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【アメリカ政治史】アメリカ第44代大統領「バラク・オバマ前大統領」

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みなさんはバラク・オバマ前大統領をどのように評価していますか?2009年から2017年までの8年間、アメリカ合衆国第44代の大統領を務めたオバマですが、アメリカでの評価の声は様々です。

今回はアメリカから見たオバマへの評価を、アメリカが抱えている問題と照らし合わせながら振り返ってみたいと思います。

目次

バラク・オバマの人物像

まず始めに、大統領として活躍したオバマの人物像を理解する必要があります。この人物像が後に成し遂げる数々の功績に繋がっています。

オバマは1961年にハワイ州オアフ島で生まれました。父親がケニア出身のアフリカ系、母親はカンザス州出身の白人系ということから、アメリカ史上で初めてのアフリカ系黒人の大統領になりました。日本人にとって馴染み深いハワイ出身ということもあり、日本からの支持も多かった人物です。

幼少期に両親が離婚し、母親に連れられてインドネシアに移住し、現地の小学校に通いました。10歳のときにオアフ島に戻ってきてからは、ハワイのなかでもトップクラスの私立校に入学しました。この頃は、タバコやマリファナ、コカイン、飲酒などをする典型的なアメリカのティーンエイジャーでした。

その後、カリフォルニア州の大学からコロンビア大学に編入し、政治学を学び始めます。卒業後はニューヨークの出版社などで4年間働き、後に政治家デビューすることになるイリノイ州シカゴに移住します。

1991年にはハーバード大学法律学校を修了し、弁護士の資格を取得しました。弁護士事務所に勤務するなか、後に結婚するミシェル夫人と出会います。1996年、人権派の弁護士であることや、貧困層を救済するための熱心な活動が評価され、イリノイ州議会上院議員の補欠選挙に当選し、政治家としての活動を本格化させました。

2004年には、アメリカ合衆国上院議員選挙に民主党から出馬し、イリノイ州選出の上院議員に当選します。その後の大統領選では、多くのアメリカ人の心を打つことになる「黒人も白人なく、保守もリベラルもなく、ただアメリカ合衆国があるだけだ。戦争を支持する国民も、反対する国民もみんな同じ忠誠心を持ったアメリカ人だ。」という演説をします。

この演説は、多人種国家、保守とリベラルの二分化が激しいアメリカ国民をひとつにさせたとされ、アメリカは一気にオバマを支持する流れになりました。そして、オバマならアメリカを変えてくれるかもしれないと期待感が高まります。

2008年11月、大統領選で52%以上の票を獲得し勝利します。そして、2009年1月20日、正式に大統領に就任しました。ワシントンD.C.で行われた就任演説では、200万人の聴衆者が訪れ、多くの人が涙を流しながらオバマの演説に耳を傾ける様子が世界中に報道されました。

ここから厳しい大統領の任務が始まったのです。


この時、アメリカが抱えていた主な問題は、不況経済、医療保険、移民や人種、テロ、貧富の格差、エネルギー、犯罪でした。これらにオバマがどのように取り組むのか期待されていました。

オバマが評価されたこと

オバマが大統領を務めた8年間を通じて、アメリカが抱えていた問題で改善されたと評価される項目は、移民や人種、エネルギー、経済、医療保険、世界平和への貢献とされています。

移民や人種

オバマは自身がアフリカ系にルーツがあり、幼少期のインドネシアでの生活などを通じ、様々な人種間同士で尊重することの大切さを理解していました。さらには、政治家の前身時代には貧困層の救済活動にも力を入れていたことから、社会的な弱者に手厚い発想を持っていた人物でした。

皮肉なことに、トランプ大統領が問題視している移民救済制度の「DACA(The Deferred Action for Childhood Arrivals)」を成立させました。大統領選の時の演説の、どんな人もアメリカに忠誠心を誓う同じ国民であるという信念を貫いたのでした。

加えて、同性結婚への支持や、アメリカ軍で同性愛者の勤務を禁じている通称「DADT法」を撤廃します。DADT法とは「Don’t Ask, Don’t Tell」の頭文字から付けられており、アメリカのLGBTの人権は軍だけに限らずオバマによって大幅に改善されました。

エネルギー問題

多国間で協力し合って地球温暖化を低減させるということを目標にしたこの条約(パリ協定)の骨組みを主導して作り出したのがオバマです。地球規模で加速する温暖化や、異常気象の原因となる温室効果ガスを減らすために各国の連携を求めました。オバマによって地球環境を守るための大規模な仕組みが作られたのです。

パリ協定は、2015年12月に採択されたものの、トランプ大統領が中国やインドと比較して、アメリカだけが多額なお金を拠出することに反対し、パリ協定から離脱を宣言します。オバマの功績を真っ向から否定する形になりました。

経済

オバマは経済刺激のために、各州に最低賃金を10ドル10セントに引き上げるようを指示し、18州がこれを実施します。最低賃金の底上げが実現したことで、相対的な弱者である労働者からは歓迎されました。

さらに、2008年の世界的金融危機の後にGMやクライスラーなどのアメリカ自動車業界の再建に公的資金を投入し、25万人の雇用を創出して、経済不況からアメリカ経済を立て直します。これらの政策でアメリカのGDPはマイナスからプラスへ挽回したのでした。

医療保険

アメリカでは国民健康保険というものがなく、あくまでも任意加入でした。医療費が異常に高額なアメリカで、国民の16%ほどが無保険状態で、その人たちが治療を受けられない事態を改善するため導入されたのが「オバマケア」です。

公的医療保険でカバーされる枠を増やしたり、医療保険の義務化などを促し、弱者を救える仕組みに改善しました。16%だった無保険者は9%にまで減少。オバマケアは現在でも賛否両論あるものの、弱者救済の観点では評価されています。

世界平和への貢献

オバマは大統領就任直後に、チェコのプラハにて「アメリカは国際的な核兵器禁止を起こす道義的な責任がある」とし、核兵器廃絶に乗り出します。そして、現役大統領としては、1919年以降のノーベル平和賞を受賞しました。

大統領退任前には、60年間も緊張状態にあったキューバとの国交を正常化し、アメリカ大統領としては初めとなる被爆地の広島を訪問します。アメリカが核廃絶や平和への道を歩む姿勢を見せたことは評価されました。

以上のように、オバマは移民、環境、経済、医療、世界平和などの面で一定の功績をあげたと評価されています。これらに共通していることは「弱者救済」という概念です。

オバマは大統領になった後でも、自身のルーツから学んだことや、社会的弱者を守るという信念を貫いていたことがわかります。


しかし、オバマが貫いた「弱き者を守る」ということは、何事にも常に優位であり続けようとするアメリカ国民の心には響かずに終わります。次では、具体的にオバマのどのようなことが評価されなかったのかを紹介します。

オバマが評価されなかったこと

オバマがアメリカ国民から評価されない主な点は、消極的な姿勢、理念が先行し過ぎたこと、弱者を擁護し過ぎたことです。

始めに、オバマの消極的な姿勢は、ある発言が決定付けました。「アメリカは世界の警察ではない」ロシアのクリミア併合問題、北朝鮮の核開発、中国の海洋進出などを抑止できずに終わりました。アメリカ国民からは、影響力が強いアメリカが抑止できないでどうするという声があがりました。

なかでも、トランプ大統領になってからも続く北朝鮮問題を早い段階で抑止できなかったことは厳しく問われており、仮にトランプ大統領が北朝鮮と戦争をしようものなから、オバマが抑止しなかったことが原因とされること必定です。

オバマの理念が先行し過ぎる姿勢は、結果主義のアメリカ国民からは不評でした。実現しなかった核兵器根絶、アメリカを二分したオバマケアなどが典型でしょう。人を惹きつける演説や、愛嬌がある人柄で国民の支持を得ていたものの、結果が残せなかったことは「裏切られた」と、辛辣な評価を受けています。

最後に、オバマは弱者寄りの政策を取り過ぎたと批判されています。このことは、オバマの信念に沿った政策であり、そんなオバマを信じたアメリカ国民にも問題はありますが、弱者とは無縁の富裕層や、はなからオバマを支持していない人からすれば、甚だ迷惑な政策ばかりだったと言われているのが実情です。

とくにオバマケアは富裕層からすれば、なぜ自分達が弱者のために保険料を負担せねばならないのかという恨みを買いました。さらに、金融危機のあおりを受けたアメリカ経済を立て直すために投入した、80兆円ほどの税金も成功者たちからすればいい迷惑だったのです。

このことからは、寄付やボランティアの精神が強いアメリカではあるものの、弱者を助けるために大統領として奔走したオバマには冷たいという、矛盾のような発想が生じていることが分かると思います。

まとめ

オバマが残した様々な功績は、トランプ大統領によって覆されようとしています。弱者を優先するオバマと、強者の立場を優先するトランプの構図が明確です。

オバマへの評価は人それぞれですが、彼がどのようなことを大切にし、どのようなことに注力してきたかを理解しておくと、トランプ政権のことをより深く理解できるようになります。

本記事は、2018年2月4日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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