現場に駆け付けた救助隊員が活動に使う資機材を積んだ「救助工作車」をはじめ、スーパーレスキュー仙台のみが保有する「特殊災害対応車」、「特別高度工作車」などの緊急車や資機材を紹介します。
これらは、有事の際には人命救助するための大切な資機材であり、同時に救助隊員の身を守る相棒でもあります。
救助工作車
八乙女分署にはクレーン付きの救助工作車(Ⅲ型)が2台あります。救助工作車(Ⅱ型)は、特別消防隊がいる仙台市内の他の消防署に配備されていますが、救助工作車(Ⅲ型)はスーパーレスキュー仙台が配置されている、八乙女分署と六郷分署にしかありません。通常運用は1台ですが、大規模災害時には2台とも出場し災害対応にあたります。
救助工作車には、救助に必要な資機材が両方のシャッターの中に積んであります。バッテリー式油圧救助器具や最新鋭の機器の他、ロープやカラビナなど、救助活動に必要なありとあらゆる資機材が積載されています。
車内は整頓されていて、格納場所ごとに資機材名が明示されており、一目瞭然です。資機材の積載場所などは隊員全員が把握しています。
運転者を含め前の座席に2人、後ろの座席に3人が乗車し、合計5人で出場します。現場に到着後、二手に分かれて活動しますが、隊長が先行しその後、他の隊員が続く態勢を取っています。
現場の状況を確認し、必要な資機材を判断して無線で後続の隊員に連絡し、その資機材を持ち出すことで、効率よく迅速な活動が可能となります。
いつもきれいに 大切な相棒
スーパーレスキュー仙台も含め、仙台市消防局では毎朝、車両の点検・清掃を行っていますが、雨の中を走行した際には、すぐに水洗いをしています。
消防車は消防の象徴であり、いつでもきれいにすることを心がけています。それは市民へ安心感を与えますし、資機材を大切に手入れをする事は、細かい不具合や故障の発見につながることから、清掃・整備は欠かせません。
特殊災害対応車
特殊災害対応車は、特別高度救助隊(仙台市では特別機動救助隊)が備えなければいけない車両のひとつです。危険物質が漏洩したり、テロ災害が起きた場合に使用するさまざまな資機材が積載されており、NBC災害(※)に対応する車両となっています。
※NBC災害…放射線(nuclear)、生物剤(biological)、化学剤(chemical)による特殊災害の事。近年では2011年の福島第一原子力発電所事故、1995年の地下鉄サリン事件などが該当する。
陽圧式化学防護服
陽圧式化学防護服とは、着用すると外気が内部に浸入しない特殊な防護服です。目に見えない危険な気体や液体から身を守ることが可能なことから、危険な環境下での活動が可能です。ただし、活動後は、自除染(化学防護服を着たまま危険な物質を洗い流す)もしなければならない為、除染にかかる時間も考慮した活動をする必要があります。
特殊災害対策車は、車内に陽圧状態を作れるようになっています。車内を完全に密閉する事によって、外からの有毒ガスや毒物などが浸入しない安全な環境になります。
車内には分析室があり、他機関への応援要請や物質の分析などを行います。また、車の外周ついたカメラで、外の様子が車内から見られるようになっています。
資機材の中には危険な液体や固体、ガスを採取して分析する機器があります。
特別高度工作車
特別高度工作車も特別機動救助隊のみが保有する車両で、車両の後部についた大型ブロアー装置は、建物の中のガスや煙、熱気などを、風と霧状にした水の力で排除します。
また、水と特殊な研磨剤を混ぜた高水圧で、固いコンクリートや金属も切断することができる、ウォーターカッター装置も備え付けています。
ちょっと豆知識!シャッターのマークの意味
消防車のシャッター部分には、自治体によって異なるマークがついているのをご存知でしょうか。仙台市の場合には「ナックルマーク」と呼ばれる、人の「助ける手」と「助けられる手」を表現しているデザインとなっています。また、SENDAIの頭文字の「S」もかたどっています。
※仙台市では特殊車両として区別されている一部の消防車と、救助隊の車両のみにマークが入っています。
特別高度救助隊が装備すべき資機材
地中音響探知機
6個のセンサーが人の声や物音に反応し、がれきなどにに埋まってしまった要救助者を探す時に有効な資機材です。
実際に反応している音は、ヘッドフォンで聞く事ができます。また、センサーをがれきの隙間に入れて、要救助者と会話する事もできます。
ファイバースコープとなっている先端をがれきなどの中に入れて、映像を見る事ができる資機材です。
がれきの中に有毒ガスが充満している場合も想定されるので、有毒ガス測定器を接続して内部環境を測定することもできます。また、酸素濃度が薄いと判明すれば、空気ボンベを接続し、空気を送って内部環境を改善する事ができます。
最新鋭の救助資機材も、知識や技術力がなければ使いこなす事ができません。また、きれいに大切に資機材を使うことによって、日々の活動をより確実に行える事も、スーパーレスキュー仙台の隊員の方々から、お話をうかがって理解できました。
(著:千谷 麻理子)
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