」を参考に、消防士の平均基本給の月額、基本給に手当などを加えた平均給与額、そして平均年収を計算しました。

表の金額はいわゆる「額面」の金額ですので、ここから保険料などが差し引かれた「手取り」は下記金額の70〜80%ほどと考えることができます。

平均給与月額
(諸手当すべて込み)
400,344円
平均給料月額
(扶養手当・地域手当を除いた額)
301,083円
平均基本給月額
(平均給料額に扶養手当・地域手当を加えた額)
336,268円
平均ボーナス年額
(期末手当+勤勉手当)
1,546,527円
平均年収
(平均給与月額×12ヶ月+平均ボーナス年額)
6,350,655円

》参考URL:総務省|令和3年 地方公務員給与の実態

「消防士」の給与月額はほかの地方公務員と比べて平均的な水準の「約40万円」

総務省の調査によると、全地方公共団体の全職員の平均給与月額は「約40万円」です。「消防士」はほかの職種の地方公務員に比べて、給料が平均的だということです。

ただし、全職員の平均年齢は「41.8歳」のところ、消防職の平均年齢が「38.3歳」でしたので、平均年齢が若いことが水準を下げているとも読み取ることができます。全職員の平均年齢の約42歳で比較すると、「消防士」の給料は、平均をやや上回ってくると予想できます。

「消防士」の初任給は?消防士の給料ランキング上位の常連「東京消防庁」の場合

》参考URL:東京消防庁採用パンフレット(28ページ)
https://tfd-saiyo.jp/request/

「消防士」は地方ごとに給料形態が異なっているのですが、その中でも比較的、給料が高い傾向にある東京消防庁の採用パンフレットから、採用時の給与をご紹介します。

東京都消防庁の専門系採用者の採用時の給与は約26万円!

消防官として採用される中でも、「専門系採用者」の初任給は、最も高額な約261,300円です。専門系区分は、採用日時点で22歳以上の大卒、または大卒見込みの方で、大学で「法律」「建築」「電気」「電子・通信」「化学」「物理」「土木」「機械」のいずれかを専門的に学んでいたという人が受験する区分です。採用試験でも、専門分野に合わせて出題されるようになっています。

採用人数は約10名と狭き門ですが、採用されると、専門知識を持った消防官として、知識を活かせる専門部署に配属され、消防行政の中枢を担う人材として期待される道が待っています。


I類採用者:大卒が多い採用区分での東京消防庁消防士の初任給は約25万円!

消防官のI類区分は、専門系と同じく採用日時点で22歳以上29歳以下の方、またはいわゆる飛び級で大学に入るなどした22歳以下の方でも大卒か、大学卒業見込みであれば受験できる区分です。採用予定者数は全ての区分の中で最も多く、令和3年度の場合は310名を予定していたところ、最終的には395名が合格しています。

そのように最も採用人数が多いI類採用者の初任給は、専門系よりやや少ない「約253,300円」です。

II類採用者:専門卒、短大卒が多い採用区分での東京消防庁消防士の初任給は約23万円!

消防官のII類採用者は、20歳以上29歳以下の方が受験できる区分です。一般的には、専門学校卒業生や、短大卒業生の方に受験が多い区分です。

II類採用者の初任給は「約232,900円」で、I類の方が高く設定されていることがわかります。

III類採用者:高卒が多い採用区分での東京消防庁消防士の初任給は約21万円!

消防官のIII類採用者は、18歳から21歳の方が受験できる区分で、一般的には高卒の方の受験が多い区分です。

初任給は「約213,900円」であり、ほかの区分と比べて最も低いのですが、その後の昇任試験については区分にかかわらず、勤続年数や試験によって公正に決まるようです。

「消防士」の地域別、平均初任給の比較。消防士として初の給料が高い地域、安い地域は?

「消防士」として支給される初めての給料「初任給」。その地域別の平均基本給を比較します。総務省の参考資料で「初任給」と表記されている金額は、上記の「東京消防庁」で紹介している初任給の金額とは違い、地域手当などの手当を除いた、基本給のみが掲載されていますのでご注意ください。

大卒・消防士の初任給の平均値(一部)

北海道 171,700円
青森県 208,600円
神奈川県 195,100円
石川県 165,900円
大阪府 195,500円

》参考URL:総務省|令和3年地方公務員給与の実態 第4章初任給

「消防士」に特有の「手当」について。基本給に手当が足された金額が給料の総額です!

「消防士」に支給されている手当には、一般的な公務員にとっては珍しい手当が一部支給されています。そのなかでも、「特殊勤務手当」「宿日直手当」「管理職員特別手当」について詳しく解説します。

消防士の特有の手当:特殊勤務手当

消防士に支給されている「特殊勤務手当」とは、特に危険な仕事や、精神的苦痛を伴うとされる勤務に携わる公務員に支給される手当です。

消防士の場合、火災現場はもちろん、高い所や炭坑など、さらに危険な場所での消化活動・救助活動や、亡くなった方の搬送など、精神的に負担の大きい仕事に直面する仕事について「特殊勤務手当」が支給されることがあります。

消防士の「特殊勤務手当」には、「出動手当」や「火災調査手当」、「高所活動危険手当」などの種類があり、自治体によって支給の基準が設けられています。

東京消防庁の「特殊勤務手当」

東京消防庁の職員の特殊勤務手当は、「東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例施行規則」に支給額などが掲載されています。

例えば、「出動手当」は、火事が起きて出動し、実際に消防活動に従事した職員に支給される手当で、東京消防庁の場合には1回1時間未満の消防活動につき520円、消防活動に1時間以上かかった場合には1時間につき380円が加算されることになっています。

また、特に「サリン」や「放射線」、「感染症の病原体」など、人体に有害なものが発生している現場での消火活動については「出動手当」が、日額で5,500円支給されると定められています。


そのほか、救急救命士や救急隊員が救急活動をした際に支給される「救急手当」や、危険なガスや液体が発生しているかもしれない火災現場の調査をする際に支給される「火災調査手当」、はしご車に乗って10メートル以上の高さで任務を行なった時の「高所活動危険手当」ヘリコプターに搭乗した際の「ヘリコプター従事手当」など、さまざまな種類の「特殊勤務手当」があります。

》参考URL:東京都例規集データベース|東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例施行規則

全国の消防士の「特殊勤務手当」の平均支給額は月額約6,000円程度(2019年)

消防士は地方公務員のため、特殊勤務手当の支給額は、自治体の条例によって決められています。2019年度の消防士の特殊勤務手当の全地方公共団体の平均では、6,086円でした。

消防士に限らず、基本的な業務について支給される「基本給」にはとどまらない業務を任されることがあります。

特に、2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の検疫などの対応を担当する職員に、「特別手当」を出す自治体もあります。消防士以外の公務員にも「特殊勤務手当」は職務に応じて支給されています。

》参考URL:総務省|平成31年地方公務員給与実態調査結果等の概要

レスキュー隊・ハイパーレスキュー隊と「特殊勤務手当」

レスキュー隊やハイパーレスキュー隊は、一般の消防職員から特に優秀な職員が選抜され構成されることが多い特殊部隊です。

その給料について、「基本給」の計算のしかたは消防士の計算方法の同じ方法であり、基本的には勤務年数や等級によって一般的な消防士と同じ水準で推移していきます。

しかし、レスキュー隊やハイパーレスキュー隊は、危険な現場への出動や専門知識が必要な救急救命、救助、特殊車両の運転や取り扱い、ヘリコプターでの出動など、消防士の中でも特別な任務が多く、そのぶん「特殊勤務手当」が多く支給される傾向にあります。

大きな事件や事故、災害の現場に従事することが多いレスキュー隊やハイパーレスキュー隊の年収が、結果として高くなるというのは、このためです。

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消防士の給料に含まれている消防士特有の手当:宿日直手当

消防士に支給される宿日直手当とは、その名の通り宿日直勤務をした職員に支給される手当です。
宿直とは消防署に泊まり込みで待機する勤務、日直は宿直と同じ勤務を昼間の時間帯に行う勤務です。

宿直や日直と、一般的な日勤・夜勤の違いは勤務内容にあります。日勤や夜勤では訓練や地域の巡回など体力を使う通常の業務が入りますが、宿直や日直の場合は緊急連絡が入るのを待機して備えておく役割であり、仮眠の時間も設けられるなど、なるべく体力は使わないようにしておきます。

そのため、宿直後に日勤に入ったり、日直後に夜勤に入ったりといった、連続勤務であっても労働基準法には違反しない形での勤務が可能となっています。

とはいえ、宿日直に入ると職員の拘束時間は長くなるため、基本給とは別に「宿日直手当」が支給されることになっているようです。

消防士の給料に含まれている手当:管理職員特別勤務手当

「消防士」の管理職にも支給される管理職員特別勤務手当とは、管理職が時間外労働を行った際に支給される手当のことで、元々は人事院が支給するように定めている手当です。全国の自治体も、人事院の指示通りに支給、または支給額を調整して支給しています。

管理職は、通常は休日手当や残業代が出ないのですが、災害時など緊急の場合で管理職であっても休みが取れない場合には、休日や深夜の勤務時間に対してこの「管理職員特別勤務手当」が支給されます。

「消防士」の管理職員特別勤務手当の平均額は2019年で「194円」ですが、これは管理職以外の全職員で割っているため低くなっています。

実際の支給額は、国の設定金額では、休日出勤の場合が「6千円から1万8,000円」(勤務時間が6時間を超える場合は9千円から2万7千円)、深夜出勤の場合で「3千円から6千円」となっており、自治体によって国の基準に上乗せされている場合もあります。


元消防士YouTuberの方の体験記。20代、30代、40代など年代別の年収の解説も!

「消防士」の年収の試算について、元消防士の方が語っている動画をご紹介します。所属する自治体、入隊時の年齢による勤続年数、階級によっても変動があるようですが、参考にしてみてはいかがでしょうか。

まとめ - 消防士の平均年収は約635万円!初任給やボーナスについても紹介しました。

このページでは「消防士」の給与・諸手当・ボーナスについてご紹介しました。

「消防士」は地方公務員ですので、給与・諸手当・ボーナスの支給額は、基本的には自治体によって異なります。はじめにご紹介したように、全自治体の、全年代の地方公務員の平均給与月額ほぼ同じくらいの給与額ですので、地方公務員の中で消防士の給料が特別に高いというわけではありません。

しかし、消防士はほかの職種に比べて平均年齢が若いことが平均額を下げているとも考えることができます、消防士として長く働き、また手当が多く支給されるような専門的な任務に従事し、訓練を重ね出世、昇級することで、平均よりも高い水準の年収がある役職者の方もいます。

今回参考にした、総務省の地方公務員の給与実態調査では、全国平均の他に、各都道府県の平均額についてもまとめられています。地域によって「消防士」の待遇にどのような差があるのか、確認することができます。

また、諸手当については、「消防士」という職業の特性上、一般的な公務員とは異なる手当も支給されています。どのような手当が支給されているのかを見ることで、実際にどのような大変な職務内容があるのかを知ることができます。

地方公務員のうち、社会や人々の安全を守る公安系公務員でもある「消防士」ならではの、特性ある給与体系・待遇についてご紹介しました。

》参考URL:総務省|令和3年 地方公務員給与の実態

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(作成日:2020年9月10日/更新日:2023年2月1日)

本記事は、2020年9月10日時点調査または公開された情報です。
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