東京の「地下鉄」企業の事業内容・現業職の仕事内容について
日本の私鉄を代表する東京地下鉄株式会社は1927年(昭和2年)に日本で始めての地下鉄として浅草~上野を開業しました。当時の社名は東京地下鉄道株式会社と呼ばれていましたが、現在年配の方は営団地下鉄という呼び方のほうが、なじみがあるかもしれません。これは、1941年(昭和16年)に帝都高速度交通営団という長い間社名に改名されたためです。その後平成に入り2004年に現在の東京地下鉄株式会社になりました。東京メトロという名前でご存じの人は多いですが、これは、愛称として会社が決めたもので、正式名称は東京地下鉄株式会社です。
主な事業内容は、旅客鉄道事業を柱として、駅構内にあるキオスクや商業施設の運営事業、オフィスビルの賃貸事業、光ファイバーケーブルの賃貸事業などです。東京地下鉄と他の事業者との違いは、鉄道の運輸収入が8割をこえていることです。他の私鉄では商業施設が経営の足を引っ張る事がありますが、運輸収入に頼っているこの会社は社会の情勢に左右される事無く増収増益を続けてきました。今でも関連事業は運輸収入を支えるエンジンとして位置づけて、旅客事業に力を入れています。現在の課題として2020年に開催される東京オリンピック、パラリンピックに向けてホームドアを全駅に設置し、増加が予想される外国人の旅行者に対応すべく外国語教育や駅構内にある案内サインの多言語化に向けて設備投資を行っています。
運輸収入を支える路線は、丸ノ内線、銀座線、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、南北線、副都心線の9路線で、千葉県、埼玉県、神奈川県から東京都内にアクセスする旅客に対応しています。東京都内をほとんど網羅する東京地下鉄は重要なインフラですが、一度電車が止まってしまうと社会に与える影響が大きいといえます。電車を安全に運行するため、安全対策には多額の予算をかけており、設備計画の安全にかける予算は全体の三分の一に及びます。
近年、増えている豪雨対策は地下鉄としては致命的な影響をあたえかねないもので、雨の侵入を防ぐ止水板や入り口の高さを上げるなどの対策を急いでいます。
この会社を支える就業人数は、およそ9000人で運転士や車掌、駅員などの現業職が大半を占め、その他に電車の整備、線路の保守、電気設備の点検を行う技術職員、本社、関連会社の職員で構成されています。入社の段階で主に本社職員を目指す総合職、駅員、運転士、車掌、技術職員を目指す現業職の二つのコースに別れているので、自分がどちらに向いているのか判断した上でエントリーする必要があります。
電車のワンマン化やホームドアの設置で車掌の減少が予想されますが、今現在は大きな人員の変化はありません。これから必要な人材は、これらの変化に柔軟に対応でき、自分が向いている道を切り開いていける人ではないでしょうか。
現業職(運転士)の一日をご紹介します。
現業職(運転士)の一日(泊まり勤務)を紹介します。
12:00 出勤、対面点呼
13:00 一回目乗務
15:00 一回目乗務終了
休憩
16:00 二回目乗務
18:00 二回目乗務終了
食事
20:00 三回目乗務
22:00 三回目乗務終了
入浴
24:00 就寝
睡眠
4:30 起床、点呼
5:00 一回目乗務
7:00 一回目乗務終了
朝食
8:00 退勤点呼
退社
これが泊まり勤務の時の一日の流れです。現業職(乗務)の場合は、個人の仕業(一日の受け持つ電車)ごとに出勤時間も退勤時間も違います。よって一般の会社のような朝礼がありません。そのため、出勤したものは個別に注意事項や連絡事項を伝える必要があります。これを個別点呼と呼んでおり、これが行われる時間がそれぞれ違うのです。
また、休日については循環交代勤務を採用しています。これは、三カ月または四カ月ごとに休日がずれて行くもので、決まった休みというものがありません。電車は年中無休で走らせる必要があるためそれを運転する乗務員も一斉に休ませるわけにはいかないので、このような勤務態勢になっています。
しかし、乗務員に祝日を与えなければ労働基準法違反になってしまいますので、祝日相当分の休暇が与えられています。およそ二十日程度ですが、これを乗務員は任意で取ることができます。この他にも法定の休暇がありますので、決まった日に休めない代わりに時期をずらして休日にすることが可能です。鉄道会によっては、祝日分の休暇を買い取ってくれる所もあるので、あえて使わないでお金にする人もいるようです。
東京地下鉄株式会社の年収、働き方、初任給
私は30代で入社十年目ですが、年収はおよそ700万程度あります。ボーナスは夏、冬合わせて180万円でした。中途入社のため新卒と比べると低くなっていますが、平均的な金額ではないでしょうか。中途入社で入社した初任給は配偶者と子供の手当てを含めて25万円程度ですが、休日出勤や残業で変動するため多い月や少ない月の差があります。
他の鉄道会社の多くは年功序列制度を採用していますが、東京地下鉄も年功序列制度が色濃く根強いています。年齢とともに給料が上がるので生活設計をたてやすい反面、経験が重視されるので自分の能力やスキルを発揮しにくい所もあります。しかし、最近では総合職を現業職から採用し、職種転換試験を実施するなど実力主義的な面も出てきているので、これらの流れは広がっていくものと見られます。
現業職、総合職の女性の割合ですが、まだまだ少ないのが現状です。昔から男性の職場というイメージが強い会社ですが、徐々に女性の職員が増えています。現業職では泊まり勤務が基本となり、女性のための施設が追いついてないので、これらの施設が増えてくれば女性の割合も増えてくることでしょう。給料は男性と差がないので、泊まり勤務や深夜勤務に抵抗がなければ女性でも稼げる職場です。
業界の展望や新しい試み
現在少子高齢化や人口の減少が鉄道業界にも影響をあたえています。運輸収入に頼っている東京地下鉄において、中期経営計画でこれらの現状に対応するためサービス面の対策を盛り込んでいます。
いくら強い基盤がある東京地下鉄でもJRを始め私鉄各社の競合に旅客を取られまいと、顧客満足をあげる努力をしています。
最近では、小田急ロマンスカーを東京地下鉄線内から乗ることができるようになったり、スタンプラリーの実施、Wi-Fi環境の充実、各種SNSを利用した情報の発信などを行っています。安全に電車が乗れることが大前提の上でサービス面の充実がこれから鉄道業界に求められている現状です。
また、前述した東京オリンピック、パラリンピックの成功に向けて日本の鉄道の技術を世界に発信できる機会と捉え、様々な対策に各社が乗り出しています。
競合となる会社や商品について
東京地下鉄の競合は東京都内に乗り入れている鉄道会社といえるでしょう。
JRを始め都営地下鉄、東急、西武、東武等の私鉄各社、またはバスや路面電車などの公共交通機関もすべて含まれます。鉄道会社は自社の路線が使えなくなってしまえば、他の交通手段がいくらでもあるので、安全安定した輸送が一番に求められます。また、社会にあたえる影響を考えると不祥事や事故といったマイナス面が注目されやすくなっています。一般企業と比べるとコンプライアンスを徹底させなければすぐに顧客離れを引き起こし業績に影響を与えるでしょう。
他社の商品や対策で注目されるのはJRが取り組んでいるホームドアの設置対策です。ホーム上の事故(転落や人身事故)を防ぐことができるだけでなく、安全対策に力を入れているとアピールできるので、東京地下鉄でも2020までに全駅に設置を予定しています。
まとめ
前職の食品メーカーの営業から現在の東京地下鉄に転職して一番やりがいを感じるのは、人の役に立っていると実感できるということです。
もともとあまり営業向きではなかった事もあり、違う職種に転職をしたので今の仕事がとてもしっくりきています。多いときでは朝ラッシュ時に3000人近い旅客を乗せている時は、自分の運転技術で多くの人の日常を支えていると実感できるとともに、責任の重さ感じています。この仕事に向いている人は、決められたことをしっかり責任を持ってこなすことができる人だと思います。自分で営業成績をあげたいという人は向いていませんが、日常の仕事で、ミスをすることなくこなすことにやりがいを感じる人向きではないでしょうか。
毎年100人単位で新卒を採用していますが、けして辞める人が多いわけではなく、むしろ定年まで勤め上げる人が大半です。団塊の世代に大量に採用した人が一度に定年を迎え、その補充の採用なので、長く勤められる会社です。中途採用も積極的に行っており、20代はもちろん30代の中途採用者も多く活躍しています。私を含めて中途採用者は新卒の人との年齢のギャップを感じることが多いですが、東京地下鉄では同じような境遇の人が多くいますので、すんなり溶け込めました。
転職による給料の減少は、年齢による給料と経験年数に応じた給料にわかれていますのでそれほど変化はありませんでした。また、休日出勤や残業をこなせばそれだけ給料が増えるので、最初の内は積極的に残業していた記憶があります。また、福利厚生や子供の手当て、住宅補助、福利厚生施設も完備されていますので、既婚者で子供がいることで転職に踏み切れない人でも安心して挑戦できるでしょう。なにより安定した働き方を目指す人には最適な会社です。
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