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「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」について

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先端技術活用推進方策


目次

「新時代の学びを支える…方策(最終まとめ)」とは?

文部科学省が、令和元年(2019年)6月に「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」を発表しました。

この方策は、簡単に言うと日本の学校教育に「先端技術」を取り入れ、全ての児童生徒が質の高い教育を受けられることを目指し、全国の学校・教師に対して意識改革をしてもらうためのものです。

この方策でいう「先端技術」とは、具体的に「AI(人工知能)」「ロボット」「IoT」「ビッグデータ」のことで、まとめて「ICT(情報通信技術)」とも呼ばれます。

「最終まとめ」が公表されるまでの流れ

「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」は、平成30年(2018年)11月に文科省が発表した「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて ~柴山・学びの革新プラン~」について、さらに内容を深めた最終的な政策プランです。

平成31年(2019年)3月に発表された「中間まとめ」に続き、同年5月に発表された「教育再生実行会議」の提言や、関係者との意見交換を踏まえ、さらに内容を深めたものが「最終まとめ」として発表されました。

▼文部科学省ホームページ「『新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)』について」
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm

最初のプランは「柴山・学びの革新プラン」

「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」の元になった最初のプランが「柴山・学びの革新プラン」とも呼ばれる「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて」というプランでした。

「柴山」とは、文部科学大臣の柴山昌彦大臣の名前が由来となっています。

「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて ~柴山・学びの革新プラン~」

「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」に至るまでに、まず最初に公表されたのが、2018年11月の「柴山・学びの革新プラン」でした。

この「柴山・学びの革新プラン」では、主に次の3点を政策の柱にしています。まず1点目は、「遠隔教育の推進による先進的な教育の実現」、2点目が「先端技術の導入による教師の授業支援」、そして3点目は、「先端技術の活用のための環境整備」でした。

このプランでは政府が掲げる「Society5.0」という新時代の到来に向けて、文部科学省の取り組むべき方針を、全国の学校や教師に向けて発信されました。


▼文部科学省ホームページ「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて ~柴山・学びの革新プラン~」
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm#1411332

「Society5.0」とは?

「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の中で、基本となる考え方は「Society5.0」という新しい時代に対応する必要がある、というものです。

ここではまず「Society5.0」について解説します。

「Society5.0」は「人間中心の社会」を意味します。

内閣府の説明によると「Society5.0」の社会とは、「サイバー空間(仮想空間)」と「フィジカル空間(現実空間)」を高度に融合させたシステムが実現する社会のことであり、そのシステムが経済発展に加えて社会的課題の解決も可能にするといいます。

今までの社会では、「フィジカル空間」にいる人間が、「サイバー空間」にある必要な情報にアクセスし、取りに行かないといけませんでしたが、「Society5.0」では、人間が必要な情報が「サイバー空間」で解析され、必要なタイミングで自動的に提案されるようになるようです。

これにより、人間は不便を感じることなく快適に、これまでより質の高い日々を過ごせるようになるため、「超スマート社会」や「人間中心の社会」という名称で語られています。

「Society1.0」から「Society5.0」までの社会についての考え方

「Society5.0」の考え方では、5.0に発展するまでに五段階の社会発展があったと考えられています。

まず一段階目は「狩猟社会(Society 1.0)」です。人々は狩猟のための道具を作る技術を持っていました。

二段階目は稲作技術が普及したことがイノベーションとなり、新しい「農耕社会(Society 2.0)」が実現しました。

そしてイノベーションは続き、蒸気機関の発明により、三段階目の社会として到来したのが「工業社会(Society 3.0)」です。

さらに、現在にも続く四段階目の「情報社会(Society 4.0)」はコンピュータの出現がもたらした社会です。

そしてすぐ先の未来には、「超スマート社会・人間中心の社会(Society5.0)」が到来するようです。

「Society5.0」を可能にする先進技術の例

「Society5.0」で、新たな社会を支えるイノベーションとして紹介されているのにはさまざまな先端技術があります。

例えば、IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどICT(情報通信技術)などの技術です。

生活の中で具体的な技術の取り入れられ方として代表的なものをご紹介すると、「ドローン」や「AI家電」、遠隔化した「医療や介護」、「スマートワーク」や「スマート経営」、そして車の「自動走行」などです。


先端技術を活用すれば、以上のような社会システムの最適化を図ることができ、いつでも、どこにいても、だれにでも、必要な情報と最適なサービスが提供されることが目指されます。

「Society5.0」は平成28年に発表された第5期科学技術基本計画の中で、日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

▼内閣府ホームページ「Society5.0」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

「Society5.0」と文部科学省

内閣府の「Society5.0」の提唱に合わせて、各省庁では管轄する分野でどのような方針を打ち出すのかを、それぞれ検討、準備しているようです。

それぞれの省庁が「Society5.0」に向けた準備に取り掛かる中、文部科学省が発表したのが、この「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」です。

文科省は、「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」の中で次のように主張しています。

それは、文科省が管轄する「学校」という施設が、「Society5.0」の時代には、単に「知識を伝達する場」ではなく、「人と人との関わり合いの中で、人間としての強みを伸ばしながら、人生や社会を見据えて学び合う場」となることが求められていくということです。

そして、文科省はその「学校」の変革を担うのは教師であるとも考えています。

文科省としては、生徒や学生といった次世代の子どもたちだけでなく、教師という人材を支え、教育の質を高めるツールとしても、先端技術には大きな可能性があるとも説明しており、「Society5.0」での教える側の最適化にも力を入れていくようです。

「新時代の学びを支える…方策(最終まとめ)」の内容

以上のような流れで最終的にまとめられた「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」では、大きく2つの方策が公表されました。

1つ目は、「遠隔教育をはじめICTを基盤とした先端技術の効果的な活用の在り方と、教育ビッグデータの効果的な活用の在り方」です。

2つ目は、1の基盤となる「ICT環境の整備」です。

2つの方策が具体的にどのような内容なのか、解説します。

「先端技術・教育ビッグデータ」の効果的な活用について

「最終まとめ」で発表された、「先端技術や教育ビッグデータの活用」と、「ICT環境の整備」という2つの方策について、具体的にご紹介します。

「遠隔教育」など「先端技術」の効果的な活用

元々、最初のプランである「柴山・学びの革新プラン」でも掲げられていた方針が「遠隔教育」の推進による先進的な教育の実現でした。

具体的には、小規模校や中山間地や離島にある学校、分校や複式学級、病院内の学級など、主に地理的な要因等で指導要領の達成が難しいとされてきた学校の生徒や、病気で療養中であったり、不登校、外国人、特定分野に才能を持つものの一般的な集団教育が難しいなど、特別な事情がある児童などに対し、遠隔教育を実現すことが目指されます。

つまり、すべての子どもたちに対し、どこにいたとしても質の高い教育を提供することを目指すようです。

また、遠隔教育を実現すれば外国語や情報教育について、外国にいる教員や、専門機関にいる教員など、優れた外部人材を活用できるという狙いもあるようです。

「遠隔教育」の他にも、AIを使用した個々に最適なドリルの作成や、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)に対応したスコープでの疑似体験など、先端技術を活用した学習方法が検証されつつあります。


「教育ビッグデータ」の効果的な活用

「教育ビッグデータ」については、学校ごとなど個別に収集されたデータを、国単位で共有し研究等に役立てるには、プライバシーの観点から匿名化が必要です。

しかしこのプライバシーへの配慮が教育ビッグデータの収集を困難している一因でもあります。

もちろん、子どもたちへの配慮は必要なので、匿名化すること自体には問題はないのですが、データを匿名化するにも技術や経済的・時間的コストが必要なため、活用が難しいという問題点があるようです。

もし「教育ビッグデータ」を活用すれば教師の業務効率化や、効果的な教育の研究等につながる可能性があるので、活用しやすくするために、まず考えられているのが、「教育の標準化」です。

現状の「教育ビッグデータ」は、それぞれの機関がそれぞれの方法で収集しておりmデータの内容が機関や施設ごとに異なっているため、文科省としても横断的な分析や研究が進んでいないこに危機的を感じているようです。

そのため、文科省としては収集するデータの種類や項目、単位を揃える、いわゆる「教育データの標準化」を進めようとしています。

誰がデータを収集しても、誰が対象となっても、同じような質の教育データを集めることが、効率的に学習方法の研究や教材の質向上を進めることにつながります。

具体的にどのようなデータを収集していくのかは、有識者や民間企業などの意見も吸い上げながら、令和2年度中に結論を出す予定とされています。

「ICT環境の整備」について

文科省の検証によると、現在の日本の学校教育現場でのICT環境には、次のような課題があるようです。

まず、学校のICT環境は、文房具と同じくらい教育現場において必要不可欠であるという認識が教育現場に広く浸透することが求められます。

しかし、現在の状況は、学校のICT環境が脆弱であること、地域間格差であることなどから、文房具レベルでの整備とは程遠く、危機的な状況であると言えます。

整備が進んでいない原因としては、ICT環境を整備するために必要な機器のコストが高いことや、学校の現場レベルになると、そもそもどのような整備を行うべきか判断がつかないことなどが挙げられています。

「ICT環境」を整備するための課題

「ICT環境」の整備が進んでいない現状をふまえて、「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」では次のような方針を掲げています。

まずは、世界最高速級の学術通信ネットワークの「SINET」と、初等中等教育との接続を実現することです。

「SINET」とは国立情報学研究所(NII)が構築・運用する高等教育を対象とした日本全国の国公私立大学、公的研究機関等を結ぶ世界最高速級の通信インフラです。

「SINET」のネットワークと小学校や中学校をつなげることにより、地理的要因を問わずに、費用や時間コストをがかからない教育機会の提供ができるとともに、学校側も、大学・研究機関等に教育データを提供でき、学術研究に貢献することができます。

そして、次に文科省が推奨する「安価な環境整備に向けた具体的なモデルの提示」も行なっていくようです。学校ごとに格差が出ないよう、最低限どのような機器やインターネット環境を整備すればいいのかを提示し、学校現場が悩む時間や手間を省きます。

また、現在は学校ごとにサーバを用意し、独自のネットワークを構築しているため、設備の維持・管理に手間やコストがかかっていたり、施設をまたいだデータのやりとりができない状況にありますが、それを安価で安全な「クラウド」に切り替えることにより、コストの削減を図るようです。

ただし、クラウド活用の積極的推進をするにあたり、セキュリティ面のガイドラインの改訂を行う必要があります。

個人情報を守りながら、教育ビッグデータを構築できる仕組みの整備が急がれています。


まとめ

「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」の実現

このページでは、文科省が、発表した「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」の内容についてご紹介しました。

内閣府が想定する、先端技術をフル活用した新時代「Society5.0」の到来に備え、学校など教育現場でも変革が求められています。

しかし、現在は地域格差をはじめとして、日本全体で足並みが揃っていない状況にあります。

文科省が目指すのは、地域の要因や、病気療養などの事情、発達障害など個人の特性にかかわらず、全ての子供たちに公平に、平等に教育の機会が提供できるような環境の整備です。

しかし、今の学校現場レベルでは、どれくらいのスペックや価格のパソコンやタブレットを、何人に1台用意すれば良いのか?などの細かい点での議論が進まず、導入が遅れているケースもあるようです。

先端技術を活用することにはコストや、セキュリティ面のリスクも伴いますが、最終的には新時代の1人1人の子どもたちの学びを支えられる環境を整えることが求められていると思いますし、この文科省の方策がそれをかなえてくれることを期待したいものです。

おまけ

「Society5.0時代」に備えた、文科省の政策には大学改革も

「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」では、主に小中学校の義務教育期間についての政策です。

文科省の政策には、大学改革について発表されたものもあります。

大学改革の詳細については、下記のページもご覧ください。

【文部科学省】大学改革の基本方針「柴山イニシアティブ」を発表

本記事は、2019年10月23日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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