公務員になるための情報サイト

公務のアウトソーシング手法「指定管理者制度」とは?

「指定管理者制度」とは、公務のアウトソーシング手法として使用されている制度です。

本記事では、「指定管理者制度」について解説していきます。(本稿は事実をもとに筆者の考えをまとめたものであり、本メディアの意見と必ずしも一致するものではありません。)

2019年06月17日更新

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
目次
はじめに
指定管理者制度とはどのような制度か?
指定管理者制度の導入事例
指定管理者制度の効果
指定管理者制度のメリット・デメリット
まとめ

はじめに

公務員は国や地方自治体の生活基盤を支える重要な仕事です。

ただし、公だけれども必ずしも公務員が担当しなくても良い仕事も世の中にはたくさんあります。たとえば、公営のプールの運営を全て公務員で行うのは現実的ではないでしょう。公務員の給料が高くコスト高になりかつプール運営のノウハウもないので、経営が上手くいくとは限りらないからです。このようなケースで公務のアウトソーシング手法として使用されるのが「指定管理者制度」です。

この記事では、「指定管理者制度」はどのような制度なのかについて、メリット・デメリット事例なども交えながら説明します。

指定管理者制度とはどのような制度か?

まずは指定管理者制度とはどのような制度なのかについて説明します。

詳しく知りたい方はこちらも合わせてご覧ください。
総務省:公の施設の指定管理者制度について①
http://www.soumu.go.jp/main_content/000451041.pdf

指定管理者制度の概要

指定管理者制度は2003年に地方自治法が改正されて新設された制度です。それまでは「管理委託制度」と言って、公の施設の管理主体は地方公共団体、その外郭団体などに限定されていました。そして、「指定管理者制度」に変更することによってその制限を撤廃し、営業企業でも、NPO法人でも包括的に施設の運営業務が代行できるようになりました。

指定管理者制度導入の目的

指定管理者制度の目的は以下の3つだと言われています。

・民間事業者の活力を活用した住民サービスの向上
・施設管理における費用対効果の向上
・管理主体の選定手続きの透明化

すなわち民間企業のノウハウを活用して、サービスの向上、施設の効率的な運営を実現しようというのが、指定管理者制度を導入した目的です。

「公の施設」とは

指定管理者制度の対象となる、「公の施設」とはどのような施設のことを指すのでしょうか。地方自治法244条によれば公の施設とは「住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設」のことを指すと定義されています。

ちなみに「住民の福祉」と記載されていますが、病院や介護サービスのことを指すのではなく、広義に住民サービスを提供することを指します。つまり、市役所や警察署のように部署を除いて、行政サービスを住民に提供する施設は広く「公の施設」として認められることになります。

よって、公共施設であれば、病院、学校、図書館、体育館、公民館、公園、プール、博物館など幅広い施設が指定管理者制度の対象となりえます。

業務委託・請負と指定管理者制度の違い

少しマニアックな論点ですが、通常、企業間でこのような取引をした場合、「業務委託」や「請負」として処理されますが、指定者管理制度は業務委託ではなく行政処分として行われます。よって、単純な業務委託と異なり、いろいろと細かいルールがあります。

たとえば、地方公共団体の担当部署が勝手に民間団体を指定管理者に選出することはできません。どの施設をどの指定管理者に何年契約で運用代行させるかには議会の議決が必要になりますし、管理の基準や業務範囲の規定方法も条例で定めなければなりません。

ちなみに、公募が原則ですが、条例で規定すれば非公募での指定管理者の選定も可能です。選定にあたっては選定委員会を設置します。また、公募の場合は、各候補者に施設運営の企画提案をもらって、どの候補者が一番目的に合致しているかを選ぶプロポーザル方式が一般的です。

さらに指定管理者を選定、指定すればそれで契約終了まで何もしないわけではなく、定期的に自治体は指定管理者の施設運営を評価します。また、指定管理者は年度ごとに業務報告書を自治体に提出しなければなりません。

指定管理者制度の導入事例

実際に指定管理者制度が導入されて、民間企業などによって運営されている公の施設の事例についていくつか紹介します。

武雄市図書館

指定管理者制度によって民間事業者によって公の施設が運営されている有名な事例の1つが武雄市図書館です。武雄市は佐賀県にある人口5万人程度の市で図書館はレンタルDVDのTSUTAYAなどを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営しています。

CCCを指定管理者に指定して、2013年4月にリニューアルオープンした後はスターバックスや蔦屋書店が併設されるおしゃれな図書館として注目を集めました。結果として、オープンから半年で来場者数は約50万人と、これまでの1年間の来館者数の2倍を記録する大盛況となりました。

掛川城

掛川城は静岡県掛川市にあるお城で観光地の1つになっています。天守閣、御殿、二の丸茶室の運営は恒常的な赤字になっているため、2014年から地元のホテルを指定管理者にして独立採算で運営できるような体制づくりを行っています。2017年の評価報告書によれば、運営を委託して以降、順調に入場者数が伸び、独立採算の運営体制が維持できているようです。

保育施設(帯広市)

北海道の帯広市では、4か所の児童保育施設の運営を民間事業者に指定管理者制度を使って委託しました。しかし、8か月で指定管理者の指定を取り消す自体になりました。原因としては、事業者が職員に対する給料を遅配、経営者側と職人の不和から、児童や保護者に対する悪影響を及ぼす恐れがあったからだとしています。

指定管理者制度の効果

上記のように、指定管理者制度を利用する事によって成功した事例もあれば失敗した事例もあります。もちろん、事業の運営には失敗はつきもので、委託を受けた業者の中にはふさわしくない事業者が混じる可能でもあるでしょう。総じて、どのような結果になっているのか、みずほ総研のレポートをもとに紹介します。

詳しく知りたい方はこちらをご覧ください
みずほリポート:指定管理者制度にみる官業の民間開放の現状と課題
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/report/report06-1116.pdf

地方自治体の指定管理者制度導入目的

地方自治研究機構が2005年に調べたデータによると、そもそも地方自治体はなんのために指定管理者制度を導入するのかについて以下のような結果となっています。

1位:施設の管理運営コストの削減 77%
2位:施設サービスの向上 69%
3位:既存の施設管理手法の見直し 44%
4位:行政コストの削減の一環 34%
5位:行政サービス全般の質的向上の一貫 21%

サービスの品質向上もさることながらコスト削減に強い関心が集まっていることが結果より推測できます。地方自治体には厳しい財政状況におかれている自治体も多く、民間の力を活用したコスト削減が求められます。

指定管理者制度のコスト削減効果

では、実際に指定管理者制度はコスト削減に寄与できたのでしょうか。さきほど挙げたみずほ総研のレポートによると、204件のサンプルで管理者指定前後のコストを比較したところ平均で13.8%のコスト削減に成功しているという結果が示されています。

特に高いコスト削減率になるのが民間企業に委託した場合で22.1%、自治体出資法人への委託によるコスト削減は10.8%なので、コスト削減効果に2倍程度の差が生じることはわかります。

施設別に見ると特に港湾は30.8%と大きな削減効果があり、商工25.9%、スポーツ14.4%、レクリエーション・レジャー14.1%と続きます。

もちろん失敗する事例もありますが、おおむね行政側のコスト削減は達成できるようです。

指定管理者制度のメリット・デメリット

以上のことを踏まえて、指定者管理制度にメリット・デメリットについてまとめます。

指定管理者制度のメリット

まずはメリットについてです。

・行政のコスト削減が図れる
みずほ総研のレポートを参考にすると、民間業者に委託費用を支払っても、おおむね10%程度のコスト削減効果は期待できるようです。民間の方が施設運営の際のコストカットや誘客対策に優れたノウハウを持っている可能性が高いので当然のこととも考えられます。財政難に悩む自治体が多い中で、このような行政側のコスト削減は良い効果です。

また、「サービスの品質」は定性的なデータなので向上したか否かは厳密には測定できませんが、来館者などが増加している、売上があがった指定者管理の施設では少なくとも、間接的にサービス品質の向上があったと推測できます。

・行政組織のスリム化
一般論として組織は肥大化すればするほど、多くの人員を抱え込むことになり、非効率やしがらみが発生します。よって、公の施設を全部、自治体や自治体出資の法人で運営しようとすれば、非効率な働き方、お金の使い方が発生する可能性があります。

公務員でなければでき無い事と民間の事業者に任せた方が良い事を切り分けて、民間に任せられる事は民間に任せれば、行政組織はスリム化できます。

指定管理者制度のデメリット

一方でデメリットも存在します。

・一定確率で失敗する
まずデメリットとしては一定確率で失敗することが挙げられます。民間に任せればすべてがバラ色になるのではなく、一定数任せるべきではなかったという事案も発生しえます。本記事では帯広市の事例を紹介しましたが、他にも失敗ケースはまだまだあり、失敗した時のリスクヘッジが求められます。

・公益と営利をどう両立させるか
公益と営利をどう両立させるかも重要な問題になります。民間は利益を上げることに優れたノウハウを持っていますが、不採算のサービスから撤退する可能性も秘めています。トータルではサービス品質は向上するけれども、取捨選択によって公益のために利益を無視して行わなければならない事も切り捨てられるかもしれません。

ただし、指定者管理の際に条例や運用によってもちろんある程度はリスクヘッジ可能です。

まとめ

以上のように指定者管理制度とはどのような制度なのかについて説明してきました。地方都市では労働人口の減少、自治体の予算の減少によって、行政サービスとは何かを見直さざるを得ない状態になっている自治体もあるかもしれません。

行政が体育館や公園の管理などをしていると、どうしてもコスト高の経営体質になってしまい、行政組織は肥大化してしまいます。このような状態を防ぐために、指定者管理制度を使った効率的な公共施設運営が求められます。

コラム(日本の公務員の課題・世界情勢など)に関するおすすめ記事

公務員ハックに関する新着記事

ページトップ