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どこまで条例で規制して良いのか?-条例制定権の限界

日本には大きく分けて、法律と条例という2段階のルールが存在し、法律とは国会によって決められたルールで、条例は地方議会によって決められたルールです。

今回は、条例は法律との関係性でどのようなとこまで規制できるのか、条例制定権の限界について説明します。

2018年11月16日更新

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目次
はじめに
条例はなぜ制定できるのか
条例制定権の枠組みと判例・学説
地方自治と条例制定
まとめ
どこまで条例で規制して良いのか?-条例制定権の限界

はじめに

日本には大きく分けて、法律と条例という2段階のルールが存在します。法律とは国会によって決められたルールで、条例は地方議会によって決められたルールです。

このときに注意しなければならないのは、法律と条例の関係性です。

例えば、法律よりも厳しい規制を条例によって行って良いのか、逆に規制を緩和する条例を作って良いのかなど、地方行政では、法律と条例の関係性がよく問題になります。

本記事では、条例は法律との関係性でどのようにことまで規制できるのか、条例制定権の限界について説明します。

条例はなぜ制定できるのか

この問題を考える上で、重要なのがそもそも地方自治体はなぜ条例を制定できるのかということです。一般論としてその地域に住む不特定多数の人間に対して強制的に適用するルールは憲法や法律に基づかないと制定することはできません。

条例が制定できる理由は憲法と地方自治法に求めることができます。憲法94条によれば、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」とされています。ただし、この規定だけではその範囲が不明確なので、地方自治法14条1項において、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。」と定められています。

つまり、法令(≒法律)に違反する条例は作れないというのが条例制定の限界です。ただし、何を持って、法律に違反する、違反しないのかということは実質的に考える必要があります。

条例制定権の枠組みと判例・学説

実は何を持って条例が法律に反していると見なされるのか、はっきりとした基準は存在しません。

これまでも、法律に反した条例が制定されているのではないかという問題提起がなされた条例は数多く存在しますが、そのような問題提起がされるたびに裁判所がその実態を分析しながら、法律に反する条例なのか否かの判断を行ってきました。過去の判例の蓄積などをもとに条例はどこまで制定して良いのかについて説明します。

趣旨、目的、内容と効果を比較して決める

まず、1970年代までは法律占有論という考え方が有力でした。法律占有論とは法律が規制している領域については、法律の規制を尊重してそもそも条例を制定するべきではないという考え方です。この理論を採用すれば地方自治体の条例制定は大きく制限されます。

ただし、この考え方は現在あまり採用されていません。1960年代の後半ごろから公害問題が深刻化してくることによって、国の一律の法律による規制だけではなく、地方自治体によっては法律よりも厳しい基準の条例で規制する必要性がでてきたからです。

よって、現在では条例の趣旨、目的、内容や効果を加味した上で法律と条例の間に矛盾や抵触があるかどうかという基準で審査を行っています。これは法律占有論から厳しくなっているとも緩くなっているとも言えます。法律が定めていないことでも、法律に放置しようという趣旨があれば規制できなくなる一方で、法律と矛盾抵触しないと考えられるのならば、法律をより規制を厳しくした条例も制定できると理解されています。

条例が制定できるパターン

では、判例学生に基づいて、一般的に条例が制定できるパターンについて説明します。条例が制定できるのは以下の3パターンです。

・規制の対象が同一で目的が同一だけれども全国一律に規制する趣旨ではない場合
・規制の対象が同一で目的が同一だけれども法律の効果を妨げない場合
・規制の対象が同一でその規制を放置するべきだという趣旨ではなく、条例を制定することによって均衡を失する(特定の対象に著しく負担をかけたり、利益をもたらす)ものではない

例えば、公害に対する規制や景観や建築に対する規制は法律によっても定められますが、法律は最低限の環境や建築基準を定めているだけなので、これより厳しい条例を制定することは可能です。

条例が制定できないパターン

その他のパターンでは条例を制定することはできません。例えば法律より規制基準を緩和させる条例を作ろうとすると、法律の効果を条例が妨げてしまうので違法な条例となってしまいます。また、特定の対象について放置するべきだという趣旨の法律があるのに、同じ対象について厳しい規制を適用する条例を作ることはできません。

罰則はどこまで設けて良いのか

規制内容と合わせて考えなければならないのが、その条例に違反したときの罰則です。誰かに何らかの罰を与えるということは、人権を制約する行為でもあるので条例といえども、自由に罰則を決められるわけではありません。

条例の罰則の範囲は地方自治法によって決められています。地方自治法14条3項によれば「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と定められています。

極端に説明すると、違反すると死刑にしたり、無期懲役になるような厳しい罰則の条例は作れないということになります。

財産権は規制できるのか

罰則と並んで大きな論点となるのが財産権の制限です。財産権とは個人が自分の財産を自由に使用したり処分する権利のことを指します。憲法29条1項によれば「財産権は、これを侵してはならない。」と定められていて、2項で「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と定められています。

つまり、他人の財産権を規制するような法律は公共の福祉に適合する範囲で作る余地はありますが、条例はつくれないとも考えられます。しかし、判例により財産権を規制する条例も認められています。ただし、どこまで財産権を制限する条例が認められるのかは過去の判例を基準に個別に審査する必要があります。

地方自治と条例制定

以上のように条例制定の判例や学説について説明しましたが、地方分権の推進によって、更に地方の条例で制定できる範囲を拡大しようという動きがあります。

地方分権と法規制

日本においては、地方から都市部に労働人口が流出し、それに伴い地方自治体の労働力は減少し、地方の産業は衰退傾向にあります。このような地方と都市部の格差を是正するために、政府は地方国税交付金という財政支援を行っています。

一般的に地方自治体が運営のための予算として自主的に確保できている財源は3割で、あとの7割は地方交付税交付金などの外部からの資金に依存していると言われています。ただし、このような状況は地方の自主性を奪うことになり、地方自治体が独立して運営できるような体制が求められています。

地方自治体が独立運営するために行われているのが地方創生を巡る一連の改革です。第二次安倍政権の発足以降、地方の人口減少を食い止め、産業を育成するために多額の補助金が使用されています。

地方創生といえばなぜ観光になりがちなのか

このように政府は予算をつけて地方創生を推進していますが、本質的には地方自治体は自由に地方創生策を推進することができません。地方創生を行うのにあたって問題になるのが法律の規制です。基本的に法律に定められている規制は最低限の基準であって、条例によってその規制を緩和することはできません。

この法律による規制は地方創生の大きな足かせになります。国や地方自治体が特定の産業を振興して成長させようという計画経済的な手法では経済成長しないことは時代が証明しています。国や地方自治体が経済成長を実現するために必要なことは、規制のバランスを調整することです。規制を緩くすることによって、その産業での新規の起業家や資本を集めたり、逆に規制によって業界を引き締めたりのコントロールが経済成長においては重要です。

ただし、日本ではさまざまな産業が法律によって規制されていて、勝手に条例でその基準を緩和することはできません。例えば、農地の転用や外国人の受け入れ、交通ルールなどさまざまな規制が法律によって行われています。このような規制を緩和することによって、地方は産業振興によって経済成長できる可能性があるのに、条例によって緩和できないことが地方創生策を横並びにしています。

地方創生の際の典型的な施策は、観光施策です。これは観光が地方創生策としてのポテンシャルが高いということもありますが、そもそも法律によって産業が規制を受けているので、他自治体と産業施策を差別化しにくいという理由があります。

結果として地方自治体の観光資源や自然資源を使って差別化できる観光施策にどの自治体も走りがちです。

構造改革特区制度について

このような法律による規制を緩和しようとしているのが構造改革特区制度です。構造改革特区では、一律に適用されている法律の規制を特区だけで試験的に緩和して、その効果を測定しようという試みです。

構造改革特区においては、あらかじめ申請した事項について法律よりも条例の基準を緩和することが可能になります。今後、構造改革特区で地域経済が成長した成功事例が誕生すれば、より条例によって地方が独自に設定できる規制の範囲が広がっていくと考えられます。

まとめ

以上のように法律と条例の関係、条例はどこまでの規制ができるのかということについて説明してきました。地方自治体は法律に抵触、矛盾しない範囲で条例を制定することができます。罰則を伴ったり、財産権を規制する条例も制定することができ、法律に抵触・矛盾するかは、その趣旨、目的、内容と効果を勘案して裁判所が判断します。

ただし、法律より厳しい内容の条例を制定することはできても、法律の基準を緩和させる条例を作ることはできません。ただし、今後地方創生を実行していくにあたって規制緩和は重要な施策で、現在、日本中で構造改革特区制度を設けて地方での規制緩和に挑戦しています。

今後、地方自治体の公務員で働く場合、産業振興に関する部署で働くことがあるかもしれません。そうしたときに法律の規制を知ったうえで、どうやって産業振興施策を考えるのかは非常に重要です。

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