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【刑務所での障害者処遇】障害を持った受刑者の暮らし

【国家公務員「刑務官」のコラム
「刑政」に掲載された、播磨社会復帰促進センターの作業療法士が書いた小論についてのコラムです。

今回のテーマは、刑務所での障害を持った受刑者の暮らしについてです。執筆は、元・刑務官で所長歴もある「小柴龍太郎氏」です。

2018年11月05日更新

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目次
障害のある受刑者はどれくらいいるか
障害者の刑務所での暮らし
播磨社会復帰促進センターには障害者がたくさん
【刑務所での障害者処遇】障害を持った受刑者の暮らし

刑務官が読む機関誌「刑政」(矯正協会発行、2018年4月号)に掲載された記事から興味深いものを紹介します。

障害のある受刑者はどれくらいいるか

刑政の4月号には播磨社会復帰促進センターの作業療法士である足立さんが書いた小論が掲載されています。そして、その中に受刑者のうちどれくらいが障害者なのかが紹介されていました。

それによると、精神障害者が13%、知的障害者が20%程度だとのことです(2015年の矯正統計年報による)。

精神障害とは、狭い意味での精神病のほか、覚せい剤使用による幻覚・妄想などの精神症状を呈する人のことだと思いますが、それらの人が受刑者10人に1人以上おり、読み書きや計算などがうまくできない知能低格者は10人に2人。

これは私の刑務所現場での勤務経験に照らして納得のいく数字です。一般社会と比べると明らかに多いです。

障害者の刑務所での暮らし

それでは、これら障害者の人が刑務所の中でどんな暮らしをしているのか。

私の経験に照らせば、その多くはほかの受刑者と同じように暮らしていると言って構わないと思います。というか、そもそも彼らは裁判において責任能力に特に問題はなく刑の執行に耐えられると判断された人たちですから、刑務所とすれば刑の執行をしなければなりません。

そして、その刑とは大部分が懲役刑ですから刑務作業をさせなければならない。当然ほかの受刑者と同様に、毎日工場に出して仕事をさせなければならないのです。だから基本的にほかの受刑者と同じような暮らしをさせることになります。

とはいっても、実際のところ、障害がひどい場合はそれができないこともあります。

例えば、精神障害者の中には症状が激しくて、とても工場で仕事などできない状態になることがあるのです。

そのようなときには、精神科のお医者さんに診てもらって、個室で仕事をさせたり、それもできなければ病気の治療に専念させるしかありません。そしてそれが長期に及ぶ場合は、医療刑務所などに送って専門的な治療を行うことになります。

知的障害者についても、基本的にはほかの受刑者と同様に刑務作業に従事させますが、その知的能力の低さから、作業のレベルも相当低いものとなります。

よく目にするのが、買い物袋のヒモ通し。空いている穴にヒモを通す作業です。それから袋そのものを作る作業。

これは、折り目のついた紙を折って袋にする作業です。このようなレベルの作業であれば、小学校1年生程度の知能の人でもできますから何とかなります。

逆に、知能の高い人にこのような作業をさせるとすぐ飽きてしまい、仕事が雑になったりしますが、知的水準の低い人の中にはそのような飽きが起きず、単純作業を黙々と丁寧にこなす人がいたりします。

この辺を見ると、ある種の才能というか、適性があると言ってもいいのではないかと思ったりもします。

播磨社会復帰促進センターには障害者がたくさん

さて、播磨社会復帰促進センターの作業療法士である足立さんがなぜ刑政に小論を載せたのかというと、受刑生活がこのような障害者にどのような影響を与えるのかを研究し、その結果を紹介するためだとのことです。

このセンターには120人を定員とする障害者の収容区域があって、そこにほかの刑務所から送られてきた障害者に対して医療と福祉の専門家を中心として処遇を展開するようになっています。

つまり、足立さんはその専門家の一人であり、多くの障害者の処遇に携わっているから、このような論文が書けるというわけです。

研究の内容については、もはや学術論文と言ってもいいほど専門的なものなのでここでの紹介は割愛しますが、とにかく、このような論文が刑政に掲載され、全国の刑務官に対して、研究家に対して、さらには全国の国民に対してオープンにされていること自体がとても良いことだと思うのです。

刑務所では障害者に対してどのような処遇がなされ、その結果はどうなのか、資格を持つ専門家によって記述され、公開されていること自体がすばらしいことだと思うのです。
内容に興味のある方は刑政の本文をご覧ください。

(小柴龍太郎)

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